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よろしくお願いします。

 これからどうしましょうか


 ………


 少し頭を冷やすために、最初に意識がはっきりした場所に戻ることにした。


 リビングの西側にある、壁にはめ込み式のクローゼットの上の枕棚だ。この場所で意識が戻って本当に良かったと思った。

 我が家には優秀なハンター(猫)が3匹いるがここには入れないからだ。いくら飼い猫とは言え、もし彼らに見付かっていたら…。

 この身体では格好のオモチャだ。散々いたぶられ最後にはぱくりと食べられてしまう。


「しゃれにならないなぁ」と軽く青くなった。そんな色々な事をつらつら考えていたら何だか酷く疲れてしまい、気がついたら倒れるように眠りこけてしまった。



◇ ◆ ◇



 天井を這うように横から光が差し、夜が明けたんだなぁ。と思った。


 思い切ってジャンプすると馴れてきたのか、飛行はよたよただが飛び始めは案外簡単に出来るようになった。どうやら飛ぶための助走はいらないらしい。

 天井の隙間から扉に手をかけて部屋を見回す。


………


 ―――どきっ! とした。

 あーちゃんが居た!


 死んでからどれくらい時間が経ったか分からないが、なんだか懐かしい気持ちでいっぱいになった。

 彼は額に手を当てテーブルに肘をつき俯いている。

 泣いているのか…。肩が不自然に震えている。


 何とも出来ない自分が歯がゆかった。

 直ぐに会いに行きたかったが、生まれ変わったこんな姿を本当に信じて貰えるのか…。

 全くもって自信がなかった。


 まぁ。

 珍しがられとは思うけど…。


 そう言えば。しゃべれるんだろうか…。

 ちょっと声を出してみる。

 口から火を噴いた。


 あーちゃんが顔を上げたのと、口から火を噴いたのが同時でこちらを見られた。もやっと一瞬明るくなったのが気になったのだろう。

 慌てて身体を引っ込め棚板に下りそのまま後ろの壁際に進んだ時、クローゼットの扉が開いた。

 

 ドッスンドッスンと言う音がしたので、ジャンプしながら見ているのかもしれない。

 

 慌てて段ボールの後ろに隠れて様子を伺う。


 今度は踏み台を持ってきて、一段高くなった位置から枕棚に身を乗り出して光の正体を探しているようだ。「気のせいかなー。」と呟いて扉を閉め、足音が遠ざかった。


 びっくりした!

 心臓が止まるかと思った。


 棚板に座って落ち着いてから、もう一度小さく息を吐いてみると今度は火を噴かなかった。

 どんな仕組みになっているのか、まず自分の身体を色々調べるところから始めよう。と思った。



◇ ◆ ◇



 突然お腹が空いている事に気がついた。

 そう思った瞬間、何日もご飯を食べていないような気がしてきた。


 竜の食べ物は…。

 ―――思い出して見ると「草食」だったり「霊気」だったり…。…。

 どれもあんまり食べたくない。


 そう言えば「遺影」の前にお菓子あったなー。

(遺影は微妙だなー)

 アルコールもあったよねー。


 水分はキッチンの水で良いけど、この身体でシンクの蛇口は使えるのかなー。ってちょっと心配。


 きっと何時死んだのか。とか、どうして死んだのか。とか色々知った方が良いかと思うけど、とにかく今はお腹が空いてしまって他のことは考えられなくなった。


 気を取り直し天井の隙間から部屋を覗くと、あーちゃんはテーブルに戻りパソコンに張り付いてる。今日はお休みかしら。


 背に腹は変えられないので、思い切って壁に向かってジャンプし壁沿いに飛行しながら移動することにした。

 

 今はパソコンに夢中なので、壁沿いに進むのは案外見付からないんじゃないかと思った。

 (根拠はなし)

 それから我が家の優秀なハンター達も、キャットウォークの真下なんで見えづらいんじゃないかととか、まぁ見付かっても彼らの手の届かないところを飛べれば。ねぇ…。

 それでもこんな速度じゃ一発で彼らのオモチャ確定だなー。と思ったけど、思いの外順調にお目当ての場所まで飛べて無事に到着した。


 疲れた…。

 飛ぶのってこんなに疲れるんだ。


 ………


 知らなかった。


よろしくお願いします。

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