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よろしくお願いします。
限界まで…。と思うけど、理性が働いて辞めておく。
暫く飛んでみんなの所に帰る。
◇ ◆ ◇
しばらくウサギくらいの大きさが続いた。
優秀なハンター達とも仲良くやっていけるんじゃないかと思った。
大きさはちょっと小さくて問題はなかったが、歩き方なんてのっしのっしって感じで、優秀なハンター達も一目置いているって言うか、怖いみたいで側に来ない!
今の大きさになった時、やっと一人で自分の部屋に行けるようになった。
この部屋に入れなくなってから数ヶ月が経った。
長かったのか短かったのか…。
何だか泣けてきた。
この間、リス位の大きさの時一緒に連れてきて貰ったが、あれ以来部屋に入っていない。
この部屋は思い入れがある。
押し入れを壊し机を入れ、壁紙も基本は青で押し入れ部分は猫の後ろ姿が細かく印刷されたもの、あんなにたくさんの猫が居るのにちっとも嫌味じゃない。
もう1カ所アクセントに貼った壁紙はお花が一杯。柄なので合わせるのが大変だったそうで…。
天上もベニヤを張り上から白いペンキを塗った。
床は剥がして断熱材を入れもう一度張り替え絨毯を敷き詰めた。
何ヶ月もかけて完成した。
本当に大好きな部屋だった。
あーちゃんに鞄かけを頼んだら結局鞄をかける場所が2カ所しかなくて、壁の全部はキャットウォークになった。
また、入れるようになった。
しばらく部屋でぼーっとしていた。ここで起こった様々な事を思い出していた。
そしてこの部屋は本当にそのままで、時間が止まったようだった。
◇ ◆ ◇
変な予感と共にやっと猫くらいの大きさになった時、
そしてついにその時が来た!
ドラゴンアイテムの「変身」をゲットした。
苦節おおよそ多分10ヶ月あまり…。ここまで長い道のりだった。
実は、ちょっとずつ大きくなる度に「変身」を試みていた。
まず人をイメージして変身したり、後は猫とか犬とか…。でも今までは出来なかった。
しかし…。
今回初めて変身が出来た!
変身は出来たけどどうもしゃべれないようだ…。
実際に口から出る言葉は無理だけど、もしかしたら「テレパシー」みたいな「思念」みたいなもので会話が出来るんじゃないかと思った。
これは十分試してみる価値はありそうだ。
しゃべれないと変身出来ても誤解を生みそうだしね。
えーと。他にも。
変身できるんだけど、人間には変身できない。
ナゼ?
馬とかカバとかに変身しようとしても出来ない。もしかしたら大きさに関係あるのかもしれない。
その他にも飼いたかった「サバンナキャット」に変身してみるが、知識が中途半端でなんか別の物になっている。
雑種。と言えばそれまでだけど、こんな雑種はいるだろうか…。
他にも犬とかウサギにも変身してみた。これは出来た。
何かをざっくりイメージすると変身できるんだけど、あんまり細かくイメージするとこの世に存在しないモノなってしまう。
とにかく。
試しに飼いたかったメインクーンに変身する事にした。
身長は1メートル弱。体重は7キロ位。
長毛。いつか写真で見たグレーと薄い黒の虎縞。
顔はちょっと面長。
イメージしてみる。
うーん。
身体に力がみなぎったようで、それが落ち着いていく。
………どう?
変身できたんじゃないかな?
慌てて洗面台の鏡を見る。
完璧!
ちょっと翼も出してみる。
―――出た!
ちょっと火も噴いてみる。
―――噴いた!
イヤ~。
今日あーちゃんが帰って来るのが楽しみだよ~。
……………………
あーちゃんの車の音がする。
いつものように玄関に出向いた。
あの、メインクーンに変身して玄関で待つ。
いつものように「ただいま~。」と帰って来た。
そしてこちらを見てびっくりする。
「どっから入ってきたんだ?」
その言葉に構わず部屋に入る。
後からあーちゃんも部屋に入った。
ちょっと思念とかテレパシーを試してみる。あーちゃんの顔を見て『おかえり』と言った。
あっ。驚いてる!
もしかしたらしゃべれるようになったのかなぁ…。
『分かる?』と聞いてみた。
―――――――
………おっ。
驚いている。
………えっ!
頭の中にイタッの声が響いたような気がするんだけど…。
今話したのはイタッ?
と口に出して聞かれたので『そう。』と答えた。
目の前に居るメインクーンはイタッ?
と聞かれたので
『そう。』と答えた。
この声イタッ?
そっかー。イタッなんだ。
…………………
それから夢中で話した。
なぜか分からないけどドラゴンに生まれ変わったこと。
優秀なハンターによって何度も命の危機があったこと。
大きくなるのは、自分でもよく分からないけど、このままもっと大きくなるのか、分からない事が不安に思ってしていること。などなど。
そして…。
人間に変身できないこと。
あーちゃんは驚き、時々興味深く疑問を投げかけながら最後まで話を聞いていた。
結局現実は現実として、先の事はなってみないと分からない。
と、お互いに改めて理解した。
そして私が突然死んでしまった時の話も聞いた。
自分の事なのに涙が止まらなかった。
……………………
子供達にも連絡し直ぐに会った。
変身している姿は馴れないから結構エネルギー的な? 物を使うようで、ドラゴンでいる方が楽なんだけど、見た目が馴れないんじゃないかと思って猫の姿で会った。
会って直ぐ思念で『心配かけたね』と声をかけた。
今でも心配してるけどね。
で、おかん?
かーちゃん?
おかーちゃん?
と三人三様、呼び方が違う。
そう。と答える。
まじかぁ…。
すっげぇなぁ。
どんな感じなの?
子供達に会った時、なんとも話が出来なかったが次第に言葉が話を繋げていくようになった。
どんな感じと言われても…。
人間でいた時より力がみなぎって、記憶力も良くなったんじゃないかなぁ。
身体の不調もないし、健康になったような気がする。
へぇー
他には何に変身できるの?
犬とか猫とかウサギとか…。
ざっくりだと自分が思っている範囲でそれなりに変身できるけど、血統書付き。とか、個別に名前があるような物は、それをそれなりに見ないと変身できないね。
後、変身って思ったよりエネルギーを使うようで、ざっくりなら何とかなるけど、メインクーンみたいに詳細に変身しようとすると何度も出来ないみたい。
未だ馴れないというのもあるかもしれないけど…。
だから、あんまり色々試してないんだぁ。
魚みたいに、水とかないとダメなものとか…。あと魚とかあんまり分かんないしね。
まぁ。ぼちぼち変身は楽しみながら何が出来るのかやってみるよ。
で。
人間には変身出来ないんだ。
と、自分では分からなかったけど、ちょっと思い詰めて言ったみたいだ。
別に、人間に変身できなくても良くない?
わかんねぇけど…。
母親がドラゴンってどうかと思うけど、母親であることは変わらないんだし…。
………?
うん…。
………そっかー。
変わらないかぁ。なんかジンときた。
やるねぇ。子供達。そして家族達。
涙が出た。
―――それから、たわいのない話をした。
旅行に行くなら、ペットも一緒のホテルだね。とか。
それよりキャンプだよ。とか。
今度どこ行く?とか…。
……………………
なんか張り詰めてた気持ちがウソのようになくなっていた。
そして、そっかー。張り詰めてたんだぁ。と改めて気がついた。
じゃ。とか。
野良ドラゴンにならないように。あっ。野良おかーちゃんか。とか。
ごそごそと憎まれ口を聞きながらそれぞれ帰って行った。
改めて、家族のありがたさを知った。
読んでくださった方々ありがとうございます。
次回で終わる予定です。
良いお年をお迎えください。
にゃーごろにゃん様より、イラストを描いて頂きました。ありがとうございます。