1
初めての先品です。
夕食の準備をしていた。
今日はあーちゃん(夫)の大好物「とんかつ」。
そして付け合わせのキャベツの千切りを切っている。
しゃかしゃかしゃか。とリズミカルに。
しゃかしゃか っ っ! っ!!
っうぐ。
突然襲ってきたもの凄い頭痛。金属バットで殴られたような…。
つーーー。
そのまま床に倒れ頭を抱え込み、ぎゅーっと身体を丸めてそのまま意識がなくなった。
どれくらい経っただろうか…。
目を開けたら天上を這うように光が差していた。
身体の下が堅かったので、まだ床の上に倒れたままなのかもしれない…。
あーちゃんはまだ帰ってきてないのかな。と思った。
頭は痛くない。身体を少し起こす。
起き上がろうとして床に手をつく。
薄暗いからよく分からないが腕がなんか変だ。
違和感がある。
おまけに手もなんか変なような気がする。
薄暗い中目がだんだん慣れてくる。
腕が皮膚じゃない…。
慌てて片方の手で腕をこする。
思ったほど柔らかくスベスベしているが、やっぱり皮膚じゃない。
よく見ると鱗のような物で一面びっちり覆われている。
ぶるっと背中に悪寒が走る。
頭がぼーっとする。
思考がついていかない。
何かになった。人間ではない何かだ。
カ○カの「変身」のようだ。
そして気絶した。
…………
しばらくして目が覚めた。
どれくらい気絶していただろう…。
天上から差していた光はもうなかった。
段々目が慣れてくると周りの物もある程度見えるようになった。
そしてまた自分の腕を見てドキッとし、背筋に悪寒が走った。
取りあえず何になったのを確認するために、鏡を探したかったがそもそもここがどこだか分からない。
天井近くに光が差していたので、そこまでよじ登れないかと踏み台を探したが適当な物がなかった。
天井を見上げ、思案しているとふぁっと身体が浮き上がった。
背中が引っ張られるように持ち上がり頭が下がる。
そのまま上に浮かんだ。
ゆっくりと天井近くまで浮かび、ほっとしたら落ちそうになったので、慌てて目の前にあった塀のような物にしがみついた。
目の前の景色は、テーブルとか椅子とか。他にもあるがここは多分部屋だ。塀から身を乗り出して部屋の中を見回してみた。
薄暗かった闇に段々目も慣れてきて、なんとなくテーブルも椅子も見覚えがあるような気がした。
近くで見てみようと天上の隙間からのろのろと出たら、頭を下にしてよたよたと空中を移動していた。
そのままテーブルの上に着地した。
え…と。
……!
びっくりした!
ここは自宅だ。紛れもなく自宅だ。
見慣れた小物入れ。横を見ればテレビ。そしてテーブルの上にはあーちゃんのキーボード。ここは間違いなく自宅だ。
私は慌てて飛び上がりよたよたと洗面所に向かった。
自分の姿・形を見るためだ。
そして…。
おそるおそる自分の姿を見た。
ちっさいっ。すっごいちっさい。極小サイズ。
自分の容姿がよく見えなかったので、少しずつ鏡に近づく。
段々形がはっきりしてくる。
大きさはハエくらい?
飛行できるのは、背中に翼が付いているからみたいだ。
それから容姿だ。一体何になったんだ。
じっくり鏡を見る。
………
………
……… 童話やアニメ出てくる。想像上の生き物? 実際に見たことがないので分からないが、「ドラゴン」じゃないかと思う…。
えー。
えーー。
えーーー。
ちょっと待って。一回冷静になってみようか。
ふらふらとテーブルの上に戻った。
何の気なしにテレビの方に目を向ける。さっきはよく見えなかったがテレビの上にキャットウォークがあり、その棚の上に写真があった。
そこにはよく知っている顔の私自身の「遺影」だった。
………
………
………
いやー。
生前「ドラゴン」が好きとか、翼が欲しいとか、自分の翼で飛んでみたいとか言ってたよ。
でもね。
生まれ変わったのが、
よりにもよって極小ドラゴンですか?
うーーん。
さて…。
これからどうしましょうか…。
初めてなので投稿はゆっくりになります。