乙女ゲームのように人生一度でいいからモテてみたいと思いながら死んでしまった私が、異世界で三人の義兄弟の王子達から求愛されて悶絶死しそうになる ~プロローグ~ 【モテ悶1】
……乙女ゲームのように人生一度でいいからモテてみたい……
そんな妄想癖のある私にも、いつかは恋人が出来ると信じていた……
でも、それは叶うことなく、私は死んでしまった。
惚れやすい私には今まで好きな人がたくさんいた。
だけど、勇気を出すことが出来なくて、誰にも告白したことはなかった。
こんなことになるなら、恐れずに告白しておけばよかった……
今更、後悔しても仕方がない。
……もう、私は生きていないのだから……
と思っていたけど、あれ、そういえば、私は今どこにいるんだろう?
……死んでしまったら何もかも無くなってしまうんじゃないの?
それなのに、考えるということは出来ている。
もしかして死後の世界があるとか?
「その疑問にお答えします」
「うわっ!」
急に誰かに話しかけられた。
「だ、誰ですか?!」
「僕は異世界の神だよ」
「あ、ショタ」
声をかけてくれたのは、見た目が小柄な男の子だった。
「……お姉さん……。異世界や神とかじゃなくて、そこに注目するんだ……」
異世界の神と名乗る男の子に呆れられた。
「はは、生前の癖で……」
私は苦笑いした。
「まあいいや、さっきの答えだけど、ここはお姉さんがいた世界と異世界を結ぶ異空間なんだ」
「え、それって、どういうこと?」
「お姉さんの強い後悔の念が、お姉さんをここに導いたみたい」
……私の後悔って、そんなに強いものだったの……
モテたかったというだけなのだが……
そう思うとなんだか急に恥ずかしくなってきた。
「それで急な話なんだけど、異世界転生という形でなら生き返ることが出来るって言われたら、お姉さんはどうしますか?」
「そ、そんなことが出来るの?!」
正直、生き返られるなら手段は何でもいい。
「うん、こっちの世界でも少し前に亡くなった女の子がいて、家族から助けて欲しいとお願いされていたんだ……。でも、亡くなった子を生き返らすことは出来ないと思っていたところに、ちょうど君が現れたから、転生という形で生き返らせられないかと思って……」
「……つまり、私が転生したら、家族の願いを叶えることが出来ると……」
「まあ、簡単に言うとそういうことかな……。……その子本人が生き返るわけではないから、それが家族にとって本当によいことなのかは分からないけど……」
それはそうだ。
生き返ったとしても、それはその子本人ではない。
でも……
「私、転生します」
私は、ショタ……、じゃなかった、異世界の神様にそう告げた。
……もちろん、私が生き返りたいという思いもあるけど……
私が亡くなる時、家族はみんな泣いてくれていた。
こんな私が死んでも、誰も悲しむ人なんていないと思っていたのに……
私でさえ、これだけ家族を悲しませてしまった。
それなら、必死に助けて欲しいと神様にお願いしていた家族は、今どれくらいの悲しみに打ちひしがれているのか。
想像すら難しい。
……私は自分の家族のために生きることは出来なかった……
その分、この家族の悲しみを少しでも和らげられたらと、そう思う。
それに、私が転生した結果どうなるかなんて誰にも分からない。
でも、自分の家族に尽くせなかった分、新しい家族のためには精一杯尽くしたいとは思うから……
「君ならそう言ってくれると思っていたよ」
ショタ神様は笑顔でそう言った。
……ショタの笑顔可愛い……
いかん、いかん、欲望が駄々洩れだ。
これから転生するんだから、気を引き締めないと。
「それで、新しい家族についてなんだけど。実はその家族は王族なんだ」
「王族? それって、海外の昔話に出てくるような王様とかのイメージでいいのかな?」
私に王族らしい立ち振る舞いが出来るとは思えないのだが……
「君がどんなイメージをしているのか分からないけど、たぶん、そんな感じかと。あとは家族構成なんだけど、その国の王様と王妃が両親で、その両親の息子が三人」
「五人家族なのね。……あれ、私はその両親の娘に転生するんじゃないの?」
「そう、そこが重要なんだけど、転生する予定の女の子は、君の本当の家族ではないんだ」
「え、そうなんですか?」
必死に助けたいと思われていた子だから、本当の家族だと思っていた。
「女の子が生まれなかったから、教会で保護されていた孤児を引き取ったみたい」
「なるほど」
自分の本当の家族でもないのに、神様に必死に助けて欲しいと願っていたのなら、きっと人の良い王族なのだろう。
それに、元が孤児だったのであれば、王族らしい立ち振る舞いが多少出来なかったとしても許してもらえそうな気はする。
事前情報を聞いておいて良かった。
ほっと胸を撫で下ろす。
「その女の子は、第二王子と同い年で、第一王子がお兄さん、第三王子が弟になるから、覚えておいた方がいいかも」
「分かりました」
……というか、王子三兄弟とか見てるだけで尊い。
……妄想が止まらなさそう……
「それと、次の話で最後なんだけど」
「あ、まだあるんですか?」
つい、頭の中で三兄弟の王子達のこと妄想してしまっていたところ、現実に戻された。
「これは君にとっていい話だよ」
「私にとって?」
「そう、そもそも君の生への未練は、モテたかったという後悔からでしょ」
「ま、まあ、改めて言われると恥ずかしい限りですが……」
家族の悲しみを和らげたいという思いに偽りはないが、モテたかったというのも本音だ。
「その三人の王子達は、亡くなった女の子に淡い恋心を抱いていたみたいなんだよね」
「はっ?」
何それ?
義兄弟の王子達と一緒に過ごすというだけで、もう既にお腹一杯なのに。
転生したら、その三人の王子達から好意を寄せられるってこと?
無理。
たぶん、悶絶死する。
「それじゃあ、伝えることは伝えたから、新しい人生も頑張ってね」
ショタ神様がそう言って、私に手を振っている。
え、もう転生するの?
「ちょっ、ちょっと待って、まだ心の準備が……」
慌ててそう言ったが、私の声は空間の歪みによってかき消された。
「ごめんね、これ以上この空間にいると転生できなくなってしまうかもしれないから……」
ショタ神様が何かを話しているが、途切れ途切れで、その声もよく聞こない。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
歪みの先にある黒い穴のような場所に私は吸い込まれた。
……こうして、私は異世界の王族の家族の一員として転生し、三人の王子達にモテ振り回される日々が始まった……
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