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追放からの即ざまぁ

「冒険者パーティー『フローレス』よ。

 よくぞ魔王を討伐してくれた。これで世界は平和に向かって進み始めるだろう。」


 魔王を倒した俺たち「フローレス」は、王城に呼び出されて王様から褒美として金貨を与えられる事になった。

 何枚あるか分からない山のような金貨を、物資の保管に使っている異空間に運び込む。この異空間は、スキル【隠れ家】で俺が作り出したものだ。俺が許可した人物なら、出入りは自由である。ただし、出入口は俺にしか開けない。


「魔王は討たれたが、まだ配下の魔物は多く残っており、その脅威は今後もしばらく続く事になる。

 そこで、そなたらさえよければ、貴族に取り立て、将軍として軍を率いてもらいたいのだが、どうであろうか?」

「恐れながら、陛下。それはお断りいたします。

 なぜなら、我々は自分で戦うのが得意な冒険者です。指揮官や領主としての実力は、まるきり素人ですから、今後も冒険者として活動するのが最も効果的かと存じます。」


 リーダーの剣士ジェットが答える。

 ジェットの個人的な意見ではなく、これは俺たちの総意だ。


「ふむ……一理あるな。残念だが諦めるとしよう。」



 ◇



「冗談じゃないぜー!」

「貴族だの将軍だの、どう考えても忙しくなるわよねー。」

「ええ、ええ。しばらくはゆっくり休みたいですわ。」


 パーティーの拠点として買った家に戻ると、剣士ジェット、魔術師ルビー、僧侶パールの3人は、リビングのソファへ身を投げた。


「それで? 予定通り、パーティーを解散するのか?」


 俺は4人分のお茶をいれて、彼らに配り、自分も椅子に腰かけてお茶をすすった。

 もう一生遊んで暮らせるほどの金がある。

 こういう場合、たいていの冒険者は、引退して破産しない程度に面白おかしく暮らしていこうと考える。なにしろ命がけの仕事だ。欲をかいて死んでしまっては何にもならない。


「そーだなー。俺はそのつもりだぜー?」

「異議なーし!」

「賛成ですわ。」


 4人パーティーのうち3人が同意した。

 もはや俺が意見を述べるまでもなく、多数決が済んでしまった。


「んじゃあ、解散ってことで。

 エントラ、解散の書類もってるか?」

「ああ。昨日のうちに冒険者ギルドでもらっておいた。」


 俺は書類を差し出した。誰が誰とパーティーを組んでいるか、冒険者ギルドが把握するための書類だ。

 パーティーリーダーの剣士ジェットが、代表者として書類に記入していく。


「……これでよし、と。

 すぐ出してくるよ。

 その間に、ルビーとパールでエントラを手伝ってやってくれ。

 エントラ、荷物は地下室へ入れておいてくれるか?」


 記入を終えた剣士ジェットが、書類を手に立ち上がる。

 俺と他の2人は、地下室へ向かった。


「それじゃあ、どんどん出していこう。」


 スキル【隠れ家】を発動。

 中の荷物を、3人がかりで運び出す。物資の保管と運搬という意味では【収納】スキルでも似たような効果はあるが、そのサイズは大きめのカバンぐらい。一方【隠れ家】なら、家ほどのサイズがある。

 やがて全ての物資を運び出し、戻ったジェットと一緒に分配を済ませて、俺たちはパーティー解散の作業を全て終えた。パーティーの拠点にしていたこの家は、リーダーの剣士ジェットが個人で所有する事になった。


「それじゃあ、みんな、今までありがとう。」

「お疲れ様でしたー。」

「これからの人生に幸多からんことを。」

「世話になった。」


 そうして、俺たちは別々の道へ歩き出したーーはずだった。


「……何やってるんだ?」


 出ていこうとした俺とは対象的に、他の3人はテーブルに身を乗り出して何やら検討し始めた。


「うん?

 ああ、新しいパーティーを結成しようと思ってな。」

「冒険者を引退するわけじゃないしー?

 稼げるうちに稼げるだけ稼いでおこう、みたいな?」

「『フローレス』の名前は、魔王討伐で有名になりすぎましたからね。一介の冒険者として自由にやるには、新しい名前が必要なのですわ。」


 なるほど、一理ある……が。


「聞いてないんだけど?」

「言ってないからな。」

「新しいパーティーに、俺は要らないと?」

「お前、弱いからな。」


 最近の冒険者は、戦闘能力ばかり重視する傾向にある。

 だが、俺はサポート専門だ。人外魔境を旅して魔王を倒すために、大量の物資を運ぶ必要があったから、限られたスキルポイントをサポート系のスキルに使う人材が必要だった。そのため、戦闘スキルは数が少なく威力も弱い。

 それに、俺が弱いのは、仲間を強化しているからだ。それはこいつらも知っているはず……最初の頃に説明した。なのに、こんなやり方は、まるで俺を追放するために仕組んだみたいじゃないか。


「……俺のサポートは、もう要らないって事でいいんだな?」

「ああ。今までご苦労さん。」

「了解した。

 スキル【寄託】ーー解除。」


 スキル【寄託】は、俺のステータスポイントを仲間に預けて利用してもらう。このとき、俺のポイントを1減らすと、仲間全員に1ずつポイントが与えられる。つまり、仲間が多いほどステータスポイントを増殖できる。

 3人に預ける事で1ポイントが3ポイントになり、それを回収して再び預けると9ポイントになる。

 ポイントの移動は1日に1回だけ実行でき、2回までストックできる。なので、回収して再度預ける処理を繰り返してきた。この結果、1年間で「フローレス」のメンバーは、俺以外3人ともステータスが全項目2()()以上になっている。


「……あ?

 ステータスオープン……なんじゃこりゃああああ!?

 てめえ、何しやがった!?」


 2兆から、急に600ぐらいになったのだ。戦うまでもなく、体の感覚に異変が起きる。


「俺のサポートは、もう要らないんだろ?」

「ふざけんな! 俺のステータスを返せえええ!」

「逆だよ、ジェット。今まで預けていた俺のステータスポイントを返してもらったんだ。」


 そして3人から回収したことでポイントは3倍になり、俺のステータスは全項目6兆を超えた。


「じゃあな。

 一介の冒険者として自由にやるには、そのぐらいのステータスのほうが好都合だろ?

 変に強すぎて頼られる事もないだろうし。」

「待て! 戻ってこい、エントラ! 俺のステータスを返してくれえええ!」

「もう遅い。

 残念だが、こんな騙し討ちみたいな方法で俺を追放する奴らを、仲間とは思えない。スキル【寄託】は、()()()ステータスポイントを預ける。仲間じゃない奴には、預ける事ができない。」

思いついたのはいいけど、この【寄託】は強くなりすぎるので連載で書くのは難しいかなーと、短編にしました。

主人公がこのあと冒険者を続けると、常に楽勝ですからね。サポートスキルの出番もないまま、全てワンパンで。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一日目に預け、二日目に返してもらうってだけでも20回(40日)で 3,486,784,401(約35億)になるから完全に出オチ用ですな
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