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第3話 空腹と腰痛と麻雀。

貧乏自慢ができるのは若いときだけ。


 空腹がおさまらない。

 所持金は2千円とちょっとだ。

 若いときの貧乏はサマになるが、いい歳こいたオジサンの貧乏は悲惨の一語に尽きる。だれも振り向かないし、だれも助けてはくれない。


「未亡人のスケベ汁」を書いたときはいまからちょうど10年前。40を過ぎた辺りだった。

 呑気なおれでもさすがに焦りの色が濃かった。

 このまま気楽なバイト生活をつづけていいものか?

 結婚もしたいし、人並みな生活も送りたい。

 俗世の煩悩に苦しんでいたときに脚本の仕事がきた。

 わずか5万の脚本料だが、金額は問題ではなかった。

 ピンクとはいえ脚本が書ける。これを足がかりにして脚本家として羽ばたくことができるかもしれない。



 いまから思えば甘い見通しだと自嘲できるが、そのときのおれは希望と期待に胸をふくらませていた。

 だけど……

 結果は前述した通りだ。


 目の前にちらついたエサに安易に飛びつき、おれはカタギにもどる時期を失ったのだ。そうこうするうち、親父の介護がはじまり、そして……これも前述した通りだ。


 現実を見失ったものは現実に手痛いしっぺ返しを受ける。

 それがこの有り様だ。

 ここ数日、コンビニのおにぎりしか口に入れていない。

 朝1個、夜2個のルーティンだったが、昨日は朝1、夜も1個だった。


 派遣の仕事をすればいいのだが、腰が痛む。もう重いものは運べないし立ちっぱも辛い。

 派遣の仕事のほとんどは印刷工場か物流倉庫での単純労働だ。

 他にスキルを積んでこなかったので仕方がない。体だけが資本の作業だが、その体に相当なガタがきているのだ。


 ぐう。

 再び腹が減った。

 この2千円を使うわけにはいかない。これは今夜のネグラ代だ。この時期、野宿はカゼをひく。せめて屋根と暖房がきいたところで眠りたい。


 あてどなく町をさまよっていると、雀荘の看板が目に飛び込んできた。

 待てよ。点3のレートならスタート2千円で勝負できるはずだ。

 おれの唯一の趣味は麻雀だ。強くはないが運に恵まれれば勝てる。そういうゲームだ。

 腹が鳴る。腰が痛い。

 おれは深く考えることができず、気づいたらその雀荘に足を踏み入れていた。




    第4話につづく



麻雀は運だけじゃないけどね(^^;

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