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第1話 人生。

お久しぶりです。自由言論社が『なろう』に帰ってまいりました。今作は政治的主張は一切ありません。レフトな方もライトな方も安心してお読みくださいm(__)m



 ついに50の坂を越えてしまった。

 桜の花が散り終わるころには51だ。

 もうダメだ。

 どうしようもない。

 この苦境から脱する術はない。


 いまのおれはネカフェ暮らしだ。

 底辺派遣労働で食いつなぐ毎日だ。

 こうなったのにはワケがある。

 おれには親父がいた。

 親父の介護でカネも時間も食いつぶしたのだ。

 親父には遺産も貯金もなかった。

 おれは一人っ子だ。母親は7年前に亡くなっている。

 おれ一人で親父の面倒をみて暮らしていた。


 介護施設に入れるカネはもともとなかった。

 おれはいい歳こいた中年フリーターで定職をもたなかった。

 それにはワケがある。

 おれは作家になりたかった。

 作家といってもおれの場合は脚本家だ。

 映画の脚本家になりたかった。

 大勢の観客とともに、おれの考えたドラマを大スクリーンに映して楽しみたかった。それがおれの夢だった。


 脚本学校に通い、そこの講師の先生のツテでおれは日本ドラマ協会――通称ドラ協と呼ばれる作家団体でアルバイトをすることになった。

 主な仕事は寄贈された脚本台本の整理やファイリングをすることだった。

 力仕事ももちろんあって、膨大な脚本を箱詰めして図書館の棚に収める作業をした翌朝は筋肉痛に悩まされた。


 だけど脚本家志望のおれにとっては、そんな辛い作業も苦しいばかりではなかった。

 いや、それよりも無数の脚本台本に触れられて楽しかった。

 それが、その楽しさがおれの人生を狂わせた。

 ずるずるときてしまった。

 どこかで夢をあきらめるべきだったのだ。

 20を過ぎれば男の人生の決断は5年ごとにやってくる。

 25……30……35……40……。

 おれはその決断をずるずると夢に引きずられて伸ばしてしまったのだ。


 このままではいけない。


 気づいたときには親父の介護がはじまっていた。

 そして……。

 ドラ協のバイトも脚本保管事業そのものがなくなり、おれは自動的にクビになった。


 親父の葬儀を行い、付随する後始末を終えたころには無一文になっていた。

 おれにはなにも残ってはいなかった。

 家も。

 家族も。

 恋人も。

 友達も。

 カネも職も、なにもかもなくしていた。


 いや、ひとつだけある。

 ドラ協のバイトを世話してくれた先生の紹介で、おれは脚本を一本だけ書くことができた。

 そのタイトルをここに明かそう。それは――


「未亡人のスケベ汁 もう誰でもいい」



   第二話につづく



さあ、次回もみんなで読もう(^^;

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