第85星:執務室2
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。指揮官として司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。
ヴィルヴァーラ・スビルコフ (20) 二等星
ロシアスルーツク支部所属。海外派遣交流により日本の千葉根拠地にやってきたロシアの『グリッター』。当初より根拠地の『グリッター』をあしらうような姿勢を見せるが…?
国館 飛鳥(18)
実兄の背後に飛び込んだ大和の実妹。最高本部の『グリッター』であり、最高司令官である護里直属の戦士でもある。その正体は日本に8人しか存在しない、護里が指名した最高の『グリッター』の称号である最年少の『シュヴァリエ』である。
新島 夕(10)
大和と咲夜をサポートする報告官を務める。『グリッター』としてこ能力を秘めているが未だに開花には至らず。それでも、自分にできることを精一杯こなす純真無垢な少女。10歳とは思えない礼儀正さを兼ね備える。
「いかがでしたか?何か参考になるものや得るものはあったでしょうか?」
咲夜は自身の席に座り、ヴィルヴァーラに尋ねる。先程までの思考を微塵も悟らさず、咲夜の問いに答えた。
「寧ろ…私にとって刺激になるようなことしかありませんでした。日本のエンジニアの熱意や、トレーニングへの取り組み。どれをとっても素晴らしく、タメになるようなことばかりでした。文化は違えど、素直に尊敬に値するものばかりです」
ヴィルヴァーラの率直な意見に、咲夜は笑みを浮かべて頷く。
「そう思っていただけ良かったです。勿論、これは日本の『軍』のほんの一部分に過ぎません。いずれ機会があれば様々な地域や、本部をご覧になられると良いでしょう」
「…えぇ、そうですね、いずれ」
心なしか、ヴィルヴァーラの言葉に覇気がなくなったように感じたが、咲夜は気にせず続けた。
「明日以降の予定ですが、本来はまだ朝陽小隊と行動をともにしていただく予定でしたが、朝陽さんがこのような状態ですので、予定を繰り上げて別の小隊にて行動していただきます。構いませんね」
「Конечно。私が招いた失態ですので。ただ、アサヒに怪我を負わせておいて、自分だけ自由に動いてしまうことは気が引けるのですが…」
咲夜は「ふむ…」と考える素振りを見せたあと、朝陽の方を見る。
「彼女はこう言っていますが、貴方はどう考えますか?朝陽さん」
「私は…」
朝陽は怪我をした肩を抑えながら、チラリとヴィルヴァーラの方を見る。
すると、ちょうどこちらを向いていたヴィルヴァーラと目が合う。
ヴィルヴァーラはやはり朝陽の怪我のことを気にしているようであった。
「私は、ヴィルヴァーラさんには別の小隊に行っていただいた方が良いと思います」
「アサヒ…」
「そう考える理由は?」
ヴィルヴァーラが何かを言う前に咲夜がその理由を尋ねる。
「ヴィルヴァーラさんは、私の怪我を自分のせいだと思われているみたいですけど、実際はそんなことはありません。その後に理由も話してくれて、私は納得しています。それに…」
朝陽はヴィルヴァーラの目を真っ直ぐ見つめ、続けた。
「ヴィルヴァーラさんは、真面目で熱心です。せっかく遠い日本にまで来てくださってるんです。私に気を使ってせっかくの交流を無駄にしたくありまさん。ヴィルヴァーラさんには、日本の良さを知っていただきたいんです」
「アサヒ…でも、私は…」
尚も食い下がろうとするヴィルヴァーラに、朝陽は顔を向ける。
「ヴィルヴァーラさん、私の言葉嘘偽りのない本音です。それに、戦場ではこういう傷が出来ることなんてザラです。それよりも、私のことを気にされて派遣交流が上手く出来ないことの方が、私は気にしちゃいますよ」
朝陽は珍しく困った表情を作り、ヴィルヴァーラに向けた。ヴィルヴァーラは一瞬驚いた顔をしながらも、同じく困ったような笑みを浮かべた。
「参ったわね…貴方にそう言う顔を作られると、断れないわ」
「話はついたようですね。それでは、ヴィルヴァーラさんには次の小隊へ移っていただきます。日程の調整がまだ済んでいないので、配属先は明日の朝連絡ささせていただきます」
咲夜の指示にヴィルヴァーラは頷く。次いで咲夜は部屋に設置された時計に目を向ける。
「ふむ…少し早いですが、朝陽さんとヴィルヴァーラさんの二人は、本日の軍務は終了で構いません。特にヴィルヴァーラさんは明日から違う小隊に行くことになりますから、色々と準備をしておくと良いでしょう」
「Спасибо большое 。お言葉に甘えさせていただき、このまま失礼します」
話は終わったと察したのだろう、ヴィルヴァーラは礼を述べたのち、立ち上がり、一礼をしたのち出口の方へと向かっていった。
「…夕さん。根拠地内部から宿舎への帰り道は少し複雑です。一緒に行って案内を頼めますか?」
「あ、はい!分かりました!」
咲夜に頼まれた夕が書類作業の手を止め、出口へと向かっていくヴィルヴァーラに続いた。
それを追いかけるようにして、朝陽も一礼の後、部屋を後にして行った。
残されたのは咲夜と飛鳥の二人。足音が遠ざかり、誰も居なくなったのを確認すると、飛鳥が口を開く。
「お兄ちゃんもそうだったけど、咲夜さんもここの人の前だと少し雰囲気違うよね〜。何というか…凛々しいって言うのかな??元々凛々しいんだけど、私の知ってる咲夜さんはおしとやかさの中に凛々しさがあるって言うか…」
「恐らく大和も同じような返事をしたかと思いますが、私はいま人の上に立つ立場です。以前のままではいけないのですよ」
「ふぅん…ボクとしては素の咲夜さんのままでもみんなついてきてくれてたと思うけどなぁ」
飛鳥は腕を頭の後ろで組みながら呟く。
咲夜は戻っていた事務の手を止めることなく、飛鳥の呟きに返す。
「私も…どうするべきかは迷っていました。ありのままの私で接するべきかどうか。ですが、司令官である大和があのお人好しですからね。私が規律を律する役割を果たさなくてはならないと考えたのです」
「…それって、咲夜さんが嫌われ者役になるってこと?」
「そうではありません」
飛鳥の声のトーンが僅かに低くなるが、咲夜はすぐさまそれを否定した。
「飛鳥も知っての通り、大和が来る前にここでは『グリッター』は非道な扱いをされてきました。世間が『グリッター』への差別意識を強めており、それが普遍となっていつつあることはともかくとして、『軍』でもそれが黙認されています」
「…差別に関しては、寧ろ『軍』の上層部が諸悪の根源だけどね」
飛鳥ポロッと零した一言に、咲夜は苦笑いを浮かべる。
「今の発言は聞かなかったことにしておきますよ、飛鳥。案の定、差別を長年受けてきた彼女達は、次第に心を閉ざしていきました。その閉ざされた心を開くために、大和はひたすら彼女達の心に呼びかけて来ました。賛同、否定、受容、拒絶…どんな形であれ、彼女達の本心を引き出すよう努めたのです」
「本心を引き出す」
書類の作業を終えた咲夜は、トントンと机で叩き、分厚い紙の束を整理した。
「結果的に、大和は彼女達から信頼を得ることに成功しました。大和は自分を受け入れてくれる、大和は本音をぶつけても大丈夫だ、と。実際それは間違っていませんし、彼ならば実直な悪態であっても素直に受け止めるでしょう」
「そだね。お兄ちゃんお人好しだからね」
「ですが、それだと勘違いをする人が出てきます。何をしても良い、何をいっても良いと。それでは組織は成り立ちませんし、大和も司令官という立場では無くなってしまいます」
再び別の紙の束の資料の作業に移った咲夜の言葉に、飛鳥は納得して頷いていた。
「そっか。だから咲夜さんは少し厳しい上官を演じてるんだね!!」
「別に演じているわけでは…まぁとにかくそうなりますね」
どこまでも愚直に自分を信じる飛鳥に、咲夜はどこか照れたような表情を浮かべるも、すぐに平静さを取り戻す。
『軍』の指揮官として着任したからには、私には規律を重んじる責務があります。そして、私には彼女達の上に立ち、指揮を執って命を守る責任があります。指揮官として、その使命を遂行するためには、時に厳しさが必要だと考え彼女達と接しているのです」
「成る程ねぇ…でも、やっぱり損な役割だよね」
「そうかもしれませんが、かと言って大和にやらせるわけにもいきません。と言うより、大和には出来ないでしょう」
「だね。お兄ちゃんあまり人に厳しく出来ないから」
二人はお人好しこの場にいない大和の話で笑い合う。
「それで、根拠地の見学はどうでしたか?」
「ボクは本部の方を見慣れてるから設備とかに関しては正直そんなに…けど、ヴィルヴァーラさんと同じく熱意とかに関しては感動したかな!!」
「そうですね。『グリッター』である彼女達だけでなく、技術班や訓練学校の方を差別の余波を受けていたそうですが、それでも腐らずに自分達の仕事を続けて来ました。彼女達の熱意なくしてこの根拠地は成り立たなかったでしょう」
飛鳥はやや興奮気味に続ける。
「それに皆んな人が良かったよ!こう言ったら悪いけど、本当にひどいことがあったのかなって疑っちゃうくらい!」
「それは、大和が何よりも力を入れて来たことですからね。飛鳥がそう思うということは、大和の取り組みが報われたということです」
「さっすがお兄ちゃん!!女性をたぶらかすことに関しては右に出るものはいないよね!!」
「誑かしているわけではないでしょうに…」
ため息まじりに咲夜が呟くと、飛鳥はニヤリと意地が悪そうに笑う。
「…なんですか?」
「良く言うよ咲夜さん。お兄ちゃんに真っ先に誑かされてちゃってる癖に〜」
「わ、私はた、誑かされてなんかいません!!」
咲夜にしては珍しく、頬を硬直させ大きな声で否定した。
「あっはははは!!ごめんごめん!!でも、ボクはやっぱり素の咲夜さんの方が好きだなぁ」
プリプリと怒る咲夜に、飛鳥は笑いながら謝罪をする。そしてゆっくりと立ち上がり、咲夜の方へと向かって行った。
「お兄ちゃんにも、咲夜さんにも立場はあるし、ボクももうその立場だけど、やっぱりずっと自分を閉じ込めてると疲れると思うんだよね。だからさ」
そして咲夜の前に立つと、ゆっくりとその手を取り、満面の笑みを浮かべてこう呟いた。
「ボクとか望生、お兄ちゃんの前では、思いっきり自分を出して良いからね!!皆、元の咲夜さんのことが大好きだから!!」
飛鳥の言葉に咲夜はしばらくポカンとしたあと、ゆっくりと嬉しそうに微笑み頷いた。
※後書きって実はいらないかな…?
ども、琥珀でございますm(__)m
更新時間てやっぱり大切ですね…前回の更新は都合上平均より少し早めの時間に更新したのですが、凄惨たるアクセス数でした…
まぁそれでも、私は自分の書いてる作品は満足は出来てないにせよ面白いとは思ってるので、今後も頑張ります!!
本日もお読みくださりありがとうございました!
次回の更新は金曜の朝8時ごろを予定しておりますので宜しくお願いします!!




