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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
5章 ー海外交流編ー
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第84星:執務室

咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。指揮官として司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)四等星

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。


ヴィルヴァーラ・スビルコフ (20) 二等星

ロシアスルーツク支部所属。海外派遣交流により日本の千葉根拠地にやってきたロシアの『グリッター』。当初より根拠地の『グリッター』をあしらうような姿勢を見せるが…?


国館 飛鳥(18)

実兄の背後に飛び込んだ大和の実妹。最高本部の『グリッター』であり、最高司令官である護里直属の戦士でもある。その正体は日本に8人しか存在しない、護里が指名した最高の『グリッター』の称号である最年少の『シュヴァリエ』である。


新島 夕(10)

大和と咲夜をサポートする報告官を務める。『グリッター』としてこ能力を秘めているが未だに開花には至らず。それでも、自分にできることを精一杯こなす純真無垢な少女。10歳とは思えない礼儀正さを兼ね備える。

 根拠地の施設を周りはじめて2時間が経ち、大分日が傾いていた。粗方散策を終えた朝陽達は、最後の案内場所へと向かっていた。



「ここが司令室兼執務室です。司令官や指揮官はこちらで仕事をこなされてて、私達が報告をする時もここに来るんですよ」

「そう…ここが…」



 心なしか、ヴィルヴァーラの表情が硬く見えたが、もともと起伏の少ない性格のため、特に朝陽が疑問を持つことは無かった。



「指揮官、いらっしゃるかな…お忙しい身なのでもしかしたら…」



 躊躇いつつも、朝陽はトントントンと丁寧にノックする。



『は〜い』



 すると中から返事が聞こえてくる。しかしそれは、咲夜のものではなく、もっと幼く元気な声であった。


 しばらくして中からドアが開かれる。


 そこに立っていたのはやはり咲夜ではなく、現在その補佐を任されている夕であった。



「あ、朝陽さん!ようこそいらっしゃいました!咲夜さんからお話は伺ってます!いま席を外されているので、中でお待ち下さい」



 夕は年相応の笑顔と、年齢に似つかない丁寧な所作で3人を中に招いき入れた。


 予め訪れることを予期していたのだろう。中には3人分の椅子が用意されていた。



「どうぞお掛けください!いまお茶をお持ちしますね!」

「あ、いや、それくらい私が…」



 という朝陽の言葉には聞く耳も持たず、夕はそそくさとお茶の準備を始めていた。


 その手慣れた手つきは日頃かから行っているのだろう、素早く無駄が無かった。


 一見すれば子どもが手伝っている微笑ましい光景にも思えるが、朝陽はこの行動が前指揮官の手によって叩き込まれたものであるという事実を知っていたため、複雑な心境であった。



「はい、どうぞ!」



 それでも前とは違うのは、その行動を笑顔で行なっていることであった。


 夕も朝陽の視線に気が付いたのだろう。ピンときた表情で、朝陽にだけ聞こえるように小声で話しかけてきた。



「私、今はこうやってお茶を用意するのが一つの楽しみなんです。咲夜指揮官も、大和司令官も、お二人とも笑顔でお礼を言って、必ず一言添えて下さるんです。だから、私はいま全然苦じゃないんですよ」



 そう言うと夕は朝陽から離れ、ニッコリと微笑んだ。


 それが、嘘ではなく本心から言っていると言う何よりの証拠であった。



「ではすいません。私はまだ仕事が残っているので事務に戻らせていただきます。何かお聞きしたいことがありましたら、何でも私に聞いてくださいね」



 最後の一礼も欠かさず、ペコリと頭を下げた夕は、執務室に用意された自分の机に戻り、仕事に戻っていった。


 しばし続く沈黙のなか、飛鳥が朝陽に耳打ちしてくる。



「ねぇねぇ、あの子っていつもあんなに丁寧で仕事熱心なの?」

「夕のこと?うん、そうだよ。自分にできることを一生懸命こなす良い子だよ」



 飛鳥は感心したように頷きながらも、その後に複雑そうな表情を浮かべていた。



「でも…まだあんなに幼い子どもがずっと仕事してるなんて…複雑だよね…」



 飛鳥の言葉に、朝陽は迷いつつも口を開いた。



「夕は、私が報告官を務める前の報告官だったんだけど、それは前指揮官が抜擢したの」

「へぇ〜。でも、ここの前指揮官って…」

「うん…あまり悪い風には言いたくないけど、色々と粗暴が目立つ方だった」



 朝陽は上手く丸い言葉で話しているが、実際はそんな言葉では収まらないような人物であることは飛鳥も知っていた。


 大和から届けられた報告書を読み上げたのは、他でもない飛鳥だからだ。



「でも、凄い仕事をこなしてるよね?見る目はあったってこと?」

「それは…夕にそういう才能があったのは確かかもしれないけど、前指揮官がそれを見抜いていたかと言われると、正直分からないかな。最初のうちは…その、少し強引に教え込まれたみたいだから」



 それは、報告官になってからの朝陽も同様であり、思い出すだけで身震いと冷や汗が出てくるほどであった。


 そのことを思い出させてしまったことを申し訳なく思いながらも、飛鳥の胸の奥で小さな怒りの炎が燃え出していた。



「話には聞いてたけど…ホントにサイテーな男だったんだね、塚間って人は」



 お人好しな朝陽も、飛鳥の言葉には愛想笑いを返すことしか出来なかった。



「でもそっか…じゃああの丁寧な言葉遣いや動きも、良いことではあるけど喜ばしい学び方をしたわけじゃないんだね…」

「元々丁寧な子ではあったんだよ?でもある時期からはそれが過度になり過ぎてることがあって…本当に、笑いもせず淡々と仕事をこなすようなときもあったんだ…」



 朝陽が報告官についたのは、その後からであった。


 当時まだ『グリット』に目覚めていなかった朝陽が報告官となったのは、自身の焦りからだけでなく、そういった理由も含まれていた。



「でも、司令官がこられてから全てが変わったんだ。『軍』や『グリッター』としての在り方はもちろん、本来あるべき自分を取り戻せた感じがするの。さっき夕が見せてくれた笑顔みたいにね」

「…そっか」



 嬉しそうに微笑む朝陽に釣られ、飛鳥も嬉しそうに微笑んだ。


 兄である大和が力に慣れていたことも勿論嬉しいが、友人である朝陽がそういう笑顔を取り戻せたことが、何よりも嬉しかった。


 二人が互いに笑みを浮かべているなか、ヴィルヴァーラは一人厳しい目つきで辺りを見回していた。


 当然視線を気取られるような失態は犯さない。最速・最小限の動きで室内全てを見渡していく。



「(カメラは無い…入口は比較的レトロね。入ること自体は難しくないけれど… )」



 視線は夕と、司令官ようの机に向けられる。



「(デスクなどには電子の施錠がある…あれを解除するのは手間ね…)」



 直ぐに視線は外され、どこを見ているのか分からなくなる。しかし、頭はフル回転を続けていた。



「(痕跡を残さず、且つ人に見つからず、()()()()()()…)」



 表情を崩さないように努めていたが、僅かにその目が細められる。



「(難しいわね…少なくとも直ぐに決行するのは厳しい…もう少し策を練らないと…)」



 次いでヴィルヴァーラは、仕事を続ける夕の方を見る。


 まだ十一と幼い年齢ながら、夕は黙々と書類に目を通し、仕事に取り掛かっていた。


 そんな幼い子がやるべき内容では無いことに取り組んでいることに、ヴィルヴァーラは僅かに憐憫の眼差しを向けながらも、その行動に注視する。


 夕は一枚の書類を掲げ、「う〜ん?」と首を傾げた後、一枚のカードを胸ポケットから取り出し、机の棚にかざした。


 すると、ピッ!という音ともに施錠が外れ、棚の一つが開かれていった。



「(成る程…あんなに幼い子供にこんな仕事をさせるなんてどうかしてると思ったけど…今は役に立ったわね)」



 そう言うと、ヴィルヴァーラは僅かに『グリット』を発動させる。それがどこに作用したのか分からないまま、夕は棚を閉じる。



「(タネは撒いた…あとは仕掛けるだけ。それならわざわざ待つこともない…)」



 ヴィルヴァーラは視線を夕から外し、再びどこを見るでもなく、ゆっくりと目を閉じる。



「(恐らくあの子が持っていたのは、この執務室内のマスターキー。理想を言えばそれを手に入れることだけど、難しい上に履歴に残りかねない。手に入れば考慮はするけれど、リスクを犯してまで手に入れるものではないわね)」



 いくつかの布石を打っておきながら、ヴィルヴァーラは更にいくつかの代替案を練り始めていた。


 思考を止めることなく、ヴィルヴァーラは更に次のプランを考えようとするが…



「(あぁ…自分の行いに吐き気がするわ。どうして私はこんなことに手を染めているのかしら…)」



 自分が悪事に手を染めていることに、そしてそれを遂行するための戦略を次々と立てていることに、苛立ちと不快感を感じ始めていた。



「(私のこれまでの戦いと経験は、こんなことをするために培ってきたものなの?)」



 閉じていたまぶたを開き、ヴィルヴァーラは自分の手を見つめる。


 その手は硬く握りしめられ、怒りを現しているようであった。



「(それでも、私は…やり遂げなくては…そうでなくては…私は…)」



 迷いが最高潮に達した時であった。ガチャリ、という音とともに、入口から一人の人物が入室する。



「大変お待たせいたしました」



 そこに居たのは当然、指揮官である咲夜であった。


※後書きというか告知?






ども、琥珀でございます


実はストックに余裕ができたため、以前から構想を立てていた新作を再び書き始めています。


とは言ってもまだ全然ストックが出来てないないので、投稿するのははやくて4月くらいかも?


現在書いている『Eclat Etoile』とは色々違う作品なので、混乱してしまうのですよ…笑


ただ、やはり読んでいただきたい気持ちがあるので、頑張って書いていきます!


本日もお読みくださり有り難うございます!

今週も週三更新ですので、次回は水曜日に更新します!!

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