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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
5章 ー海外交流編ー
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第83星:過去

咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。指揮官として司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)四等星

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。


ヴィルヴァーラ・スビルコフ (20) 二等星

ロシアスルーツク支部所属。海外派遣交流により日本の千葉根拠地にやってきたロシアの『グリッター』。当初より根拠地の『グリッター』をあしらうような姿勢を見せるが…?


国館 飛鳥(18)

実兄の背後に飛び込んだ大和の実妹。最高本部の『グリッター』であり、最高司令官である護里直属の戦士でもある。その正体は日本に8人しか存在しない、護里が指名した最高の『グリッター』の称号である最年少の『シュヴァリエ』である。


早乙女 護進(28)

派遣交流の監査役として千葉根拠地にやってきた(というか連行)非戦闘員・専門指揮官。『軍』最高司令官である早乙女 護里の息女であるが、品行は非常に悪い。大和達と面識があり、戦術面における師であるとのことだが…?


市原 沙雪(28) 女医

千葉根拠地所属の女医。がさつでめんどくさがり屋な性格で、患者が来ることを嫌がる。外科だけでなく内科、精神科にも通じている。適当に見えるが、誰よりも命に対し真摯で、その医療技術も高い。

「うー頭(いた)…二日も経ってないのに二日酔いってか…わらえねぇ…」



 夕刻前。護進は顔を赤くし、酒気を帯びたおぼつかない足取りで、どこかへ向かっていた。



「ちっ…無駄に広いんだよなここは…やっとこさついたぜ…」



 護進の視線の先は、『医務室』とかかれた部屋であった。


 ノックもせず、不躾に部屋に入った護進は、挨拶をするでもなく、ぶっきらぼうに中の医師に話しかけた。



「お〜い薬くれ薬」

「バカにつける薬なんてなんてないわよ」



 が、護進に返されたのは、酷く辛辣な言葉であった。



「あぁ!?お前それでも医者…………」



 思わず怒鳴るようにして叫んだ護進の言葉が、突然止まる。


 椅子に座る医師を目にした護進の表情は、目を見開いて驚いていた。



「おま、え…沙雪か?」

「相変わらずバカをやってんのね護進。まぁ親友の顔くらいは覚えてるくらいにはまともみたいね」



 驚きを露わにする護進に対し、沙雪は目もくれず背もたれに背をかけて椅子に座っている。



「お前、どうしてここに……いや、そうか…()()()()()()…」



 直ぐに何かに気が付いた様子の護進は、空笑いのような笑みを浮かべる。



「そういうアンタこそどうしてここに来てんのよ。アンタはもう()()()()()()()()()()()()()()()



 ようやく護進に向けられた視線は、冷たく軽蔑的な眼差しであった。



「…そういうお前は何なんだよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、白装束を纏ってるのを見ると反吐がでるぜ」



 ピリッ…と、医務室内の空気が張り詰める。一触即発の雰囲気となっていた空気を、明るい話し声が払拭していった。



「沙雪先生こんにちは!!今日は施設案内で…って、あれ?」



 飛鳥との会話で気分が高揚していたのか、朝陽は元気な声で入室する。


 しかし、中に沙雪以外の人物がいることに気が付き、首を傾げる。


 すっかり場の雰囲気が一転し、沙雪、護進ともにため息を吐くが、沙雪の目は別の意味で怒気を孕んでいた。



「朝陽、施設案内だかなんだか知らないけどね、医務室ってのは騒いで入ってくるところじゃないのよ。万が一処置中だったらどうすんのよ」

「あ…ごめんなさい…」



 朝陽は言い訳することなく頭を下げる。後ろの二人も申し訳なさから口を閉じる中、護進は驚いた表情を浮かべていた。


 沙雪は僅かに視線を向けたあと、直ぐに朝陽達に戻す。



「悪いけどいま処置中よ。バカで間抜けなアル中のね」

「テメッ…!?」

「みたい…ですね。また時間を改めて伺わせていただきます」

「そもそも案内なんてされても困るしめんどくさい…って言いたいところだけど、そこの小娘()()には縁があるしね。あとで少しだけ相手してあげるわ」



 沙雪のいつもとは違う反応に、朝陽は僅かに驚きながらも、丁寧に一礼をして部屋をあとにした。


 ヴィルヴァーラも次いで頭を下げて部屋を出、飛鳥は見知った顔に手を振りながらその後に続いた。


 ドアが閉められ、誰もいなくなったことを確認すると、沙雪は口を確認しながら笑みを浮かべた。



「フフッ、成る程そういうことね。なんで貴方がここに来たのか不思議でしょうがなかったけど、納得したわ。飛鳥(あの子)に連れてこられたってわけか」



 どこか品と妖艶さを兼ね備えた笑い声を上げながら笑う沙雪に対し、護進は特に反応することは無かった。



「…なによ。急に大人しくなって。もしかして飛鳥が苦手なの?」

「そうじゃねぇよ。…そうじゃねぇけどよ…」

「ハッキリしない奴ね。何が言いたいのかハッキリ言いなさいよ」



 口籠って何も言わない護進にイライラした様子で、沙雪が話しを催促する。



「…お前…なんだかんだでまだ医者なんだな…」

「…は?」



 護進の言葉に、沙雪は心底嫌そうな表情を浮かべた。



「あのガキ達が入ってきたときのお前の言葉、医者そものものだったぞ。それも半分無意識に怒って言ってただろ。なんだかんだ言ってお前はやっぱり医者…」

「やめなさい」



 それは大きな声ではなく、小さく、しかしハッキリとした怒気を孕んだ静止の声であった。



「私は確かに医者よ。けれど、あなたが思い描いているようなかつての医者じゃない。…本来なら私はもう、ここにいるような人間じゃないのよ」



 キィ、とイスを回転させ、沙雪は机に目を向ける。それは護進を拒絶するような様子でもあった。



「…じゃあ…なんでいるんだよ」



 しかし、護進は引かなかった。



「『グリッター』と違って、『軍』医の退役条件は対して厳しくない。辞めようと思えばいつでも辞められた筈だ。だがお前は今も『軍』に居座ってる。何でだ」

「…それは」

「それは、お前がまだ医者だからだろ?かつてのお前じゃなかろうとなんだろうと、ここにいるのは医者であるお前のはずだ。本当はお前…」

「貴方に私の何が分かるっていうのよ!!」



 核心をつく言葉を護進が口にしようとした瞬間、沙雪がそれを遮った。



「確かに私は過去を引きずってる!!救えなかった命が、目の前で救いを求める大勢の人の声が、今も夜になっては聞こえてくる!!握った手の感触も、手にまとわりつく血の色も臭いも…いまもハッキリと思い出せるわ」



 沙雪は震える自分の手を見つめ、怒気から悲しみへとその声色を変える。



「私は救えなかった…救える力があった筈なのに…私はその多くの命を見殺しにした…」



 ギリリ…という歯軋りの音ともに、沙雪の全身から力が抜けていく。次いで、先程までとは比べ物にならない程の怒りの目付きで護進を睨んだ。



「貴方はどうなのよ、元『()()()()()()』の戦士長さん」

「…ッ!」



 沙雪の言葉に、護進は明確な拒絶的反応を見せる。



「当時、まだ3人しか存在してなかった『シュヴァリエ』に、貴方は4人目として選ばれた。『()()()()()()()()()()()()()()()快挙が成し遂げられた」

「…めろ…」

「誰もが祝福し、喜んだわ。当時の貴方はそれに値する戦果と才能があった。圧倒的な勝率を誇る戦略家としてね」

「…やめろ」

「けれど、『シュヴァリエ』としての初陣。貴方は失態を犯した。戦略を全て看破され、従えた100人の部下を死なせた、大失態をね。そして貴方は母である護里さんにその称号を返還し、逃げるようにして…」

「やめてくれ!!」



 立場は逆転し、今度は護進が沙雪の言葉に激昂した。しかし、その全身は震え、顔は蒼白となり、怒りではなく恐怖による叫び声であった。


 先にトラウマを抉られた側であったとはいえ、その反応を見て沙雪も大人気ないと思ったのか、ため息を吐き、両手で顔を覆い隠した。



「…分かったでしょ護進。私と貴方は同じ穴の狢なのよ…貴方は名誉と部下を失い、私は信頼と誇りを失った…」

「………あぁ、そうだな…」



 空気は一転し、室内は重苦しい雰囲気となっていた。


 護進はゆっくりと立ち上がり、沙雪の方を見ることもなく、無言で出口へと向かっていった。


 ドアを開け、外へ出ようとしたとき、ゆっくりと口を開いた。



「あの日…私は部下を死なせた…けれど、その命を救えなかったことを…お前のせいだと思ったことなんて、一度もねぇぞ、沙雪…」



 その言葉を聞き、沙雪は驚きの表情とともに立ち上がるが、その時には既に護進はドアを閉めたあとであった。


 返す言葉を聞く者が居なくなった部屋の中で、沙雪は悲痛な面持ちを浮かべたあと、強く机を叩いた。






●●●





 そのやり取りを、咲夜は医務室近くの物陰で聞いていた。


 最初から聞くつもりで訪れたわけではない。純粋に沙雪に用事があり、立ち寄ったところ、この会話が行われていたのだ。



「(護進さんと…沙雪さんが変わってしまったときの話…当時護進さんの訓練生としてついていた大和から話を聞いてはいましたが、想像以上にその心の傷は大きいようですね)」



 戦争状態にある現代において、心にトラウマを抱える人は少なくない。大抵そういったものは、自責の念から『軍』を退役する。



「(ですが、お二人はまだ『軍』に残っている…ということは、まだ立ち上がることができる筈です…どうか…このお二人の再会が、少しでもそのきっかけとなるように…)」



 咲夜はそう願いながら、手に持っていた資料とともにその場を去っていった。

※少しあったかくなってきました?





ども、琥珀です!

心なしか、暖かいと思う日が出てきしたね


私は朝6時出勤の日がありますが、日が昇るのも早くなってきたように思います


ですが、気温が上がると雨も降りやすくなりますよね…

私はあんまり雨は好きでない今日この頃です…笑


本日もお読みくださりありがとうございました!

次回の更新は月曜日、来週も週三更新しますので宜しくお願いします!!

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