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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
5章 ー海外交流編ー
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第82星:技術班

咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。指揮官として司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)四等星

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。


ヴィルヴァーラ・スビルコフ (20) 二等星

ロシアスルーツク支部所属。海外派遣交流により日本の千葉根拠地にやってきたロシアの『グリッター』。当初より根拠地の『グリッター』をあしらうような姿勢を見せるが…?


国館 飛鳥(18)

実兄の背後に飛び込んだ大和の実妹。最高本部の『グリッター』であり、最高司令官である護里直属の戦士でもある。その正体は日本に8人しか存在しない、護里が指名した最高の『グリッター』の称号である最年少の『シュヴァリエ』である。


早乙女 護進(28)

派遣交流の監査役として千葉根拠地にやってきた(というか連行)非戦闘員・専門指揮官。『軍』最高司令官である早乙女 護里の息女であるが、品行は非常に悪い。大和達と面識があり、戦術面における師であるとのことだが…?


日下部 リナ(24)

千葉根拠地の技術班班長を務める女性。開発よりも改善・改造を好み、バトル・マシナリーを『グリッター』のために改造している。技術力は確かなもので信頼も厚い。職人としては大人しい性格だが、意見はハッキリと伝える強さも備えている。

「じゃあ外回りから案内していきますね!!まずは、ここ、千葉根拠地が誇る技術班の施設です!!」



 まずは、というには重要すぎる施設にも思えるが、飛鳥とヴィルヴァーラの二人は特に気にかけるようなことは無かった。



「へぇ〜!!どうしても最高本部と比べちゃうけど、想像以上に凄いかも!!」



 普通なら嫌味に聞こえがちな発言だが、飛鳥の性格を知ってる者からすると、不思議とそれが嫌味には聞こえなくなる。



「ここを案内するのは私よりも、え〜と…あ、いた!!おーい!!日下部さぁん!!」



 朝陽が大きな声で人物の名前を呼ぶと、大きな作業音が響きながらも、その声を聞き取った日下部 リナが近寄ってくる。



「誰かと思えば朝陽ちゃんじゃない。それと…交流配属されたヴィルヴァーラさんだよね?私は技術班班長の日下部リナよ。宜しく」

Очень(はじめ)приятно(まして)、ヴィルヴァーラ・スビルコフよ」



 簡単な挨拶と握手を交わす。次いでリナは、その隣の人物、飛鳥を見る。



「こちらは…初めましてだけど、交流配属の方では無いよね?」

「初めまして!!最高本部から派遣されました、国舘飛鳥です!!好きなのは運動とお兄ちゃん!!宜しくお願いします!!」

「あぁはぁどうも…って、ん?国舘…?」



 勢いに気圧されながらも、リナは飛鳥とも握手を交わし、挨拶をする。



「あ、えと、飛鳥ちゃんは司令官の妹さんなんです」

「あぁ妹……えぇ!?妹さん!?」

「妹さん!!V」



 飛鳥はニカっと笑顔を作り、リナの前でピースポーズをだす。



「それは…大変失礼な挨拶をしてしまいまして…」

「あ、いいんですいいんです!!ボクは別にお兄ちゃんを使って偉ぶりたいとかないんで!!ただ、お兄ちゃんを尊敬してて…」

「…あー成る程…好きなのにお兄ちゃんって言ってましたもんね」



 直ぐに飛鳥の性格を見抜いたのか、リナから早くも緊張が解けていた。



「司令官さん、凄い人だもんね。そりゃ妹さんでも憧れちゃうよ」

「でしょでしょ!!お兄ちゃんやっぱすごいなぁ!!いろんな人に慕われてるんだもんなぁ!!」



 これほど身内贔屓のような話を聞いても鼻につかないのは、飛鳥の真っ直ぐな性格もあるだろうが、それ以上に大和本人を知っていることがでかかった。


 逆を言えば、大和のことを知らないヴィルヴァーラからすれば、ただただ身内自慢を聞いているだけで不快に思ってもおかしく無いはずであるが、不思議とそういう感覚は無かった。


 ここにきてから、司令官である大和の悪い話を一度も耳にしなかったからだろう。それよりも驚いたのは、やはり飛鳥のことであった。



「(只者では無いと思っていたけど、まさか司令官の妹とはね。アスカは相当の実力者のようだけど、ということは兄である司令官ヤマトも相応の実力者ということになるのかしら…いえ、血縁者であろうと、必ずしもそうとは限らないはず…)」

「あ〜また怖い顔してる!!笑え笑え〜!!」



 気が付けば、ヴィルヴァーラはまたしても頬を掴まれ無理やり笑顔を作らされていた。


 最早驚きよりも呆れが勝ったヴィルヴァーラは、ゆっくりとその手を退けた。



「ほんで朝陽ちゃん。ここにきた用事は?」

「ヴィルヴァーラさんのお願いで、根拠地内部の施設見学をしてるんです!指揮官からの許可もいただいてます!」



 するとリナは驚いた表情を浮かべる。



「へぇ、ちょっと驚き。『グリッター』のデータとかはともかく、こういった技術的なことは普通他根拠地にすら見せないことがあるのに…」



 言ってすぐに、リナは自分が失言してしまったことに気が付く。



「あ…ごめんヴィルヴァーラさん。別に他国を…ロシアを信用してないとかじゃ無いんだよ…」



 気を損ねかね無い発言であったが、ヴィルヴァーラはこれにも気を害すことは無かった。



Нормально(大丈夫よ)。自国の戦力をわざわざ開示するような真似はしないのが普通だもの。それが、いざという時に身を守る『技術』面であるのなら尚更ね」



 それどころか、ヴィルヴァーラはリナの発言に理解を示していた。その言葉に、リナは胸を撫で下ろす。



「それでも…こうして見るとどうしても興味を持ってしまうわ…リナ、今日はそう言った『技術』の面、見せてくれるのでしょう?」

「指揮官が良いって言うなら断る理由は何も無いわね!日本の匠の業、見せてあげるから!!」



 リナの言葉に、ヴィルヴァーラは嘘偽りなく、好奇心をそそられる、純粋な笑みを浮かべ頷いた。






●●●






「技術班の仕事は、基本的に『整備・改造・開発』の3つに分けられるのよね。どれも技術職の仕事っぽいでしょう?」

「そうね。けれど、戦闘補具(バトル・マシナリー)の整備なら『朝陽達(グリッター)』もできるのでは無いの?『軍』共通の会得技術の一つだったと思うけど」



 ヴィルヴァーラの答えに、リナはその通りだと頷く。



「勿論、朝陽ちゃん達も整備は出来るよ。実際、私達のところに持ってくるのは最終点検と故障した時くらいの時くらいだからね」

「それなのに、技術班の仕事の一つに『整備』が入るのね」

「だって、万全の状態で送り届けたいじゃん」



 ピリッ…と、リナは技術者としての強い圧を無意識に放っていた。



「私達は戦場には立てない。この仕事に命をかけてるとはいえ、実際の戦場に立ってる朝陽ちゃん達との意味合いはまるで違う。だからこそ、彼女達の生存率を…命を、少しでも上げられるように、戦闘補具(バトル・マシナリー)が足を引っ張ることのないように、私達技術班は、常に最高の状態を維持できるようにしておくんだ」



 ヴィルヴァーラは僅かに怯んだ。


 その強い覚悟は、類は違えど『グリッター』のソレに勝るとも劣らず強いものであったからだ。



「(ニホンが最高戦力と言われているのは、実力だけでは無いと教わったのがようやく納得出来たわ。戦場に立たないинженер(エンジニア)でさえもが、これだけの覚悟を持って挑んでいる…強いわけよね)」



 次いでヴィルヴァーラは、リナに目を向け、僅かに首を横に振った。



「(でさえ…なんて、失礼な考えね。彼女達は技師であり、同時に戦士でもある。下に見るなど間違った考えだわ)」



 視線をリナから移し、近くに置いてあった補具を映す。



「手にとっても?」

「どうぞ。でも整備が終わったモノなのでボタンは押さないように気をつけてくださいね」



 了承を得ると、ヴィルヴァーラは常備しているのであろう手袋を取り出し、丁寧につけてから置いてあった補具を手に取った。



「(キレイ…それでいて丁寧だわ。本来の使用者がいるでしょうけど、きっと別の人が使っても違和感は無いはず…)」



 そう思ったのは、ヴィルヴァーラ自身が持った時の感想だからだ。


 ヴィルヴァーラが手に取ったのは、三咲専用にカスタマイズされた、ロングレンジ対応の『輝線銃(グリット・ガン)』であった。


 通常よりも銃身が長く作られており、グリップもその衝撃に耐えて握れるよう小柄且つ長く設計されていた。


 それでも、ヴィルヴァーラですら違和感を感じないと言うことは、ここの技術班の職人は、三咲に合うようにもカスタマイズしつつ、いざと言う時には全員が扱えるように調整したということだろう。



「(技術の面も熱意も、ニホンには完敗ね。ロシアの技術班に同じものを作らせたらこうはいかない。威力とか多機能の充実性なら勝ってるかもしれないけど…)」



 ヴィルヴァーラが述べた後者の利点は、しかし日本には不必要な技術だろう。


 日本は多種多様な『グリッター』がいるが故に戦闘で扱う『戦闘補具(バトル・マシナリー)』に関してはシンプルな機能でほとんど統一されている。


 これにより互いの武器を扱えるようになる利点があるため、寧ろ複雑な機能や一定の個人のみが扱えるような高威力のものはデメリットしか及ぼさない。


 どちらか優れているかではなく、一長一短、国の特性に合わせた変化と言えるだろう。



「(でも、それだけじゃない。武器の一つ一つから、技術者の真っ直ぐな想いが伝わってくる)」



 キレイな輝きと、細部まで拘られた点検跡が、それを物語っていた。



「(私は…こんな真っ直ぐで純粋な国で…手を染めようとしているのね…)」

「ヴィルヴァーラ…さん?」



 余程強張った表情をしていたのだろう。朝陽が心配そうに顔を覗き込んできた。


 直ぐに我に帰ったヴィルヴァーラは、武器を置き、大丈夫であると朝陽に伝えた。



「ありがとう、リナ。良い勉強になるわ」

「い〜え、このくらい。指揮官の許可も貰ってるし、もっと技術的なことを聞きたかったらいつでも足を運んでね。さぁまだまだ行くよ!見せたいものはたくさんあるからね!」

「…ええ、楽しみだわ」



 そう言うと、ヴィルヴァーラはゆっくりリナの後を追っていく。


 ちなみに、真っ先にヴィルヴァーラの変化に気付きそうな飛鳥は、勝手に道具をいじって怒られていた。


※後書き本日はお休みです!

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― 新着の感想 ―
[一言] 多機能も良いと思ったのですが、ロシアだからですね。 日本はその部分がグリッター自身。 こうやって戦略面とか考え琥珀さんの話を読むと、まだまだ自分の視野の狭さを思い知らされます。 私が司令…
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