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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
5章 ー海外交流編ー
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第81星:施設見学

咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。指揮官として司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)四等星

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。


ヴィルヴァーラ・スビルコフ (20) 二等星

ロシアスルーツク支部所属。海外派遣交流により日本の千葉根拠地にやってきたロシアの『グリッター』。当初より根拠地の『グリッター』をあしらうような姿勢を見せるが…?


国館 飛鳥(18)

実兄の背後に飛び込んだ大和の実妹。最高本部の『グリッター』であり、最高司令官である護里直属の戦士でもある。その正体は日本に8人しか存在しない、護里が指名した最高の『グリッター』の称号である最年少の『シュヴァリエ』である。


早乙女 護進(28)

派遣交流の監査役として千葉根拠地にやってきた(というか連行)非戦闘員・専門指揮官。『軍』最高司令官である早乙女 護里の息女であるが、品行は非常に悪い。大和達と面識があり、戦術面における師であるとのことだが…?

「はぁ〜つまんねぇ…やることもすることもねぇなぁここは…」



 根拠地執務室。その室内で、護進は司令官用に用意された回転式のイスに座りグルグルと回りながら呟いた。



「やることもすることもありますよ、護進さん。私がいまやっている事務や報告書は、本来司令官代理である護進さんが行うものなのですが?」

「だから司令官代理なんて受けてねぇっての。勝手に決められて勝手に連れてこられただけだ」



 イスの回転を止めることなく、護進は不貞腐れた様子で答えた。



「ですから、根拠地を一緒に回って来られたら如何ですか、と聞いたではありませんか」

「ガキのお守りなんてゴメンだ。回るなら私は一人で回るね。どんな小さなことでも司令官代理なんて絶対やらねぇよ」



 ああ言えばこう言うような、どちらが子供なのか分からないやりとりを繰り返しているなかで、咲夜は一瞬だけ護進に目を向けた。



「その割には…キチンと執務室にいらっしゃるんですね」



 咲夜は作業の手を止めず、視線を護進から書類に戻して続けた。



「……」



 その問いに、護進はイスの回転をピタッと止め、咲夜に背を向けた。



「なんだかんだと仰られながらも、キチンと司令官代理の責務を果たして下さっているようですね」

「…違ぇよ。他に居場所がねぇからここにいるんだ」



 咲夜は「そうですか」と視線を資料に向け、微笑みながら呟いた。


 何かを悟られたようで不快に感じたのか、護進はチッと舌打ちをすると、辺りを見渡し始める。



「何をお探しですか?」

「酒だよ酒。こんな何もないところで酒を飲まずにやってられるか」

「お酒がこんなところにいるあるわけ無いじゃないですか。飲むのであれば食堂へ行ってください」



 ため息を吐きながら答える咲夜に、護進は意外そうな目を向けていた。



「…止めねぇのか?」

「止めたら仕事をしてくださるのですか?」



 その返しに再び苛立ちを覚えたのか、護進は何も答えることなく部屋を後にした。



「ふぅ…」



 誰も居なくなった部屋の中で、咲夜はもう一度ため息を溢す。



「今の彼女にどんな言葉を投げかけても、むしろ反感を買うだけでしょう。お酒を飲むのも、恐らく()()()()から目を背けるためなのでしょうね…ならば、それは、護進さん自身が乗り越えなくてはならないこと」



 部屋をあとにし、閉められたドアの方を見つめながら、咲夜は心の中で願う。



「ここでの3週間が、少しでも護進さんの心の傷を癒してくれると良いのですが…」






●●●






「粗方見回ったし、根拠地の案内は多分これで全部かなぁ」

「あー楽しかったぁ!!」



 時刻は既に夕刻前となっており、太陽は少しずつ沈み始めていた。ヴィルヴァーラは自分のものであろう懐中時計を取り出し、時間を確認する。



「まだ時間はあるわね…アサヒ、良ければ根拠地の施設内も案内してくれるかしら?宿舎には通っているけど、根拠地施設は足を運んだことがないの」



 まさか自分から進んで案内の続きを頼んでくるとは思わなかった朝陽は、驚きながらも頷く。



「それは…私は勿論良いんですけど、根拠地内部の案内については許可が必要なので、指揮官に確認をとってみますね」

Спасибо(ありがとう)、アサヒ」



 そう言うと朝陽は二人から離れ、手元の小型の端末で咲夜と連絡を取り合っていた。



「驚いた。ヴィルヴァーラさんって、こういうのにはあまり興味を持たないって思ってたよ」



 二人きりになったことで、飛鳥がヴィルヴァーラに話しかける。ヴィルヴァーラは飛鳥を一瞥し、次いで上から下まで観察する。



「?」



 普通の人なら嫌がりそうな行為であるが、飛鳥は気にも止めず首を傾げるだけであった。



「まぁ正直興味はないわ。内部の施設といっても、それほど先駆的なものがあるわけでもないでしょうしね」

「え?じゃあどうして…」

「寧ろ、私としては貴方の方に興味が唆られるわ」

「え?ボク?」



 思いもよらない答えに、飛鳥はキョトンとした様子で答える。



「貴方、一体何者?あまりにも洗練されてたから今のいままで気付かなかったけど、相当の猛者よね?私、これでも結構腕には自身があるのだけれど、正直真っ向勝負で貴方に勝てる気がしないわ。こんなこと、ロシアでは一度しか感じたことが無いのに、ここに来てからはもう二度目よ」

「二度目って…あぁ咲夜さんか!!分かる分かる〜咲夜さんは半端ないよねぇ〜。それでいて瀟洒なんだから凄いよねぇ」



 シリアスな雰囲気を纏うヴィルヴァーラに対し、飛鳥は変わらず明るいままであった。


 話をはぐらかそうとしているのではなく、これが地の性格であることを察したヴィルヴァーラも、纏っていた雰囲気を収める。



「(想像以上ね日本という国は…このままアサヒに案内をさせて()()()()()()つもりでいたけど…)」



 チラリと、ヴィルヴァーラは飛鳥を見る。



「(そんなに甘くはなさそうね。飛鳥(この子)は欺けても、咲夜(彼女)を出し抜くのは恐らく不可能…仮に出し抜けても、正直無事に帰れる気がしないわ)」

「ヴィルヴァーラさん怖い顔してる〜。せっかく美人さんなんだから、ほら笑って笑ってウヘヘヘヘ〜」



 いつの間に近づかれていたのか、飛鳥はヴィルヴァーラの前に立つと、頬を掴み無理やり笑顔を作る。



「…いふぁいわ(痛いわ)やめふぇひょーらい(止めてちょうだい)



 どれだけ平静を装えただろうか。


 気配も全く気取ることが出来なかったヴィルヴァーラの内心は、強く動揺していた。



「あはは!!ごめんごめん!!」



 飛鳥は直ぐに手を離す。どうやら本当にただ笑顔を作りたかっただけのようであった。


 ヴィルヴァーラも何事も無かったかのように振る舞うが、表面上だけであった。



「(早いなんてものじゃない…考え事をしていたとは言えこんなに容易く…やはり、ニホンが世界最大戦力保有国という話はホントのようね…)」



 と、そこへ、連絡を終えた朝陽が二人の元へと戻ってきた。



「お待たせしました!!咲夜指揮官の許可がいただけたので、根拠地の施設を案内しますね!!」

「…えぇ、お願いするわ」



 出来うる限り平静を装い、ヴィルヴァーラは朝陽の言葉に答えた。






●●●






「ふむ…」



 咲夜は小型の通信機を机に置き、考えを巡らせる。



「(根拠地内施設の見学…通常であれば単なる好奇心からだと考えられるのですが…)」



 キィ…と背もたれ付きの椅子を音立てながら、咲夜は窓の外を見る。



「(恐らく今回は明確な目的をもっての行動と考えられますね。言ってしまえば敵情視察でしょう。本来であれば介入して止めるべきだと思いますが…)」



 咲夜は根拠地を離れる前に告げられた大和の言葉を思い出す。



『今回の交流の件、基本的に好きなようにさせて大丈夫だから』

「(この言葉をどこまで広義的に解釈するかで意味合いはことなりますが…まだ()()()()()()()()()()()()()()())」



 ヴィルヴァーラが何かを隠していることは、咲夜は既に気が付いていた。それも、恐らく日本にとって不利になりかねない、スパイのような目的を持っていることも察していた。


 そこまで気付いていながら、何の行動にも移さないのには、大和の言葉以外にも理由があった。



「(彼女からは…敵意のようなものを感じない。恐らく今回の交流も、そしてこれから取るであろう何かしらの行動も、全て彼女の本意によるものではない…だとすれば、寧ろ泳がしておく方が利になるかもしれない)」



 現在、世界各国では、共通の敵であるメナス殲滅という共通認識のもと、協力関係を結べている。


 しかし、それは危うく、直ぐに崩れてしまうような協力関係であった。


 それが故に、今回のような行動に移ってきたのであろう。国レベルで優位に立つことが出来れば、いざという時に自国を守るための駒となり得るからだ。


 さらに言えば、日本は『軍』としての力は他国よりも頭ひとつ抜けている。


 そんな国から有益な情報を得ることが出来れば、自国の強化にも繋がるだろう。


 当然、そのような行為が明るみに出れば、行動に移した国は顰蹙を買うだろう。


 そんなリスクを背負ってまで、ロシアは日本に踏み入ってきていた。



「(ロシアの皇帝陛下は寡黙ながら聡明な方と聞き及んでいましたが…さて、この行動は果たして皇帝陛下によるものなのでしょうか…)」



 咲夜はしばらく考え続けたが、やがて諦めたようにため息をついた。



「いけませんね…どうも疑り深くなってしまって」



 自分の思考が疑う事を前提としていることに嫌気が差したのか、その表情は暗かった。



「どうか…私の考えが的外れでありますように…」



 咲夜は静かに祈りながら、事務へと戻っていった。

※後書きっていってもなぁ…あ、今週も週3更新します






ども、琥珀です。

私の創造は、音楽(主としてサントラ)と散歩から生まれます。

歩きながら音楽を聴いてると、色々な場面を想像できて、それを物語に組み込むことが多いです。


ただ戦闘場面ばかりに比重が置かれてしまうので、それ以外のところになると詰まってしまうことが多いですね…


もう少し日常パートを面白く書けると良いのですが…


本日もお読みくださりありがとうございます!!

次回の更新は水曜日を予定しておりますので宜しくお願いします!

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