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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
5章 ー海外交流編ー
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第77星:永久凍土

斑鳩 朝陽(18)四等星

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。


ヴィルヴァーラ・スビルコフ (20) 二等星

ロシアスルーツク支部所属。海外派遣交流により日本の千葉根拠地にやってきたロシアの『グリッター』。当初より根拠地の『グリッター』をあしらうような姿勢を見せるが…?


【朝陽小隊】

譲羽 梓月(23) 四等星

 冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。


久留 華 (22)四等星

 おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。


曲山 奏(20)四等星

 明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。

「朝陽小隊並びにヴィルヴァーラ二等星、メナスに接近中。コンタクトまで残り5分」

「数は3…直近の出来事を考えれば、油断は出来ませんが、レーダーに映ることを踏まえると、どうやら先日のメナスとは違うようですね」



 根拠地では大和の代わりに咲夜がその位置に立ち、これまで咲夜と二人で担っていた役割を、夕が一人で行っていた。



「周囲を警戒しつつ、メナスの動向を監視してください。念のため、次点巡回の椿小隊にも連絡を」

「は、はい!!」



 いきなり仕事量が二倍となったことで、夕の手つきはぎこちないものであったが、それでも一つ一つ丁寧にこなしていった。


 慣れないのは咲夜も同じであるため、あまり急かさない程度に、夕に指示を出していく。



「代わりの司令官が来られる前に、決着をつけておきたいところですね」



 現在の時刻は午後の2時ごろ。大和の言う代理の司令官の到着は、午後の4時ごろとされている。


 メナスの数は朝陽達より少なく、実戦経験を積み成長したいる朝陽達であれば、問題なく終わらせられる事案である。


 警戒はしつつも、司令官としては初陣である咲夜は、どこか心に余裕を感じさせモニターを見つめていた。






●●●






「メナス発見!!情報通り数は3体です!!」

「待ち伏せしているような気配もないしぃ、こっちを警戒している様子もなしぃ。ここ最近のメナスじゃなくて、以前までのメナスと一緒だねぇ」



 距離は残り500m程。これ以上近付けば、メナスも朝陽達に気が付くだろう。



「じゃあ、話した通り私が行くわ」



 事前に話し合いを終えていたヴィルヴァーラは、朝陽達の前に出る。



「はい!お手並拝見させていただきます!!」

「何かあれば直ぐに救援に向かいますので!!」



 そのヴィルヴァーラを、朝陽と奏が元気いっぱいに送り出すが、返って来たのは冷ややかな視線であった。



「必要ないわ。一人の方がやり易いから」



 それだけ残し、ヴィルヴァーラは一気に戦闘補具(ジェットパック)を噴出し、加速する。


 同時に、メナスは朝陽達の存在に気付き、急接近するヴィルヴァーラに目が行く。



『ア゛ア゛!!』



 まだ距離は300m程残っており、メナス達はレーザーによる攻撃を仕掛けてくる。


 対してヴィルヴァーラはまだ『グリット』を発動させない。発光した僅かな光から軌道を読み、これを回避する。


 距離が近くなれば成る程、レーザーを躱すことは難しくなるはずであるが、残り100mを切っても、ヴィルヴァーラはその驚異的な身体能力でレーザーを躱し切る。


 そのまま一度もスピードを落とすことなく、メナスに接近。そして踏みとどまれるギリギリのところで一気に減速した。


 距離は既に手を伸ばせば届く距離。その距離まで詰めてヴィルヴァーラは初めて『グリット』を発動させた。



「『永久(ヴィェチナヤ) 凍土(ミィェルズロータ)』」



 『グリット』発動と同時に、ヴィルヴァーラの全身から身も凍るような冷気が放たれる。


 メナスは一瞬にして警戒するが、ゆっくりとその手が一体のメナスに向けられ…



「『凍結(ザミルザーニイ)』」



 その言葉と共に、手を向けられていたメナスが冷気に襲われる。一瞬にして氷ばりにされたメナスは、次の瞬間、氷とともに割れて消えていった。



『ア゛ア゛ア゛!!』



 それを見た残り2体のうち1体のメナスがヴィルヴァーラに襲い掛かろうとするが…



『!?』



 その体が動かないことに気が付く。見ると、自分の下半身が既に凍り付いていた。



「甘いわね。今のメナス(ウォゴローザ)に攻撃した時には、既にお前にも攻撃していたわ」



 凍らされたメナスはどうにか氷を破壊しようとするが、それよりも速く、凍結は進んでいき、一瞬で全身が凍り付いていった。



「『凍結(ザミルザーニイ)』」



 先程のメナス同様、完全に凍り付いたメナスは、その全身が砕け散り、その後黒い塵となって消え去った。


 その戦いぶりを遠巻きに見ていた朝陽達は、ただただ感嘆するだけであった。



「凄いですね。何というか、動きに無駄がないといった感じです」

「自分の動きを完全に把握しているのでしょう!!だから迷いを感じさせない!!」

「確か20歳になったばかりだよねぇ?何だか自信無くしちゃうなぁ…」



 三人の反応は、一様にヴィルヴァーラを褒め称えるものであった。当然、朝陽もヴィルヴァーラの戦いぶりには感嘆していた。しかし同時に別の感情も覚えていた。



「でも…何だか少し、怖くないですか?」

「…?怖い、ですか?」



 朝陽の言葉に、梓月が首を傾げる。



「梓月さんの言う通り、ヴィルヴァーラさんの動きには無駄がないです。無駄が無く、()()()()()()()()()()()()()()()()

「…!」



 梓月達は、直ぐに朝陽が言わんとしていることに気が付く。



「ヴィルヴァーラさんの動きには、躊躇いや迷いが一切ありません。私達が戦う時に見せる思いや気持ち…そういったものが一切無いんです。一体、どんな環境で戦い続けてたら、あんな戦い方に…」



 朝陽は梓月達よりも深く、ヴィルヴァーラのことを見ていた。


 それが出来たのは、良い意味で朝陽の実戦経験が少なかったからだろう。


 そんな朝陽達の視線の先で、ヴィルヴァーラは最後のメナスと戦いを繰り広げていた。


 ヴィルヴァーラの冷気を恐れているメナスは、距離を保って触手の攻撃を仕掛けているが、その触手は届く前に全て凍らされ、そして砕かれていった。



『ア゛ア゛!!』



 それに焦れたのか、メナスは至近距離でレーザーを放とうとする。



「バカね。それを待っていたのよ」



 ヴィルヴァーラはそれに一切動揺することなく、寧ろ一気に距離を詰めた。そして腕をメナスの顔面に伸ばす。



「『凍結(ザミルザーニイ)』」

『…!?カ゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!』



 メナスのレーザーが放たれるまでには、若干のインターバルがある。


 それは時間にして1秒ほど。ほんの一瞬でしか無いが、熟練の『戦士(グリッター)』であれば、十分反応できる時間である。


 ヴィルヴァーラも既にその領域に達しており、メナスがレーザーを放つその瞬間に『グリット』を発動。


 手の平から放たれた冷気が、その先にあったメナスの()()()()()()()


 目的は、メナスの動きを止めることでは無い。メナスのレーザーは、人間でいう明るさを調整する虹彩を操り、(レーザー)を作り出しているとされている。


 つまり、一見目の外から放たれているように見えるレーザーは、その過程上、眼球から作られていることになる。


 即ち、その眼球に透明な氷が張り付けば…



『…!?カ゛ッ!!』



 氷は光を反射し、レーザーはメナスの眼球から無数に放たれていった。


 良く言えば巧みな戦い方に、しかし、朝陽達はどこか恐怖感を覚えながらその様子を眺めていた。



「あぁ…()()()()()()()()()()



 それは、離れている朝陽達には聞こえない程度の声量で溢された呟きであった。


 自身のレーザーで体内を貫かれたメナスは、ゆっくりとその場で崩れ落ちながら…



「…!!ヴィルヴァーラさん!!」

「っ!!」



 最後の足掻きと言わんばかりに、触手を伸ばしてきた。



「え…!?」



 油断…ではなく慢心。ヴィルヴァーラの戦い振りを見るに、本人は相当戦闘慣れをしている様子であった。


 恐らくロシアの中でも優秀な『グリッター』であるのだろう。それが故の、慢心。


 それは、命をかける戦場において、致命的なものであった。


 触手は完全に気を緩めていたヴィルヴァーラ目掛けて一気に伸び…



「ぁ…」

「『六枚刃(フリューゲル)』!!」



 ヴィルヴァーラを庇うべく前に現れた朝陽を巻き込み襲い掛かった。



「うっ…あぁ!!」


 朝陽はフリューゲルを展開し、即座に防御態勢を取ったが、全てを防ぎ切ることは出来なかった。


 触手の一つが朝陽の肩を貫き、傷を負わせる。


 本当に最後の足掻きであったのだろう。メナスはそれを最後に、黒い塵となって消え去っていった。


いつも読んでいただきありがとうございます!!


年内の更新はこれにて終了。

次は年明けのこと6日を予定しています!!


それでは皆さま、良いお年を!!

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― 新着の感想 ―
[一言] やっと追いつきました! 世界共通の認識と思っていたことが違っていたので、驚きました。 まだロシア流の考えが全て明らかになった訳ではないので、その辺りが明らかになるのも楽しみです。 無駄が…
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