第76星:進化・適応理論
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。
ヴィルヴァーラ・スビルコフ (20) 二等星
ロシアスルーツク支部所属。海外派遣交流により日本の千葉根拠地にやってきたロシアの『グリッター』。当初より根拠地の『グリッター』をあしらうような姿勢を見せるが…?
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23) 四等星
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。
久留 華 (22)四等星
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。
曲山 奏(20)四等星
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。
「と、というわけで、今日から一緒に行動します!!小隊長の朝陽です!!宜しくお願いします!!」
翌日の午後。咲夜からヴィルヴァーラの編成組み込みの命を受けた朝陽が、緊張感丸出しの声で挨拶をする。
「緊張し過ぎだよぅ朝陽ちゃん。自分の名前噛んじゃってるじゃなぃ。あ、久留 華って言いますぅ。宜しくねぇ」
朝陽の緊張をほぐすべく、肩を揉む華が続けて挨拶する。
「曲山 奏です!!異国の方と共に出来るなんて光栄です!!宜しくお願いします!!」
こちらは相変わらず。笑顔と元気を前面に押し出して、奏が続く。
「同じく小隊メンバーの譲羽 梓月と言います。会えるのを楽しみにしていました。宜しくお願いしますね」
最後には最も落ち着いた様子で梓月が挨拶する。対してヴィルヴァーラは簡単に会釈するだけで、口を開くようなことはしなかった。
その感じの悪さに朝陽が戸惑いつつも、直ぐに次の動きの説明を始める。
「今日はこれから巡回パトロールに出かけます!パトロールは時間と小隊によって位置が分けられていて…」
「Скучно…」
「え?」
ロシア語を学んでいない朝陽達は、ヴィルヴァーラが何て発言をしたのか理解できない。
しかし、その露骨なため息と態度で、あまり気分の良くない言葉を発したのは理解できていた。
「…細かな説明はいらないわ。地域の話をされたって、長くいるわけじゃないから無駄だもの」
「あ、えっと…そ、そうですよね!!それじゃあ早速パトロールに出発しましょう!!」
通常なら腹を立ててもおかしくない場面で、朝陽は気を遣って笑顔を作り、話を進めていく。
当然梓月達も気分は良くなかったが、それを表に出すことはしなかった。
「基本的に巡回は上空から行うんですが、ヴィルヴァーラさんはバトル・マシナリーは必要ですか?」
「Да、お借りするわ。私達のグリットはそういう能力を有していないから」
移動手段に戦闘補具を使用するのは珍しくない。寧ろ『グリッター』であってもそういう能力を持っている方が希有である。
ヴィルヴァーラの反応を見ても、それは世界共通であるようだった。
梓月が気になったのはそこではなく、ヴィルヴァーラの発言にあった、『私達』という表現であった。
「(私達とはどういうことでしょうか…まるで、ロシアの『グリッター』全員がそうであるかのような…)」
しかし、まだあって間もない梓月がそのことを確認するのは良くないと思い、ひとまずこの場ではそれを追及するようなことはしなかった。
「じゃあ出発しますね!」
出発の合図と共に、朝陽は『グリット』を解放。全身が発光し、『グリット』発動状態へと至っていく。
その様子を、ヴィルヴァーラは興味深そうに観察していた。
「Интересно…この国の『グリット』はみんな外装が変化するの?」
「いえ!多少変わる人はいらっしゃいますが、ここまで劇的に変化するのは朝陽さんだけですね!」
朝陽だけ、という点に関してはがっかりした様子を見せたが、それでも朝陽の『グリット』への興味は失っていないようだった。
●●●
「ねぇアサヒ」
「はい、なんでしょう?」
パトロールを始めてから数分し、ヴィルヴァーラが飛行中の朝陽に話しかける。
「見たところ貴方はバトル・マシナリーを使っていないようだけど、ソレ、『グリット』の能力で飛んでるのよね?」
「は、はい、そうです!」
「ふぅん…やっぱり面白いわ…ねぇ、どういう原理で飛んでいるの?」
朝陽の『グリット』に興味津々なヴィルヴァーラが、積極的に朝陽に尋ねる。
「えと、私の『グリット』は光を操る能力なので、全身のエナジーを光に変えて、その光に推進力を加えるんです。その推進力で飛んでいます」
「成る程…このバトル・マシナリーもジェットの推進力で飛んでいるけど、それとは少し異なる原理ね。飛ぶ…と言うより『浮く』に近いのかしら」
端的な説明から、ヴィルヴァーラはどんどんと理解し、自分なりの解釈をしていく。
そして今度は、朝陽以外の3人に目を向ける。
「アサヒ以外の三人はバトル・マシナリーを使用しているところを見ると、貴方達の『グリット』はこういった力は持っていないということかしら?」
「そだねぇ。でもその分朝陽ちゃんには出来ないことが出来るし、そういうメリットを活かすための小隊編成をしてるからねぇ」
「成る程…」
元々好奇心旺盛なのか、ヴィルヴァーラは初対面の朝陽達にも臆することなくどんどんと聞いてくる。
そうなってくると、朝陽達もヴィルヴァーラに対する抵抗がなくなり、色々な興味が湧いてくる。
「あの…ヴィルヴァーラさん」
「何かしら?」
合も変わらず返答の声は素っ気ないものであったが、それでも話は聞いてくれるようであった。
「話を聞いていると、ヴィルヴァーラさんは私達の『グリット』に驚いているみたいなんですけど…なんでですか?」
やや答えにくいことだったのか、ヴィルヴァーラは直ぐには答えなかった。
「あ、ごめんなさい!!言い辛いことだったら全然大丈夫です!!」
ヴィルヴァーラはその後も僅かな間黙り続け、ジッと朝陽を見つめていた。それは、何かを推し量っているような瞳だった。
しばらくしてヴィルヴァーラは小さくため息をつき、ようやく口を開いた。
「貴方は…とても素直で純粋なのね」
そのあと小さく「話しても問題ないか…」と溢したのは、誰も耳にすることはなかった。
「別に良いわ。遅かれ早かれ知られることだし。こういった派遣交流が始まったのなら尚更ね」
そう言うとヴィルヴァーラは、視線を朝陽達から外し、質問に答え出す。
「私達ロシアでは、『グリット』と言うのは適応による進化だと考えられているわ」
「適応による…進化ですか?」
朝陽が繰り返すと、ヴィルヴァーラは頷く。
「『グリッター』が世界に現れたのは、謎の隕石がばら撒いた、人を死に至らしめる粒子が発生してからだと言われているわそれは、そのウイルスの発祥の地である貴方達の方が知っているわよね?」
「そうですね!!その辺りから始まりの『グリッター』が誕生し、以後次々と『グリット』に覚醒した人類が生まれたと教えられてきました!!」
言動とは裏腹に、意外と博識な奏が答える。
「私達に習って言えば、それが環境への適応だと考えられているの」
「…つまり、人を死に至らしめるウイルスに耐えうる…適応するための人類として、『グリッター』が生まれたということですか?」
話の意図を真っ先に理解した梓月が話を進め、ヴィルヴァーラがこれに頷いて肯定する。
「でもぉ、それっておかしな話じゃなぃ?」
これに否定的な意見を出したのは華だった。
「その理屈ならぁ、そのウイルスに適応するためには、全人類が『グリッター』にならないといけないんじゃなぃ?」
華の最もな意見に、朝陽達は確かに、と頷く。
現在の『グリッター』は世界の人口の三分の一程度。それでも十分な人数に増えつつあるが、ヴィルヴァーラの理論には当てはまらない。
「確かに、それを否定できる材料は無いわ。けれど、私達の説を推せる理由ならあるわ」
「進化理論を推せる理論…?それって…」
と、そこへ朝陽達の通信機に通信が入る。
『エスコート中申し訳ありませんが、メナスの反応がありました。座標を送りますので至急向かってください』
「分かりました!!朝陽小隊急行します!!」
通信を切り、朝陽はヴィルヴァーラに申し訳なさそうな表情を向ける。
「ごめんなさいヴィルヴァーラさん、話の途中で。メナスが出現したので一度戦闘に…」
と、そこで朝陽はヴィルヴァーラが口に手を当て、何かを考えていることに気がつく。
「ちょうど良いわ。戦闘を利用して、その説を実証の材料にしてあげるわ」
ヴィルヴァーラの言葉に、一同は顔を見合わせる。
※筆者の後書き
ども、お読みいただきありがとうございます!!
書き納めをどうしようかなと、ずっと考えてたんですが、一先ず明日更新し、その翌日はお休み
そして30日の月曜日を年内最後の更新にしようかなと思っております。
その次の更新は、年明けの6日に更新を再開しようかと思っております。
明日には気分が変わってるかもしれませんが(おい)、一先ずそんな感じで宜しくお願いしますm(_ _)m




