第七星:開戦【挿絵有り】
国舘 大和(24)
朝陽が出会ったぶつかった青年。纏っている服装から『軍』の将校であると思われるが正体は不明。優しい笑みを浮かべるなど心優しそうな青年。しかしてその正体は…
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至っておらず、現在は指揮官の報告官を務めている。戦えないことに引け目を感じている。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。根拠地にいる『グリッター』を束ねる部隊の隊長。責任感が強く、仲間たちから信頼されているが、妹の朝陽が絡むとポンコツ化する。
樹神 三咲 (22)
千葉支部所属。夜宵の率いる『輝く戦士グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。
塚間義一(35)
千葉根拠地における指揮官で階級は少佐。『グリッター』に対する差別意識が強く、彼女達を平気や道具のように思い扱っている。
「敵影補足!!距離およそ300m!!」
戦闘補具で跳ねる水飛沫を起こしながら、夜宵含む五人が『脅威』を目視で補足する。
ホバーによる海上の移動速度は平均で時速40㎞、最大で80kmにも及ぶ。
通常の人間なら移動もままならないGが掛かるが、身体的に強化されている『輝く戦士』ならば、制御できる速度である。
「私が先行するから皆は援護を。三咲も念のため周囲の警戒をお願い」
「「「了解!!」」」
メナスとの距離は既に100mを切った。三咲の能力なしでも目視は十分に可能だ。
やはりその姿は人の形をしていた。しかし、色素の無い白い肌と髪、そして僅かな恐怖を覚える紅い瞳は、どこか人間とは違う異質さ感じさせる。
夜宵達グリッターが躊躇なくメナスと戦うことが出来る理由は、ここの異質さから区別出来ているのかもしれない。
距離は50mを切った。既にメナスも夜宵達に気が付いている。しかし、先手を打つべく動き出したのは、予め位置を把握していた夜宵達だ。
「『闇夜の月輪』!!」
メナスを目視した夜宵が攻撃態勢に入り、『グリット』を解放。解放時の特徴である身体の発光が夜宵にも始まり……
────…オオオォォォ…
いや、始まらなかった。寧ろその逆。
夜宵の全身から黒いオーラのようなモノが表れる。
オーラは夜宵を包み込むように渦巻き、噴出を続けながら留まる。
【────ッ!!】
その異質さと脅威にメナスも気付いたのだろう。これ以上距離を縮ませないよう、いち早く反撃を仕掛ける。
メナスの攻撃手段は人外のそれだ。
色素の無い髪を触手のように操って拘束をすることもあれば、純粋な身体能力で圧倒してくることもある。だが中でも最も厄介なのは……
【────アァァァ!!】
突如として放たれる光線だ。
ノーモーションで放たれるその光線は、威力もさながら速度が速い。
発光を確認したときには既に目の前まで迫ってきているのだ。
かつての世界で、戦争や時に医療に利用されたレーザー光線というものに近いだろうか。
細く早いレーザーは標的を貫き、太く範囲の広いレーザーは標的を蒸発させる。
その無慈悲な攻撃に、かつての人類は為す術も無く敗れた。しかし、人類もそのままでいるほど愚かではない。
「【耐熱反射鏡】用意!!」
レーザー発射をいち早く察した夜宵が3人に指示を出す。その指示に素早く反応し、懐から直径30㎝程の四角い鏡のようなものを取り出した。
厚さも15cm程あったが、腕のカードリッジに装着すると、そこからさらに四面に展開していく。
最終的に同サイズの鏡が縦横にそれぞれ2枚ずつ開かれ、盾のような形へと変形した。
直後、夜宵達のもとへレーザーが直撃した。耳を劈くような音がしたあと、爆音が鳴り響く。
爆炎と熱により水蒸気が発生し、夜宵達の姿は見えなくなる。
【────ウウゥゥ…】
メナスに知性と呼ばれるものは存在しない。
ただ本能に従って人類を滅ぼそうとしているに過ぎない。
但し、なぜ人類を滅ぼそうとすることが本能になっているのかは現在も不明である。
しかし、感情に近いものがあることは、捕縛した実験体のメナスから発覚している。
もし、今のメナスの感情を表すのなら、安堵であろうか。
しかし、メナスの表情にその様子はない。次第に晴れていく煙の中には、無傷の夜宵達の姿があったからだ。
【耐熱反射鏡】。
対脅威用に作られた戦闘補具である。
メナスの放つレーザーは、原理的に人類が作り出せる兵器のソレと大差ないことが判明している。
つまり、対抗策は人智のなかで十分に生み出すことが可能であることを意味していた。
【耐熱反射鏡】は、そのレーザーを無効化する盾である。
原則、レーザー兵器は鏡の機能だけで防ぐことは出来ない。
反射した光が奥にいけばいくほど暗なって映らなくなるように、鏡は光を100%を反射しているわけではないからだ。
そこで科学者達は反射ではなく、無力化を目指した。
レーザによる急速な熱量変化に耐えることに重点を置くことで、耐久力を上げることを目的としている。
もちろん無制限に使えるわけではない。
多大な熱量を浴びた反射鏡は劣化し、やがて破壊される。それでもメナスのレーザを防げるようになったことは、『グリッター』の生存率を大きく上げることとなった。
しかし、
────オオオォォ………
メナス達が目を奪われたのは、自身のレーザーを防いだ鏡ではない。
その鏡無しでレーザーを防いだ夜宵を包む闇だ。
メナスが安堵の表情を見せなかったのはそこにある。メナス達は見たのだ。自分達の攻撃を飲み込んだ、夜宵の闇の恐ろしさを。
「残念。私に攻撃は効かないわ」
夜宵の能力は『闇夜の月輪』。
自身の持つグリットのエネルギーを闇に変えることで、自在に操ることができる。
数多く存在するグリットの中でも特に特異的であり、最大限に開放すればあらゆるものを飲み込むことが可能であるといわれている。
ただしその特異性の強さが故にコントロールが非常に難しく、制御を誤まると敵味方さえ関係なく飲み込んでしまうため、『メナス』を前にしても出力を相当抑えている。
そして今、夜宵の身を包む闇は、『暗寂の隠者』。
グリットを発動と同時に自動で発動し、敵対意識のある攻撃を飲み込む、絶対防御。
そしてその性能が故に、最大の攻撃ともなる。
「飲み込め、『闇夜の月輪』」
今までただ夜宵の周りを漂っていた闇が、夜宵の意思に応じて動き出す。徐々に侵食するように蠢きだす。
【────ウゥ!!】
当然メナス達がそれを静観するはずもなく、水飛沫を飛ばしながら宙に浮く。
宙に浮くこと自体に驚きはない。
そもそも最初に出現した『メナス』も空は飛んでいたという話であったし、これまでに出現してきたメナス達も同様に空を飛ぶ。
更に言えば最初に出現した『グリッター』も空を飛んでいたそうだ。
『グリット』という超常能力が出現した今、空を飛ぶものだっているだろう。
もしかしたら最初のグリッターの能力は空を飛ぶものだったのかもしれない。
そもそも、装備品さえ揃えば、夜宵達にも飛ぶ手段はある。つまりは驚くに値しない。
「隊長どうします?今回はホバーを付けてるのでこっちは追いかける手段がありませんし、対空戦は極力避けたいところですが……」
「そうね。手がない訳ではないけど、それだとこっちが不利のまま戦うことになるし……ちょっと私が下におろしてくるわ」
そう言うと夜宵は腰に付けられた小型のバックをあさり、小さな鉄の塊を取り出す。
そして栓のようなものを抜くと、それをメナス達目がけて思い切り投げつけた。
それは小さなパイプのようなもの。メナス達はそれが何なのか分からず、静観する。
そしてそのパイプがメナス達を更に上空へと通過して……
────バアアアァァァァン!!!!!
炸裂する。
手榴弾ではない。もっと効果は限定的なモノ────閃光弾だ。
【────!?】
自然と視線がそれへ釣られていたメナス達は、その閃光により一時的に視界を奪われる。
がしかし、夜宵が投げた閃光弾の狙いは、視界を奪うことではない。
「影が伸びたわね。引き摺り下ろせ『闇夜の月輪』!!」
次の瞬間、夜宵の闇が照らされて伸びてきたメナス達の影と繋がり、まるで紐のように引っ張り上げる。
視界を奪われているメナス達も流石に成すすべなく、再び海上へと叩き落されていった。
「さぁ、これで振り出しね。空なんて飛ばずに私達と遊びましょう」
目の前に立つ夜宵は、愉快そうな笑みを浮かべながら、そう『メナス』に告げた。
※ここからは筆者の後書きです!!興味の無い方は読み飛ばして下さい<(_ _)>
ども、琥珀です!!
本日も【Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―】をお読みいただきありがとうございました!!
実は本日で打ち切りです。嘘です(エイプリルフールだからネ!!)
やっと本編が戦いに入りましたね(笑)いや別に日常的な場面を書くのが嫌なわけでは無いんですが、描写を表すボキャブラリーが少なくて、ちょっと筆のスピードが落ちてしまうんですよ…
その分、戦闘はきちんとかけているのではないかと思っているので、ここから先の展開をお楽しみに(笑)
本日もお読み下さりありがとうございました!!明日も十時頃に更新しますのでよろしくお願いいたします!!