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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
5章 ー海外交流編ー
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第73星:交流

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。『グリッター』とのぶつかり合いを経て信頼を勝ち得た。


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。指揮官として司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)四等星

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。


斑鳩夜宵(22)三等星

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の元隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は『夜宵小隊』の小隊長。


樹神 三咲 (22) 三等星

千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。『三咲小隊』小隊長。


佐久間 椿(22) 三等星

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。『椿小隊』小隊長。


 前回の戦いから3日経ち、根拠地にいる『グリッター』達は少しずついつもの表情を取り戻していった。


 帰還した直後の様子は酷い有様であった。


 受け答えは辛うじて出来たものの、表情に喜怒哀楽はなく、中には身体の震えを止めることが出来ないものもいた。


 不幸中の幸いとして、その戦いで多くのメナスを投入したためか、この3日間はメナスが出現することなく、通常の軍務を除けば出撃はほとんどなく、落ち着くには十分な時間があった。



「(それでも、元通り…というわけにはいかないか…)」



 その様子を3日間観察し続けていた大和は、彼女達の僅かな変化を見逃すことは無かった。


 かつて差別により失われ、大和が着任することで取り戻しつつあった笑顔は、今は表面上のものとなりつつある。


 互いに心配をかけまいと無理に笑顔を作り、カラ元気を出し合う。それは、側から見ていてとても辛い場面であった。


 執務室(ココ)に来るまでの間にも数人とすれ違ったものの、やはり、どのメンバーも笑顔は浮かべているものの、無理をしているようにしか見えなかった。



「ふぅ…」



 執務室に入り、用意された椅子に腰かけると、後ろについてきていた咲夜が直ぐにお茶の準備をし、大和の前に置く。


 大和は感謝の言葉を伝えた後、口にお茶を運ぶ。その最中、咲夜にソッと目を向ける。


 大和の右腕でもある咲夜も、先日の一件以来、様子がおかしかった。


 言葉数が減り、大和の前では良く見せていた柔和な表情は影を潜め、今は険しい表情が多くなっていた。



「(かく言う俺も、これまでと同じ表情を浮かべられている自信は無いな…それ程までに強力で、強烈な存在だったのだろう、()()()()は)」



 全ては、オリジンという一体のメナスによって捻じ曲げられてしまった。


 朝陽や夜宵が積み上げてきたもの、大和が繋ぎ合わせたもの…それらがたった一瞬の邂逅により、バラバラにされてしまったのだ。



「(話には聞いていた。オリジンという存在は、どんな常識も通用しない、まさに規格外の存在だったと。だがまさか…これ程までの存在だったとは…)」



 恐らく、今の状況では大和の言葉も彼女達には届かないであろう。オリジンが埋め込んだ恐怖はそれ程のものであった。



「(何か、きっかけが必要だな…彼女達の心が別に向き、そして前を向き直す何かが…)」



 そうして今日の執務に取り掛かろうとした瞬間、大和は自身のPC端末にメッセージが来ていることに気が付く。


 その内容を目にし、大和は小さく微笑んだ。






●●●






「え?出張ですか?」

「そう。ちょっと司令官業務でね。最高本部と関東本部へ行かないと行けないんだ」



 翌日の朝陽。大和は咲夜と各小隊長を執務室に呼び出し、話をしていた。



「司令官不在ということは、私が残ることになりますね」

「そうだね。ただこの先そういう事は増えるだろうし、それだけなら大した問題じゃない。重要な話はこの後だ」



 大和の言葉に、一同が顔を見合わせる。



「実は、先日の件のことを本部に報告した結果、最高司令官は、国内だけでなく世界規模での連携の強化が必要だと判断されたそうなんだ」

「世界規模…ですか。以前から世界各国との連携に関しては問題視されていましたが…」



 日本と諸外国との関係は決して良くない。と言うより日本に限らず、各国間の関係自体が十分ではない。


 メナスが日本に初めて現れてから一世紀の間に、世界の人口は半分にまで減った。


 『グリッター』は各国にも出現したが、その数には差があり、その戦力差から、各国間に緊張が走るようになったのである。


 メナスという共通の敵がいること、そのメナスの襲撃により、他国に構う余裕がないことなどを理由に争いこそ起きていないものの、国によっては戦争に(そう)なってもおかしくないような場所もあった。


 そんな中でも、日本は世界から一目置かれている存在であった。理由として、


・『グリッター』発祥の地であること

・『グリッター』の数が多く、『軍』の体制も頭ひとつ抜けている

・『軍』事力だけでなく、それに伴う科学力が優れていること


 などが挙げられている。しかし、そのどれよりも大きな理由は、早乙女 護里という存在である。


 互いに互いの国を牽制し合うことが多い各国間の間でも、護里には一目を置いていた。


 だれも近付かない極寒の地に、ただ友好の証を示すために一人で訪れる。


 科学技術はおろか、『軍』体制すら整っていない辺境の地に訪れ、自らレクチャーを施す。


 プライドが高く、他者国を一切寄せ付けなかった国に一人で訪れ、懐柔に成功する。


 など、護里の影響力は日本に留まらず世界に及び、そして友好を深めていた。まさに規格外の人物である。


 しかし、その護里を持ってしても、日本との交友を深める事は出来ても、それ以外の国同士の緊張を取り除く事は出来ずにいた。


 今回の護里のこの決断は、そこから更に一歩踏み出すための決断だとも取れるだろう。



「今回はボク達だけでも対応できたけど、それだけじゃ足りない事態がこの先起こることが予想される。そういった意味で、この最高司令官の行動は、ボクも必要不可欠なものだと思う」

「成る程…それで、その交友はどのように行われるのですか?」



 話の内容を理解した咲夜が、具体的な内容について大和に尋ねる。



「本来なら日本国以外同士での交友が望ましかったらしいんだけど、言い出しっぺである日本(われわれ)が何も行わないのも問題があるとして、日本の各本部にそれぞれ一国ずつ派遣されることになったそうだ」

「…ということは、派遣される人は各本部が対応する、ということですか?」



 朝陽が律儀に手を上げながら発言する。これに対し大和は首を横に振った。



「いや、受け入れは各本部で行うが、本部だと日本の『軍』の政治的側面を強く見せてしまう可能性があるとして、各本部で妥当と判断された根拠地(しぶ)へ派遣されることになったんだ」



 そこまで説明されて、三咲は何かに気が付いたかのように、大和に恐る恐る尋ねる。



「あの…もしかして、関東本部が選んだ派遣先は…」

「その様子だと気付いたみたいだね。そう、関東本部が派遣先に選んだ根拠地は、()()()

「えぇ!?」



 驚きの声を上げたのは朝陽。


 三咲はやっぱりと項垂れ、夜宵は表情だけ驚きの様子を浮かべ、椿はいつも通り笑んだままであった。



「どど、どどどうしてここに!?」

「一つは、今回の件の発端となり得る事案の発生源がここであること、そしてもう一つは、直近の報告などから、ここでの経験が、最も良い経験になり得るであろう、などが理由であるらしい。最高司令官も、関東総司令官も直ぐに意見が一致して決まったそうだよ」



 確かに、直近の出来事を振り返れば、朝陽達ほど濃密な経験をした根拠地はないだろう。


 驚きこそしたが、改めて理由を説明されると、納得することは出来る内容であった。



「期間は状況に応じて前後する可能性はあるだろうが、おおよそ3週間ほど。決して長くない。ある意味世界の命運をかけているといっても過言ではない案件だが、君たちなら成果を上げられると期待しているよ」



 一向に緊張が走るなか、朝陽がふと大和の発言の違和感に気が付く。



「え…あ、あの、もしかして司令官さんはいらっしゃらない…のですか?」

「うん、いない。さっきも言った通り、最高本部と関東本部に顔を出さないといけないんだ。多分最低2週間はかかるかな」

「そ、その派遣さんがいらっしゃるのは…」

「3日後だね。ボクはほとんど会うことはないだろう」

「し、司令官が不在…そ、それは果たして良いのでしょうか…」

「確かにボクは居ないけど、ここには頼れる指揮官(さくや)がいる。それに、根拠地(ここ)には代わりの臨時の司令官を呼ぶつもりだ」

「臨時の司令官…ですか?」

「そう。ボクの司令官としての基礎を築いてくれた人だ。ボクよりも優秀だから何も心配いらないよ」



 何もかもが唐突すぎて朝陽達は理解が追いつかないが、大和が心配いらない、と言うのであれば大丈夫だと納得する。



「まぁ丸投げしてしまうのは申し訳ないと思っているが、最高司令官と関東総司令官直々の命令であり任務だ。派遣される『グリッター』と交友を深め、互いに学びあって、今回の出来事が世界を繋ぐ架け橋となるようしっかりと務めてくれ」



 大和のこの言葉根拠地の司令官として威厳のある圧みがあり、朝陽達は姿勢を正し、力強く返事を返した。



「ところで司令官〜。今回派遣されてくる人はどこの人なの〜?」



 それを一瞬で台無しにするようなホワッとした声色で、椿が尋ねる。


 大和は手元の資料を手に取り、椿に答える。



「今回派遣されてくる『グリッター』の出身は…『ロシア』だ」


※疲れたので後書きはお休み笑

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