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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
特章 ークリスマス特別編ー
77/481

第特星:聖夜訪れる夜の星に4

後書きもご参照下さい!


国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救った。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦いの傷は癒え、戦線へ復帰する。


樹神 三咲 (22)

千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。


佐久間 椿(22)

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。

 約束の20時の少し前。訓練学習生の子ども達は、教官に連れられ、校舎の外へと出てきていた。



先生(せんせー)これから何があるの?」

「さむぅい!!」

「ごめんなさい、寒いですよね。でも、みんなきっと驚くことが起きますから、少しだけ我慢してください」



 子ども達を宥めるのは、やや小柄な身長の女性。


 その身長は140㎝程度で、かけている丸眼鏡がより幼さい様な印象を引き出していたが、それ以上に豊満な胸が、この教師が大人であることを証明していた。


 見た目とは裏腹に、非常に落ち着いた物腰であることも、彼女が大人の女性であるように見せていた。



「こっちは準備できましたよ、みなさん」



 何が行われるのかは、実は教官である女性も聞かされておらず、25日の20時に窓の外を皆に見せて欲しい、としか伝えられていなかった。


 校舎の三階から見える景色は未だ真っ暗であり、本当に何かが始まるのか、不安を誘うような景色であった。



 それでも、教官ー蓮水 寧花(はすみ しずか)は、()()()()()()()()を信じていた。



 すると…



「あっ!!先生見てみて!!」

「…まぁ」



 ポツ…ポツと、真っ暗な暗闇の中から少しずつ光が溢れてきていた。


 それは、初めは小さな光であったが、ある中心地から次第にどんどんと広がっていった。


 やがて、それは一つの文字と装飾へと形を変えていき、最終的に『Glitter』とはっきり読めるものへと成っていった。


 三回の窓からようやく全てを見渡せる程のイルミネーションは、まさに壮観の一言で、まさに聖夜に相応しい景色であった。



「そう…あの子達は、これを見せてあげたかったのね…」



 寧花はその景色を、潤んだ瞳で目に焼き付けていた。



「あっ!!先生!!また文字が変わっていくよ!!」

「…あらあら…」



 そして、イルミネーションは、最後の華を飾って行った。






●●●






 イルミネーションが始まる1時間前。朝陽は最後の作戦に出ることを決心していた。


 その内容に、最初こそ夜宵達は渋っていたが、いよいよ時間がなくなってきたこともあり、それを了承したのである。


 その内容とは、全配線を朝陽に繋ぎ、朝陽の『(グリット)』によりイルミネーションを行うというものである。


 本来であれば、このイルミネーション用に加工した配線ケーブルに『輝力(エナジー)』を流すことで発行させる事ができるため、各地点に『グリッター』を配置してイルミネーションを完成させる予定であった。


 しかし、中継点である中央部分が配線不良により『エナジー』を循環させる事が出来なったことで、それは不可能となった。


 循環用配線ケーブルが無ければ、通常は『エナジー』を流しても発光させることは出来ない。しかし、元から『光を操る』ことの出来る朝陽であるのならば、『光』の『エナジー』を流し込むことでケーブルを発光させることが可能であった。


 但し、本来複数名で行うはずだった『エナジー』の循環を、朝陽一人で行うことになるため、その負担は非常に大きなものとなる。その点で、夜宵達は最初は反対していたのである。


 しかし、夜宵達が反対しても、朝陽は意見を曲げなかった。


 必ずやり遂げるという強い意志を持って夜宵達の説得にあたり、そしてついに成功したのである。


 そして20時直前。全身につけられたケーブルを手に握り、朝陽は『エナジー』を少しでも溜めるべく、意識を集中させていた。



「残り3分です。朝陽さん、大丈夫ですか?」

「はい。大丈夫です!」



 心配そうに声をかける梓月に、朝陽は小さく笑顔を作って答えた。


 梓月も協力したかったが、循環ケーブルの無い状態で『エナジー』を流しても、朝陽と梓月の『エナジー』がぶつかり合ってしまい、寧ろ邪魔をしてしまうことになる。


 ここまでくれば、梓月も覚悟を決めるしか無かった。



「…時間です、朝陽さん!!」

「はい!!『天照す日輪イノセント・サンシャイン』!!」



 時間と共に朝陽は『グリット』を発動。全身から迸る閃光が、配線を通ってケーブルを発光させていく。


 しかし…



「…ッ!!出力が…足りない!!」



 光は全部に行き渡らなかった。


 『グリット』を発動し『エナジー』を流す、という通常よりも一行程多い作業に、朝陽の『エナジー』だけでは不足していたのだ。



「う…うううううぅぅぅぅ!!!!」



 それでも尚、朝陽は更に『エナジー』を流し込もうとしていた。これ以上は危険と感じた梓月が、それを止めようとした時だった。



『はいは〜い、お待たせ〜』



 耳につけられた小型の通信機から、のんびりとした椿の声が届いた。



「つ、椿さん!?」



 それは朝陽の耳にも届いており、『エナジー』を流しながらも気持ちに余裕をもたらしていた。



『遅くなってごめんよ〜朝陽ちゃん。今から私も手伝うからね〜』

「手伝うって何をって…え、何ナニ!?」



 突然、朝陽は『エナジー』の流れが円滑になったことに気がつく。


 それと同時に、ポツポツとしか光っていなかったケーブルが、ドンドンと光っていく。



「つ、椿さん!!こ、これどうやって!?」

『ん〜実はね〜』

『えへへぇ、私が協力しているのでしたぁ』



 と、更に追加で聞こえてきたのは華の声であった。



「華ちゃん!?姿が見えないと思ったら椿さんのところにいたの!?」



 思いもよらない人物に、梓月が驚いた声を出す。



『そうなのよぉ。ごめんねぇ梓月ちゃん、時間が無くてぇ』

「いえ、私は構いませんけど…それで、どうやってお二人で光を…?」



 それは朝陽も気になっていたことであった。二人は特に溜めることもなく、話始める。



『朝陽ちゃんさぁ、昨日一昨日と小隊連携の訓練を一緒にしたでしよぉ?』

「は、はい。お互いの『グリット』をもっと活かせるようにと…」

『そうそう。その時にぃ、何をやったか覚えてなぃ?』

「え…その時、ですか?確か、奏さんと梓月さんとの光の偏光連携と、華さんとの光圧縮と放出の連携を…あっ!!」



 自分で話を進めていくうちに、朝陽はこの状態がどうして起きているかを理解した。


 同時に、梓月もこの理屈に気付いたようであった。



「そっか!!華さんの『グリット』で圧縮した私の光!!」

『当ったりぃ。朝陽ちゃんの光を圧縮したポットが二つ残ってたからぁ、それをこのケーブルに流したら光るんじゃないかなぁって。大当たりだねぇ』



 華の話に朝陽は頷いていたが、梓月はまだ納得していなかった。



「で、ですが、圧縮した朝陽さんの光はそれほど多量では無かったはずです。それに解放したら光は一瞬で…」

『さぁそこで問題。何故わたしはここにいるのでしょうか〜』



 ここで椿がクイズ形式で梓月に尋ねる。


 梓月はその意図が理解できないながらに、その意味を考察する。答えは直ぐに出てきた。



「そう…か!!朝陽さんの光が圧縮されたポットを、椿さんの『グリット』で!!」

『ピンポーン!!その通り、私の【透涼の誑惑(ラオム・クラルハイト)】で強化して、罠としてケーブルに繋げたのだ〜』



 今度こそ梓月も納得した。椿と華の二人は恐らく今、接触不良を起こしていた循環ケーブルの場所にいる。


 そしてその循環ケーブルを、リナ達と共に外し、代わりに華のポットを置いて、椿の『グリット』で強引に接続させた。


 そして、椿の『グリット』により何倍にもなった朝陽の『光』が、朝陽の『グリット』と重なり、光の循環を円滑にさせていたのだ。



『勿論私達だけじゃないよ〜。何倍にもした朝陽ちゃんの【グリット】は協力だからね〜。いま隣では奏ちゃんが各所の部分での偏光の調整をしてくれてるんだ〜それ、コチョコチョ〜』

『あっはっはっはっはっ!!て何をするんです椿さん!!これ結構加減が難しいんですからね!!』

「あは…あはは!!」



 その時、朝陽は思わず笑みをこぼしていた。


 最初は一人でやろうとしていたこのイルミネーション。今は根拠地全体で協力し合い、そして完成に向かっていた。



「(最初からみんなに頼ってれば良かったんだ…『グリット』を使えるようになったからって、小隊長になったからって一人でやる必要なんてなかったんだ!!)」



 朝陽は思わず滲んでいた涙を拭い、そばにいた梓月に声をかけた。



「梓月さん!!予定をちょっとだけ変更します!!」

「変更…?一体何を…?」



 朝陽は今の自分の考えを話すと、梓月は賛同しながらも心配そうな目を向けた。



「クリスマスには欠かせないものですね。賛成はしますが、できますか?」

「出来ます!!みんなが手伝ってくれた…今ならなんだってできます!!」



 強がりでもなく、ただただ事実を述べる朝陽に梓月は微笑むと、今度は何も言わずに朝陽を信じることにした。



「『念力操作ユニヴァ・コントロール』!!」



 梓月が『グリット』を発動すると、張り巡らされていたケーブルが少しずつ動き出す。



「私が最初の方を仕上げます。朝陽さんは残りを」

「はい!!」



 それは、ゆっくりと形を変えていき、『Glitter』から別の文字へと変わっていく。


 その文字とは…



Merry(メリー) Xmas(クリスマス)!!」






●●●






「メリークリスマス、みんな」



 イルミネーションによって作られた光の文字を、大和と咲夜の二人は、少し離れたところで見ていた。



「キレイですね…」

「うん。聖夜の夜に相応しい、キレイな星だ」



 そのイルミネーションを見ながら、咲夜はずっと気になっていたことを大和に尋ねた。



「大和…もしあの時、私が助け舟を出さなかったらどうなさったおつもりなんですか?」



 あの時、というのは、大和が朝陽の案を拒否した時のことだろう。


 あの時、咲夜はまだ朝陽がドアの前にいることを知っていて、敢えて聞こえるように大和が出張だという()()()()()()()()()()()()



「そうだねぇ…仮病とか使ってたかもね。けど、俺としては君が助け舟を出すのを分かってたから、何もしなかったんだけどね」

「もう…都合の良いことを…」



 咲夜は呆れたようにため息を一つ吐いた。



「でも、仮病にしなくて良かったよ」

「…?何故ですか?」



 大和はイルミネーションの方を見ながら、こう呟いた。



「君と二人で、こんなキレイなイルミネーションを見る事ができたんだからね」

「へぁっ!?」



 完全な不意打ち発言に、咲夜は思わずウル◯ラマンのような声を出してしまう。


 顔を真っ赤にし大和の方を見るが、やはり大和はイルミネーションの方しか見ていなかった。



「まったくもう…何の気もなしにまたそんなことを…」



 咲夜はぶつくさと文句を言いながらも、その口は緩んでいた。


 大和もその様子を横目で見ながら、もう一度イルミネーションの方を見る。



「咲夜。せっかくのイルミネーションだけど、もう一つ足りない気がしないかい?」

「もう一つ…ってもしかして。でも、宜しいのですか?」

「クリスマス何だし、少しくらい良いでしょ。でも目立たないようにね」

「難しいご注文を…でも、分かりました」



 そう言うと咲夜は大和から離れ、イルミネーションの方へと身体を向ける。そして…



「『原初の輝(イルミナル・オリジン)』」



 自身の『グリット』を発動させた。


 全身に眩く輝く銀光と、それに合わせるようにして変色した銀髪、碧眼で、イルミネーションの頭上を見る。


 そして、両腕からそれぞれ一つずつの銀色の光弾を放った。それは、夜空で見えなくなるところまで飛んでいくと…バンッ!!と衝突し、弾けた。


 次の瞬間…弾けた銀光が、まるで()()()()()()()()()、朝陽や子供たちの頭上へと降り注いで行った。


 それは、触れると暖かく、そして美しく消える、幻想的な雪であった。遠くからは、みんなの驚き喜ぶ声が聞こえてきていた。



「…これで宜しいですか?」



 既に『グリット』を解除した咲夜が、再び大和の隣に戻ってくる。



「さすが咲夜。超目立つプレゼントだね」

「これでも抑えたんです!!もうっ!!」



 拗ねたようにそっぽを向いてしまった咲夜に苦笑いをしながら、ポケットから箱を取り出し、昨夜の前に差し出した。



「はい、咲夜。クリスマスプレゼント」

「は…え!?」



 これは予想をしていなかったのか、咲夜は半ば無理やり渡された箱を持ったまま固まっていた。



「そのままじゃただの箱じゃないか。早く開けてくれよ、咲夜」



 思考がフリーズした咲夜は、大和に言われるがままに箱を開ける。


 中に入っていたのは、アクセサリーが開けられるタイプのネックレスだった。


 アクセサリーの部分を開くと、そこには一枚の写真が入っており、写真には四人の人物が写っていた。



「同じものを、飛鳥と望生にも送ったよ。ボク達が家族である証としてね」



 見れば、大和も同じネックレスを手に持っており、そのアクセサリー部分には同じく写真が埋め込まれていた。



「いつか、ボク達が揃ってクリスマスを祝おう。平和な世の中で」

「…はい」

「だから取り戻そう平和を」

「はい」

「それまで…ボクについてきてくれ咲夜」

「はい!」



 二人は顔を見合わせ、寄り添いながら、空から降る銀光の雪とイルミネーションを眺めた。



「メリークリスマス、咲夜」

「メリークリスマス、大和」

メリークリスマス!!

皆様のクリスマスの聖夜が良き時間でありますように!!


※第73星は今夜零時に再投稿、第74星は朝5時頃に投稿します!!

そのまま土曜日まで連日投稿していきます!!

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