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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
特章 ークリスマス特別編ー
76/481

第特星:聖夜訪れる夜の星に3

※今回も後書きにお知らせありまーす



国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救った。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦いの傷は癒え、戦線へ復帰する。


樹神 三咲 (22)

千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。


佐久間 椿(22)

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。


日下部 リナ(24)

千葉根拠地の技術班班長を務める女性。開発よりも改善・改造を好み、バトル・マシナリーを『グリッター』のために改造している。技術力は確かなもので信頼も厚い。職人としては大人しい性格だが、意見はハッキリと伝える強さも備えている。

 その日の夜、朝陽は誰にも話すことなく、秘密裏に行動に移していた。



「配線をここに繋げて…ここに『輝線(※グリットのエナジーを通す線)』を通して…」



 作業を始めてから既に3時間が経過していた。日はとっくに沈み込み、辺りはかなり冷え込んでいた。


 身体は冷え、その指先は悴んで真っ赤になっていたが、それでも朝陽は作業を止めなかった。


 大和に自分の案を拒否された後、朝陽は暫くドアの前で立ち止まっていた。


 その時、()()()()ドア越しに大和の不在を聞いた朝陽は、その隙を突くようにしてイルミネーションを決行しようと決意したのだ。


 良くても謹慎、悪ければ除名もあり得る行動である。そのため朝陽は誰にも告げず、一人で黙々と作業を進めていた。


 しかし、根拠地の広さは50,000㎡程。子ども達の居る校舎付近だけでもかつての東京ドームに匹敵する広さを誇る。


 今日が23日であり、残りは2日。とても一人で終わらせられる内容量ではなかった。



「大丈夫…大丈夫…私が皆に…『グリッター』の良さを見せてあげるから…」



 唇は青紫に染まり、歯はカチカチと震えていた。


 それでも、その顔には笑顔が浮かんでおり、感覚のなくなった指を懸命に動かし、準備を進めていった。



「ほいっと」

「え?あ、あつっ!?あつつつつつ!?」



 突然頬に熱を感じた後、背中の襟の部分に何かを放り込まれ、その熱さに朝陽は思わず飛び跳ねる。


 急いで取り出すと、それは暖かい缶飲料だった。


 そちらの方に目を向けると、そこには小隊のメンバーに七、三咲、そして夜宵といった面々が揃っていた。



「み、皆さんどうしてここに!?」

「三咲さんから話を聞いてね。朝陽ちゃんのことだからきっと一人でもやろうとしてるんじゃ無いかって思ってさ」

「案の定でしたね!!それもこんなに身体を震わせて!!風邪でも引いたらどうするんです!!」

「それは…ごめんなさい」



 七に心配をかけ、奏に叱責されたことで、朝陽は素直に謝罪をする。



「でも、私あの子たちの為に何かしてあげたいんです!!自己満足でしかないかもしれないけど…でも!!『私達(グリッター)』自身の勇姿を少しだけでも見せてあげられたら、きっとあの子たちの心に何かを残してあげられると思うんです!!だから…」



 朝陽は最後まで言葉を発することは出来なかった。溢れ出てきた涙を拭い、真っ直ぐ三咲達を見つめた。


 一行は顔を見合わせながら、呆れたような笑顔を浮かべると、一様に()()()()()()()()()()()



「えっ!?み、皆さん何を!?」

「決まってんじゃんよ。さっさと線を通して完成させちゃおう!!」

「そもそも一人で完成させられる距離と長さではないですからね!!」



 全員が作業を始めていく様子を見て、朝陽は慌ててそれを止めようとする。



「だ、ダメですよ皆さん!!これは司令官に認められてないことなんです!!皆さんも罰を与えられちゃいます!!」

「そんなこと分かってますよ朝陽さん」



 作業の手を止めず、梓月が朝陽に答える。



「みんなそれを知った上でぇ、朝陽ちゃんの手伝いにきてるんだよぉ」



 これに華が続き、最後に夜宵が答える。



「朝陽。貴方の想いは私達皆に届いてる。私達もそれに応えて、そして届けたいって思った。だから手伝うのよ」

「皆さん…夜宵お姉ちゃん…」

「届けましょう、あの子たちに最高のクリスマスプレゼントを」



 夜宵の言葉に、今度は朝陽が頷いて応え、貰った缶飲料を一気に飲み干すと、一緒になって作業に取り掛かる。






●●●






 その様子を、咲夜は執務室の窓から伺っていた。そして、同じく執務室で仕事に取り掛かっている大和の方をチラリと覗いた。



「どうしたんだい咲夜。仕事はまだ残っているよ。()()()()事務に集中しなくちゃ終わらないよ」



 大和の言い回しにクスリと微笑んだ後、咲夜は「はい」と小さく答えた。



「あぁそうだ咲夜」

「はい、なんでしょうか」



 と、突然大和は作業の手を止め、咲夜の方を見ずに話し始めた。



「今日はもう巡回も無いし、整備の必要もないだろう。少し早いけど、日下部君達技術班にはもうあがって貰おうか」



 咲夜は最初分からないと言った様子であったが、直ぐにその意図を察した咲夜は再びクスリと微笑んだ。



「ボクはまだここを離れられないから、代わりに伝えてきてくれるかな?」

「はい、畏まりました」



 咲夜は笑顔のまま、丁寧な所作で部屋を後にした。


 誰もいなくなった執務室の中で、大和は小さく息を吐いた。



「まったく…司令官っていう立場も良いことばっかじゃないなぁ…」



 それは、誰かに対して申し訳ないといった口調であり、大和は短い間目を瞑った後、再び執務に取り掛かりはじめた。






●●●





 作業を始めてから数時間。夜宵達の手伝いもあり、作業は大幅に進んでいった。しかし…



「さて…どうしたもんかね」

「間に合いませんね…正直…」



 作業自体は順調であったものの、いかんせん時間が足りなかった。


 まだ時間が残っているとはいえ、6人で作業を進めても、全体の10/1程しか終わっていない。


 明日には当然朝陽達にも『軍』務が控えており、大和に悟られないためにも休むわけにはいかない。


 しかし、それでは間に合わないのは明白であった。


 やはり無理なのか、と朝陽は心の片隅で諦めの感情を覚えていたが…



「でも…ここで諦めるわけにはいかないよねぇ」

「ですね!!少し迫力は減ってしまいますが、間に合うような短縮版を考えましょう!!」



 誰一人として完成を諦めることなく、互いに案を出し合って作業に取り掛かろうとしていた。


 朝陽も頬を叩き、自分の弱い心を打ち払うと、再び作業に取り掛かろうとした…その時だった。



「あーあーそれじゃあダメよ皆」



 背後から声をかけられ、朝陽達は一斉に振り返る。


 そこには、日下部 リナと、リナ率いる15名の技術班全員が揃っていた。



「く、日下部さん!?それに技術班の皆さんまで!?どうしてここに…」

「いやぁそれが私にもよく分からないんだけど、咲夜さんから、急遽今日の作業は終わりで良いって告げられて。そしたら耳打ちで朝陽ちゃん達の話を聞かされたんだよ」



 朝陽達は一様に驚きの表情を浮かべ、顔を見合わせた。



「指揮官…お見通しだったんだ…」

「いや、それよりも指揮官が影で力を貸してくれる方が驚きだわ…」



 全員の動きが止まる中、リナ達技術班がそそくさと動き始める。



「これは私達の専売特許。あとの大体のことは任せて」

「え、で、でも…」

「日頃命を守ってもらってるだから。少しくらい恩返しさせてちょーだいよ!!」



 実際のことを言えば、朝陽達こそリナ達に助けられている面が大きい。


 戦闘の補助をしてくれるバトル・マシナリーの殆どは、リナ達によって作られ、そしてメンテナンスなどを任せているからだ。


 もし、リナ達がいなければ、実際の今の戦闘の6割を行うことが出来なかっただろう。


 現場で戦うのは朝陽達であっても、それとは違う面でリナ達も戦ってきたのだ。


 それでも、朝陽達はこの時はリナの言葉を受け入れた。リナ達が任せろ、と言うことは、朝陽達がいると余計に時間がかかると判断したのだろう。



「分かり…ました。お願いします」

「まっかせなさい!!さぁみんな!!明日の昼くらいまでには仕上げるわよ!!」

「「「おおっ!!」」」



 流石は技術班、というだけはあり、その速さは朝陽達の比ではなかった。


 朝陽達が十分かけていた作業を、技術班の面々はももの数分、ものによって一分もかけずに終わらせていった。



「イルミネーションの下準備は私達が終わらせておくからさ、朝陽ちゃん達は、明日の計画を練っておいて頂戴」

「は、はい!!」



 必要な作業と準備はほぼ完了した。あとは明日に備えて作戦を練るだけとなった。


 クリスマスの夜まで、残り20時間を切った。






●●●






 当日(25にち)の夕暮れ時。リナ達技術班の尽力もあり、『エナジー』によるイルミネーションの準備はほぼ終了していた。


 事前に訓練学習生担当教官にも伝えてあり、あとは時刻(20時)を待つのみであった。



「え!?配線の接触不良!?」



 しかし、事の全てが上手くいくわけでは無かった。



「ごめん!!もっと注意深く見るべきだった!!配線を繋げることばかりに気がいっちゃってて、配線の状態の確認を怠っちゃった…技術班失格だよ…」



 とは言うものの、リナ達を責める事は出来ない。


 何せリナ達技術班は、このイルミネーション完成のために、本業のあとにほとんど夜通しで作業をしてくれたのだ。



「配線を取り換える事はできないんですか、リナさん?」



 夜宵が尋ねるが、リナの反応は芳しく無かった。



「配線を取り換えること自体は難しくないんだ。問題なのは、その接触不良を起こしてる配線の位置なんだ」



 リナは悔しそうに頭を掻き、説明を始める。



「通常の配線は勿論一本の線なんだけど、今回の配線はその無数の配線をまとめる中央配線なんだ。これが接触不良を起こしてるとなると…」

「成る程…つまりそこが機能しなければ、どの配線にも『エナジー』を流すことが出来ないわけですね」

「そう!…なんだよ…ね。つまり、張り巡らされた配線の一本一本をそこに集結させて、繋ぎ直す必要があるんだけど…私達技術班を総動員しても、多分3時間はかかる…」



 三咲の解説に思わず頷いたリナは、次第に表情を沈ませていく。



「三咲。イルミネーションの開始時間までは?」

「あと1時間ですね」



 沈黙と気まずい雰囲気が辺りに漂う。


 時間的に言えば今日中に間に合わせる事は出来る。しかし、対象が10歳前後の子どもとなれば、時間帯が遅くなるのは好ましくない。


 しかし、何より避けるべきなのは、子ども達に期待を持たせておいて、何も出来ない…という最悪のケースだ。


 朝陽の目に強い意志と覚悟の光が宿る。



「皆さん、私に提案があります。力を貸してください」

三部で終わる予定が全く収まらなかったので、今日の20時にまた更新します!!


例のセリフは20時にお預け!!

20時からまたお願いします!!

サンタさんレ◯ュー運んでこないかなぁ(´-`).。oO

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