第71星:勝利と…
国舘 大和(24)
再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。『グリッター』とのぶつかり合いを経て信頼を勝ち得た。
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。指揮官として司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。
斑鳩夜宵(22)三等星
千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の元隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は『夜宵小隊』の小隊長。
樹神 三咲 (22) 三等星
千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。『三咲小隊』小隊長。
佐久間 椿(22) 三等星
千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。『椿小隊』小隊長。
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23) 四等星
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。
久留 華 (22)四等星
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。
曲山 奏(20)四等星
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。
【椿小隊】
写沢 七 21歳 159cm 四等星
写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。
重袮 言葉 20歳 158cm 四等星
活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…
海藤 海音 16歳 151cm 四等星
誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。
【三咲小隊】
椎名 紬 22歳 四等星
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。
八条 凛 16歳 四等星
自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。
大刀祢 タチ 17歳 四等星
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。
【夜宵小隊】
私市 伊与 19歳 四等星
年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。
早鞆 瑠衣 18歳 四等星
十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。
矢々 優弦 16歳 四等星
幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。
『(オカシイ…)』
エデンは全く動きが怯まない人間の様子を見て困惑する。
『(確カニ人間ドモノ作戦ノ中枢ヲ防イデヤッタハズダ!!ナノニ…ナゼ奴等ハ微塵モ同様シテイナイ!!)』
少なくない勝利を確信していたエデンであったが、それは大きな間違いであった。
エデンが目の前の事態に対応していたのに対し、大和は常に次のプランを持っていた。
エデンが人質を取った時でさえ、その可能性を考慮していたために、冷静に現場へ指示を出すことが出来たのだ。
『ナンダ…ナゼダ!!私ノ対応ハ完璧ダッタハズダ!!ナノニ何故貴様ラハ動揺シナイ!!』
当然、答えは返ってこない。しかし、もしこの場に、『エデン』と『大和』、両者を知るものがいればこう答えただろう。
経験値が違う、と。
エデンは生まれてからまだ数ヶ月しか経っていない。
メナスであるためその成長速度は計り知れないが、それでも、大和の何十年という経験には及ばない。
もし、この時相対しているのが大和で無ければ…前指揮官、塚間のような人物であったのなら、エデンは余裕の勝利を収めていただろう。
しかし、相手が悪かった。もし、大和がこの場にいたのなら、こう口にしていただろう。
「人間を、舐めるなよ!!」
『〜〜〜〜ッツ!!!!』
それが口にされたわけでも、エデンの耳に届いたわけでもない。
しかし、完全に踊らせたと実感したエデンの目は血走り、戦場を見つめる。
そして、今そこでは、再び一人の人間が強大な攻撃を仕掛け、エデンを敗北へ陥れようとしている姿があった。
『マダダァ!!同胞達ヨ!!頭上二イル人間ヲ撃チ殺セェ!!!!』
テレパシーで通じる筈の命令を、思わず口にしながら叫んだエデン。
それに応え、残されたメナスは一斉に朝陽の方へと目を向け、レーザーの発射態勢に入った。
●●●
「きたよ、三咲さん!!」
「見えてるわ!!梓月さん、『念力操作』を!!」
『はい!!』
朝陽の攻撃に反応し、メナスが一斉にレーザーの発射態勢に入った瞬間、準備を進めていた『グリッター』達が一斉に動き出す。
まずは紬。
既に半数のメナスと視線を交わし終え、その視線先を常に見張る。
そしてその視線が朝陽に向けられたことを三咲に告げる。
次の役割は三咲。
戦場全体を見渡し、他の個体がいないことを確認。そして一体に『偏光反射鏡』を配置していた梓月に報告する。
実行に移った最初の人物は梓月。
自身の『グリット』により、五十にも及ぶ『偏光反射鏡』を浮遊させ、メナス達を囲うようにして円状に展開させる。
「『操作』!!椿さん!!」
「はいは〜い」
二番目に実行に移ったのは椿。
鏡の展開確認後、仕掛けておいた8つの罠全てを、指を鳴らして発動させる。
『ッ!?』
次の瞬間、メナス達は全く身動きが取れなくなる。
身体や顔の向きが固定され、まるで押し潰されるような感覚が全身を走る。
「今回の罠は磁石を使った重力系の罠。しかも、最強の磁力と言われてるネオジム磁石(750円)を使用して、八箇所からNNで設置してきたよ〜。メナスといえど、これじゃあ動けないでしょ〜?」
確かにメナス達は動くことが出来ずにいた。が、既に照準は合っている。問題ないと判断したメナスがレーザーを放とうとし…
「奏さん!!」
「はい!!私の出番ですね!!」
その間に奏が立つ。
その手はメナスに向けられており、放たれたレーザー全てを鏡の方へと跳ね返す。
三咲と紬がメナスを視、梓月と椿が仕掛け、朝陽と奏が仕留める。
これは、全て大和が最初から考えていた作戦であった。
●●●
ーーー数日前、三咲が大和に提言したその日の夜
「大和。何故、朝陽小隊の面々を残すことにしたのですか?サポート的な面をお考えでしたら、三咲小隊の方が適任かと思われますが」
執務室に残り事務仕事を続けていた大和に、咲夜はお茶の差し入れを出しながら問いかける。
「そうだね。確かに三咲君達の方が支援に向いた編成になってる。けれど、そこで三咲君達を残すと言えば、また少なくないしこりを残すことになるだろう」
「それが…理由ですか?」
大和にしては理由が不十分であると感じた咲夜は、首を傾げる。
しかし当然、大和の考える理由はこれだけではなかった。
「もう一つは、朝陽君達の小隊が機動性に優れていること。不測の事態が起きた時、若しくは対応されることに対応しなくてはならない事態が起きた時、それに真っ先に臨機応変に対応することが出来るのは、朝陽君達だからだ。これは、もう朝陽君にも話してあるけどね」
「いつの間に…ですが、納得することはできまし…」
「そして最後にもう一つ」
既に十分納得していた咲夜に、大和は更に理由を付け足す。
「朝陽君の人望、人柄に釣られ、皆んなが朝陽君を信じ、頼っている。彼女を作戦の中心に据え置くことで、ここの『グリッター』達は最大限に力を発揮できると思ったからだ」
本人がその場にいたら卒倒したかも知れないほどの賛辞に、咲夜も僅かに驚きを見せる。
「…では、もし大和のいう不測の事態が起きた際には…」
「朝陽君を作戦の中心に動き直す。まぁ見ていなよ咲夜。もし、その時が来ても、彼女達はボクの期待以上の動きをしてくれるはずさ」
●●●
ーーー現在
「(貴方の言う通りでした、大和。朝陽さんを中心に据えた瞬間、まるで歯車が噛み合ったかのように、皆さんが動いている…)」
現場の戦闘員の動きを、各機器で見ていた咲夜は、その無駄のない動きに、ただただ驚いていた。
常に次のプランを用意していた大和の貢献こそあれど、指示を出してからの全員の動きは、彼女達自身の力と絆によるものに他ならなかった。
「(あぁ…朝陽さん…私も、あの時、貴方のようになれていれば…)」
モニター越しに輝く朝陽を、咲夜はどこか、羨ましそうに見つめていた。
●●●
メナスのレーザーは奏により曲げられ、その全てが展開されている『偏光反射鏡』に均等に飛ばされていく。
身動きが取れないメナスの全域から、自分達が放ったレーザーが跳ね返り迫ってくる。
しかし、メナス達は椿のトラップにより動くことは出来ず、更なる脅威を目にすることしか出来なかった。
奏の姿は既にそこにはなく、メナス達の目に映るのは、視界を覆い尽くす、巨大な閃光のみであった。
次の瞬間、集っていたメナス達の元に、巨大な閃光と無数のレーザーが降り注いだ。
巨大な衝突音と爆発音のあとに、大きな爆風煙が辺り一帯を覆い尽くす。
煙が晴れた後、そこにメナス達の姿は無く、エデンとの戦いは、朝陽達の勝利で幕を降した。
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『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!』
同胞達が目の前で消滅し、自身が完全敗北を喫したと悟った瞬間、エデンは知性を感じさせない咆哮を轟かせた。
きれた息を整えた後、エデンはフッとほくそ笑む。
『アァ、認メヨウ…私ノ完敗ダ…今回ハ潔ク引クトシヨウ…ダガコレデ終ワリデハナイ!!今ノ私二トッテ敗北トハ成長デシカナイ!!コノ屈辱ヲ糧ニシ、今度コソ貴様等ヲ死ヘト追イ詰メテヤルサ!!』
エデンの言う言葉は嘘ではない。今回の戦いは大和の経験値により勝利を収めたが、戦いが続けば続くほどエデンも経験値を得て、その差を着実に縮めていくことになる。
『知性』を売りとするエデンにとって、その経験値は自身を大きく成長させることになるだろう。
『貴様等ノ顔ハ覚エタ…次ノ戦イデハ覚悟ヲ……』
と、その場を去ろうとしたエデンは、何かの気配に気が付く。それは自身よりも禍々しく、そして畏怖するような強力な気配だった。
『マテ…マテマテマテ!!』
エデンはその正体に直ぐに気が付いた。
『何故貴様ガ目覚メテイル!!何故貴様ガココニイルンダ!!』
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「やりましたね朝陽さん!!我々の完勝ですよ!!」
戦いに勝利し、安堵していた朝陽の元に、奏をはじめ全員が集まってくる。
「はい!!皆さんのお陰です!!本当にありがとうございました!!」
「勝利することが出来たのはぁ、朝陽ちゃんの『グリット』ありきだよぉ。謙遜しなさんなぁ」
全員にお礼を告げていた朝陽に、華がのほほんとした口調で称賛する。
しかし、朝陽はそれを尚否定するようにして首を振った。
「本当に違うんです。皆がそれぞれの強さを活かして、皆が協力し合うことが出来たから、どんな事態にも負けずに勝利を手にすることが出来たんです。私も、その一つに過ぎません」
朝陽の言葉に、全員が頷く。言われた通り、朝陽達『グリッター』が、今回の戦いで全力を尽くして戦えたと感じていた。
だからこそ、朝陽の言葉に素直に賛同することが出来たし、改めて言われてみれば、それを全て朝陽に押し付けるのもまた違うと感じた。
「だから、これは全員の勝利です!!私達の絆の勝利なんです!!」
この言葉を受け、今度は全員が相好を崩した微笑んだ。
「みんな帰りましょう!!そしてこの勝利を司令官に……!!」
【ミ〜ツッケタ!!!!】
※ここから先は筆者の後書きでありんす。興味のない方はどうぞ読み飛ばしておくんなし
ども、琥珀です(こっちは普通かーい)。
今話からめっさ飛ばして展開進みましたね笑
まぁ悩みましたよ?アレの登場は。
でも、このタイミング出す方が、なんか…インパクトあるかなって…
この展開は次回も続きますよ?ドキドキしてください笑
本日もお読み下さりありがとうございました!!
次回の更新は月曜日を予定していますので宜しくお願いします!!




