第66星:闇の影
国舘 大和(24)
再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。『グリッター』とのぶつかり合いを経て信頼を勝ち得た。
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。指揮官として司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。
斑鳩夜宵(22)三等星
千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の元隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は『夜宵小隊』の小隊長。
樹神 三咲 (22) 三等星
千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。『三咲小隊』小隊長。
佐久間 椿(22) 三等星
千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。『椿小隊』小隊長。
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23) 四等星
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。
久留 華 (22)四等星
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。
曲山 奏(20)四等星
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。
【椿小隊】
写沢 七 21歳 159cm 四等星
写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。
重袮 言葉 20歳 158cm 四等星
活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…
海藤 海音 16歳 151cm 四等星
誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。
【三咲小隊】
椎名 紬 22歳 四等星
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。
八条 凛 16歳 四等星
自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。
大刀祢 タチ 17歳 四等星
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。
【夜宵小隊】
私市 伊与 19歳 四等星
年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。
早鞆 瑠衣 18歳 四等星
十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。
矢々 優弦 16歳 四等星
幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。
「撤退命令〜?メナスが目の前にいるのに?」
数十体のメナスとの戦いを繰り広げながら、椿は通信機越しに告げられた命令に疑問を抱く。
『……。……!』
「…いや、勿論司令官の命令なら従うよ〜?でもその先の動きを教えて欲しいかなぁ〜」
『……。』
「ん?あ〜成る程。待ち伏せされてたのはここだけじゃ無いんだ。じゃあ撤退もやむを得ないよね〜」
『…………。……!…!』
「…あ〜そういうこと。じゃあ私達の隊に真っ先に撤退命令が出るわけだね」
やり取りを繰り返し、その作戦内容に納得した椿は直ぐに行動に移る。
「みんな通信は聞いてたよね〜?このまんまじゃ劣勢だから撤退するよ〜」
椿の指示を聞き、前線で戦っていた3人が後退を始める。
「くそぉ…まんまと嵌められて退かないといけないなんて!!」
悔しそうに歯を食いしばる海音を、七が宥めながら後退していく。
「ま、この状況じゃ仕方ないよ。後の先を取るのが売りな椿小隊が、後の手を踏まれてる状況じゃね」
「でも海音の気持ちも分かるなぁ。まさかメナスに対応するための作戦に対応されるなんて…」
そう話しながらも、椿小隊の面々は、どこか心に余裕のある様子であった。
当然、待ち伏せによる襲撃を受けた際には動揺しており、具体的な対策もなくただメナスと相対することしか出来なかった。
もし、状況がこれまでと同じであったのなら、椿達はここで全滅していたかもしれない。
しかし、今の椿達には今までにない余裕があった。それは、大和の存在だ。
初の戦闘時から大和が司令官に着任し、その指示に従うことで、椿達は窮地を抜け出してきた。
この戦闘でも大和は即座に次の指示を出している。司令官には考えがある…それを理解するだけで、椿達には安心感と余裕を得ることが出来ているのだ。
「ともかく退くよ〜。ここからは次の作戦通りに」
「「「了解!!」」」
椿の言葉を皮切りに、小隊全員が撤退を開始。その動きを逃亡と捉えたメナス達は、追撃を始め出す。
●●●
「…三咲小隊了解。頃合いを見て撤退を始めます」
新しい指示を受け、素直にそれを受諾したものの、三咲の表情はどこか悔しげであった。
それもそのはず。自分が提言した作戦がものの見事に逆手に取られたのだから無理もない。
「心配ないさ三咲さん。どんな作戦にも完璧なんてものは無い。大事なのはそれを次に活かすこと、そして瞬時に切り替える気持ちさ」
「貴方は…普段はキザったらしいのにこういう時はまともな事を言いますね…」
「さりげないでは済まされないレベルのdisりを受けたが、まぁ否定はしないさ。キザったらしく振る舞うのが私らしさなのだから」
紬はやはりキザったらしい仕草で前髪を払うが、それが寧ろ三咲の気持ちを和らげていった。
「ありがとうございます紬。貴方のいう通りです。今は次に活かすことを考えなくては」
三咲は一瞬だけ目を閉じ、気持ちを直ぐに切り替えると、目の前で戦いを続けるタチと凛に指示を出す。
「タチ、凛!!頃合いを見て撤退を始めます!!経路は私が指示しますので準備を!!」
「うえぇ!?私まだ何も活躍してないのに!!」
三咲の指示に不満気な声を出したのは凛だった。しかし、隣で戦っていたタチが直ぐさま凛の元に寄り嗜める。
「バカを言ってないで退くぞ。三咲さんと紬さんの支援があっても、私達二人じゃこの数は捌ききれない。それが分からないほど愚かじゃ無いだろ?」
凛も当然その事には気付いていたのだろう。変わらず不満気な顔はしていたものの、素直に頷き、ゆっくりと下がりだし、椿小隊に続き三咲小隊も後退を始めた。
●●●
「…みんな聞こえたわね。間を開けてから撤退を始めるわ」
「はいっす!!」
「畏まりましたわ」
夜宵の指示を聞き、小隊の面々は素直にゆっくりと後退を始める。
夜宵も応戦しつつ少しずつ後退していく中、その心の中では複雑な感情がぶつかり合い葛藤していた。
「(こうして…小隊として動く事で実感させられる…私の『グリット』は、みんなを活かすことができない…)」
夜宵は戦闘中常に『闇』を展開し、メナスの攻撃に対して対応できるよう備えていた。
実際その効果がなかったわけでは無い。メナスの攻撃を飲み込み、伊与や瑠衣の身を守る場面もあった。
しかしそれは、夜宵の『グリット』の力の副次的なものでしか無い。本来は敵の全てを飲み込む凶悪な闇こそが本来の力である。
しかし、味方に展開している以上、不必要に力を解放すれば味方を飲み込みかねない。
先日の一件で、指揮官に叱咤激励を受けたとはいえ、直ぐに行動に移せることなど出来るはずが無かった。
加えて言えば、防御の手段に関しても、何も夜宵の闇である必要はない。当然小隊の面々も『耐熱反射鏡』は常用しており、レーザー等はそれでも十分に防ぐことが可能である。
つまり、夜宵の『グリット』は、現在その能力を全く発揮できないでいた。
そのことを、他の誰でもない夜宵自身が痛感しているからこそ、この心の葛藤が生まれていた。
「(これじゃ…このままじゃダメだわ…何か…何か私自身が変化しないと…)」
葛藤の最中、撤退のため後方に下がった瞬間だった。
『知れたこと…情を捨てれば良いのよ』
急に暗くなった視界とともに、その影は現れた。
「なん…ここは!?」
辺りを見渡せど、あるのは蠢く影のみ。その影の濃さは、夜宵自身が自分の姿を視認することすら困難な程であった。
で、あるにも関わらず、夜宵は目の前に何者かがいる気配をハッキリと感じ取っていた。
『ようやっと…こうして相見えるたな娘。と言っても時間はそう長くないようだが』
目の前から感じる気配は、ハッキリと夜宵にも聞こえる声で語りかけてくる。
「(身体が…動かない!?)」
影は夜宵に纏わり付き、動くことを許さない。しかし、何故か視線だけは釘付けになっていた。
『愛い…愛いのう娘…幼き頃の我を見ているようだ…』
「お前…は?それに…情を捨てろとは!?」
身動きが取れず、姿も見えない影に向かい、夜宵は声を荒げて話す。
影は蠢きとともに笑い声を溢す。そして次の瞬間、夜宵は絡みついていたただの影が、今まで自分に語りかけてきた影と変わった事に気がつく。
手足を縛っていた影はそのままに、自分の身体や頬を撫で回すように蠢く影は、影でありながら人の手のような触感であった。
そして影は、耳元で囁くようにして、夜宵の問いに答えた。
『なぁに…難しく考えるでない…そのまんまの意味よ…』
その声は、諭すような、あやすような…甘美でありながら妖艶な声で、夜宵の耳元で囁く。
『味方のことなど考えるな…人も…モノも…全てを飲み込むその闇こそ、我が力の真髄。それを…他者を鑑みて力を抑え込むなど…』
「力は…『グリット』は人々を守り、生きるために立ち向かうための力!!人を巻き込むなど愚か者のすることでしかないわ!!」
『それこそ愚の骨頂であるな!!【輝き】だと!?よく見てみろ小娘!!貴様の中の、どこに光など存在する?』
「ッ!?」
最早囁きではなく、はっきりと語りかけてくる影の言葉に、夜宵は困惑する。
影のいう通り、周りに広がっているのは、見渡せど見渡せど闇ばかりだったからだ。
「ち…ちが…『グリット』の意味は輝く光そのものを表すんじゃなくて…その心構えを…」
『ふはっ!面白いことを言う。ならば敢えてもう一度言ってやろう。よく見てみろとな!!貴様の心の中には闇しかないということを!!』
夜宵は今度こそハッキリと同様を露わにする。ここが自分の心の中である、と告げられ、感情を殺すことなど出来るはずもなかった。
『…ちっ、もう時間か…』
影はその言葉とともに、少しずつその存在感を失っていっていた。
『忘れるなよ娘。貴様がどれだけ輝きを求めようと、貴様は影だ。光自体になれはせぬ』
「……」
『我が力を求めるのであれば、輝きを求めるな!!情を捨てよ!!さすれば貴様は誰であろうと太刀打ちできぬ最強の力を手にすることが出来るのだ!!』
最早答えることすら出来ない夜宵に、影は最後の力で夜宵の手を掴む。
『そしてこれも忘れるな…貴様の心の中には、常に闇が巣食っているということをな!!』
それを最後に、影は完全に姿を消した。同時に、夜宵の意識も現実へと戻っていく。
「夜宵隊長!!大丈夫っすか!?」
目の前には、自分を支えるようにして立つ瑠衣の姿が目に入った。
「瑠衣…私は…?」
「後退中に急にふらつかれ、倒れそうになったところを瑠衣さんが支えられたんです」
直ぐ隣には、そんな夜宵を心配そうに覗き込む伊与の姿があった。
「夜宵さ…ん。立て…る?メナ…スが迫って…るんだ。早く撤退…を始めない…と」
更に前線では、優弦が一人メナスを牽制していた。それを見てハッとした夜宵は直ぐに立ち上がり、意識をはっきりと取り戻す。
「夜宵さん、やっぱりまだ身体が十分ではないのでは…」
「大丈夫よ!!ごめんなさい、心配をかけてしまって…今度こそ撤退を始めるわ」
尚も伊与と瑠衣の二人は夜宵を心配そうに見つめていたが、メナスが迫っていることもあり、夜宵の指示に従い撤退を始める。
3人が先に後退し、夜宵がその背中を追いかけていく中、夜宵はほんの一瞬、闇が3人を飲み込む幻覚を見てしまい、それを必死に振り払っていた。
※ここから先は筆者の後書きになります!例の如く大したことは書いてないので、興味のない方はどうぞ読み飛ばしてください!!
ども、琥珀でーす
もうすぐ十一月も終わり、十二月を迎えますね
それが終わればあっという間に新年…早いものです…
そういえば戦闘回が始まったとか前回書いておきながら、早速の逃亡編。しかも今話は描写すらないという笑
でももうすぐちゃんと闘いますのでご安心ください笑
それでは、本日もお読み下さりありがとうございました!!
次回の更新は月曜日を予定しておりますので宜しくお願いします!!




