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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
4章 ーメナス異変編ー
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第62星:提言

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救った。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦いの傷は癒え、戦線へ復帰する。


樹神 三咲 (22)

千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。


佐久間 椿(22)

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。

「近隣市それぞれに小隊の配置を提言します」



 技術班倉庫から執務室に戻ってきた大和のもとにそれから間もなくして三咲達小隊長4名が訪ねてきた。


 そしてその内容を尋ねると同時に、三咲が一つの案を話し始めた。



「それは…つまり千葉根拠地エリア内をいくつかに区分して、それを各小隊が対応する…ということかい?」

「そうです。そうすれば、同時に襲撃を受けたときでも直ぐに別の小隊が対応できます」



 三咲の提案は、確かに対応策ともとれる内容であった。それなら前回と同じ手段を使われても確かに対応できるだろう。


 しかし…



「残念ながら、それを許可することはできない」

「…何故でしょうか?」



 当然、拒否された三咲の目つきは険しくなる。しかし、大和はこれに微塵も臆さず見つめ返して答える。



「一つは、戦力の希薄化だ。小隊を各エリアに万遍なく配置すれば確かに対応力は上がるかもしれない。けれどそれは不可数カ所の襲撃に対する対応力でしかない。一つの出来事に一つの対応をしていては、次を見越した対応に問題が出る。もっと幅広い観点で物事を考えないとね」

「それは…ですが!」

「二つ目は戦力の分化のデメリットが多すぎること。君達の強さは個でなく和だ。大隊であろうと小隊であろうと、仲間がいるからこそ個が活き和が培われる。必要以上に戦力を分散させることで、自分達の強みを捨ててどうする」



 大和の言葉は全て正論だった。しかし、三咲は食い下がった。



「では、このまままた同じことを繰り返せと?市民がただ襲われるのを待ってから出撃しろと!?」

「三咲、やめなさい」



 夜宵の制止も、三咲は振り切る。



「それとも司令官には、何か対策があるのですか?」

「…完全な対応策は…今のところは無いのが正直なところだ」

「…っ!それで私の案を棄却されるのですか!?何の代替案もお考えでないのに!!」

「三咲…!!」

「いい加減にしなさい樹神三咲三等星」



 三咲を窘めたのは、大和の後ろに立つ咲夜だった。先程の三咲以上に険しい目つきで、三咲を睨みつける。



「確かに代替案はありません。ですが貴方の案が正しいものではないことも事実です。我を通すために因縁をつけるのは止めなさい」

「確かに私の案に欠点があるのは事実です!ですが、いま現段階で、この案以外の方法はありますか?」



 それに怯まず、三咲はさらに大和を問い詰める。咲夜がそれに対し何かを言い返そうとするが、大和がそれを手で制する。



「君達も、三咲君と同じ考えかい?」



 大和は三咲から目を離し、他3名の意見を確認する。


 朝陽は正直納得できてないところがあるのか、直ぐに答えを出さず、逆に夜宵は大和と三咲二人の話を聞いて深く考え込んでいる様子だった。


 その中で、真っ先に答えたのは意外にも椿だった。



「私は有りだと思うよ〜」



 あいも変わらず、どこか気の抜けたような声で椿が賛同する。



「ふむ…何故だい?」



 大和は純粋な好奇心と疑問から、椿にその考えについて話すよう促す。



「三咲ちゃんの案に対する司令官の考えはあってると思う。けど〜、それは三咲ちゃんの考えと同じ、理論的な話でしょう?現場は理論通りにはいかないって言うけど〜、今回に限って言えば、その逆もあり得るかな〜って」

「…つまり、実際に戦っていく中で、臨機応変な対応ができる…ということかい?」

「そ〜そ〜そんな感じ〜」



 纏めたのは大和だが、概ねその内容は合っているようだった。そして一理あるとも考え、小さく頷く。


 チラリと朝陽の方を見るも、朝陽はその話を聞いてさらに頭を悩ませているようだった。再び視線を動かし、大和は夜宵に尋ねる。



「夜宵君、君の考えはどうだい?これまで大隊を率いてきた君からすれば、真逆のことを行うようなものだけど」



 夜宵は直ぐには答えず、数秒程の沈黙の末口を開いた。



「…私も、試してみる価値はあると思います。正直なところ、私も懐疑的な見方をしていましたが、椿の話を聞いて、一つの対応策として行うと考えれば、実行してみる価値はあるかと」



 夜宵の意見を聞き、大和は珍しく難しい表情を浮かべた。しかし、意を決した顔で再び口を開く。



「分かった。前線で戦う君達の考えが一致しているのならばそれを試してみよう」



 大和は「但し…」と続ける。



「いきなり全小隊を各エリアに配属するのはリスクが高過ぎる。そこで、一点妥協してもらいたい」

「何を…でしょうか?」



 大和は小さく頷き、その案を口にした。







●●●







「やりましたね三咲さん!!私達の案が通ったんですね!!」



 『グリッター』用の宿舎に三咲達が戻り、結果を伝えると、海音達はそれを喜んだ。



「私達なりに精一杯考えた案だからね。否定だけさらても困るよ」

「い、いや、紬さんそれっぽいこと言うだけで具体的な案は何も言ってなかったような…」



 タチが冷静な突っ込みを入れるも、紬は聞いてるんだが聞いてないんだからよく分からないキザったいポーズを取り反応しない。



「それにしても、良くこの作戦通ったわね?対策としては有りだけど、正直穴はあるわよね?」



 全員が喜びを表す中、七が今回の作戦について冷静にコメントする。



「そうね。そこは司令官も見抜かれてたわ。だからこそ、一つの条件…というか、妥協案を出した」

「へぇ?妥協案って、どんな?」

「いち小隊を根拠地に残すこと。それが今回の作戦を実行するにあたって提示された条件よ」



 夜宵の答えに、夜宵達小隊長を除く一同がざわつく。



「ふぅん…それで、この作戦の起案者である三咲は納得してるの?」



 これまでの大和との対立を見てきたからか、それを悟らさないようにしつつ、七が三咲に尋ねる。


 しかし、予想に反して三咲は納得したような表情で頷いた。



「作戦に穴があるのは分かっていましたし、司令官の指摘も真っ当なものであったと思ってます。不安要素を減らすためにも、いち小隊を残す案は妥当かと」

「…そう。当人が納得してるなら全然良いわ」



 意外、とは口にせず、七は自身も納得したように頷いた。



「それで?いち小隊が待機ってのは、どこの小隊が待機することになるんすか?」



 次いで、当然の疑問を問い出したのは瑠衣だった。



「それは…」



 夜宵はどこか答え辛そうにしながら、視線を泳がす。やがてその視線は朝陽の方へと向かっていく。


 朝陽も自分に注目が集まっていくのを感じ、どこか無理に使ったような笑顔を浮かべた。



「えと…私達の小隊が残ることになりました」

「…それは、司令官が決めたことかい?」



 紬の問いかけに、朝陽は僅かに躊躇を見せた後、ゆっくりと頷いた。



「司令官のことだ、考えなしに朝陽君の小隊を待機に選んだわけではないと思うが…」



 どこか重苦しい雰囲気になってしまったことを察した朝陽が、再び笑顔を浮かべ、それを払拭しようとする。



「で、でも仕方ないことだと思います!!奏さんや華さん、梓月さんは経験豊富ですけど、隊長の私が新米ですから!!それに、大変なのは皆さんの方なんですよ?ただでさえ広いエリアを、三小隊で見ないといけないんですから!!」

「それは…まぁ、そうだが…」



 無理をして笑顔を作っていることは、誰もが理解していた。


 しかし、それだけに、朝陽の言葉を否定することも出来ずにいた。


 それに、朝陽の言葉に納得できないわけでもない。事実、朝陽小隊の3人は、特に反発するでもなく、それを受け入れているようだった。


 しばしの沈黙の後、それを破ったのは夜宵だった。



「さぁ、難しく考えるのはここまでにしましょう!!私達の考えが通ったのは喜ばしいことだけど、だからこそ失敗は出来ないわ。各小隊ごとに今後のプランを検討しておいて」

「「「はい!!」」」



 夜宵も今はいち小隊長でありながら、『グリッター』に指示を出し、そして彼女達も何の抵抗もなく返事を返す。


 体制が変ろうとも、やはり夜宵に対する信頼は微塵も揺らいでいなかった。


 全員が次の作戦に意気込む中、朝陽は僅かに表情に影を落としながら、そっと宿舎をあとにした。

※ここから先は筆者の後書きになります。そんな大したことは書いてないので興味のない方はどうぞ読み飛ばして下さい








ども、琥珀です

先日は更新操作ミスすいませんでした…

今回はミスなく行えたと思います笑


しかし日が沈むのが早くなりましたね…

冬は嫌いではないのですが、明るい時間が減るのはなんだか寂しいですよね。

それからこれからどんどん寒くなって行きますので、お身体にはお気をつけ下さい


それでは、本日もお読み下さり有り難うございました!

次回の更新は月曜の朝を予定しております!

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