第60星:会見
国舘 大和(24)
再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?
『それではこれより、千葉根拠地における会見を開始致します。代表者、千葉根拠地司令官、国舘 大和司令官、お願いします』
昨日の時間から12時間が経った翌日。根拠地に用意された会見場には数多くの記者、そして被害にあった市民の人々が集まっていた。
その台の上に、司会者に呼ばれた大和が向かっていく。
「ただいまご紹介に預かりました、千葉根拠地の司令官を務めさせて頂いています、国舘 大和です」
『それでは、今回の経緯の説明をお願いできますか?』
司会者の言葉は冷たく、どこか突き放すような淡々とした口調だった。
「まず第一に、我々の対応が遅れてしまったこと、そして皆様に被害をもたらしてしまったことを深くお詫びいたします。今回の騒動での被害に関しましては、『軍』が最大限の保障を致します」
大和は、第一声に誠心誠意の謝罪を届けたものの、司会者や記者、市民の眼差しは冷たいままであった。
「それでは、今回の経緯についてご説明を始めさせていただきます。今回、メナスの襲撃は二度に渡って行われました。一度目は市原、袖ヶ浦方面に、そして二度目は市川、浦安方面に出現しました」
経緯を話し始めたばかりでありながら、記者や市民達は早くもざわつき始めた。
それでも大和はそれらを気にする素振りを見せず、話を続けた。
「…当根拠地はメナスの存在を感知次第直ぐに出撃をしましたが、発見が遅れてしまい、被害を出してしまいました。これはこちらの失態によるものです。改めてお詫び申し上げます」
一通りの話を終えたことを察した司会者は、直ぐに次に移るべくマイクを手に取る。
『それでは、質疑応答に入りたいと思います。質問のある方は挙手をお願い致します』
その言葉と同時に、大勢が一斉に手をあげる。
経緯しか説明していないのだから、質問があるのは当然のことではある。
司会者もあらかじめ予測はしていたのだろう。特に怯むこともなく、冷静に処理していく。
「何故対処が遅れたのですか?」
「レーダーによる感知が出来ず、実際に襲撃報告を受けるまで動くことができませんでした」
「それは故障によるものですか!?それとも正常でありながら発見することができなかったんですか!?」
その問いに、大和は僅かに口籠る。一瞬だけ目を閉じ、そしてゆっくりと口を開いた。
「昨日の事件後、直ぐさま技術班がレーダーや各種装置を確認しましたが、異常や故障はみられませんでした」
「で、では!!メナスがレーダーを掻い潜って侵入して来たということになりませんか!?」
記者から返されたのは予想どおりの返答だった。大和が逆の立場であっても同様の質問を返しただろう。
「…可能性としては、十分にあり得ます」
「対策は!?今後の対策はあるんですか!?」
「…現状、どのような原理で探知を逃れたのが不明であるため、その追及から取り掛かって…」
「そんな悠長なことを言ってる場合かっ!!」
怒号のような声を上げたのは、記者席よりも後ろに用意された市民席からだった。
「お前ら『軍』がそんな腑抜けたことばかりしているからこちらは被害が出る一方なんだよ!!」
「そうだ!!衣食住が奪われて、明日の心配すらしなくちゃならない俺たちの気持ちも考えてみろ!!」
それはともかく記事の内容が欲しいと思う記者達をも竦めるほどの怒りだった。
「私…私は家族を失いました…働く場所がここで無ければこんなことには…返してください…息子を返してください!!」
悲しみと怒りの混じった声が大和へと向けられ、周りの市民達はそれを慰めるように集まる。
それを大和に見せつけるために。
「被害にあい、亡くなられた方には心よりお悔やみ申し上げます…皆様の仰られるよう、原因究明及び解決策に最大限努力を重ねてまいります」
市民も記者も納得がいっていない様子であったが、このままでは議論が進まないと考えたのか、そこで一旦非難が止まる。
「先程メナスが二度に渡って襲撃したと仰いました。何故メナスは二度に渡って攻めて来たのかを教えて頂けますか?」
この質問も、大和にとっては答え辛い内容であった。これに答えれば、一般市民にメナスに『知性』があるということを認知されてしまうからだ。
しかし、『軍』の上層部はこの情報を、特段秘匿すべきものであるとは定めていない。上層部の判断は、いずれにせよ知られること、であるとのことだった。
が、これには大和含む多くの幹部職は反対であった。現状でも、メナスが出現するだけで騒ぎになる状況で、更に『知性』が伴い始めたともなれば、人々の心には不安や絶望が広がっていくだろう。
人々を守る立場である『軍』人からして、悪戯に不安を避けるような発言は避けたいのが本音であった。
しかし、今回の事件を語るには、その事実を話さないわけにいかないのも事実であった。
「…今回の襲撃には、意図的なものがありました。一度目の襲撃された地域に向かったところ、既にメナスの姿はなく、私達の目を向けるような行動をとっていました。直ぐ様それが罠であることに気付きましたが、後手を踏まされ、次に襲撃された地域への対応が遅れてしまう事態となりました」
当然、この説明に辺りがざわつき出し騒然となる。
「そ、それは、メナスが『知性』をもって動き出したということですか?」
「断定はできません。全てに偶然が重なったという可能性もあります」
「襲撃後、直ぐに姿を消すような行動をとったことも…ですか?」
「『軍』の非戦闘員による避難は迅速でした。その為被害は最小限で済み、それにより向かった時点で既に次の地域へ移動した、とも考えられます」
大和は記者の質問に対し、口籠ることも無くハッキリと答える為、記者達もそれに押され「そうなのかもしれない…」という考えになっていた。
「(どうにか押し切れそうか…)」
大和が少しだけ心の気を緩めた瞬間だった。
「ふざけるな!!」
再び、記者達の後ろの席から怒号が飛び交う。
「被害が最小限だの避難誘導が迅速だの、お前は本当に現場を見てるのか!?」
「今回の襲撃で各市内住宅の総被害は100近く、重軽傷者は10、死者は3人も出たんですよ?」
「これで被害が最小限?人々を守る『軍』が聞いて呆れるな!」
大和は心の中で「失言したか…」と呟きながら、ため息を漏らす。
大和の本音を言ってしまえば、今回の襲撃において、完全に後手を踏まされたことを考慮すれば、被害は最小限に抑えられたと感じていた。
当然、被害をもたらしてしまったことはの責任は感じているし、それを止められなかった司令官としての失態も理解していた。
が、しかし、この世界の風潮として、特に近年では何かにつけて『軍』に文句をつけることが増えて来ているのも事実だ。
その『軍』がいるからこそ、これまでどれ程被害を抑えてこられて来たのか…というのを考えずに非難している。
勿論、先程の家族を亡くされた家族からの言葉は真摯に受け止めなくてはならないし、大和はそれを聞き流すようなことはしない。
しかし、そういう風潮というだけで、ただただ非難される、という現状には、大和はただただ憤りと悲しみを覚えていた。
「仰られることはよく分かります。ですが、あなた方の言う被害・犠牲者の中に、『彼女達』は含まれていますか?貴方達を守るために彼女達は戦い、傷付き、そして…時には命を落としているのです。それでも彼女達は…」
「それがお前らの仕事だろうが!!」
「守るための力を持ってるのです!!力を持たない私達のために戦うことが貴方の使命でしょう!?」
もう大和のどんな発言も、売り言葉に買い言葉にしかならなかった。
これまでも何度も経験して来たことではあるものの、人々の理解を得られないことに、大和は悔しさのあまり唇を噛み締めていた。
※ここから先は筆者の後書きになります!興味のない方は読み飛ばしていただいて大丈夫です!
ども、実はこの後書きいらないよね、と思い始めた琥珀です!
いや〜書くことないなぁ…
実は健康診断に引っかかってしまって、再検査受けて来いって言われてるんですよ…いやぁ…めんどk…
ただ大きい病とかだったらそれはそれでやばいので悩んでるんですよ…
皆さま、どうぞ健康には気をつけてくださいね…笑
それでは、本日もお読みくださりありがとうございました!!
次回の更新は月曜日を予定しておりますので宜しくお願いします!!




