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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
4章 ーメナス異変編ー
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第57星:仲間と孤独

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救った。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦いの傷は癒え、戦線へ復帰する。


樹神 三咲 (22)

千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。


佐久間 椿(22)

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。

「斑鳩 夜宵三等星」



 模擬戦終了してから間もなく。まだ夜宵の周辺に心配そうな面持ちで朝陽達が集まっている中、先程去ったばかりの咲耶が戻ってきた。


 周囲が僅かにざわつく中、夜宵は返事をし立ち上がると、咲夜の前に立つ。


 表情を見るに夜宵の状態は悪そうではなく、一先ず咲夜は安堵の息を吐く。そして、周りの視線を気にすることなく、深々と頭を下げた。



「えっ!?」



 当然、これには夜宵は驚きの声をあげ、周りの面々のざわつきも大きくなる。



「か、顔をあげてください指揮官!!何故貴方が謝罪をするんですか!?貴方は朝陽を…仲間を守ってくれた…謝るのは私の方で…」

「違います。確かに貴方の『グリット』は暴走し、危うく仲間を傷付けるところでした」



 咲夜は姿勢を保ったまま、「ですが…」と続ける。



「そもそもの原因を作ってしまったのは私です。過度に過激な言葉を使い、貴方に相当なストレスを与え、結果として暴走を引き起こさせてしまいました」

「それは…けれど、指揮官の仰っていたことは何一つ間違っていません。今まで騙し騙しやってきたことのツケが回ってきただけです」



 夜宵の答えに、咲夜はゆっくりと顔をあげ、その表情を見る。夜宵の表情は暗かった。自分がここまで追い込んでしまったことを改めて咲夜は悔やむ。



「私は…先程の言葉自体を取り消すつもりはありません。ですが、本当に伝えたかったことは、そこではないのです」

「…え?」



 夜宵は逸らしていた視線を咲夜へと向ける。



「私は…私も、かつて『グリット』を制御しきれず、暴走させてしまったことがありました。能力に目覚めて間もない頃の話です」

「指揮官程の方が…ですか」



 驚きをあらわにして答える夜宵に、咲夜は苦笑いで返す。



「皆さんからどのように見られているかは分かりませんが、私もひとりの人間です。失態も犯します。けれど…その時は失態の一言では済まされないことでした」



 そこで咲夜は僅かに沈黙する。何かを思い出しながら、どこか辛そうな表情を浮かべている。一瞬目を閉じたあと、意を決したように口を開いた。



「私は能力を暴走させ、メナスのみならず、周囲一帯の街を消滅させてしまったのです」



 咲夜の発言に、夜宵のみならずその場にいた全員が驚く。行為に、ではなくその内容に、である。


 個人差はあるが、基本的に『グリット』は個人(メナス)を対象にされた能力であることが多い。


 勿論、三咲の『対敵生命体感知(エクスタミネーター)』や、朝陽の『天照す日輪イノセント・サンシャイン』における『フリューゲル』など例外はある。


 しかし、本根拠地における最高火力をもつ朝陽の火力を持ってしても、破壊ならばともかく消滅は不可能に等しいだろう。


 つまり、咲夜の『グリット』は少なからず、朝陽の最大火力を上回る力を有しているということになる。


 そのことを瞬時に察したからこそ、全員が驚きを隠さずにいたのだ。



「消滅…ですか?」

「そうです。街一つを壊滅させました。幸いなことに、当時の『グリッター』は()()()()であり、一般人も避難をしていたため人的被害はありませんでした」



 話を続ける咲夜の表情は暗いままであった。



「それでも、そこで起きた光景は人々の脳裏に焼き付けられたことでしょう。私の…私達の力は、危険を孕んでいるものなのであるということを…」

「それ…は…そんなこと」

「それに…同じなのです。私はあの日、人々を守らねば、戦えるのは自分しかいないという、不安と焦りの中、力を行使しました。そして、その心の乱れが惨劇を招きました」



 咲夜の言う「同じ」、という意味を、夜宵は直ぐに理解した。そう、その心境は、先程までの夜宵の心そのものだった。



「負の心が力を危ぶませる…誰よりもそれを知っていた筈の私が、あろうことか貴方に同じ思いをさせてしまいました。指揮官ではなく、同じ志を持つ『グリッター』として謝罪させていただきたいのです。本当に、ごめんなさい…」



 咲夜は改めて頭を下げる。夜宵は再びそれを止めようとしたが、理由を理解した今、素直にその謝罪は受け入れようと思い直し、咲夜が頭を上げるのを待った。


 10秒ほどしてようやく咲夜は頭を上げ、真っ直ぐに夜宵を見つめた。



「…私の謝罪は…受け入れられなくとも構いません。本当にお伝えしたいのは、このあとの話なのです」

「え?」



 正直なところ、今の話も謝罪も、夜宵からすれば十分に納得し、受け入れることのできるものであった。


 だからこそ、本当に伝えたいという話がこの後であることには、驚きを隠せずにいた。



「…私は、今話した一件以来、力を使うことを恐れました。私の力はいつか、人の命を奪ってしまうのではないか…と」



 当然の心境だと夜宵は思った。自分に当て嵌めてみても、いや、実際先程の事故が起きた今でも、夜宵は『グリット』を使うことに恐怖を覚えていた。



「ですが…そんな私を支えてくれたのは、大切な仲間達でした。同じく『グリット』に目覚めていった仲間達は、私に『グリット』とは人々を守るために、そして自分達が生き残るために与えられたものであることを教えてくれたのです」


 

 咲夜はそこまで話し、辺りを見渡す。



「貴方はどうですか?貴方の周りには、そんな素敵仲間はいませんか?」



 咲夜に諭され、夜宵は辺りを見渡す。そこには、先程の件など何もなかったかのように、夜宵に笑顔を向けてくれる仲間達が立っていた。



「『グリット』のことでも何でも、貴方一人で背負う必要なんてありません。貴方には、貴方を支えてくれる仲間が…そして家族がいるのですから。貴方に力を貸してくれる人を頼る。それが支えとなり、貴方の能力を制御する支えとなるでしょう」

「そうですよ隊長!!」

「何でも話してください!!」

「私達がついてます!」



 咲夜の言葉に応えるようにして、周りの面々が次々に言葉を上げる。



 そして夜宵の前に、三咲と朝陽の二人が立つ。



「隊長…いえ、夜宵さん。私達は貴方に及ばないまでも、同じ『グリッター』です。例え貴方の力が暴走しようとも、そう簡単にはやられてあげませんよ」

「私が力に目覚めなくて悩んでた時、不安だった時、お姉ちゃんはいつも私を支えてくれた。だから、今度は私がお姉ちゃんを支える番だよ!!」



 周りの言葉を一心に受け、夜宵は瞼に涙を溜める。その様子を見て、全員が夜宵に詰め寄り、抱きしめる。



「ありがとう、みんな…本当に…」



 それは小さな呟きではあったが、全員がハッキリと耳にした声であった。


 その光景を微笑ましく見届けたあと、咲夜はゆっくりとその場を後にした。


 その表情に、どこか暗い影を落としながら…






●●●






「無事に、仲直りできたみたいだね。()()()()()()()()



 訓練場の出入り口では、大和が咲夜を待っていた。



「盗み聞き…いえ、付いてきて隠れ見ていたのですからストーカーですね。犯罪ですよ?」

「人聞きの悪い…冗談でもそんなこと報告しないでくれよ?」

「ふふ、冗談です」



 咲夜自身はいつも通りのつもりでいたが、その表情に影が落ちていることを、大和は見過ごさなかった。



「…君にとっては辛い話をさせたかな…」

「いえ、彼女に語るべき必要な話でした。個を高めるのは当然ですが、個を高めるには和…即ち仲間の存在が大切です。危うく私はそれを間違えて教えてしまうところでしたが、大和のおかげで踏み留まることが出来ました。本当に感謝しています」

「…その割には、冴えない表情だ…」



 咲夜はまるで大和の目から逃れるようにして、顔を背ける。



「申し訳ありません。大和に向けてのものではないのです。ただの…自己嫌悪です」

「自己嫌悪…ね」



 咲夜は逸らしていた視線をそのまま移動し、夜宵たちの方へと向ける。



「皮肉ですよね。彼女に仲間の大切さを説いておきながら、私にはもう、かつて共に戦った仲間など、()()()()()()()()()()()()()()…」



 咲夜は自虐的に微笑んだ。それは、見るものさえも辛くなるような悲しい笑みだった。



「私はすべてを失った1人の戦士です。なのに仲間のことを説くだなんて…本当に皮肉…」

「かつての仲間は確かに居ないかもしれない。けれど、それじゃあ今の君は1人かい?咲夜」



 思いもよらず強い口調で返された咲夜は、目を点にして大和に見る。



「彼女達は…いや、飛鳥や望生、君の隣立つ俺でさえも、咲夜のかつての仲間の代わりになんてなれやしない。けれど、夜宵君や朝陽君、この根拠地の『グリッター』全員が君のいまの仲間だ。そして、俺や飛鳥、望生は咲夜のことを家族だと思ってる」



 咲夜は目を震わせながら、大和の言葉を聞き続ける。



「俺は君の過去を知ってる。けれど過去はどうすることも出来ない。だからこそ、俺は君に今を与えているんだ、咲夜。孤独を感じているのは、かつての仲間がいないからじゃない。君自身が心かず、受け入れようとしきれていないからだ」

「私自身が…心を…」



 大和は頷き、続ける。



「過去を捨てろだなんて言わない。それは君にとっての強さになっているから。けれど、今を受け入れなければ、君はずっと孤独なままだ」

「今を…受け入れる…」

「さっき、君が彼女達に言った言葉をそのまま送ろう。咲夜、君の周りには、素敵な仲間(かぞく)はいないのか?」



 咲夜は大きく目を見開き、目の前に立つ大和と、遠くにいるその家族のことを直ぐに思い浮かべた。


 大和は優しい笑みを浮かべ、ゆっくりと咲夜に背を向けた。



「少しずつでも良い咲夜。現在(いま)に目を向けていってくれ。君の隣には今も、君を思う仲間(かぞく)がいるんだ」



 ゆっくりと去っていく()()の背中を見ながら、咲夜はそっと瞼を拭う。


 そして小走りで追いかけ、その隣に立った。



「ありがとうございます、大和。私に…私を救ってくれたのは、これで三度目ですね」

「大袈裟だよ。君は自分の意思で前に進んだだけだ」

「…なら、その道標を指し示してくれたのが貴方です。貴方が進む先こそ、私の道です」



 咲夜の顔に、先程までの影は無くなっていた。大和は小さく微笑んだ後、真っ直ぐ前を見る。



「俺が目指すのは、戦わない世界。人が人らしく生きていく世界に戻すこと。茨の道だぞ、咲夜」

「どこまでもついて行きます。私の私はどこまでも、道標(あなた)と共に」



 2人は肩を並べ、再び共に歩き出した。同じく道標を見つけた、夜宵達とともに。

※ここから先は筆者の後書きになります。興味のない方はどうぞ読み飛ばしてください!!










ども、琥珀でございます!


「人を叱るときは、その人の良いところを見つけてから叱る」


これは、私の中の決め事の一つです。と言っても叱れる立場に立つことなんてほとんど無いので、あまり使いませんが笑


これは、なぜかと言うと、ただその人の失敗を責める、又は出来ていないことを叱るだけでは、その人を全否定することになると思っているからです。


その人の良いところ、頑張っているところを含めて叱咤すれば、その人からすれば、「ここが悪かったのか」や「この人は見てくれた上で叱ってくれている」と思えると考えているからです。


その人を全否定しては反発が生まれるだけです。場合によってはそんなことも言ってられないこともありますが、人を叱るときは、どうか、その人の良いところも見てあげてくださいね。


長文失礼しました。以上、全否定して叱られた琥珀でした。

次回の更新は、金曜日を予定しております!

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