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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
4章 ーメナス異変編ー
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第55星:模擬戦2

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救った。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦いの傷は癒え、戦線へ復帰する。


樹神 三咲 (22)

千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。


佐久間 椿(22)

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。

 そこから先は平行線だった。距離を詰めるべく動き回る夜宵に対し、一定の距離感を保ち近付かせまいと反撃する咲夜。


 しかし、戦いは平行線であっても拮抗しているわけでは無かった。


 打つ手がなく、打開策も見つからず、ただ単調な攻撃を仕掛け続ける夜宵に対し、咲夜は遠・近の攻撃を使い分け、夜宵の意識を割いていた。



「(それだけじゃない。吸収しきれなくなった箇所の闇が飛ばされて剥き出しになって、少しずつその部分を攻め立てられている!)」



 隙を伺うべく動き回っている筈の夜宵が、逆に自身の隙を突かれる形で仕掛けられているのは皮肉な状況であった。


 とはいえ、夜宵の動きが決して悪いわけではない。寧ろ自分の弱点を補うべく適切な動きをしていた。


 恐るべきは咲夜の方である。最小限の動きで的確に、およそ隙と呼べるかも分からない僅かな乱れを突いていく。


 傍目に見れば、咲夜はほとんど動かずハンマーを振っているようにしか見えないだろう。


 実際のところ、咲夜はその動きしかしていない。ハンマーを振り夜宵の防御(ヤミ)を削る。そして乱れればその一瞬のみ距離を詰め、一撃を入れる。


 それ以外の動きはほとんどしていない。咲夜のとっている動きは本当にそれだけであった。



「(それだけ…なのにっ!?)」

「なのにら私を崩すことができない。それが貴方の現在地です」



 声は、すぐ側から聞こえた。いつの間にか、咲夜は夜宵のすぐ側にまで寄っていた。



「(しまっ…!?『闇夜の月輪ダークネス・エクリプセ』を…!!)」



 しかし、夜宵の意思に反して闇は夜宵の身体に展開されない。次の瞬間、ガラ空きとなった腹部に強い衝撃が走り、夜宵は短くない距離を吹き飛ばされる。


 直ぐに立ち上がろうと試みるも、ズキンッという鈍い痛みにより膝をついてしまう。



「闇の放出が追いついていないことに気が付いていなかったようですね。闇の形態維持に意識を割き過ぎた結果、逆に状態把握ができなくなってどうするのです」

「くっ…まだ!!」



 先程よりも出力を上げ、夜宵は立ち上がる。今度は自身が間合いを詰めるのではなく、闇が咲夜へと襲いかかる。



「愚か者」



 が、それに臆することなく、咲夜はその闇を掻い潜り、一気に夜宵の目の前にまで迫る。


 そして再びハンマーから衝撃波を放ち、夜宵を吹き飛ばした。



「うっ…ガハッ!!」

「貴方の『グリット』の弱点は闇の遅さ。それを誰よりも理解している貴方が、目先の新しさを求めて弱点をさらけ出すような攻撃をしてどうするのです」



 たびたびぶつけられる衝撃によってフラつく身体をどうにか起こし、夜宵は悔しそうに歯噛みする。



「すいません…もう一度お願いします!」



 再び闇を纏う夜宵。しかしその表情と動きには、いつもにも増して迷いが生じていた。






●●●





 訓練の時間はおおよそ2時間半設けられている。決して長くはないように思える長さだが、実際に訓練している本人達からすれば十分な長さの時間である。


 例えばそれが、2時間続けて動き回っているともなれば、どんなアスリートであろうと暫く体を動かずことさえ出来ないだろう。


 それは肉体が強化された『グリッター』であろうとも例外ではない。



「はっ…はっ…はっ…」



 訓練場の中央には、息を荒げ手を膝につく夜宵の姿と、僅かに汗を滴らせているのみの咲夜の姿があった。



「進歩がありませんね。何の変化もなく動き回るだけ。それでは体力も尽きます」



 『グリット』の力に対応するため、『グリッター』の体はそれ相応に強化される。スタミナも当然その一つだ。


 しかし、かと言って無限に戦闘が出来るわけではない。寧ろ『輝力こうりょく』という『グリット』を扱うためのエナジーを使用することから、スタミナは減りやすく、プラスよりもマイナスの方が上回る。


 加えて、夜宵は自身の『グリット』の弱点を補うべく動き回ることが多い。なんの策もなく拮抗した戦いを続ければ、不利になるのは明確である。


 咲夜は何も言い返さず、ただ息を荒げている夜宵を見て、息を一つ吐く。



「…貴方は自分の能力を恐れるあまり、冷静で有効的な判断が下せていませんね。自身が動き回ることで、確かに多少の改善は見込めます。ですが、このように拮抗、若しくは自分よりも強い相手に対しては、寧ろ弱点を露呈することになります」

「…ッ!」



 これも咲夜の指摘通りだった。夜宵は自身の『グリット』を恐れ、発動中はどうしてもそちらに意識を割いてしまう。


 己が力を制限することに思考(リソース)の殆どを費やしてしまい、本来の力を出すことが出来ずにいたのである。



「貴方が培ってきた経験と功績は尊敬に値します。その状態でこれまでここの『グリッター』達を纏めてきたことも。ですが…」



 咲夜は僅かに滴る汗を拭いながら、ハッキリと言い放つ。



「小隊編成による連携を主とした戦いを行なっている現状において、個の力を必要とはしていません。ハッキリ言ってしまえば…『グリット』をまともに扱えない貴方は、()()()()()()()()()()()

「…………ッ…」



 俯いていたために、その表情は分からなかったが、明らかに動揺しているのが見て取れた。


 それは、長年この根拠地を支えてきた夜宵の心を揺さぶるには十分な言葉であったからだ。



「し、指揮官!!それは流石に言い過ぎです!!お姉ちゃんはこれまで何回もこの根拠地を救ってくれました!」



 当然、これには反発がでる。まず真っ先に反論したのは朝陽。



「その通りです。貴方は分かっていません。夜宵さんが隊長足り得たのは強力な『グリット』だけではありません。的確な指示や行動力…そう言ったカリスマ性こそ夜宵さんの強みです」



 続いたのは三咲。今までのようにただ感情的に反論しているのではなく、これまで共に戦ってきた夜宵を貶されたことで明確な敵意を持って反論していた。


 が、それに臆することなく、咲夜は冷たい瞳のまま言い返す。



「貴方達こそ分かっていませんね。彼女のこれまでの功績は存じ上げています。だからこそ、尊敬に値する、と申し上げたのです」



 咲夜は「ですが」と続ける。



「過去の栄光など無意味です。今の根拠地において、それは必要ではありません」



 咲夜は冷静に、冷徹に、言葉を続ける。



「強力でも扱えきれない『グリット』が必要ですか?小隊となったことで、より個に沿った指示が必要な場面で、自分の『グリット』にしか思考が向けられない隊長が必要ですか?」

「そ、それは!…そんなこと…」



 反論したい気持ちは明確だった。しかし、それに対する言葉が出てこなかった。



「分かりますか、夜宵三等星。今現在の貴方は、この根拠地で置いていかれている状況です。小隊長として存るためにはまず…」



 咲夜の言葉はそれ以上続かなかった。次の瞬間、夜宵の全身からこれまで以上の闇が吹き出し蠢きだしたからだ。



「これは……ッ!?」



 咲夜がその闇を観察した瞬間、死角からいつのまにか忍び寄っていた闇が襲い掛かる。


 間一髪、ハンマーの衝撃で退け距離を保つことには成功したが、初めて動揺を誘われた攻撃であった。



「(私が解決策の一つとして考えていた扱い方の一つを…これは意識的に…?)」



 しかし、咲夜は夜宵の雰囲気の変化に直ぐに気が付かなかった。瞳は動揺からか揺れており、視線が定まっていない。


 加えて先ほどまで意識して抑えていた闇が多量に放出され、形状も纏うだけに留まらず、周囲で蠢き広がっていた。


 勿論、全員がその変化に気が付いていたが、それよりも更に深い異変に気が付いていたのは妹の朝陽と、目の前に立つ咲夜だけだった。



「(お姉ちゃん…何かおかしい…何だか、()()()()()()()()()()()())」

「……」



 同様の感覚を咲夜も感じていた。先程の動揺から、夜宵の気配がどこか異質なものへと変わっていたのだ。



「う、あああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



 次の瞬間、夜宵から吹き出すようにして現れた闇が、辺りを包み込んで行った。

※ここから先は筆者の後書きになります!興味のない方はどうぞ読み飛ばしてください!!








どうも、琥珀でございます!


台風、過ぎましたね。皆さま無事でしょうか?

私の住んでいる地域は雨風こそ強かったですが、停電なども無く、失礼ながら拍子抜けのような感じでした。


それでも、酷い被害にあっている地域の皆様もいらっしゃいます。

私に出来ることはほとんどありませんが、どうかこれ以上の被害がでないことをお祈り申し上げます。


本日もお読みくださりありがとうございます。

次回の更新は金曜日を予定していますのでよろしくお願いします。

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