表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
4章 ーメナス異変編ー
53/481

第52星:復帰

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救った。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦場に現れた妹の朝陽の危険にいち早く勘付き重傷を負う。現在は療養中。


樹神 三咲 (22)

千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。


佐久間 椿(22)

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。

 最高本部出向から一週間経ったこの日。千葉根拠地には一つの吉報が届いていた。



「そういうわけで、身体の全治を受けてこの度斑鳩 夜宵君が戦列に復帰することになった」

「皆、迷惑をかけてごめんなさい。休んだ分はしっかりと働くからまた宜しくね」



 夜宵の復帰の挨拶に全員が拍手と歓迎のムードを作る。歓喜の輪に飲み込まれた夜宵は困った表情ながらもどこか嬉しそうに仲間達と話し込んでいた。



「これで一先ずこの根拠地の戦力は整いましたね」



 その輪から少し離れたところで、咲夜が大和に話しかける。



「そうだね。まだまだ未完成なのは否めないけど、これで更に安定したのは間違いない…けど、」

「…けど?」

「戦力云々の前に、まずは夜宵君が復活したことを喜ぼう。夜宵君の無事こそが、全員が生きるために戦い抜いた結果なんだからね」

「…確かに。失礼致しました」



 再会の時間を十分に設けたあと、一同は大和の前に整列する。



「さて、せっかくの良いムードのなか申し訳ないが、晴れて夜宵君も復帰したことで現在の根拠地の戦力は全て揃った。元々この根拠地の『グリッター』全員をまとめ上げた彼女の復活は非常に大きいものになるだろう」



 当の本人は謙遜していたが、隣に立つ朝陽はどこか自慢げに大きく頷いていた。



「だが忘れないでほしい。これからのこの根拠地での戦い方(スタイル)は、個を活かし全を強くする小隊での戦いだ。今まで夜宵君一人に頼っていた面を減らし、君達一人一人の強さを押し出した戦い方が主流となる」



 大和の発言に、これまで反対していた者達も頷く。



「小隊長は配置するが、それはあくまで形式だ。小隊長が小隊を導き、小隊が小隊長を支える、よりメンバー間での理解と協力が必要になってくる」



 大和が訪れる前までの、どこか気後れしていた感じは既に無い。大和の言葉を聞き、全員が前を向いていた。



「生き抜くためには君達個人個人の力が必要だ。これからも研磨し、各々の力を高めあって欲しい」

「「「はいっ!!」」」



 大和の言葉に、全員が力強く返事を返す。大和が着任してから一ヶ月。早くもその影響力がこの根拠地にも及び始めていた。



「それでは本日の訓練を始めましょう。朝は各自昨日までのトレーニングを続けてください。夜宵さんは私のところへ」



 咲夜の指示を受け、各々散会し訓練を始める。



「まずは復帰おめでとうございます、夜宵さん」

「ありがとうございます咲夜指揮官。出遅れた分は実戦で取り戻す所存です」

「まぁ最初は無理をしなくて良いよ。また大怪我をされても困るからね」



 自分の身を案じてくれる大和の言葉に、夜宵は頭を下げて返事を返す。



「実戦から一ヶ月近くも離れてしまうことになりましたが、感覚の方は如何ですか?」



 対して咲夜は現実的な話を始める。実際戦場に立つ夜宵にとってはこちらの方が大事な話だ。



「正直、何とも言えないですね。あまり鈍っているようには感じていないのですが…」

「ふむ…実戦感覚というのは、やはり実戦の中で磨かれ取り戻していくものですからね。それでしたら本日の午後帯の訓練は、私と模擬戦をしましょう」



 これには夜宵だけでなく、大和も驚きの表情を浮かべる。咲夜はあまり自分から戦うようなことは言い出さないからだ(煽ることはあるが…)。



「それは…願っても無い話ですが…」

「それでは本日の午後に。この時間帯の訓練で可能な限り感覚を取り戻しておいて下さいね」



 咲夜は笑顔で返すと、踵を返し大和とともにその場を後にした。


 夜宵はやや呆然とした様子で、その姿が見えなくなるのを見届けていた。



「まさか…君から模擬戦を提案するなんてね。正直意外だった」

「そうですね。私も自分かこのような提案をするとは思っていませんでした」



 咲夜は「でも…」と続ける。



「彼女達は私達の期待に応え、そして更に成長しようと付いてきてくれています。ですから、その前に立つ私が、自分勝手な考えのまま止まっていてはいけないと思ったんです」



 大和の客観的主観では、咲夜は人として相当完成されているという人物評である。冷静な判断力、達観的な視点、人への思いやりと適度な厳しさ、そして責任感。


 恐らく上に立つ人物としてこれほど魅力を感じさせる人物はそうは多くないだろう。例えるなら、護里と同様のオーラを纏っている。


 しかし、咲夜は『グリッター』と接する時、どこか暗い面持ちのまま接することがあった。それが時に冷たく、煽るような発言に聞こえてしまうことも少なくなかった。



「(まぁ、咲夜の過去を考えれば、気負うのも無理はないか…それを考えればこの変化は吉とも取れるが…)」



 大和は横目で隣を歩く咲夜をみる。



「(()()()()()()()()()()()()()は…果たして吉と呼んで良いのだろうか…)」



 帽子を深く被り、自分の顔が隠れるようにしながら考え続ける。



「(メナスとの戦いはもう1世紀も続いてる。ハッキリ言えばの考え方が甘いんだろうが…)」



 大和は自分の考えが間違っていると思ったことは、少なくとも司令官に着任してからは一度もない。


 その根底が揺るがないからこそ、咲夜は自分を信じてくれているし、その信念を貫いているからこそ、彼女達は付いてきてくれている。大和はそう考えていた。


 だからこそ、咲夜を始め彼女達が戦いに特化した考え方に移ろうとしていることに、大和は小さくない矛盾を感じていた。



「またお考え事ですか、大和?」



 そんな懸念を見抜いたかのように、咲夜が顔を覗き込む。



「大和が考えていることはおおよそ分かります。戦いを終わらせるために戦いに特化しては元も子もない…そうお考えになられているのではないでしょうか」



 大和の考えは、やはり咲夜に見透かされていた。それでも、咲夜は笑顔で答えた。



「大丈夫です、大和。どれだけ戦いが続こうと、私達の戦う信念は揺るぎません。それは私が一番良く分かっています」

「…『生きるために、立ち向かう』」



 大和の返しに、咲夜は笑って頷く。



「この信念が続く限り、『彼女達(グリッター)』が戦いに溺れることはないでしょう。命を奪うのではなく、自分達が生きるために、立ち向かうために戦うのですから」



 咲夜は窓の外で訓練を続ける朝陽達を見つめ、続ける。



「究極の目標が戦いを終わらせることであるにしても、それは今日明日で決着のつく話ではありません。ならばこそ、私達はその目標を果たすべく、一歩一歩進んでいく。そして貴方は、その道標となるべく導く…今はそれで良いのでは無いでしょうか?」

「…考え方の変化は成長…そういうことだね?」



 咲夜は「はい」と答える。



 今のやりとりで、大和の懸念が無くなったわけではない。それでも、今の大和を納得させるには十分な説明であった。



「ありがとう咲夜。君がボクの隣にいてくれて本当に良かった。君のいう通りだ。いま、ボクは司令官であり、彼女達の前を歩く道標でなくてはいけない。そして彼女達が『生きるために、立ち向かう』のであれば、それに尽力するのがボクの務めだ」



 笑顔を取り戻した大和が、咲夜に微笑みかけながら前を歩く。



「そうと決まれば早速執務にかかるかな。取りかからなくちゃいけない仕事がたくさんあるしね」



 軽い足取りで前を歩く大和の後ろを、咲夜がついていく。



「隣にいる…いいえ大和、それは違います。アナタは常に前にいます。前を歩いてくれるからこそ、私はその背を押すことが出来たのです」



 咲夜が小さく零した呟きは、誰の耳に届くことなく消えていった。







※ここから先は筆者のどうでも良い後書きになります!興味のない方はどうぞ読み飛ばしてください!!







ども、琥珀でございます。


最近不安になることが多くて…元々小さいことを気にして直ぐに不安になるタイプだったのですが、最近は更にまして不安になることが多いです…


それが小説にも影響を及ぼしているのか、最近進捗が芳しくありません…


もしかしたらまた休暇をいただくかも…そんな可能性も捨てきれません…


でも今は頑張ります。応援、宜しくお願いします!


本日もお読みくださりありがとうございました!

次回の更新は月曜日を予定しています!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ