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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
3章 ー最高本部出向編ー
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第51星:帰路

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『天照す日輪イノセント・サンシャイ』を覚醒させ、仲間の命を救った。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦場に現れた妹の朝陽の危険にいち早く勘付き重傷を負う。現在は療養中。


樹神 三咲 (22)

千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。


佐久間 椿(22)

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。

「よし、全員揃ったね?」

「「はいっ!!」」



 大和の言葉に、朝陽と奏の二人が答える。その後ろには飛鳥と望生の二人の姿があった。



「ホントあっという間だなぁ…もっとお兄ちゃんと色々遊びたかったのに…」

「我が儘言ってはダメですよ飛鳥。そもそも今日だって私達の為に時間をやりくりしてくださったんですから」



 唇を尖らせて不満そうな飛鳥を、望生が嗜める。大和は苦笑いの表情を浮かべながら、ソッと二人の頭を優しく撫でた。



「今度は出来るだけキチンとした休みを取って遊びに来るよ。なんならお前ら二人が休みを取ってうちに来たって良い。その時は、歓迎する」

「ホント!?約束だからね!!」

「楽しみにしております、ご主人様」



 次いで飛鳥は朝陽と奏の二人に目を向ける。



「二人も、また遊びに来てね!!今度はオススメのお店とか一緒に周ろうね!!」

「はい!飛鳥さんと一緒に周るのはとても楽しそうです!」

「また会えるのを楽しみにしてます」



 ひとしきり挨拶を終えたところで、いよいよ船の出発の時刻となる。大和達は船に乗り込み、動き出した後も二人に手を振って別れを告げていた。



「あ〜あ、言っちゃったね望生」

「はい。でもまた一緒に遊ぶ約束をしました。また直ぐに会えますよ、飛鳥」



 望生の言葉に飛鳥は嬉しそうに頷く。と、そこへ、飛鳥の手元の端末に着信が入る。



「はい、飛鳥です。…はい。はい…え!?分かりました!!直ぐに向かいます!!」



 通信を切った飛鳥の表情は、焦燥感に満ちていた。



「どうしたんですか、飛鳥」

「メナスが出現したらしいんだ。それも忽然と姿を現したらしくて…」

「確かに本部の感知網をかいくぐっての出現は驚きましたが…ですが『シュヴァリエ』である飛鳥が向かうほどのことでしょうか」

「それが…お兄ちゃん達の艦の方に向かってるらしいんだ」






●●●






「出向なんてのは名ばかり。なんだか殆ど東京の観光になってしまったね」

「そうですね!!でも、個人的には得るものの多かった旅だったと感じてます!!」



 離れていく港を見つめながら呟く大和に、奏が同意する。



「私も…出向なんて形でしたけど、最高本部に行けて良かったです。その…友達も、出来たので」



 朝陽も、どこか照れ臭そうにしながら頷いた。



「そうだね、本当に来て良かった。飛鳥はヤンチャなところはあるけど真っ直ぐで、朝陽君とは仲良くやっていけると思う。ボクからも宜しく頼むよ」

「そんな、頼まれるようなことじゃないです!!もちろん、これからも仲良くしていきます!!」



 友達が出来た…それはある意味簡単で、彼女達にとっては難しい関係の作り方。


 友達という関係自体が、朝陽にとっての一つの夢であったのかもしれない。その夢が一つ叶い、朝陽は本当に嬉しそうに笑っていた。



「あの…ところで司令官、ちょっと気になってたことが…」



 と、朝陽が大和に何かを尋ねようとした瞬間ーーーーーボンッ!!という音ともに船が大きく傾いた。



「な、何!?」



 朝陽の疑問は、直ぐに解決した。


『乗船されているお客様にご案内致します。ただ今当海域において数体のメナスが出現したとの通信が入りました』


 艦内アナウンスの説明に、乗客は一様にざわつき、そして困惑していた。騒ぎ出すものがいなかったのはせめてもの救いだろう。



『尚、只今の揺れは本艦を狙ってのものでありましたが、本艦には《軍》より付与された最高度の装甲を用いております。現在の進行には問題はありませんのでご安心下さい』

「安心出来る内容…ではありませんよね司令官」

「そうだね。艦に『耐熱反射鏡ゲトゥルト・シュピゲール』が用いられていたとしても、そう何度も耐えられるもんじゃない」

「加えてアナウンスの内容もあまり得策ではありません。直接攻撃を真っ先に伝えては、乗客の不安を煽るだけです」



 大和と奏の二人は、周囲の様子を伺いながら次々と状況判断を下していく。



「まぁ突然襲われたら冷静な判断が出来ないのも無理はないよ。アナウンスをした人も本人なりに乗客を安心させようとしたんだろうからね」

「そ、それよりメナスが居るんですよね!?私達が出撃した方が…」



 声こそ抑えているが、慌てた様子の朝陽が二人を問い詰める。



「どうしますか司令官」



 奏も出撃すべきと考えたのか、大和に同意と許可を求める。対して大和の答えは…



()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「え?」

「…ふむ」



 朝陽は驚きの眼差しを向け、奏はその真意を探ろうと大和を見つめていた。



「や、何も別に見捨てろというわけじゃないさ。寧ろボク達のすべき事は打って出るのではなく、ここの皆を守ることにあると思うんだけど」

「そ、それはそうですが、それではただただ攻撃を受けてジリ貧になるだけではないでしょうか!?」



 朝陽はやや冷静さを欠いたように大和に詰め寄る。大和はそんな朝陽を宥めつつ続ける。



「艦を守れるのはボク達だけだ。けれど打って出るのはボク達でなくても良いんだよ」

「ははぁ…成る程そういうことですか」



 奏は大和の言葉の意図をいち早く察したようで、頷いていた。



「え…えっ?ど、どういうことですか??」

「二人は攻撃に備えていてくれ。メナスに関しては…()()()()()といこうじゃないか」






●●●






 最高本部屋上。そこには一人の人影が屋上の端に腰掛けていた。煌びやかな着物をたなびかせ、女性は背負っていた長袋を下ろし、中から黒茶の模様を基調とした三味線を取り出した。



「あらあら、こないなところまで顔を出しはって…少々お痛が過ぎるんちゃうん?」



 女性、朝比奈 静流は微笑みを浮かべながら、ソッと三味線を構え、撥を手に取る。



「いつもやったら放ておくんやけどな。今回はちぃと見逃せん理由があるんよ。運が無かった思うてーーーーー」



ーーーーーベンベン!!



「塵となって消え失せておくれやす」






●●●






 静流が三味線を鳴らしたのと同刻。どこからともなく現れた数体のメナスが艦に向かって進行していた時だった。



【ーーーーー…?】



 内の一体のメナスが自身の身体の違和感に気が付く。視界が歪んでいた。いや、より正確には、視界が裂けていたのだ。


 そして、メナスの意識は直後に途切れる。気付いた時には顔、そして胴体が切断され、ズレ落ちていく最中にその肉体は、黒い塵となって消え去った。


 そして、塵となった仲間の姿を見て漸くメナス達は、自分達が攻撃されていることを理解する。


 一体どこから…視線を彷徨わせる一体のメナスは、対象を探し出す前に肉体を割かれ、消滅していった。






●●●






「ん〜イマイチノリが悪いなぁ〜。やっぱ東京いう街は好きになれんわぁ」



ーーーーーベンベン!!



 何かへの不満を口にしながらも、静流は再度三味線を鳴らす。






●●●






 メナス達にはこの状況が全く理解できなかった。周囲には何もない。目標にしていた物体(ふね)からの攻撃もない。


 にもかかわらず、8体いた仲間(メナス)は既に半分まで減っている。


 反撃しようにも攻撃している敵が見当たらない。防御しようにも視界に攻撃が映らない。明確な()()()()()()()()()()()()()、また一人、メナスが塵となって消え去った。






●●●






「し、静流さん!?」



 一人三味線を嗜んでいる静流のもとに、よく見知った人物が現れた。



「あらぁ飛鳥ちゃん。ご無沙汰やねぇ。元気しとった?」

「あ、はい、お陰様で…ってそうじゃなくて!!どうして静流さんがここに!?というか、何して…」

「ん〜?フフフ、せやねぇ、ウチも自分でこないなことしてることに驚いてるんよ」



 静流は誰に呟いているのか、ゆっくりとその視線を遠くに見える艦へと向けていた。



「まぁでもなぁ、まだ『たぴおか』のお礼もしとらんかったから、これはそのお礼や思うとったら宜しおす」

「…?…??た、タピオカ?」



 最早会話にすらなっていない状況に、飛鳥はただだ困惑していた。



「あ、そや飛鳥ちゃん。ここらへん、空気も風通しも悪うてちゃんと届かんのよ。ちぃと手伝っておくれやす」

「手伝うって…あ、()()()()()手伝いですね!」



 静流は返答代わりにニコリと微笑み、再度三味線を構える。それな合わせるようにして、飛鳥も拳を構える。



「拍子はウチが合わせるさかい、飛鳥ちゃんは思い切り振るうてくれればええよ」

「了解です!!じゃあ行きます!!」



 静流の指示のもと、飛鳥は拳を僅かに引き、そして思い切り突き出した。



「『散拳さんけん』!!」



 次の瞬間、あたり一面に突風が吹き荒れる。拳の衝撃波から生み出された突風は、周囲を巻き込みながらメナスめがけて吹き続ける。



「ん〜ええ風。これならウチの音も良く届きますよって」



 吹き荒れる風を浴びながら、静流は三味線を鳴らす。今度は一つの音ではなく、音楽。流れるように、それでいてキレのある音楽が、風に流されていく。






●●●





 残されたメナスが最後に聞いたのは、風に流れて聞こえるメロディだった。心も感情もない筈のメナスは、しかし音から意識を逸らすことが出来なかった。


 その旋律は全身を駆け巡り、何故か聞き入ってしまうほど美しかった。そう感じている筈なのに、メナス達には、それが恐怖でしか無かった。


 全身を走る悪寒。そう、それはまるで死の旋律のようでーーーーー






●●●






「はい、お粗末さんでした」



 メナスの完全消滅を確認した二人は、それぞれ武器を収める。



「相変わらず凄いですね静流さん。流石『()()()()()()』最高の音楽騎士です!!」

「ん〜、なんやウチあまりその呼び名好きちゃうんよねぇ。ウチには何や合っとらん気がして…」

「そうですかね?でもお陰様で一瞬で対処できました!!ボクだけじゃこうはいかなかったと思うので…」

「フッフ、そないに謙遜せんでもいいんよ飛鳥ちゃん。しょうみウチが手を出さんでも、飛鳥ちゃんなら直ぐに対処できとったんやろ?」



 静流の問いに答えづらいのか、飛鳥は「えへへ」と笑うだけに留める。



「ほなら、ウチの役目はこれにて終い。ウチがここに来たんは護里はんに呼ばれたからやさかい、これにて。飛鳥ちゃん、また会おうな」



 飛鳥の返事を聞くことなく、静流はフラッと姿を消していった。

※ここから先は筆者のどうでも良い後書きです!興味のない方はどうぞ読み飛ばしてください!!







ども、琥珀でございます!!

一週間おやすみ頂いてすいませんでしたm(_ _)m

どうにか研修は乗り切りましたが、残念ながら執筆をするほどの余裕は無く…


今週は三回更新できれば…と思いましたが無念…

ですが改めてまた週2更新頑張りますのでよろしくお願いします!!


本日もお読みくださりありがとうございました!!

次回の更新は金曜日を予定しております!!

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