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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
3章 ー最高本部出向編ー
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第50星:朝比奈 静流

国舘 大和(24)

新司令官として正式に根拠地に着任した温和な青年。右腕でもある咲夜とともに改革にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。そして全員の信頼を得ることに成功し、『小隊編成』という新たな戦術を組み込んだ。


咲夜(24?)

常に大和についている女性。一度は誰しも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。大人しそうな風貌からは想像できない身体能力を誇り、『グリッター』並びに司令官である大和を補佐する。現在は指揮官として彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、初の実戦で仲間の命を救った。大和に指名され、新戦術の小隊長に任命された。


曲山 奏(20)

朝陽小隊のメンバー。明るく元気で爽やかな性格。サッパリとした人物でありながら、物事の核心をつく慧眼の持ち主。趣味はツーリング。


朝比奈 静流

朝陽の前に現れた京言葉を話す女性。

「…ま、迷いました…」



 護里との話し合い(ガールズトーク)を終えた朝陽と奏は、大和と合流すべく東京の街へと降りていた。


 その最中、人混みに揉まれた二人は離れ離れとなってしまい、東京など来たこともない朝陽は、見事に迷子となっていた。



「うぅ…ここはどこなんでしょう…右を見ても左を見ても同じような建物ばかり…司令官…奏さぁん…どこですかぁ…」



 トボトボと歩き進んで1時間。慣れない人混みに充てられ疲労が溜まってきた朝陽は、思わず座り込んでしまう。



「はうぅ…このまま司令官さんと会えなかったらどうしましょう…」

「あらあら、可愛い女の子がこないなところで座り込んで…どないしたの?」



 と、その朝陽に一人の人物が声をかけてくる。朝陽は顔を上げその人物を確認する。


 一言で言えば艶やかな人だった。美しい着物を着こなし、黒く長い髪は頭の上で結われ、簪で止められている。


 朝陽は実際に見たことは無いが、関西の地域にいる『舞妓』という仕事をする際の姿を連想させる成り立ちであった。


 一つより特徴的なものを挙げると、背中には長袋が背負われており、形状的に何かの楽器であるように思われた。



「あ、えっと…恥ずかしながら迷子になってしまいまして…」

「あら、そら大変」



 恐らく、真摯に驚いている。しかし、その成り立ちからか言葉の落ち着きからか、そう言った起伏の揺れをなかなか感じさせない人物であった。



「それで、どこに行きたいんどす?」

「それがその…目的地と言うより人を探してまして…」

「あら、お仲間さんとはぐれはったん?そらまた難儀やねぇ…こないに人がおったら探し出すんも一苦労やろし…」



 元々細目の女性はさらに目を細め、着物の袖で口元を隠しながらどうするか悩んでいるようだった。



「そや、ほんならとりあえずウチと町歩こか」

「え!?」



 突然の申し出に、朝陽は驚きの声を発してしまう。



「こないなところ居っても、奴さんも見つけるん難しやろし、ほんなら目立つ私と居った方が見つけやすいやろ」

「め、目立ってるっていう自覚はあったんですね…」



 しかし、朝陽は目の前の女性が善意から言ってくれていることを理解していた。目的地もわからず右往左往していた朝陽は、ありがたくその申し出を受けることにした。






●●●






「そう言えば、まだお嬢ちゃんの名前聞いてなかったやね」

「あ、申し遅れました!!私、斑鳩 朝陽って言います!!宜しくお願いします!!」

「朝陽ちゃん、ええ名やね。笑顔もキラキラしてて、お姉さんクラクラしてまうわ〜」



 場を和ませようとしてくれているこか、女性は冗談っぽく言う。それも効果はテキメンで、朝陽はフフッと笑みをこぼす。



「お姉さんのお名前はなんて言うんですか?」

「ウチ?ウチはねぇ、朝比奈 静流(あさひな しずる)言うんよ。同じ『朝』どうし、あんじょうよろしゅうな?」

「あ、あんじょう…?」



 聞き慣れない方言に、朝陽は戸惑う。それに直ぐに気が付いた静流は、フフフ、と優しく微笑む。



「あんま聞き慣れないから伝わらんよね。『あんじょうよろしゅう』いうんは、こっちでは『宜しくお願いします』いう意味なんよ。あんまり関東(こっち)の言葉は言い慣れてのうて、堪忍な?」

「い、いえ!!私が聞き慣れてないだけなので!!でも関西弁って初めて聞いたんですけど、何だか品を感じますね」

「フフフッ、素直で良い子やね。でもウチのは関西弁とはちょい違うんよ。ウチのはね、京言葉言うんよ。よう似とるけど、似て非なるものなんおす」



 その辺りの知識に関して全くの無知の朝陽は、興味深そうに話を聞いていた。



「(そう言えば私、あまり根拠地の外に出たこと無かったなぁ…)」



 『軍』の『グリッター』には基本的に異動は存在しない。配属された先で『グリッター』としての使命を全うするか、若しくは()()()()()()()()()()で別の場所に異動になるかが基本である。

 

 つまり、『グリッター』にとっては配属先の世界が全てになることが殆どであり、朝陽が些細なことにも興味を示すのは、ある意味で当然のこととも言える。



「朝陽ちゃんは…その軍服見るに、『軍』の関係者なん?」

「は、はい!!本部(ここ)の所属ではないんですけど、『グリッター』として戦ってます!!」

「あら〜カッコいいやねぇ。でも戦うんは怖くないん?」



 どこか真剣みを感じさせる口調で静流が朝陽に尋ねてくる。



「怖い…んだと思います。でも私は、まだ『グリッター』と戦い始めて一ヶ月も経ってないので、本当の怖さを理解してないと思います」

「…へぇ」

「だから、私は私に出来ることを一生懸命やるだけです。大切な人達を守ることが、私の戦う理由ですから!!」



 笑顔浮かべ答える朝陽の顔を、静流は真っ直ぐ見つめていた。そして先程までの柔和な笑みを浮かべる。



「…ふふふ。ホントに素直で良い子やね。何や初心に帰らされた気分になってもうたわぁ」

「…?」



 静流の答えは朝陽には理解できなかった。と、そこへ朝陽の視界にあるものが映った。



「あ!静流さんちょっと待っててください!!」

「ん〜?どないしたん?」



 静流の声に反応することなく、朝陽はどここへ一目散に駆け寄っていく。静流が目を向けると、そこには行列のできたお店の看板が目に入った。



「(あぁ…そう言えばあのお店、今人気なんやったね。折角の機会やし、こういうんに興味持つのは良いことやさかい、何も言わんとこか)」



 静流は朝陽に言われた通り、その場で待つ。暫くして満面の笑みで戻ってくる。



「見てください静流さん!これ、タピオカって言うらしいですよ!!今流行りだって聞いてて、一度飲んで見たかったんです!!」



 先程までの『グリッター』の面持ちとは違う、それは18歳の少女の笑みだった。今日日、これほど素直な笑顔を浮かべられる『グリッター』はいないだろう。


 静流はその飲み物を飲もうとする朝陽を微笑ましく見ていようとすると…



「はい!!どうぞ静流さん!!」



 朝陽は手に持っていた二つのタピオカのうち、一つを静流に手渡してきた。



「あら、これを…ウチに?」

「はい!!美味しいものは共有したらもっと美味しいですから!!」



 まさか初対面の自分にここまで親切な対応をされるとは思っていなかった静流は、戸惑いながらタピオカを受け取る。


 戸惑いながらもそれを口に運ぼうとした瞬間、静流は周囲の視線に気がつく。


 街中は一般人で溢れかえっている。当然現代社会において『軍』人というのは目を引く。加えて『グリッター』である朝陽は、当然差別的な眼差しを向けられていた。



「ちっ…街中で飲食かよ…」「良いご身分だな…」「そんなん買ってる暇があったら戦えってんだよな…」



 そんな心許ない言葉が、静流の耳に届く。不幸中の幸いか、周囲が騒がしいからかその声はか細く、朝陽の耳には届いておらず、買ったタピオカに夢中になっているようだった。


 静流はそんな純粋な朝陽を心から微笑ましく思いながら、その視線を周囲に向けた。




『なんや、この子にようでもあるんか?』




 それは無言の圧。ただ睨みを効かせただけでありながら、放たれたプレッシャーは周囲の人々に行き届き、一瞬にして視線を逸らさせていた。


 そのプレッシャーに気が付かなかったのは、目の前の朝陽一人だけ。勿論、楽しみを奪われ(勘付かれ)ないように静流がしたわけだが。



「あれ?静流さん飲まないんですか?…あ!も、もしかしてタピオカ苦手でしたか!?」

「ンフフ、そんなことあらへんよ?いただきます」



 静流が飲む姿を見て嬉しそうに笑った朝陽は、もう一度自分も口に含み、頰を押さえながら美味しそうな表情を浮かべていた。



「(なんや不思議な子やね…初めて見たときから思てたけど、なんや思わず守りたくなるような感じがしはって…)」



 しかし本人は、守られるのではなく、守ることに戦う意義を見出しているという。



「(今はまだ、()()()からしたら守られる存在やけど…もし、このまま強くなって行きはったら…ふふ、楽しみやね)」



 朝陽の未来を浮かべながら、静流は静かにタピオカを楽しんでいた。と、そこへ…



「朝陽さん!!見つけましたよ!!」

「わぁ!?」



 思わず肩をビクつかせて驚くほどの声が耳元から聞こえる。



「あ、奏さん!!」

「探しましたよ!!気付いたら後ろにいないんですから!!」

「そ、そうじゃなくて奏さんがドンドン進むから見失っちゃったんですよ!!」



 言い合う二人を前に、静流は微笑ましそうにその様子を見ていた。



「おや、朝陽さんこのお方は?」

「あ、私が迷子になってた時に、一緒に奏さんを探してくれた朝比奈 静流さんです!!」

「朝比奈 静流言います。あんじょうよろしゅう」

「これはこれは!!うちの小隊長がお世話になりました!!曲山 奏と申します!!」



 大声ながらも礼儀正しく、奏は挨拶をする。



「あらあら、こっちの子もええこやね。良い人に恵まれたんかな?」



 と、ハッと何かを思い出したかのように奏は朝陽の手を取る。



「そうだ朝陽さん!!先程歩いていたら『クオリティパフェ』のお店を見つけたんです!一緒に食べに行きましょう!!」

「え、え!?でも朝比奈さんが…」

「ウチのことは気にせんでええさかい、東京の街を楽しんどいで。お仲間さん、見つかってよかったなぁ」



 『クオリティ』パフェが楽しみで仕方ないのか、朝陽の腕をグイグイと引っ張られながら、朝陽は精一杯の感謝を静流に伝えた。



「あの!!本当にありがとうございました!!またお会い出来た時にお礼します!!」

「お礼なんてええよ。()()()、朝陽ちゃん」



 小さく手を振りながら、静流は二人を見送っていく。小さく去っていく背中を見届けながら、静流は視線を奏へと向けた。



「うーん、(あの子)は薄々ウチの正体に気付いてはったかな?挨拶の時に『軍』の所属の話をしてはったし…」



 静流は頰に手を当てて僅かに考え込む。その指には、()()のマークが彫り込まれた指輪がつけられていた。



「なんにせよ、ああいう子がいるんやったら、ウチもまだ戦ってみよう思う気になるなぁ…」



 どこか不敵な笑みを浮かべながら、静流はそっと人混みの中へと消えていった。

※本日はお知らせが御座いますので宜しければご一読下さいませ!!







ども、琥珀でございます!!

京言葉、以前から少し勉強して取り入れるという初の試みですが、恐らくおかしな箇所ばかりですよね…もう少し精進して、おかしなところは改めて改稿しますのでお待ちください…


さて、前回の更新でお知らせしました通り、来週の更新はお休みさせていただきます…

時間がシビアなのもありますが、どうやらネット回線も不安定なようなのです…

これで中途半端になってしまうよりは、思い切っておやすみ頂こうと判断致しました…


誠に申し訳ありません…もしかしたら、その次の週は月、水、金の三回更新するかもしれません!!

その時はまたお知らせしますのでよろしくお願いします!!


本日もお読みくださりありがとうございました!!

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