第453星 密会
皇 イクサ
『レジスタンス』の総頭領。過激派の名に恥じない『軍』の消滅という過激な思考の持ち主。カリスマ性は高く、『グリッターの自由』という理想を体現すべく行動に移す実行力から、確かな信仰を得ている。穏健派リーダーを倒し、『レジスタンス』を牛耳った。
白銀 明鉄
『レジスタンス』の副頭領。イクサの右腕であり、最も信頼を置く人物。時にイクサを嗜め、時に『レジスタンス』を動かす、参謀的立場。過激派の中では冷静沈着で、時に慎重を喫するが、最終的な判断はイクサに従うほど崇拝している。
金城 乖離
傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人な『アウトロー』の王。それに見合う実力と知性、そしてカリスマ性を備えた人物。本来ならば群れない『アウトロー』をまとめあげ、ある目的のために水面下で作戦を企てている。かつて護里との戦いに敗れ、以降姿を眩まし続けていた。
とある日の夜。そしてとある場所にある廃墟。
恐らく『メナス』の襲撃により倒壊したのであろう、周囲の建築物もボロボロであった。
人も寄りつかないであろう薄暗いそんな場所に、二人の人物が居座っていた。
『レジスタンス』の総頭領、皇 イクサと、その腹心である白銀 明鉄の二人である。
赤い髪を乱雑に後ろで束ね、女性らしからぬ姿勢で瓦礫に座り込むイクサは、「ふあぁ〜」と大きなあくびをする。
「ったく、なんてたってこんな廃墟に来なきゃなんないんだよ。それもこんな深夜によ」
どこか不貞腐れた様子で、イクサは肘を突きながら文句を垂れる。
「仕方ないだろ。神宮院 アンナとの衝突もあって、私達は一気に有名人だ。そう簡単に見つかる場所には居られないよ」
中央が黒く染まり、それ以外は銀髪といった特徴的な髪を後ろで束ねた明鉄は、イクサとは対象的に、落ち着いた様子で状況を伝える。
「ま、そりゃそうだけどよ。やってくれたよアンナもよ。これで暫くまともに動けやしない。計画じゃもう少し準備を進めてからのはずだったのによ」
明鉄の説明に、それでも納得いかないのか、イクサはまだ不貞腐れていた。
「そう腐るなよ。遅かれ早かれ…だろ?」
明鉄が再度嗜めると、イクサは「ま、それもそうか…」と諦めて納得する。
「しっかし随分と私を待たせるな。私の方から呼び出したとはいえ、流石にイライラしてきた」
「そういう奴だろ。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。けど不思議と人望を集める難解な男だ」
明鉄がそう呟いた直後であった。
「よく分かってるじゃないか」
その待ち人は現れた。
一言で言えば派手な格好の男だった。
スーツ姿ながら柄があり、髪は金髪に染め上げられ、更にはサングラスにネックレスなどの派手な装飾品が付けられていた。
それらが不釣り合いかと言われればそうではなく、男性から発せられる目に見えないオーラのようなものは、派手な装飾が上手く調和させているようだった。
しかし今回ばかりはそのオーラが周囲と釣り合っておらず、荒廃した建築物から浮いたような雰囲気を醸し出していた。
男の名前は金城 乖離。従来群れることのない『アウトロー』を束ねる、裏の王である。
「貴様が示した時間など…いや、本来他者からの指示なんぞ俺が従う義理は無い。俺は俺が動きたいように動くからな」
「…噂に違わない唯我独尊さだな、金城 乖離」
現れた人物に、流石の明鉄も警戒心を露わにするが、その顔の前に手が出される。
「まぁそう警戒するな明鉄。別にコイツと戦いに来たわけじゃないだろ。今はな」
緊張感を見せていた明鉄とは対照的に、イクサはいつも通りの余裕を崩さず、乖離と相対していた。
「ふはっ!良いぞ!俺を前にしてなんら変わらぬその態度!そうでなければそもそも話合うなどしようとすらしなかっただろうからな!」
一方で乖離もイクサの反応に満足したのか、愉快そうに笑い声をあげていた。
「そらどうもありがとよ。その言い草なら話は聞いてくれるんだろうな」
乖離の言い草を意に介さず、イクサは「ハッ!」と鼻で笑い、乖離に尋ねる。
「まぁ良かろう…だが…」
乖離はチラッと視線を移し、明鉄の方を見る。
「ソイツは退けろ。俺と話をするに値せん」
そのまま指を刺すと、スッと他所の方へと指を向ける。
この発言に対し、イクサはこれまでと違う反応を見せた。
「そいつぁ聞き捨てならないな。明鉄は私の右腕だ。何をする時も、ずっと戦いを共にしてきた。貶すのは許さねぇ」
乖離を前にしても表情を崩さなかったイクサが、初めて好戦的な意味で表情を変えた。
「貴様がどう言おうと、どう考えていようとも俺には関係ない。俺の前に立つには値せん。失せろ」
続けざまに放たれた乖離の言葉に、明鉄から殺気に満ちた圧が放たれる。
乖離もこれを受けて同じく抑えていた圧を放ち始め、周囲の建築物にヒビが入るほどの殺気がぶつかり合う。
「おい、止めろ!」
そこに割って入ったのは、自らを貶された明鉄本人だった。
「イクサ!気持ちはありがたいが今は私情を抑える時だ!ソレは交渉が決別した後でも遅くないだろ!!」
まずは身内であるイクサに声をかけると、イクサは敵意を醸し出しながらも、殺気は収めていった。
それを見た明鉄は、今度は金城 乖離の方を見る。
「金城 乖離。お前が私が居るのが気に食わないのは分かった。こっちとしては最低限、話し合いの場くらいは設けたいと思ってる。目障りなら私は一旦この場を離れる。それで良いだろ?」
目の前から放たれた言葉に、乖離はジッと明鉄を見つめる。
そして、
「ふはっ!」
と、笑った。
「己が卑下にされているというのに、それを意に介さんか!それどころか他の利益のために自己を犠牲にするか!」
愉快そうに笑い続けた後、乖離は改めて明鉄の方に向き直った。
「気が変わったぞ!白銀 明鉄と言ったか?貴様は貴様で面白い資質を持っているな!俺との交渉の場に留まることを許可しよう!」
先程とは真逆の発言に、これには明鉄だけでなく、イクサも呆気に取られていた。
「(まさに傍若無人…自分の考えをコロコロと変える自由奔放なやつだ…本来ならこういう奴との関係は避けたいところだが…今回ばかりはやむを得ないだろう)」
明鉄は乖離の発言によって、内心では却って警戒心を高めていたものの、秘めたる計画のために仕方ないと諦める。
「皇 イクサといったな。貴様にも悪いことをしたな。コイツもなかなか骨のある、面白い女だ」
「こんな私なんかに何十年も着いてきてくれてるんだ。当たり前だろ」
謝罪のような発言に、イクサはようやく敵意も収め、元いた瓦礫の場所に腰掛けた。
一先ず場を納めることが出来たことを確認し、明鉄は「ふぅ…」と小さく息をこぼす。
「とりあえず、話すくらいは出来そうで何よりだ。こういう場では私が取り持つことになってる。私が指揮って良いか?」
仕切り直しと言わんばかりに、明鉄が両者の会合の間を取り持とうとする。
「ふむ…なぜだ?」
「明鉄の方が遥かに頭がキレるからだ。纏めるのも上手い。私が最低限の知識をつけられたのも、コイツに教わったからだ」
当然の疑問からの質問に対し、イクサが素直な回答で返す。
「ふはっ!なるほど、『アウトロー』も一枚岩では無いということか」
イクサの回答に納得したと判断した明鉄は、早速話し合いの場を作り出す。
「金城 乖離。私達からの提案は事前に話した通りだ。『レジスタンス』と手を組んで欲しい」
間に立つ明鉄は、前置きなくいきなり本題に入った。
乖離も驚いた様子は無く、明鉄の言う通り、事前に話の内容を伝えられていたのだろう。
「話は通してあった。それを聞いた上でここに来たということは、私達と手を組む気があるんだろう?」
その様子を見て、可能性があると判断した明鉄が乖離に尋ねる。
その問いに対して乖離の答えは…
「ふはっ!」
笑う、であった。
「そうだな。貴様らの提案を頭ごなしに否定するつもりは無い。だがこうは思わなかったのか?『レジスタンス』のトップが集まるこの場で、貴様らを亡き者にすれば、実権は『アウトロー』と『軍』のどちらかが握ることになるということに」
唐突な変わり身に、明鉄が僅かに警戒心を露わにする。
しかし、それをまたしても制したのはイクサだった。
「ノッかるな明鉄。こうやって他人を見下して相手の情緒を掻き乱す…そういう輩だよ」
先程、明鉄を貶された時とは打って変わって、イクサは冷静に乖離の言葉に対応する。
「ほう、俺を知ったような口を聞く。ならば聞いてやろう。俺らが組む『メリット』はなんだ?『レジスタンス』を制した貴様らが、『リスク』を取り込みたいのは何故だ?」
乖離の言葉は、二人を、『レジスタンス』を試しているようであった。
この問いに対し、二人は…
※後書きです
ども、琥珀です。
1日早いのですが、明日でなんとこの作品も四周年を迎えました。
読んで下さる読者の方がいるから、休載はあれどここまで挫けず続けてくることが出来ました。
四月から新しい職場になるというこで、仕事が激務になり、今まで以上に休載が増える可能性が高いのですが、それでも、何とか続けられれば良いと思っております。
読者の皆様、これからも応援、宜しくお願いします。
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




