表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
11章 ー強化個体出現ー
465/481

第441星:訴えかけ

国舘 大和(24)

 千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに指揮をとりつつ、根拠地内の環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。実は関東総司令官という立場であるが、それを隠している。


神宮院 アンナ

 レジスタンスの穏健派、『ジェネラス』のリーダー。従来の『レジスタンス』そのもののリーダーでもあったが、イクサと決別したことで勢力が二分。決別した末、敗北した。穏健派だけあり、平和的な思考を持ち主。言葉で人の心を動かすタイプで、心から『グリッター』と人の平等な世界を願っている。千葉根拠地に希望を見出し、助力した。


門脇 渚(25)

 対『軍』組織『レジスタンス』の構成員で、対象の物質を口内に含む事で情報を得る『グリット』を有する。その副作用で五十嵐 歪という人物の人格が乗り移っていた。朝陽に迎え入れられ、かつての自分を取り戻す。現在は根拠地の留置所に拘束されている。


無値(14)

 無感情・無機質な反応の少女。対『軍』組織『レジスタンス』の一員で、兵器として育てられた戦闘員。朝陽の言葉と行動に心を動かされ、自分の中に価値を見出した。現在は根拠地の留置所に拘束されている。


日浦 透子(16)

 常に何かに怯えているような様子の少女。対『軍』組織『レジスタンス』の一員。カンナ達の教育で恐怖を植え付けられ、『グリッター』は恐れられる存在でしかないと思い込んでいたが、朝陽の言動に心を動かされ、世界に希望を見出した。現在は根拠地の留置所に拘束されている。

「渚さん、無値さん、透子さん、貴方達はこの根拠地で、この世界における希望を見出したと仰いましたよね」



 座り込んで語りかけるアンナの言葉に、返答するものはいなかったが、それが寧ろ答えになっていた。



「あなた方が、何を見て、何を知って、希望を見出すことが出来たのかまでは、私は知りません。ですが、同じ場所、同じ人達と触れ合っていく中で、感じたものは一緒だと確信しています」



 流石は穏健派の筆頭ということもあり、普段から語り慣れているためか、その語り口はどこか惹き込まれるような口調であった。



「……私は、『グリッター』が差別される世界を変えたいと思い、『軍』を抜け、『レジスタンス』に加入しました。そうする事で、今までとは違う視点から物事が見えると思ったからです」



 三人から反応は無いものの、アンナは語る口を止めなかった。



「結果として、その判断は間違いでは無かったと思っています。当時、あのまま『軍』に残っていれば、私はただ廃れた一介の『グリッター』のままであったと思います」

「(これほどのカリスマ性を備えてるんだ。仮に『軍』に残っていても、相応の戦績は残していただろうけどね…)」



 と大和は頭で考えていたが、それを口にするような真似はしなかった。



「貴方達もご存知の通り、私は『レジスタンス』のリーダーにまで昇り詰めました。ですが、それでも私に、世界を変えることは出来ませんでした。人々から『差別』を消すことなど出来なかったのです」



 アンナの掲げる理想、『グリッター』への差別のない世界を作るというのは、容易いものではない。


 アンナもアンナなりに様々な試行を凝らして人々と接して来たのであろうが、それで『差別』意識をなくしたものは微々たるものだろう。



「(そもそも『グリッター』への差別意識は、『軍』が()()しているから踏み留まっている側面がある。皮肉な話だ)」



 同じく『グリッター』への『差別』を疎む大和からしても、やるせない話ではあった。



「行き詰まり、悩み、そして戦い…月日が経つにつれて、私は進むべき道を見失いつつありました。そんな時に、私の道標となる指標を見つけました。それがこの根拠地です」



 アンナは檻の外を眺める様にして、周囲を見渡した。



「ここの根拠地の方々からは、『差別』を意識している様子が感じられませんでした。それは『グリッター』の方々のみならず、それをサポートする科学班の皆様や、技術班の皆様からもです」



 いつの間にか瑞樹やリナとも交流を深めていたのか、と大和は気付きつつ、アンナの話に耳を傾け続ける。



「その時私は思いました。私は世間知らずであったと」

「…『軍』を抜け出して、『レジスタンス』をまとめ上げたアンタが…?」

「はい」



 ようやく反応を見せた渚の言葉に、アンナは即座に答えた。



「私は『差別』を知った気でいただけだったのです。人々は何故『グリッター(私達)』を恐れるのか、それを深く追求してきませんでした」

「で、でででででもそれは、考えれば直ぐに分かることなのでは?」

「私達の『グリット(能力)』は、人々からすれば恐怖の対象でしか無い。だから人々は、私達を恐れ『差別』する。そうでしょ?」

「それは当然あるでしょう。ですが私はそれを受け入れる事が出来ず、頭では分かっていても、拒絶してしまったのです」



 透子達の言葉を否定することはせず、寧ろ受け入れた上で、アンナは話を進めた。



「ですが、ここの人達は違いました。『差別』という過酷な現実が有りながらも、それを受け入れ、自分が成すべきことを成す…単純ですが、大切なことです。小さな小さな積み重ねと、『差別』にも負けない強い思いやりの心が、この根拠地には広がっていたのです。この事を、世間はいったいどれほど知っているのでしょうか。私は口だけでそれを伝えようとし、行動に起こすようなことをしてきませんでした。それがどれほど愚かで、未熟な行動であったか…それを痛感したのです」



 実際のところをいえば、『レジスタンス』という組織は、一般人には殆ど普及していない。


 というのも一般人にとって、『グリッター』という存在はどこまでいっても『グリッター』であるためである。


 つまり、『軍』に所属し(管理され)ている『グリッター』か、無法者の『グリッター』であるかの差異程度にしか認識されていないのである。


 一般人にとっては、『レジスタンス』も『アウトロー』も同じ、より危険な思想を持った『グリッター』であるという認識であり、アンナのような穏健派の『レジスタンス』であっても、危険であると判断されてしまうことが多い。



「(そういう意味では、『軍』の『グリッター』の方が幾分か待遇は良い方だ。納得は出来ないが…)」



 大和は気付かれない程度にため息をこぼす。



「…私は、外を見るばかりで、『軍』を知ることをしませんでした。ただ一方的に私達を管理する『軍』を悪だと決めつけ、逃げ出しただけなのです。私は、世間知らずだったのです」



 話は核心に入り出したのか、アンナの声のトーンが変わる。



「外だけでなく、内にも目を向ける必要がありました。『軍』の『グリッター』は、世間の持つ『差別』意識に屈っし、『軍』もまた、その意向を汲むことを良しとしていました。その現実から目を背け、そこから逃げ出したところで、何を得ることが出来ましょうか」

「……」



 反応は無いものの、アンナの言葉は少しずつ三人に影響を及ぼしているようであった。



「私が結果として出せたのは、微々たるものです。そして、貴方達のように、力で『差別』を無くさせようとする考えもまた、強く否定することは出来ませんでした。私自身が、その術と知恵を持ち併せていなかったからです」



 これまでの自分を振り返り、沈痛な面持ちを浮かべたアンナは、そこで僅かにタメを作った。



「だからこそ、私はここで大きな経験をしました。この根拠地で、色々な方と出会い、色々な方と話していくうちに、世界の見方と見識が広がったのです」



 渚達が、アンナの言葉で初めて顔を上げた。その感じ方は、三人も同じ経験をしていたからである。



「一人の力は強くなくとも、結束して立ち向かえば『差別』にも負けない強い志になる。この根拠地の人達は無意識にそれを行っており、そして私達…『レジスタンス』はその当然のことさえ出来ていなかった。漠然と『差別』を無くすことを考えることしかしてこなかったのです。それが過ちかどうかは別として、私はここで、その志の高さを学んだのです」

「……それで、ここを出てどうしようって言うんですか?」



 少しずつ関心が高まってきたのか、渚がこれに反応する。



「…正直に申し上げますと、まだこれからどうしたら良いのか、どうすれば良いのかは分かっていません。ですがここで学んだ志と心意気を糧に、私は私に出来る限りのことを積み重ねていくつもりです」



 アンナの言葉からは、強い口調だけでなく、強い意志を感じさせるものがあった。


 伝えるべき事を伝えたアンナは、再び沈黙し、三人の答えを待った。



「……あんたの…『ジェネラス』の『レジスタンス』としてじゃなく、神宮院 アンナとしての新しい矜持については分かりましたよ…」



 やがてポソリと、ゆっくりと渚が口を開いた。



「正直、私個人は世間の『差別』意識なんてそれほど気にしてなかった。私はただ、みんなの待つこの根拠地に帰りたかっただけだったから」



 三人の中で、唯一状況の違う、千葉根拠地所属であった渚は、クマのある目を下に向けながら答える。



「でも透子や無値は、この根拠地…いや、斑鳩 朝陽の行動と、そこで見た現実に当てられて、『差別』の無い世界に夢を持ち、希望を抱いた。その想いは、きっと貴方と同じだと思います」

「…では」

「ですが」



 アンナが発しようとした言葉を、渚は遮った。



「それは同じ希望を見出したというだけであって、それを実現出来るのは私達じゃない…()()()()()()



 その直後に紡がれた言葉は、アンナを否定するものであった。



「一度この世界に絶望して、信じることが出来なかった私達を、斑鳩 朝陽は救ってくれた。それだけで、私達にとっては十分だったと思っています。その上で…」



 渚はベッドに座り込んだ姿勢のまま、視線だけをアンナぬ向けて、問い詰めた。



「私が…私達が貴方とともに行動を起こす理由とメリットはなんですか?」



 アンナは直ぐに、この言葉が自分を試しているのだということに気が付いた。


 ここで答えを間違えれば、恐らく三人は二度と自分に心を開かないだろう。


 それを踏まえた上で、アンナの答えは…

※後書きです






ども、琥珀です。


定期連絡の記載です。


2/6〜2/10の更新についてなのですが、私事で申し訳ないのですが更新をお休みさせていただきます。


翌週からは通常通り更新しますので、宜しくお願いします。


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は2月13日を予定しておりますので宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ