表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
11章 ー強化個体出現ー
464/481

第440星:密会

国舘 大和(24)

 千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに指揮をとりつつ、根拠地内の環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。実は関東総司令官という立場であるが、それを隠している。


神宮院 アンナ

 レジスタンスの穏健派、『ジェネラス』のリーダー。従来の『レジスタンス』そのもののリーダーでもあったが、イクサと決別したことで勢力が二分。決別した末、敗北した。穏健派だけあり、平和的な思考を持ち主。言葉で人の心を動かすタイプで、心から『グリッター』と人の平等な世界を願っている。千葉根拠地に希望を見出し、助力した。


門脇 渚(25)

 対『軍』組織『レジスタンス』の構成員で、対象の物質を口内に含む事で情報を得る『グリット』を有する。その副作用で五十嵐 歪という人物の人格が乗り移っていた。朝陽に迎え入れられ、かつての自分を取り戻す。現在は根拠地の留置所に拘束されている。


無値(14)

 無感情・無機質な反応の少女。対『軍』組織『レジスタンス』の一員で、兵器として育てられた戦闘員。朝陽の言葉と行動に心を動かされ、自分の中に価値を見出した。現在は根拠地の留置所に拘束されている。


日浦 透子(16)

 常に何かに怯えているような様子の少女。対『軍』組織『レジスタンス』の一員。カンナ達の教育で恐怖を植え付けられ、『グリッター』は恐れられる存在でしかないと思い込んでいたが、朝陽の言動に心を動かされ、世界に希望を見出した。現在は根拠地の留置所に拘束されている。

 千葉根拠地にある留置場。


 これは大和が就任するよりも遥かに前から作られていたものである。


 名目上は敵対組織や、万が一『メナス』を捕獲出来た場合の収納場として扱われているが、当然実態はそうではない。


 対『メナス』を想定していることもあり、部屋の作りなどは非常に頑丈に出来ている。


 例えば、『メナス』に相当する戦闘能力を有する『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 そういった使用例は、当然表立っては表記されていない。しかし当然耳には入ってくる。


 以前、渚達を収監する際に、朝陽が同伴した時の反応を見れば、ここがどういう使われ方をしてきたかは想像に容易い。


 そういった経緯もあり、大和はここを負の遺産と捉え、撤去することも考えていた。


 踏みとどまったのは、何も同様の目的で使用するという考えを持ったわけでは無い。


 寧ろ、ここを使用しないことで、当初の根拠地の面々からの懐疑心と不安を取り除こうという意図があったためである。



「(その目的で使用していないとはいえ…結果として『グリッター』である彼女達を捕縛出来ているのは、本当に皮肉だな…)」



 大和は小さく息を溢し、他に比べて薄暗い独房の中へと入っていった。


 キィ…という扉の音で直ぐに誰かが入ってきたことに気付いたのだろう。渚達が動く気配を直ぐに感じ取ることが出来た。


 三人とも対抗する様子は見られなかったものの、万が一に備え三人にはそれぞれ、片腕に手錠がかけられている。


 とはいっても、大和がこの留置場の待遇を改善したこともあり、留置場内は自由に移動できるほどの長さは保たれており、拘束されているという感覚さえ無ければ、そこまで不快感は無いだろう。



「し…しししし司令官さん…」



 大和の姿を確認すると、透子が怯えた様子でこちらを見た。


 大和に対して怯えているのではなく、幼少期から恐怖によって躾けられてきたために、誰に対しても怯えた様子を見せてしまう性分なのである。



「……私達の処分が決まったのですか?」



 次いで口を開いたのは無値。戦闘後に見られた感情的な起伏は見られず、淡々とした口調で大和に話しかける。


 渚、透子、無値の三人は抵抗こそ無かったものの、実は司令官である大和や咲夜とは殆ど会話をしていない。


 その内、渚だけは精神面がまだ安定していないという理由があるが、透子、無値の二人に関しては、朝陽にしか完全には心を開いていないのが理由である。


 大和も定期的に面会には訪れていたが、それでも、やはり『軍』の上層部に位置する大和や咲夜は信用しきれないというのが実情だろう。


 大和もその心情は理解できるため、深くは踏み込んで来なかった。


 だからこの時も、受け答えは簡単に済ませることにした。



「違う……とも言い切れないかな。とはいえ、それを決めるのはボクじゃ無い」

「……?」



 大和は柵の前から離れ、隣に立っていた人物にその場を譲った。



「こんばんは」



 その声を聞き、薄暗いなかで三人は目を細め、その人物に視線を向けた。


 その直後、三人は一斉に驚いた様子を見せた。



「神宮院…アンナ!?」

「『ジェネラス』のリーダーが何故ここに!?」

「……」



 三人の中で唯一、渚だけ言葉を発することは無かったが。それでも驚いてはいる様だった。



「穏健派の筆頭である貴方が根拠地襲撃を企てる筈もない…いったいなぜ?」



 当然の質問を、無値はアンナに投げかける。



「私はあなた方のリーダーであるイクサと交戦した末、ここに流れ着いたのです。それが、同じ『レジスタンス』が襲撃した根拠地というのは、数奇な運命ですね」



 フフッ…とアンナはどこか自虐的な笑みを浮かべる。



「イクサ様と…詳しい話は聞かないでおきますが、それなら尚更何故ここへ?まさか、貴方が私達を処分すると言うのですか?」



 やはり同じ『レジスタンス』とはいえ、違う派閥であるからか、無値はアンナを警戒しているようであった。



「そうですね…長話をする必要もありませんし、結論を先に伝えましょう」



 アンナはその場から一歩前に出ると、ハッキリとした口調で三人に告げた。



「渚さん、無値さん、透子さん、私と共に千葉根拠地を出ませんか?」



 アンナから発せられた言葉に、一同は絶句する。



「…は?」



 最初に反応できたのは、無値だった。



「それは……いったいどういう……」

「そのままの意味で受け取って下さい。私と一緒に、この千葉根拠地を出る、ということです」



 戸惑う無値に、毅然とした口調でアンナは答えた。



「そ、そそそそれは、ここから脱走するということですか!?」



 ようやく反応することが出来た透子から出て来た言葉は、アンナの言い方を変えたものであった。



「脱走…まぁそうですね。結果を見るとそうなります」

「そ、そんなこと出来るわけがない!!ただでさえここに拘束されている身だというのに!!」



 突然の提案に頭がついて来ないのか、普段無感情の無値が、感情丸出しで答える。



「脱走というと、力付くで抜け出すことをお考えかも知れませんが、その点は心配要りません。あなた方次第にはなりますが…穏便に済ませる手筈は進めてあります」



 トントン拍子で進んでいく話に、無値も透子も困惑して言葉が続かなかった。


 その中で、唯一動揺が少なく、これまで話さなかった渚が、ようやく口を開いた。



「…それはつまり…、そこの司令官さんが私達の逃亡を見逃がしてくれる…っていうことですか?」



 一人ベッドの上に座り、蹲ったままの姿勢で渚が尋ねる。


 渚の目の下は酷いクマが出来ており、未だ多重人格による精神的なダメージが癒えていない様子が伺えた。


 沙雪による定期的なメンタルケアは実施しているが、檻の中という環境や、そもそも朝陽以外に殆ど心を開いていないという状況もあり、その成果はあまり出ていなかった。



「まぁそういう事になるかな」

「…賢明だとは思えませんね。貴方は私達を取り逃した事で立場が悪くなり、私達は逃亡したという事で再び追われる立場になる。メリットを感じられません」



 それでも、襲撃時のNo.2だった立場は伊達ではなく、冷静に大和達の提案の懸念点を挙げていた。


 しかし、アンナはこの受け答えも予想していたのか、直ぐに返答した。



「確かに表面上のメリットはありません。ですが、貴方達がこのままここに残っていてもそれは変わりません。そうですよね、司令官さん」

「…君達に対する出来る限りの擁護はした。けれど、根拠地への被害や実害を鑑みれば、君達は最高本部へ送還される可能性は低く無い。ただでさえ、今は『レジスタンス』の動きが不安定な状況だ。その筆頭である過激派のメンバーである君達なら尚更、情報を引き出そうと連れ出そうとするだろう」



 渚達が根拠地での拘留で済んでいるのは、関東総司令官として立ち振る舞っている大和の恩恵があってこそである。


 それに加えて、事情を理解している最高司令官である護里の助力もあって踏みとどまっているのが現状である。


 しかし、それも『最高議会』が送還の決断を下せば簡単に覆せてしまう。


 謂わばこの状況でいられるのは時間の問題であった。



「…でもそれは…受けて当然の罰です。私達はそれに値する罪を犯したんですから。逃げ出して…どうしろと?」



 今の渚達には、自分たちがしでかしたコトの罪をしっかりと理解し受け止めていた。


 だからこそ、この留置場でも何の抵抗もなく、結果を受け入れる覚悟があった。


 それが現状悪く作用し、アンナの言葉にノらない状況を作り出してしまっていた。



「…か、かかかカンナさんはもう連行されてしまいました。その先でどんな目にあっているか分かりません。それなのに、私達だけ逃げ出すのは…」

「…私達はこの世界に希望を見出すことが出来ました。だからこそ、それを裏切る行為を実行することは出来ません」



 渚の言葉につられ、無値、透子達もアンナの提案に否定的になっていく。



「(予想以上に彼女達の罪の意識は強いな。簡単にノってくれるとは思って無かったが、ここまで否定的な状態ともなると…)」



 説得は難しい…大和がそう考え始めた時だった。


 アンナはゆっくりと前に歩み出し、そして檻の前で座り込んだ。



「私も、同じです。私もこの根拠地で、希望を、目指すべき未来を見出しました」



 そして、三人に対し、心に訴えかけるべく、ゆっくりと自分の心の内を語り出した。

※後書きです






ども、琥珀です。


定期連絡の記載です。


2/6〜2/10の更新についてなのですが、私事で申し訳ないのですが更新をお休みさせていただきます。


翌週からは通常通り更新しますので、宜しくお願いします。


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は金曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ