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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
11章 ー強化個体出現ー
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第437星:風の檻

神宮院 アンナ

 レジスタンスの穏健派、『ジェネラス』のリーダー。従来の『レジスタンス』そのもののリーダーでもあったが、イクサと決別したことで勢力が二分。決別した末、敗北した。穏健派だけあり、平和的な思考を持ち主。言葉で人の心を動かすタイプで、心から『グリッター』と人の平等な世界を願っている。イクサに敗北したことで行方をくらませていたが…?


樹神 三咲

千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務める。


佐久間 椿

千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長。



【椿小隊】

写沢 七

 写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。


重袮 言葉

 活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…対象に関係なくトラウマを想起させる『グリット』を操る。


海藤 海音

 誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな予備動作から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。


【三咲小隊】

椎名 紬

 ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手と視線を交わすことで、視界を共有する『グリット』を持つ。


八条 凛

 自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。触れた物体に自身の『エナジー』を纏わせ、その物体をの向きを操る『グリット』を持つ。


大刀祢 タチ

 メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に斬撃状の『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。

「よしっ!」



 椿が最後の一体である『ユニティメナス』を倒した時、普段はこういう場面で感情を露わにしない大和が、珍しく拳を握りしめていた。


 しかし、それも当然だろう。


 開戦前から不穏な気配を感じ取り、二小隊を派遣。結果それは功を奏したが、言葉を一人犠牲にしてしまった。


 その後悔を抑え込みながら、局面を打開するための指揮と作戦を練り続け、ようやく勝利を掴んだのである。


 側から見れば小さな感情の露出であるが、そばに居た咲夜や夕からすれば、大きな表出であった。



「やりましたね、司令官!!」

「あぁ。言葉君を守れなかったのは痛感だが、これだけ強力な『メナス』を相手に、ここまで被害を小さくして勝てたのは大きい」



 夕の言葉にも、大和は珍しく素直に喜びを露わにしていた。


 しかし、すぐにもとの表情へと戻ると、モニターに目を向けた。



「けどまだだ。あの『ユニティメナス』達の指揮を執っていた、『コマンダーメナス』が残ってる。コイツを倒して、ようやく本当の勝利に…」

『であるのならば、本当の勝利には到達しましたね、司令官』



 通信機に届いたのは、アンナの声だった。



「し、司令官!!も、モニターを!!」



 夕が慌てた様子で声を上げ、大和はその声の通りにモニターに目を向ける。



「こ、これは…」



 そこには、身体が黒い塵と化して消滅していく、『コマンダーメナス』の姿があった。






●●●






────三咲達が『ユニティメナス』に突入するのと同刻。


 アンナは目の前に立つ『コマンダーメナス』を強敵と認めた上で、()()()()()()()対応することを決めていた。



「(前提として、この『コマンダーメナス』は知性が非常に高い。時間をかければかけるほど、こちらの戦い方を見抜かれて不利になる。そしてそれに対応できるだけの基本スペックも持ち合わせている)」



 アンナの周囲には、翡翠色の粒子が勢い良く吹き出していた。



「(なら、今出せる最大出力で、一気にカタをつけます)」



 その量は今までの比ではなく、周囲を覆い囲うほどであった。



『ァ゛ア゛!?』



 粒子はやがて風へと変わり、アンナと『コマンダーメナス』を囲うようにして吹き荒れる。



「今の出力ではこれが限界ですか…ですが、貴方を倒すのには十分でしょう」

『ァ゛ア゛ア゛!!』



 『コマンダーメナス』もこの状況の危険性を察してか、直ぐにその要因となるアンナに攻撃を仕掛けようとする。



「無駄です」



 その瞬間、周囲を囲む球体状の風のドームから、一筋の風が『コマンダーメナス』に向けて吹き荒れ、一瞬にしてその足を切り裂いた。



『ォ゛…ァ゛ア゛!?』



 切り裂かれた足、そこから黒い霧状のガスを見て、『コマンダーメナス』は声をあげる。



「『風円蓋(ル・ヴァン・ドーム)』、このフィールドに覆われた時点で、貴方の敗北は決まっているのですよ」



 切り裂かれた『コマンダーメナス』の足は、直ぐに再生を始めたが、次の瞬間、今度は左手を切り裂くようにして一陣の風が吹き抜けた。


 そして、『コマンダーメナス』の左手はずれ落ちるようにして落下し消滅。


 切られた手からは同じように黒い霧が噴き出ていた。



『ァ゛ア゛ア゛!!!!』



 攻撃を仕掛ける間すら分からないほどの連続攻撃に、流石の『コマンダーメナス』と驚きと困惑を隠せないようであった。



「無駄な抵抗はよして下さい。今のこの状況が分からないほど、貴方の知性は低く無いはずです」



 周囲に風が吹き荒れる中、アンナの声だけがハッキリと『コマンダーメナス』のもとへと届く。



「私の『グリット』は風を操る力。そしていま周囲を覆っているのは、私が作り出した風のドーム。まぁ今の私の状態で作り出せたのは、精々カマクラ程度のものですが…」



 辺りを見渡すアンナの行動を隙と捉えたのか、『コマンダーメナス』は瞬間的にレーザーを放とうとする。


 しかしそれよりも早く、再び風が吹き、再生していない方の足を切り裂いた。



「無駄、と言ったはずです。この『風円蓋(ル・ヴァン・ドーム)』から発せられている風を私は自在に操る事が出来る。貴方を切り裂くことも、竜巻の中に閉じ込めることも、押しつぶすことも、私の思うがままです」



 その言葉を恐らくは理解しているであろう『コマンダーメナス』は、それでもアンナを睨みつける。


 しかし、言葉の意味を理解しているが故に、自分が絶望的な状況に立たされていることも理解していた。



「貴方は非常に厄介な存在です。『ユニティメナス』に劣らぬ戦闘能力に加え、他の『メナス』よりも頭ひとつ抜きん出た知性を兼ね備えている。ここで確実に潰しておかなければいけません」

『ァ゛ア゛…ァ゛ア゛ア゛ア゛!!!!』



 身の危険を感じた『コマンダーメナス』は、再生も途中のまま行動に移った。


 このドームの中に居るのは危険と判断し、脱出を試みたのである。



「何度も言わせないで下さい。無駄です」

『ッ!?ァ゛ア゛!!』



 周囲に立ち込める暴風の壁に衝突した瞬間、『コマンダーメナス』の全身に切り傷が出来ていた。



「周囲を立ち込める風は、堅硬なだけでなく、驚異的なスピードで流動的に渦巻いています。私が自在に操れるだけでなく、触れるだけで切れる鎌鼬の風。逃げ場などありません」

『ゥ゛ウ゛…ァ゛ア゛ア゛ア゛!!』



 風の壁から離れるや否や、『コマンダーメナス』は今度はアンナに襲いかかった。



「えぇ、正解です。私を倒せば確かにこの風のドームは解除されます。それが唯一の脱出方法と言えるでしょう」



 迫り来る『コマンダーメナス』に対し、しかしアンナは冷静であった。



「ですが、それが唯一である以上、その弱点を隠さないわけが無いでしょう?」



 次の瞬間、周囲の風のドームからアンナに向けて風が吹き荒れ、アンナを囲うようにして風の膜が作られた。


 それに『コマンダーメナス』が直撃した瞬間、全身に切り傷を負いながら、『コマンダーメナス』は吹き飛ばされる。



『ァ゛…ァ゛ア゛ァ゛ア゛!?』



 後方へ吹き飛ばされた『コマンダーメナス』は、今度は周囲を覆っていた風のドームに背中を切り刻まれる。



「この『風円蓋(ル・ヴァン・ドーム)』は私の領域。この中での絶対は私です。『メナス』がどれだけ強化されようとも、それは揺るがない」

『ゥ゛…ァ゛ア゛ア゛ア゛!!』



 全身から黒い瘴気を吹き出しながらも、『コマンダーメナス』は再びアンナへと迫った。



「窮地に陥ってもなお迫るその姿には賞賛…いえ、畏怖を覚えます。ですが、どれだけ襲い掛かってこようとも、この領域では無意味です」



 アンナはスッと手をかざすと、周囲のドームから無数の風が『コマンダーメナス』目掛けて迫っていった。


 風は無数の竜巻となって『コマンダーメナス』を飲み込んでいき、そして逃げ場のない大旋風を起こした。



「『竜巻(トルナード・)旋風(トゥルビヨン)』」

『ァ゛ア゛!!ゥ゛ア゛ア゛ア゛!!!!』



 上下左右、もはや向きなどない怒涛の竜巻に揉まれ、『コマンダーメナス』の身体は次々と切り付けられていった。



「これから先、貴方のような存在が増えていくのかも知れません。()()()()()()()()()()()()()()()()()()、貴方の存在は他人事ではありません」



 傷付き、そして次第に消滅の兆しを見せる『コマンダーメナス』を、アンナは達観した様子で見ていた。



「そしてそれは、『メナス』討伐を主軸としている『軍』に課せられる、新たな試練ともなるでしょう」



 『コマンダーメナス』はもはや叫ぶことすら出来ず、そして遂に身体の一部の消滅が始まった。



「ですが…今この時、私の歩む道を教えてくれたこの根拠地を守れるこの時だけは、私がその厄災の芽を摘みましょう。彼女達の未来が、明るいものとなるよう、私がその道を開きます」



 無数の竜巻が解かれ、そして同時にアンナ達を包み込んでいた風のドームも消え去って行く。



「あぁ…私はまだ戦える…進むことが出来るのですね」



 自分の心を新たに確かめることが出来たアンナの表情には、笑みが溢れていた。



『けどまだだ。あの『ユニティメナス』達の指揮を執っていた、『コマンダーメナス』が残ってる』



 その時、強力な竜巻により遮断されていた電波が戻り、アンナの通信機に大和の声が届く。


 その内容を聞くに、三咲達は無事に残った『ユニティメナス』を倒すことが出来たようであった。



「(良かった…)」



 アンナは安堵の息をこぼし、耳元の通信機に手を当てる。



『コイツを倒して、ようやく本当の勝利に…』

「であるのならば、本当の勝利には到達しましたね、司令官」



 アンナは大和の通信にそう答え、本当の勝利を掴んだことを伝えた。

※本日の後書きはお休みさせていただきます






本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は金曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。

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