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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
11章 ー強化個体出現ー
456/481

第432星:膠着

神宮院 アンナ

 レジスタンスの穏健派、『ジェネラス』のリーダー。従来の『レジスタンス』そのもののリーダーでもあったが、イクサと決別したことで勢力が二分。決別した末、敗北した。穏健派だけあり、平和的な思考を持ち主。言葉で人の心を動かすタイプで、心から『グリッター』と人の平等な世界を願っている。イクサに敗北したことで行方をくらませていたが…?


樹神 三咲

千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務める。


佐久間 椿

千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長。



【椿小隊】

写沢 七

 写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。


重袮 言葉

 活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…対象に関係なくトラウマを想起させる『グリット』を操る。


海藤 海音

 誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな予備動作から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。


【三咲小隊】

椎名 紬

 ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手と視線を交わすことで、視界を共有する『グリット』を持つ。


八条 凛

 自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。触れた物体に自身の『エナジー』を纏わせ、その物体をの向きを操る『グリット』を持つ。


大刀祢 タチ

 メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に斬撃状の『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。

 大和が三咲達に説明をしている最中、アンナは二体となった『ユニティメナス』との交戦を続けていた。



「(これは…想定よりも…)」



 風を自在に操る自身の『グリット』、『我が心躯は御風と共に(コール・トゥルビヨン)』を駆使し、優勢を保ち続けていたアンナではあったが、押し切ることは出来ずにいた。



「(いただいたデータをもとに、戦闘レベルを調整したつもりでしたが、想定よりも強い。倒した一体も、既に手傷を負わせていたから即座に倒すことが出来ましたが…)」



 迫る『ユニティメナス』を牽制しながら、アンナは冷静に局面を読み取る。



「(もう少し出力を上げますか…?いえ、二体同時となると、単に出力を上げるのは危険かも知れません…ですがこのままだと膠着状態のまま。局面を打破したいものですが…)」



 チラッと、アンナは別の方向に目を向ける。


 そこでは、今でも海面ごと飲み込んでいる、アンナが起こした竜巻の姿があった。



「(竜巻(トルナード)もあとどのくらい持つか分かりません。『コマンダーメナス』が揃う前に最低でも一体は減らしておきたいところです)」



 改めて目の前で対峙する『ユニティメナス』に目を向け、アンナは全身から翡翠色の『粒子(かぜ)』を撒き散らした。


 アンナの牽制とも攻撃とも取れる『グリット』に、初手で味方を一人やられている『ユニティメナス』は正面から向かって戦闘を行うことが出来ずにいた。


 ましてや、自分達を()()する『コマンダーメナス』がいない状況ではなおさらである。



「『風の槍(ル・ヴァン・ランス)』」



 周囲の風を操り、アンナは再び風の竜巻を複数作り出すと、それを二体の『ユニティメナス』に向けて放つ。



『ァ゛ア゛!!』



 死角を縫うようにして迫る竜巻に、しかし『ユニティメナス』は素早く対応してみせた。


 全員が異なる竜巻に目を向けることで、それぞれの竜巻の位置を確認し、全員が回避することに成功したのである。



「(…!『コマンダーメナス』抜きでこれほど早く対応を…?これは、時間をかけて戦っている場合では無さそうですね)」



 『ユニティメナス』だけでも十分に危険があると判断したアンナは、最初の頃に見せた余裕を隠し、集中力を研ぎ澄ませていった。



「(動きは通常の個体よりも素早く、先程のように正面から攻撃を仕掛けてはまず当たりません。なら、まずはその機動力を奪うところから)」



 攻撃の戦法を決めたアンナは軽く杖を振るう。



「『波風(コンフィート)』」



 すると今度は、アンナからではなく、離れていた『ユニティメナス』の周囲から、翡翠色の『エナジー』の粒子が吹き出し、それが風となって吹き荒れた。



『ァ゛ア゛!?』



 意表を突かれたのは『ユニティメナス』側。


 これまでアンナの側から繰り出されていた攻撃が、突如自分達の近くで発動し、襲いかかってきたからである。


 風は『ユニティメナス』の両脇から発生し、押しつぶすようにして吹き荒れた。


 範囲は狭いものの、その突風の威力は、海面を見ると分かる程で、まるで小さな台風がその場で起こっているようであった。



「これで動きは封じました。抜け出される前に攻め入るとしましょう」



 これがアンナの『グリット』、『我が心躯は御風と共に(コール・トゥルビヨン)』の恐ろしさの一つ。


 風を操るアンナの『グリット』は、正式には大気を操るといった性質に近い。


 その場に風を発生させる源、即ち空気さえあれば『グリット』は場所を問わず発動させることが可能なのである。



「『風の槍(ル・ヴァン・ランス)』」



 今度は自身の周囲に『グリット』を展開し、再び風の槍を展開していく。



「貫きなさい…!!」



 そして杖を振るい、複数発生させた、竜巻状の風の槍を『ユニティメナス』に向けて放った。



『…!!ァ゛ア゛!!』



 そのアンナの攻撃に対して、『ユニティメナス』が取った反撃行動は、レーザーを発射することであった。


 照準(しせん)がまともに定まらない状況でも、確実にアンナを狙い放ってきたあたり、今回の『ユニティメナス』が、やはり通常の個体より優れていることが見て取れる。



「…!!」



 さしものアンナもこれには回避の手段を取るしかなく、展開していた風の槍は放たれる前に霧散していった。



「…なるほど、単純な攻撃手段では通用しないわけですか。しかし、私の身体能力では接近戦を行うわけにはいきませんし…」



 照準を定めるのに時間を要した分、回避に成功したアンナは、今の状況を冷静に分析していた。



「(厄介ですね。『波風(コンフィート)』の出力のなかで動いて、且つ正確に狙いを定めて来るのは予想外でした。今ので一気に攻めて終わらせるつもりでしたが…ここまで…)」



 結論から言うと、アンナはまだ全力を全く出していない。


 ここまでは『ユニティメナス』の実力を図るための調整であり、その上でアンナの想定を上回っていたに過ぎない。


 しかし、その上でアンナは目の前の『ユニティメナス』達の強さに驚かされていた。



「(単純な攻撃では貫けない外部の装甲の強さ、私の風に抗える身体能力…当然ではありますが、そのどれも今まで対峙してきた『メナス』を上回っているようです)」



 あくまで序盤は様子見、そういった心持ちで挑んでいたアンナではあったが、ただ『ユニティメナス』の身体能力の高さに驚かされただけであった。



「(さて、そろそろ『ユニティメナス』も私に対する警戒心を高めて来る頃。様子を見るのもここら辺が限界でしょう。傷は癒えつつあるとはいえ、あまり大幅に出力を上げるのは憚れますが…やむを得ませんか)」



 アンナと、もう一人の『レジスタンス』のリーダー、皇 イクサとの決戦が起きたのは、今からおよそ十日ほど前。


 通常の『グリッター』なら多少の傷は完治しているが、相手が相手であっただけに、アンナのコンディションは決して万全では無かった。


 それだけに、『ユニティメナス』の実力を図り、最低限の力で倒すことを目的としていたが、それは叶わないことを早くも悟っていた。


 そして杖を握る手にグッと力が込められていく中…



「撃てッ!!」




 その後方から、アンナを避けつつ無数の輝弾が『ユニティメナス』を襲撃した。


 『グリットガン』かは放たれた輝弾は、『ユニティメナス』の硬い装甲を貫くことなど到底できず、『ユニティメナス』達はその攻撃を煩わしそうに片手で防いでいた。


 しかしアンナはその光景よりも、後方から放たれた攻撃に驚き、振り返った。



「皆さん…何故戻られたのですか?」



 そこには避難させたはずの三咲小隊、そして椿小隊の両小隊が揃っていた。



「なんでここに、ですか?愚問ですねアンさん。この戦いは、千葉根拠地によるものだからです」



 そしてアンナの問いに対し、三咲がメガネをクイッと上げながら答えた。



「…ですが…」



 アンナはその続きの言葉を口篭らせた。


 「貴方達では勝てない」と告げることは、心優しいアンナが発言するには酷な内容であったからだ。



「私達だけではハッキリ言って、現状勝機を見出せないのは分かっています」



 しかしその予想を裏切って、三咲は自ら自分達の力不足を認め、アンナにそう告げた。



「それでは…何故?」

「だから、貴方の力をお借りしたいのです。私達だけでは無理でも、貴方のお力をお貸しいただければ、勝てる。『ユニティメナス』の情報を見ても、勝機はあると踏んだから、アンさんは戦場へ来られたのでしょう?」

「それは…おっしゃる通りです。ですが私は…」



 アンナは直ぐに三咲の提案を受け入れることは出来なかった。


 三咲達が足手纏いになると考えたわけではない。


 寧ろ、想像以上の実力を有する『ユニティメナス』に対して、連携力のある二小隊の加勢は大きく戦局を変えることが出来るだろう。


 しかし、理由はそこには無い。アンナが懸念しているのは…



「アンさん…いえ、()()()さん。私達はもう、貴方が『レジスタンス』の元リーダーであったことを知っています」

「…!!」



 予想だにしない三咲の言葉に、アンナは思わず目を見開いて驚く。



「そう……ですか。恐らく大和(かれ)から聞いたのでしょうね」



 元よりアンナはこの戦場に姿を現した時から、その素性を隠すつもりは毛頭なかった。


 『ユニティメナス』の襲撃もあり、正体を明かす機会を逸してしまったが、この戦いが終われば直ぐにでも明かすつもりであった。


 しかし、それよりも早く、恐らく三咲達を想う大和が、自分の正体をメンバーに明かしたのだろう。


 大和を責めるつもりもアンナには無い。遅かれ早かれの問題だからだ。



「(それに、彼のことです。私の素性を彼女達に隠していたことに心を痛めながら説明をしていたのでしょうね。そして恐らく、私の素性を私自身ではなく、彼の口から発してしまうことにも…)」



 十日程の付き合いは無いが、アンナも大和の性格は理解しているつもりであった。


 その上で理解できないのが、三咲達の行動であった。



「…私の素性を知った上で…何故私に協力を?私は…千葉根拠地を貶めようとした『レジスタンス』の一員…そのリーダーであると言うのに…」



 アンナの千葉根拠地に対する罪悪感は、今も拭いされていなかった。


 この戦場に降り立った理由の一つでもあるこの罪悪感に対し、三咲達はいたってシンプルな答えを返した。



「それは、アンナさんが()()()()()()()

※後書きです






ども、琥珀です。


年内の更新はこれが最後になります。

今年も本作品にお付き合いいただきありがとうございました。


休載などもありましたが、途中で断念する事なく続けられたのは、一重に読者の皆様のおかげです。


来年も、自分に出来る限りの全力で執筆にあたらせていただきますので、何卒宜しくお願い致します。


それでは皆さま、良いお年を!


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は1月9日(月)を予定しておりますので宜しくお願いします。

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