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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
11章 ー強化個体出現ー
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第431星:正体

樹神 三咲

千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務める。


佐久間 椿

千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長。



【椿小隊】

写沢 七

 写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。


重袮 言葉

 活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…対象に関係なくトラウマを想起させる『グリット』を操る。


海藤 海音

 誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな予備動作から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。


【三咲小隊】

椎名 紬

 ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手と視線を交わすことで、視界を共有する『グリット』を持つ。


八条 凛

 自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。触れた物体に自身の『エナジー』を纏わせ、その物体をの向きを操る『グリット』を持つ。


大刀祢 タチ

 メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に斬撃状の『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。

 『コマンダーメナス』を抑えられ、そして開戦間も無く一体の『メナス』が消滅させられたことで、『ユニティメナス』達は完全に尻込んでいた。


 対するアンナも、そんな隙を見逃すはずもなく積極果敢に攻撃を仕掛けていた。


 自分達が完全に劣勢に立たされていた『ユニティメナス』達に対し、一人で完全に優位に立っているアンナの姿を、三咲達はただ呆然と見つめる事しか出来なかった。



「『ユニティメナス』の外装をモノともしない高出力の攻撃に、汎用性の高い風の『グリット』…これだけの実力を持った人が、最高本部の『シュヴァリエ』以外にもいたなんて…」



 その圧巻な戦いっぷりに、三咲は羨望と困惑の感情が入り混じった様子で呟いた。


 それとは対照的に冷静な様子でその戦闘を見ていたのは椿だった。



「でも三咲ちゃん。あの人は『シュヴァリエ』じゃ無いよね〜?公開されてる情報に合致する内容は見当たらないし〜。でもだとすればあれだけの実力を持った人が〜今まで認知されてないなんてこと、あり得るのかな〜?」



 その椿の冷静な発言が、小隊の面々の冷静さを取り戻させていき、やがて椿同様、懐疑的な目でアンナを見るようになっていった。



『それについては、ボクから説明しよう』

「司令官…?」



 一同がアンナを見る目が変わり始めたタイミングで、耳元の通信機から大和の声が耳に届く。



「どういうことですか?アンさんは特例官では無いのですか?」



 アンナがただの人物で無いことを、三咲も薄々と察していたが、大和の発言とこれまでの戦闘経過から、それがいま確信に変わった。



『そう、彼女は特例官じゃない…そもそも、《軍》の人間でも無いんだ』

「え…」



 これには三咲だけでなく、その場に残ったメンバー全員が息を呑んだ。



「ど、どういうことですか!?それでは、彼女は一体何者だと言うんです?」



 困惑しながらも、三咲は出来る限り冷静に努め、大和にアンナ正体を尋ねた。



『彼女は…正式な名前は神宮院 アンナ。《レジスタンス》のリーダーにして、穏健派組織ジェネラスの主導者だ』



 大和から発せられた言葉に、今度こそ全員が言葉を失い、そしてゆっくりと、改めてアンナの方を振り返った。



「アンさんが…『レジスタンス』のリーダー…?」



 言葉では驚きつつも、その実三咲達はどこか頭の隅で納得している側面があった。


 最高本部最高司令官の直属である『シュヴァリエ』、もしくはそれに最も近い実力を誇る『一等星』の戦士。


 それ程の実力者でなければ、これだけの戦闘を繰り広げることなど出来るはずは無いと考えていたからだ。


 その正体が、一人で大隊に並ぶ戦力となり得る『レジスタンス』のリーダーであるのならば、寧ろ理解が及ぶといった考え方である。


 しかし、それでも一同には納得できない点があった。



「し、しかし、それなら何故根拠地に!?いえ、それよりも何故正体を私達に隠していたのですか?」



 当然と言えば当然である。


 これまで自分の上司だと思って接していた人物が、『軍』と冷戦状態にある『レジスタンス』のメンバー、それもそのリーダーであるともなれば、驚きを隠すことなど出来ない。



『…すまない。君達に隠し事をしようと思ったわけじゃ無い。ただ、彼女の立場を考えれば、あまり矢面に立たせることは避けたかったんだ』

「それは…」



 大和の説明も、理解できないものでは無かった。


 まがりなりにも『レジスタンス』のリーダーである神宮院 アンナ。


 そんな人物をいきなり紹介されれば三咲達も戸惑っていただろうし、訓練を見に来た時も、いつものように振る舞うことは出来なかっただろう。


 敵対視、とまではいかなくとも、少なくともこの短時間で心の壁を無くすことは、互いに難しかったかも知れない。


 加えて、大和からすればなんらかの理由でアンナに根拠地での自由を与えていたとして、それが表に出てしまえば、当然司令官として相応の罰が下されることになるだろう。


 だから、偽名と偽りの役職を与えて正体を隠し、行動を許可出来るようにしたのだろう。


 冷静になれば、その判断の理由は直ぐに納得のいくものではあった。



「でも、どうしてそんな最重要人物がこの根拠地にいたんです〜?」



 しかし、椿達からすれば、まだまだ謎の多い状況で、更なる説明を求めた。



『その経緯について話すと長くなるが、要約すると、彼女はある戦いに敗れ、傷付いて倒れていたところを護進さんが内密に保護したんだ。ボクはそれを引き継いだ形になる』

「護進司令官代理が?ということは、保護されたのは、『大輝戦』の期間から、ということになりますね」



 三咲達の話の理解は早く、どんどんと状況を飲み込んでいく。



『そうだね。だからボクも《大輝戦》が終わってから聞かされたことになる』

「それで司令官〜。彼女に偽名と偽りの役職を与えてまで、何をさせたかったの〜?」



 そこまでの話を受けた上で、椿はアンナに対する説明の核心を求めた。



『…彼女は、心に傷を負っていた。《グリッター》と人との共存を望む、平和な思想の持ち主だからこそ、悩み苦しんでいた。それを見た時、思ってしまったんだ』



 大和の言葉はそこで一度止まり、僅かなタメを作ったのち、再び通信機から声が届く。



『ボクが着任した時までの、君達の姿に似てると…』

「…!」



 大和から発せられた言葉に、一同は一様に押し黙った。



『《グリッター》であることを受け入れながら、差別の続く日々と戦い、そして責任のある主導者としても振る舞い、そして傷付き挫けかけた…そんな彼女の姿を見て、ボクは君達のかつての姿と重ねてしまったんだ』

「司令官…」



 通信機越しに伝わる言葉に、三咲達の表情は徐々に変化していく。



『放っておけなかった。責任を一心に担い、戦い続けてきた彼女が、このまま沈んでいく姿を、見捨てることが出来なかった。だから、千葉根拠地でまた立ち上がってくれた君達の姿を見れば、また奮い立ってくれると思ったんだ』



 大和の言葉からは切実な思いが発せられ、それは三咲達にもしっかりと伝わっていた。



『…君達を騙していたという事実には変わりない。君達からの言及はいくらでも受ける。でも、今は、今だけは彼女のことを信じて欲しいんだ。君達の姿を見て、もう一度立ち上がってくれた、彼女を信じて欲しい』



 大和の姿はモニターの無い彼女達の目には映らない。


 それでも三咲達には、この通信機の向こう側で頭を下げている大和の姿を容易に思い浮かべることが出来た。


 それから間も無くして、三咲達は残ったメンバー間で顔を見合わせた。


 そこには苦笑いや、やれやれといった表情が浮かんでおり、それと同時に、誰一人悪感情など抱いていない様子が見て取れた。


 やがて、一同を代表して三咲が通信機に手を当てる。



「謝らないで下さい司令官。貴方のしていることが、してきたことが、全て私達のためであり、私達のためであったこもを私達は知っています」

「ま〜初めから相談して欲しかったのはちょっとあるけどね〜。でも、私も司令官の立場だったら、きっと同じことをしてたかな〜」



 三咲の言葉のあとに、同じ小隊の隊長である椿も続いた。



「司令官が信じろと仰るのであれば、私達は信じます。神宮院 アンナさんをではなく、彼女を信じろと言った司令官の言葉を信じます」

『三咲君…』



 言葉にこそしなかったが、三咲の言葉に同調するようにして、他のメンバー達もその場で頷く。



「ですが司令官、私達もこの戦闘をこのままただ見ている事なんて出来ません」

「言葉ちゃんがやられちゃってるし〜、このまま何もしないで静観…ってのはちょっと納得いかないよね〜」



 アンナの手によって安全圏まで後退させられた三咲達ではあったが、その点にだけは納得していなかった。



「それに司令官、以前は『レジスタンス』のリーダーであっても、アンナさんは今、私達を救うために出撃して下さったんですよね?」

『…そうだね』

「なら、例え一時的なものであったとしても、今の私達はアンナさんと仲間です。なら、私達は彼女と共に戦いたいです」

『…その通りだね。うん、その通りだ!』



 三咲の言葉に、次第に大和の言葉にも熱が籠りだす。



「では司令官、私達に指示を!この困難な局面を切り抜け、生き抜くための作戦を授けて下さい!」

『分かった』



 自責の念を振り払い、大和は再び心を奮い立たせ、三咲達と向かい合う。



『総員、再戦闘準備!彼女と共闘して、《メナス》を撃退する!連携の歴が違うところを見せつけてやるんだ!』

「「「了解!!!!」」」



 指揮は再び高まった。


 千葉根拠地による反撃が始まる。

※後書きです






ども、琥珀です。


今年も遂に残り三日ですね。

何かやり残した事は無いかと考えても、後悔しか思い浮かばないので考えるのをやめました。


さて、年内の更新は30日金曜日が最後になります。その次の更新は、年明け9日の月曜日になりますので宜しくお願いします!


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は金曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。

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