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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
11章 ー強化個体出現ー
451/481

第427星:植え付け

樹神 三咲

千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務める。


佐久間 椿

千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長。



【椿小隊】

写沢 七

 写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。


重袮 言葉

 活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…対象に関係なくトラウマを想起させる『グリット』を操る。


海藤 海音

 誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな予備動作から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。


【三咲小隊】

椎名 紬

 ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手と視線を交わすことで、視界を共有する『グリット』を持つ。


八条 凛

 自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。触れた物体に自身の『エナジー』を纏わせ、その物体をの向きを操る『グリット』を持つ。


大刀祢 タチ

 メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に斬撃状の『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。

 二体目の『ユニティメナス』に攻撃が当たる様子を、言葉は蒸気の中で姿を隠しながら眺めていた。



「(効果は的面。上手く翻弄されてくれてるわね)」



 言葉の『泡沫夢幻(ファントム・ペイン)』は、対象に幻覚を見せる……だけの『グリット』ではない。


 その本質は、様々な方法で幻覚を見せる条件を整え、対象に()()()()()()()()()()()()()()()()()


 故に、対象者は幻覚に惑わされるだけでなく、そこから生み出される行動に恐怖しする。


 そしてその事象が長く続くほど精神は疲弊し、最終的に事が切れる状態にまで陥る恐ろしい『グリット』である。


 とはいえ、これまで相手が感情を持たない『メナス』であったこともあり、言葉の『グリット』は、その真価を発揮していたとは言い難い。


 しかし、『メナス』が僅かながら知性を身につけていったことで状況が変わっていく。


 そして、ここにきて現れたのが、他の個体よりも高い『知性』を備え、それでいて強力ながら単調な『ユニティメナス』が現れた。


 幻覚の正体は見抜けずとも、それが()()()()()()()()()()()


 それが、言葉の『グリット』の真価を発揮させていた。


 倒したはずの相手が、絶命せずに自分達に襲い掛かってくる。


 『泡沫夢幻』の効果を知らない『ユニティメナス』からすれば、それは恐怖でしか無いだろう。



「(『メナス』が知性を持ってくれて良かった。お陰で思う存分に私の『グリット』が活かせる。これで残るは二体……)」



 海音の『パイルグリット』が直撃を見て、言葉は『ユニティメナス』を確実に倒したと思い込んでいた。


 しかし、直ぐにその異変に気が付く。



「(…!いや、さっきと違う!背後から瘴気が出てない!)」



 その異変の正体に真っ先に気付いたのが、攻撃を仕掛けていた本人である海音であった。



「…ッ!!コイツ、腕で!!」



 突き立てられた海音の『パイルグリット』は、『メナス』の弱点である胸部には突き刺さっていなかった。


 杭は『ユニティメナス』が胸部を守るために突き出した腕に刺さっており、致命傷には至っていなかった。



「(あのタイミング、この距離で防ぐのかよ!!どんな反射神経してんだッ!?)」



 幻覚に惑わされ、死角からの接近を許し、更には足を斬られ姿勢も崩されていた。


 その状況下で、『ユニティメナス』は海音本人の気配に気付き、そして防御までした。


 これだけで、今回対峙している『ユニティメナス』という存在が、これまでの『メナス』とどれだけ戦闘能力に差があるかが現れているだろう。



『──ゥ゛……ァ゛ア゛!!』

「あ!やべ!!」



 攻撃を防いだ『ユニティメナス』は、至近距離まで近づいていた海音を睨みつける。


 海音は『ノれない波はないシックスセンス・オーラ』で次の攻撃を予測。回避を試みようとするが…



────ギッ!!



「ま、マジか!!」



 『ユニティメナス』は突き刺さった杭が抜けないよう、腕を絡めており、海音は動きが取れなくなっていた。



「海音!!」



 それを見たタチが救出に向かおうとするが、そこへ別の個体が襲い掛かる。



「この…!!邪魔をするな!!」



 タチはこれに応戦するが、強力な力を有する『ユニティメナス』を前に振り切ることは叶わなかった。


 そして、海音に『メナス』の攻撃が迫る。



「ッ!!『キャストオフ』!!」



 海音の判断は早かった。


 動けないままではどうしようもないと決断した海音は、『パイルグリット』を取り外す。



「ふん…ッぬぅ!!」



 そして、触手を含めた多角的な攻撃の唯一の隙となる懐に入り込み、反撃に転じた。


 『ユニティメナス』の攻撃が届く前に、全力で腹部を殴り付け吹き飛ばした。


 間一髪で『ユニティメナス』の攻撃を凌いだ海音は、冷や汗をかきながら息を吐いた。


 ここで回避や撤退を選んでいれば、いくら動きの機微を読み取れる海音といえど、無事では済まなかっただろう。


 否、これだけの攻撃力を誇る『ユニティメナス』の攻撃を受ければ、一撃で脱落もあり得ただろう。


 その中で、猛攻を仕掛けてくる『ユニティメナス』に対し、迷わず懐に入り込んで凌いだ海音の判断は見事と言えるだろう。



「あ!タチ!」



 猛攻を凌いだ直後、同じく前衛に立っていたタチも襲撃を受けていたことを思い出し、直ぐにそちらを振り返る。



刻斬(こくざん)飛影!!」



 そこでは、飛ぶ斬撃を細かく周囲に放ち、『ユニティメナス』の猛攻を凌いだタチの姿があった。



「接近されたままだとまずい!一旦引くぞ海音!」

「わ、わかった!!」



 タチに言われるまま、二人は再び蒸気の中へと姿を消していった。


 その光景を見て、言葉はホッと胸を撫で下ろす。


 言葉の『泡沫夢幻』は、まるで幻覚そのものが肉体を持っていると錯覚してしまうほどの強力な幻術であるが、発動中の唯一の弱点がある。


 それは、直に触れられている感触までは惑わすことが出来ないという点。


 つまり、腕を掴まれていたり、拘束されていたりすると、言葉の『グリット』は効力を発揮できず、それが本体であると識別されてしまうのである。


 その弱点を有する言葉からすれば、今の状況はかなり危険であった。


 海音もタチも、直接対峙する状況となってしまったため、幻覚を作り出すことが出来なかったからだ。



「(敢えて幻覚体を作り出して、本体じゃないと錯覚させてタチ達を逃す手もあった。けど、それは私の『グリット』の得意とする分野じゃない。トラウマを植え付けるための『幻覚(グリット)』ってのも、考えものね)」



 何はともあれ窮地は一旦去った。


 海音達も距離をとり、言葉の『グリット』が活きる状況は作られた。


 『パイルグリット』を受けて一撃で沈まなかったのは驚きではあるが、元々『メナス』に常識は通じない。


 そう考えることで、言葉は冷静さを保っていた。


 直ぐに撤退を選択したタチ達も、同じことを考えているだろう。



「(火力は多少落ちたけど、タチの『影漆』があればまだ押し込める。今度は海音が崩す形になるだろうから、それをサポートすれば…)」



 言葉が姿をくらましながら考えていた時だった。



『──ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!!!!』



 どこからか聞こえてきた『メナス』の叫び声。


 それは、言葉が把握していた『ユニティメナス』によるものでは無かった。



「(『ユニティメナス』……じゃない…?だとすれば今の咆哮は…)」



 その答えは直ぐに目に見えて表れた。


 その咆哮が聞こえると、『ユニティメナス』達は一斉に動き出し、自分達から離れていったのである。



「!?一体どこへ…」

『言葉!海音!タチ!聞こえますか!!』



 言葉が呆然としていると、耳元の通信機から、三咲の声が聞こえてきた。



『《コマンダーメナス》が蒸気の発しているエリアから抜け出して姿を現したかと思ったら、すぐさま雄叫びをあげました!何か異変はありましたか!?』

「異変というか…『ユニティメナス』達がいきなり離れていって…」



 その瞬間、言葉はまさかと思いつつも、一つの推察を思い浮かべた。



「(まさか…私の『泡沫夢幻』の効果を『コマンダーメナス』が見抜いた!?)」



 信じられないことではあると思ったものの、『コマンダーメナス』が蒸気の領域から抜け出したこと。


 そしてその『コマンダーメナス』の雄叫びに応じて、『ユニティメナス』達も蒸気から抜け出そうとする動きを見せていることが、その事実を裏付けていた。



「(まずい!!今の状況下だともう一回『泡沫夢幻』にかけるには無理がある!!『ユニティメナス』達が抜け出す前にせめてもう一度攻撃を仕掛けないと!!)」



 言葉は移動を開始しながら、海音とタチに連絡を入れた。



「二人とも、『ユニティメナス』達に私の『グリット』で幻覚を見せられてることに気付かれたみたい!」

『なんだと!?《メナス》が言葉の《グリット》の性質を見抜いたと言うのか!?』

「事実、『ユニティメナス』達は、蒸気からの撤退行動を取ってる。全個体が抜け出す前に、もう一度攻撃を仕掛けたい!!出来る!?」

『攻撃の準備は出来てる。でも、向こうがそれだけハッキリ動いたんじゃ、居場所が分からないぞ』



 濃い蒸気により、視界が悪くなったのは海音達も同様である。


 予め椿の『グリット』により水蒸気が発生することを知っていた上で、居場所を把握することで対応していた。


 そのため、大幅に動かれたことで海音達も『ユニティメナス』の位置を見失いつつあった。



「(私の今の『グリット』の効果範囲は、この水蒸気のなか。そのなかで蜃気楼を生み出して幻覚を作り出してきた。一か八かで、無数の蜃気楼を作り出せば、居場所を特定出来るかも知れない)」



 この時、言葉は自身の『グリット』を見抜かれたことで、過失していることがあった。


 この時既に、『コマンダーメナス』には幻覚による仕掛けの正体が言葉によるものであるということがバレているという事である。


 そして『コマンダーメナス』は気付いていた。


 厄介なのが幻覚を交えての攻撃なのであれば、()()()()()()()()()()ということに。



『──ァ゛ア゛…』



 言葉のすぐ真横から、小さくもおぞましい、『メナス』の声が聞こえてきた。

※後書きです






ども、琥珀です。


先月からなんと20ptも減りました。

増えたのではなく、減りました。


でも仕方ありません。長短の休載をしてばっかなので…

それでも、また多くの方に読んでいただけるように頑張ります!


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は水曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。

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