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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
3章 ー最高本部出向編ー
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第44星:悪厄災

国舘 大和(24)

新司令官として正式に根拠地に着任した温和な青年。右腕でもある咲夜とともに改革にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。そして全員の信頼を得ることに成功し、『小隊編成』という新たな戦術を組み込んだ。出向命令に応じ、朝陽、奏とともに最高本部へと赴く。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、初の実戦で仲間の命を救った。大和に指名され、新戦術の小隊長に任命される。今回最高議会の一人に呼び出され、最高本部へと赴く。


曲山 奏(20)

朝陽小隊のメンバー。明るく元気で爽やかな性格。サッパリとした人物でありながら、物事の核心をつく慧眼の持ち主。今回は大和に人間性を買われ、朝陽とともに最高本部へ赴いた。趣味はツーリング。


月影 天星(30代)

若くして『軍』最高議会の一員となった異才の而立。先見の明に優れ、これまでも『軍』の改革に着手してきた敏腕の人物。今回の出向で朝陽を直々に指名した理由とは…?

「メナスが地球に現れてから100年…どういう経緯なのか、何か意味があるのか分からないが、『悪厄災(マリス・ディザスター)』はこれまで20年をひと周期にして現れてきた」



 天星は再び指を鳴らすと、それまで映し出されていた映像が切り替わり、四体のメナスだけが映し出された。



「これまでに出現した『マリス・ディザスター』は四体。当時の『グリッター』の攻撃をものともしなかった絶対防御の2代目ディザスター『イージス』、触れるもの全てに消滅を与える、死の槍を操る3代目ディザスター『ロンギヌス』、まるで魔法のように姿を消し、巧みに『グリッター』を葬りさった4代目ディザスター『アイドス・キュエネ』」


 天星は「そして」と続け、三度指を鳴らした。そこに映し出されたのは、映像越しでも思わず震えるほどの威圧感を感じさせるメナスだった。



「これら全てのメナスを超越していたと言われている、この星に最初に現れたディザスター『オリジン』…この四体がこれまでに出現した『マリス・ディザスター』だ」



 朝陽も奏も、この『マリス・ディザスター』と対峙したことは一度もない。


 が、しかし、もし一度でも相対していたら…二人は恐怖のあまり動くこともできず命を堕としていただろう。


 映像越しに移る四体のメナスは、それ程までに圧倒的な存在感を有していた。



「こんなメナスがいるのなんて知らなかった…」

「同じくです。しかし疑問が残りますね天星様」



 流石に最高議員の前では声量を抑えている奏が、天星に問いかける。



「ほぅ、その疑問とは?」

「何故これだけ確か且つ脅威となる情報を()()()()()()()()()()()()()()()()()()、です」



 奏の問いを聞いて、朝陽も成る程と言った様子で頷いた。


 『グリッター』になったばかりの朝陽が知らないのであればまだ分かるものの、『グリッター』として10年近く戦い続けてきた奏もその存在を知らなかった。


 これは、上層部が明らかにこの情報を隠蔽しているという意図が見え隠れしていた。


 天星は僅かに考える素振りを見せたあと、朝陽と奏の間を指差した。すると、二人の目の前に先程のディザスター(メナス)の映像が映し出された。


 二人は思わず仰け反り、僅かに息を荒げた。その額には冷や汗が垂れている。只の映像でありながら、二人は明らかに動揺していた。



「理由はこれだ。君達はこの映像を見ただけで、このメナス達を恐れた。これを普通に公開したらどうなると思う?」



 朝陽と奏の二人は体を震わせ答えることが出来ない。代わりに答えたのは大和だった。



「まず間違いなく『グリッター』の戦闘意欲の低下は避けられないでしょうね。それだけでなく『軍』から退く者も現れる。そうなれば『マリス・ディザスター』に立ち向かうどころか普通のメナスと戦うことさえ出来なくなる。だから、『軍』はこの情報を秘匿している…ですよね?」

「流石だ大和司令官。正にその通り。『軍』の上層部も同じ結論に至り、その危険性を少しでも避けるべく公開していないんだよ」



 納得したのかしていないのか、はたまた既にどうでも良いのか、二人は反応することさえ出来なかった。



「二度も見せてしまって申し訳なかったね。つまりはそういうことだと。逃げ出す者を少しでも減らすために、この情報は今後も…」

「いえ、月影議員。それは違います」



 天星の話を遮るようにして、大和が口を挟む。



「彼女達は恐怖こそ感じているこそすれ、()()()()()()()()()。例え目の前に新たな『マリス・ディザスター』が現れようとも、彼女達は戦うでしょう。生きるために」

「ほう…」



 そう呟くと、天星は朝陽と奏の二人を見る。


 二人は未だに体を震わせていた。しかし、続けざまに流されている映像から目を逸らすようなことはしていなかった。


 天星は僅かに興味深そうに笑むと、腕を振ってその映像を消した。二人は大きく息を吐きながら、真っ直ぐ天星を見つめた。



「成る程…確かに大和司令官の言う通りのようだ。これは少し考えを改める必要があるかもしれないね」



 天星は再び腕を振るい、今度は四枚の画像を取り出す。映像よりは威圧感を感じず、二人はその画像を見る。


 よく見れば、四枚のうち二枚にはバツ印が付けられていた。



「実を言うとこれまでに現れた四体のうち、『イージス』、『ロンギヌス』の2体の『マリス・ディザスター』は、歴代『グリッター』の手によって討ち取られている」



 二人は僅かに驚いたあと、嬉しそうに微笑んだ。



「そうだ。強力無比なメナスと言えど、『グリッター』ならば討ち取ることが出来るんだ。そして、3代目の『ロンギヌス』を討ち取ったのは他でもない、現最高司令官である早乙女 護里なんだよ」

「えっ!?」

「なんと…早乙女最高司令官が…」



 これには二人も目を見開いて驚いた。


 自分達は見るだけで身震いしたメナスに護里は勝利したと言うのだから、これほど士気が上がることはない。



「最強のメナス『オリジン』は最初の『グリッター』と相討ちになったと言われているが、消滅は確認できていない。故にまだ生存している可能性がある」



 続けて語られた内容に、二人の喜びは半減する。



「更に20年前に現れた『アイドス・キュエネ』は殲滅に失敗。致命傷は負っているだろうが、どこかでその傷を癒しているだろう」

「つまり、また出現する可能性があるということですね」



 奏の返答に、天星は頷いた。そこで、ふと朝陽は気がついた。



「あ、あの…最後に出現した『マリス・ディザスター』は20年前なんですよね?それってつまり…」


 奏も朝陽が何を言わんとしているのかを直ぐに察した様子だった。それに先じて答えたのは天星だ。



「その通り。もしこれまで通りの周期で『マリス・ディザスター』が現れるのであれば、今年のうちに新たな『マリス・ディザスター』は現れる」



 二人は驚きの連続で、最早驚くことさえ出来なかった。そして今度は奏が天星の意図に気が付く。



「成る程…何故『マリス・ディザスター(このような)』話をされたのかと疑問に思っていましたが…」

「察しが良いね。そう、私は次に現れる『マリス・ディザスター』が高い知恵を持っていると考えているんだ」



 二人は驚きつつも、どこかで納得していた。


 これまでに見られてこなかったメナスの知性的な行動…それがもし次の『マリス・ディザスター』の出現を予兆してのものであったのなら、そう考えると合点が行くからである。



「確証はないけどね。もし次の『マリス・ディザスター』が…ここは禁断の知恵の証として、『エデン』と仮称しようか。この『エデン』が出現したら恐ろしいことになるのは間違いない」

「これまでバラバラに戦い、本能の赴くままに仕掛けてきたメナスが、人間と同じように知性を持って動き出す…例え脳は一つでも、十分に脅威でしょうね」



 大和の切り返しに天星は頷く。



「更に恐れるのは、どこかで生存している『アイドス・キュエネ』との共闘だ。一体でさえ討伐できるかどうかのレベルであるというのに、それが二枚同時となってしまえば、我々に勝ち目はない。それだけはなんとしても阻止しないといけない」



 先程の映像のメナスが二体同時。考えたくもないことだった。



「この20年間、『軍』も可能な限り『アイドス・キュエネ』の捜索に力を入れてきた。がしかし、奴は『魔女』の異名を持つメナスだ。ついぞその姿を見つけ出すことは出来なかった」

「じゃ、じゃあ…共闘の可能性は高いってことですね…」



 朝陽は思わず唾を飲み込む。


 遠くない未来で、朝陽はその二体と戦うことになるかもしれない…そう思うと僅かに体が震えた。



「何、心配はいらない。我々も常に成長し続けているし、こちらにはかつて『ロンギヌス』を倒した早乙女 護里最高司令官がいる。例え二体を相手にすることがあろうとも、勝機はあるさ」


 微笑みながらそう話す天星に、朝陽はフッと力を抜き、「そうですね」と返した。と、そこで天星の雰囲気が僅かに変わる。



「時に…君の『グリット』は光を操るものだそうだね」

「え…?あ、はい、そうです」

「もし良ければここで見せてもらえないかな?いや、

なに、これでも『軍』を総括する立場でね。珍しい『グリット』はこの目で確かめておきたいんだよ」



 それが嘘であることを、大和は即座に見抜いた。そして天星に対するハッキリしない疑問が少しずつ晴れてきていた。



「はぁ…あの、構いませんが」



 朝陽も何か違和感を感じていたのだろう。


 どこか煮え切らない返事をしつつも席を立ち、少し後ろに下がると『グリット』を発動させた。


 着こなしから髪色、髪型まで変化が及び、いつもの『グリット』発動状態へと成っていった。


 天星はしばらく朝陽を見つめ、やがて興味を失ったように息を吐くと、こう小さく呟いた。



()()()()()()



 その言葉を、大和は聞き逃さなかった。



「(そういうことか。天星(コイツ)が興味を持っているのは朝陽でもメナスの《知性》でもない。コイツが探しているのは()()())」



 大和は直ぐに感情を深く沈めた。咲耶のことを知っているのは、大和含め片手で数えられる程しかいない。



「(何故コイツが咲夜を嗅ぎ回っているのさは分からないが、絶対に悟られてちゃいけない。俺の直感がそう言っている)」



 朝陽の『グリット』を見たことで、天星は完全に興味を無くしたようで、この後直ぐに会談は終わりを迎えた。





●●●





 映像は止まり、元の星の光が輝く部屋の中で、天星は先程のまでの会談を思い出していた。



「ふふっ…勝機はある…か。我ながらおかしな発言だ」



 次の瞬間、天星の笑みが邪なものへと変わっていく。



()()()()()()()()()()()()!!人類にはしっかりと滅んで貰わないとなぁ!!」



 暗闇の中を、更に黒い何かが蠢く。しかし、暗闇に暗闇と重なり、それが何なのかまでは分からない。



「次に現れる『エデン』はこれまでとは違う形で人類どもの『脅威』となることは間違いない…だが…」



 天星の瞳が紅く輝く。それはまるでメナスの瞳のソレであった。



「奴()が邪魔だ…始まりの『グリット』、『原初の輝(イルミナル・オリジン)』の使い手…そして数多の『グリット』を使いこなす『星の後継者ヘレダント・エトワール』、『星天』の担い手!!」



 その表情は、先程までとは明らかに別人であった。



「今に見つけ出し、必ず仕留めてみせよう…此奴ら二人さえ倒せば、人類に未来は無いのだから…」



 邪悪な笑みとその小さな笑い声が、部屋の中で響き渡っていた。

※ここから先は筆者の後書きになります!!とくだん重要なことは記載していませんので、興味のない方はどうぞ読み飛ばして下さい!!










ども、琥珀でございます!!


最近一気に涼しくなってきましたね!!

正直夏は9月の後半までくらいかなと思っていましたが、まさかの8月いっぱいで終わるとは…


夏といえば学生時代の夏休みを思い出しますね…

一ヶ月丸々休みとか、今思い返せばなんと贅沢で勿体ない日々を過ごしてきたことか…


え?今なら何するのか、ですか?

家に引きこもってゲームします。←


本日もお読みくださりありがとうございました!!

次回の更新は月曜日の朝8時を予定していますので宜しくお願いします!!


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