表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
11章 ー強化個体出現ー
449/481

第425星:プラン

樹神 三咲

千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務める。


佐久間 椿

千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長。



【椿小隊】

写沢 七

 写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。


重袮 言葉

 活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…対象に関係なくトラウマを想起させる『グリット』を操る。


海藤 海音

 誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな予備動作から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。


【三咲小隊】

椎名 紬

 ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手と視線を交わすことで、視界を共有する『グリット』を持つ。


八条 凛

 自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。触れた物体に自身の『エナジー』を纏わせ、その物体をの向きを操る『グリット』を持つ。


大刀祢 タチ

 メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に斬撃状の『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。

「今のが…単体の『メナス』の攻撃…!?いくらなんでも威力が違い過ぎる…!」



 その光景を、三咲も『グリット』でしっかりと目に収めていた。


 以前対峙した【オリジン】とは比べものにならないが、それでも口が開いてしまうほどに、今の『メナス』の攻撃の威力はこれまでとは桁違いのものであった。



「ッ!司令官!三咲です!いま前衛に出ている『メナス』が攻撃を仕掛けて来ました!ですがやはり異常です!」

『こっちでもモニターで見ていた。確かに異常だ。やはりこれまでの《メナス》と同等の相手だと思って挑むのは危険だ』



 すぐさま大和に連絡を入れると、その様子を見ていた大和も、三咲の発言に同意する。



『あの個体の《メナス》の実態が分からない以上、前衛をサポートとする形での戦闘形式は危険か…?今の一連の流れを見て、三咲君はどう思う?』

「…分かりません。海音が咄嗟に勘付いたから良かったものの、これまでと同じ対応をしていたら、やられていたのは間違いありません。ですが、前衛の戦闘なしに、中、後衛のみで戦闘をするのは却って危険とも思えます」



 『メナス』は身体能力一つとっても『グリッター』を上回る能力を有するが、最も危険な攻撃がレーザーであることには変わりない。


 光速かつ貫通性の高いレーザーは、熟練の『グリッター』でないと上手く捌けないことに加え、反撃に転じる『戦闘補具(バトル・マシナリー)』では、純粋に火力が不足しているからである。


 必然的に、戦闘において前衛の必要性が出てくるわけであるが、今回はその前線での戦闘が未知数で危険であるという状況にあった。



「司令官、三咲さん、私に一つ考えがあるんだけど」



 頭を悩ませる二人に、一つの提案を出したのは言葉だった。



「状況的に、あの突然変異(ミューテーション)の個体に真正面から挑むのが危険だっていう話だよね?」

「そうですね。あの身体能力を見るに、攻撃力が上がっただけとは思えませんし、未知数な点が多すぎます」

「でもその分、変異個体の攻撃はより実直になってると思う。だから海音がタチを庇っても回避が間に合ったわけだし」

『それは確かにあり得るね。言い方を変えればより単調な攻撃になったと言えるかもしれない。ここに付け入る隙があるのかい?』

「変異体が単調になったって言うなら…私の『泡沫夢幻(ファントム・ペイン)』で撹乱出来るかも知れない」



 言葉は自分のプランを強い口調で提案した。



『なるほど、《泡沫夢幻》か…確かにそれなら変異体の《メナス》を撹乱しながら攻撃する事が出来るかも知れない』

「ですが問題もあります。言葉の『グリット』による幻影は強力です。なので、私の『グリット』も影響を受けてしまうので、サポート能力が激減してしまいます」

「私の『視界同調(ディペンドオン・アイ)』も、だな。恐らく同じように言葉の『グリット』の影響を受けることになる」



 一筋の光明は見えたが、同時に問題も浮き彫りとなった。


 しかし、現状を打破するための作戦としては申し分ないと、大和は直ぐに決断した。



『三咲君と紬君のサポートを一時的に失ってしまうのは痛いが、相手は未知数の《メナス》だ。こちらも同じパターンで攻めるわけにはいかないだろう。ここは言葉君の《グリット》に頼ろう。いけるな、言葉君』

「了解。少しだけ準備に時間は貰うけど、直ぐに発動できるようにするわ」

『任せた。今後は個体名が分かるように、前線に立つ四体の強化された《メナス》を《ユニティメナス》、後方で待機しつつ指示を出す個体を《コマンダーメナス》と呼称することにする。みんな、気を抜かないように』



 大和からの通信を聞き終えると、言葉は大和との通信を切り、代わりに椿に通信を入れる。



「椿さん、今の話は聞こえてました?」

「聞こえたたよ〜。それで、私は何をすれば良いのかな〜?」



 椿もこの流れで自分が役割を果たすことを理解していたのか、直ぐに自分のすることを言葉に尋ねた。



「周囲の海面の温度を出来るだけ上げて貰える?」

「周囲っていうと、想定される戦闘領域内かな〜?それは少し時間がかかるかも〜」

「分かってる。でも私の『グリット』発動には必要なことなの。お願いします」

「ま、やるしかないよね〜。了解、すぐに取り掛かるよ〜」



 言葉からの指示を受け取った椿は、一度『メナス』から距離をとりつつ、行動に移り出した。



「椿さんの準備が整うまでが正念場。それまでは今まで通りのパターンで戦闘を続けて持ち堪えよう」



 タチは刃を構え、海音は静かに拳を握った。


 二人は先程よりは距離を保ちつつ、四体の『メナス』を相手に対峙し、椿を除く全員がそれをフォローする。



「(前衛に立つ強化された『メナス』の恐ろしさは分かりました。ですが、後方に下がったまま、ほとんど何もしていない『コマンダーメナス』は何を狙っているんでしょうか…それだけが不気味です)」



 三咲は前衛の『ユニティメナス』だけでなく、後衛に佇む『コマンダーメナス』のことも、常に視界に入れ、動き出した時に備えて警戒していた。


 しかし、『コマンダーメナス』は、攻防の際に恐らく指示と思われる声をあげた以外に行動に、何か行動に移すことは無かった。



「(何か狙いがあるのか…言葉さんの『グリット』が発動してから監視できなくなるのが少し怖いところですが…)」



 一抹の不安を抱きながらも、三咲は再びタチと海音のフォローに移った。






●●●






 三咲小隊及び椿小隊の戦闘の様子は、アンナに用意された室内のモニターにも映像として映し出されていた。


 アンナは映像に映る戦闘の光景を目にしながら、僅かな驚きを感じていた。



「私がこれまで対峙してきた『メナス』とは違います…強さの桁がワンランク高い…この根拠地はこれ程のレベルの戦いを繰り返してきたのですか…?」



 しかし、モニターに映る映像を見続けていくうちに、その考えは間違いであることに気付く。



「…いえ、彼女達からは迷いと驚きが見られます。この規模の戦いは初めてでは無さそうですが、慣れているわけでも無さそうです」



 三咲達の様子を確認したあとに、アンナは『メナス』の方へと視線を向ける。



「…この『メナス』達は、どこか連携染みた戦い方をしているように見えます。これが噂に聞く『知性』を持った『メナス』なのでしょうか」



 しかし、これに対してもアンナはモニターを見るだけで首を横に振り、自らの考えを否定する。



「いえ、それにしては単純すぎる気がします。後方に待機している『メナス』はまだ未知数ですが、『知性』とはっきり言うからには、もっと高度なモノを持ち併せているはず。今回の個体は、それとは別として考えるべきでしょう」



 流石は元『レジスタンス』穏健派のリーダーと言うべきか、モニターの映像を見ただけでそこまで見なく慧眼は流石であった。



「しかしそれはそれとして、今回の襲撃で現れたこの五体の『メナス』が、通常の個体とは異なることには違いありません。求められるのは現場の対応力だけでなく、指揮をとる者の迷いのない姿勢、大和(かれ)の司令官としての判断力も問われるはず。私なら時間を稼いで、『メナス』の個体の能力を判別するように指示を出しますが…」



 アンナの考え方に対し、モニターに映し出される面々の表情と動きには、迷いがなかった。



「これは…恐らく彼は多くの指示を出していない…でなければ、こんなに素早く、臨機応変な動き方は出来ないはず。現場のメンバーが、その状況に応じてしっかりと考えて動けている証拠。一見指揮を離れているように見えますが、その実その根本となっているのは、恐らく彼の指導と方針に沿ったもの…ならば、これもある意味、彼の指示通りの動き。このような動かし方もあるのですね…」



 アンナは学んでいた。


 自身をリーダーとして崇め、指示を待ち続けていたかつての仲間達とは違う三咲達の様子に、好奇心を高めていた。



「これが、彼なりの指揮の執り方…」



 その視線はモニターに釘付けとなっており、気付けば次の盤面の動き出しを待っていた。



「知りたい…彼の考えを、もっと。感じたい、彼の指揮の在り方を、たくさん…」



 アンナは大和に魅入られていた。


 正確に言えば、築き上げられててきた千葉根拠地のスタイルに、である。


 しかし、それを築いたのは大和であるため、結果として大和に魅入られていることには違いなかった。


 アンナの感情の昂りに、窓の閉められた密室に、一陣の風が吹いた。

※後書きです






ども、琥珀です。


身体の調子も心の調子も悪く、いま少しリアルが立て込んでいます。


頑張って更新は続ける予定ですので、宜しくお願いします。


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は金曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] やはりメナスとのバトルは、ハラハラしますね。 ドキドキします。 もちろん続きは気になりますが、琥珀さんが居るからこそ作品は生まれるので、ご自分の体調をまずは優先され、無理はなさらないで下さ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ