第43星:月影天星
国舘 大和(24)
新司令官として正式に根拠地に着任した温和な青年。右腕でもある咲夜とともに改革にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。そして全員の信頼を得ることに成功し、『小隊編成』という新たな戦術を組み込んだ。
咲夜(24?)
常に大和についている女性。一度は誰しも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。大人しそうな風貌からは想像できない身体能力を誇り、『グリッター』並びに司令官である大和を補佐する。現在は指揮官として彼女達に戦う術を伝える。
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。大和の言葉により、『天照す日輪』を覚醒させ、初の実戦で仲間の命を救った。大和に指名され、新戦術の小隊長に任命された。
曲山 奏(20)
朝陽小隊のメンバー。明るく元気で爽やかな性格。サッパリとした人物でありながら、物事の核心をつく慧眼の持ち主。趣味はツーリング。
望生(16)
大和達の前に現れたメイド服姿の美少女。無表情ながら礼儀正しく、三人を最高本部へと案内する。その素性は謎に包まれている。
月影 天星(30代)
若くして『軍』最高議会の一員となった異才の而立。先見の明に優れ、これまでも『軍』の改革に着手してきた敏腕の人物。今回の出向で朝陽を直々に指名した理由とは…?
「う~…うぅ~…」
最高本部の内部の中にある一室。朝陽達三人はその部屋で、最高議員の人物に呼ばれるのを待っていた。
その面々の中で朝陽は、一人用意された椅子に座ることなく、緊張した面持ちで部屋の中をうろうろと徘徊していた。
「落ち着きがありませんね朝陽さん!!如何なさいましたか!?」
対していつも通りなのは奏。用意されたお茶をすすりながら落ち着きのない朝陽を嗜めていた。
ちなみに望生は既にこの場にはいない。案内をする役割を終えたとのことで、この部屋に足を入れることなく去っていっていたあとだ。
「うぅ…だって奏さん、これからお会いするのは…最高議会の方ですよ?『軍』のなかでも最も権力のあるお方の一人…もし失礼なことを言ってしまったらって考えると…というかどうして奏さんは緊張していなんですかぁ…」
半ば逆ギレ気味に返す朝陽に、奏はいつものようにハッキリと答えた。
「緊張する意味がないですからね!!我々は別に悪いことをしてここに居るわけではないので!!」
「そうそう、奏君の言う通りだ。ボク達は別に処罰を受けにここに来たわけじゃあない。ドッシリ構えていれば良いんだよ」
奏の発言に同意したのは、同じくお茶を啜っている大和。最高本部であろうと変わらない笑みを浮かべて朝陽をリラックスさせようと努めている様子だ。
「うぅ、鬼メンタルしかいない…お二人はそうかも知れないですが…私は直々に指名されてるんですよ?緊張だってしますって…」
しかし朝陽の緊張が解けることは無かった。寧ろ目尻に涙を浮かべますます緊張が増している様だった。
そんな朝陽の様子を、二人は苦笑いで見てることしか出来なかった。
そして…
「お待たせ致しました。大和司令官、朝陽四等星、奏四等星の三名。お部屋へご案内いたします」
扉から入って来た礼儀正しい女性に連れられ、三人は部屋を移った。
案内されたのは、ゴージャス感漂う木製の二重固定ドアだった。これが本人の趣味によるものなのかは分からないが、見ただけで圧を感じさせる作りであることは間違いない。
「月影様はお部屋の中でお待ちです。どうぞ…お入りください」
丁寧な所作で部屋を指す女性を前にし、朝陽は大きく深呼吸する。そして大和に一つ頷き、ノックを促した。
●●●
ーーーーーコンコン
「どうぞ…」
走らせていたペンを止め、青年はノックした人物達を中へ迎え入れた。
しばらくして、ギギギという木製特有の音を立てながら、三人の人物が中へ入ってきた。
青年ーーー月影 天星は、友好的な笑みを浮かべて三人を奥へと迎え入れる。
「やぁやぁ、ようこそ。遠いところまではるばるご苦労だったね」
扉の圧とは打って変わり、最高議会の議員、天星は非常にフレンドリーな人物だった。
『軍』の上層部と言えば、偏見・差別の塊を象徴するような人物達であることは有名な話である。だからこそ、朝陽は緊張していたのだが…
実際、噂に違わず最高議会の面々は、『グリッター』を人として認識していない。
それが故に、『軍』の幹部職をになう人物達の中にもそのように扱う輩がいるのである。
それを考えれば朝陽の緊張は当たり前のことではある。こうして友好的な笑みを浮かべられたことが拍子抜けだったくらいだ。
「さぁ、座りなさい。移動に移動で疲れているだろう」
天星は三人を席に案内した。ソファーは柔らかく、かなり高級なものであることが分かる。
「今お茶を用意するから待ってなさい。あぁ、勿論待たせていた間に出したものより良いものだよ」
そう言いながら、天星はお茶を入れに離れていった。その隙に、朝陽は辺りを見渡す。
一言で言えば、プラネタリウムのような部屋だった。カーテンは閉められ光の入らない部屋。それなのに真っ暗闇でないのは、壁や天井に星のような光が点々と輝いているからだ。
全体的に薄暗くはあるものの、物見するには困らない程度の明るさはあった。人によっては心安らぐ空間となり得るだろう。
そこへ、お茶を入れ終えた天星が戻り、お茶を配り終えたあと自身もソファーに腰掛けた。
「あぁこの部屋を気にしているんだね。申し訳ない、どうも明るい場所は苦手でね…まぁでもその分幻想的だろう?」
「は、はい!!とても綺麗です!!」
朝陽の屈託のない答えに、天星は笑みを浮かべる。
「さて、呼んでおきながら待たせてしまって申し訳なかったね。少々前の仕事がごたついてしまって…」
「いえ、最高議会の議員ともなればお忙しいであろうことも重々承知の上ですから」
答えたのは大和。天星は大和をチラリと見ると薄い笑みを浮かべた。
「大和司令官…君も随分と大変なようだね」
朝陽と奏の二人は、今の言葉に何か含みがもたらされていることに気が付く。
その意味を知っている大和が僅かに目を細めるも、次の瞬間にはもとの笑みを浮かべていた。
「恐れ入ります。ですが私はいち司令官。最高議員の方ほどではございませんので」
「ふふっ…いち司令官ね…」
再び含みのある笑みを浮かべるも、天星は「いけない、いけない」と呟きながら本題に移る。
「さて、今回君達を読んだのはメナスの『知性』について聞くためだ。既に聞いているかもしれないが、先日群馬の根拠地にて複数の人員が殺された」
先程聞いたばかりではあるが、朝陽と奏は僅かに辛そうな面持ちを見せた。それで聞いていたことを理解したのだあろう天星も悲痛な面持ちを作る。
「大なり小なり、戦いでは犠牲が出るものだ。それでもこのように犠牲が出てしまうのは悲しいことだよ。こんな悲しい事件はこれを最後にし、今後このような事態を避けるべく、君たちの話しを聞かせて貰いたい」
天星の言葉に、二人は強く頷いた。そしてそこから数十分間、二人は天星の質問に答える形で話し合いを行っていった。
●●●
「…成る程。確かにそれは『知性』と呼ぶに相応しい行動かもしれないね.」
天星は二人の話を聞きながら、興味深そうに頷いていた。ここまでは天星は確かに朝陽の話を聞いているようにみえた。
が、しかし大和は天星の言動に何か違和感を感じていた。
「(さて、何だろうなこの男から感じる食えなさは…この人は朝陽達の話を聞いてはいるんだが、わざわざ呼び出した割には食いつきが少ない)」
尚も話を聞き続ける天星を、大和は注意深く観察していた。
「(何か、別の目的があるのか?一体何を…?)」
大和が深く考えている間に、朝陽達は話を終えたようだった。
「ふむ…非常に興味深い…これまでのメナスとの戦いの歴史の中でも見られてこなかった変化だ」
天星はしばらくの沈黙の後、ある話を語り始めた。
「君たちは、悪厄災を知っているかな?」
「悪厄災…?いいえ、存じ上げません…」
「そうだろうね。無理もない話だ。何せ一番新しい『マリス・ディザスター』でさえも君達が物心つく前の話だからね」
天星は数度頷いた後、パチンと一つ指を鳴らした。すると、今まで星のように輝いていた光が消え、代わりに映像のようなものが映し出されていた。
「これは…何?映像?」
「これは記録…歴代の『輝戦士』達が悪厄災と繰り広げてきた戦いの記録だよ」
壁一面に映し出されたのは、四体のメナス、そして見覚えのない複数名の『グリッター』と思わしき女性達だった。
「あの…結局『マリス・ディザスター』とはなんなんでしょうか…?」
目の前の映像を目にしても分からない朝陽が、天星に尋ねる。
天星は壁に映し出された映像を見ながら朝陽の問いに、こう答えた。
「メナスは20年に一度、強大な力を持って現れる個体主がいる。歴代の強力な力を持った『グリッター』達が何人も犠牲になってきた災害…それが『悪厄災』だ」
※ここから先は筆者の後書きになります!!本当にどうでも良いことが書いてあるので、興味の無い方はどうぞ読み飛ばしてください!!
ども、琥珀でございます!!
台風が過ぎてまた台風。彼奴もしつこいですな!
ただ台風もあってか、最近は晴天の日も増えましたね。
こちらは昨日とても涼しい日が御座いまして、こんな日が続けば良いのにな、とか思いました。
まぁそれはそれとして、皆様台風対策はしっかりと!私は外に遊びに行って台風を感じてきます!!
本日もお読みくださりありがとうございました!!
次回の更新は、金曜日の朝8時ごろを予定しております!!




