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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
11章 ー強化個体出現ー
439/481

第415星:師と師

早乙女 咲夜(24?)

 常に大和に付き従う黒長髪の美女。一度は誰しも目を奪われる美貌の持ち主。落ち着いた振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』を導く。その正体は100年前に現れた伝説の原初の『グリッター』本人であり、最強の戦士。


蓮水 寧花(?)

千葉根拠地、訓練養成所の教官を務める女性。小柄でどこか幼さい外見をしているが、落ち着いた口調と大らかな雰囲気で生徒達を優しく導く。大和だけでなく、沙雪とも顔見知りで有り、相当顔の効く人物であるようだが…?

 それから次の日には、朝陽の病室には根拠地のメンバーが続々と面会に訪れていた。


 最初は同じ小隊のメンバーである奏、華、梓月の三人。全員がしっかりと手を握り締め、朝陽の名前を呼び、そして少しの会話をしてから去っていった。


 それ以外の小隊のメンバーも押し寄せ、病室が狭くならないように入れ替わりながら、朝陽に声をかけていった。


 その間、夜宵は常に朝陽の隣に居座っており、空いていたもう片方の手をずっと握り締めていた。


 それでも、朝陽が目を覚ますことは無かった。


 全員が沈痛な面持ちを浮かべ、病室を去る姿に、大和はこれまで見てきた中でも強く胸を痛めていた。


 沙雪も様々な処置を試みていた。声かけはもちろん、再診療や微弱なショック療法など、意識回復に繋がる可能性のある処置を続けていた。


 しかし、ハッキリとした効果は現れず、ただ沙雪の悔しがる表情が浮かべられただけであった。


 大和も出来る限りこの場に居たかったものの、根拠地の司令官としての業務もあり、同じくその場に留まりたかった咲夜の背を押し、そっと処置室をあとにした。


 と、二人が処置室をあとにした瞬間、ちょうど入れ替わるようにして寧花が朝陽のために見舞いに訪れに来ていた。



「あらあら二人とも。この根拠地のトップの二人がそんな顔じゃダメですよ。例え辛いことがあったとしても、お二人が俯いてしまっていては、士気に影響が出てしまいます。辛いことがあった時こそ、貴方達は気丈に振る舞わなくては」



 寧花はいつも通りであった。


 優しい口調で、それでいて厳しく諭すような言葉を二人に投げかけた。


 大和も咲夜もその通りだと思い直し、大きく深呼吸をした後は、一度引きずることをやめ、互いに司令官と指揮官としての表情に戻っていった。


 寧花はそれを満足そうに見届けた後、病室に入ろうとするが、そこで足をピタリと止めた。



「そうでした、咲夜さん。今日、お時間をいただけますか?」






●●●






 夕刻。軍務を終えた咲夜は、寧花に呼ばれ訓練校舎までやってきていた。


 既に訓練校の生徒達は宿舎に戻っており、その場に残っていたのは寧花だけであった。



「単刀直入にお聞きします。咲夜さん、朝陽さんがあのような状態になったのは、『閃光の体躯(ゼーレ・ブリッツ)』を長時間使用したからですね?」



 流石は朝陽のあの技の訓練に携わった第二の師ということもあり、寧花は即座に朝陽の状態の原因を突き止めていた。



「…はい。おっしゃる通りです」

「事前にお止めにはなられなかったのですか?」



 寧花は話を拗らせるつもりはないようで、全て直球で尋ねてきた。



「…注意喚起はしました。ですが、今にして思えば、甘い制止であったと思います」



 咲夜は第三部終了時に朝陽にかけた言葉が、十分ではない事を理解し、素直にこれを認めた。



「そのご様子ですと、どうやら彼女は『閃光の体躯(ゼーレ・ブリッツ)』だけでなく、『閃光の輝脚(ゼーレ・レッグ)』や『閃光の輝腕(ゼーレ・アルム)』も使用したようですね」



 寧花は小さく息を吐いた。



「…はい。ただ戦況を見れば、使用してもやむを得ない場面ではあったと判断できます」

「…そうですか。貴方がそう言うのであれば、それは間違いないのでしょう」



 寧花も実は咲夜の過去を知る人物の一人である。


 過去にプログラミングの訓練を受ける過程で断られそうになった際に、信頼のおける人物だと知っていた咲夜は、過去を打ち明けたことで訓練を受けることが出来たのである。


 故に、寧花は咲夜の実力を知っているため、咲夜がそう言うのならば…と納得したのである。



「対戦相手は、全員が各地方から選抜された選りすぐりのエリート達。そう簡単にはいかないと思っていましたが…まさか約束を破って『閃光の体躯(ゼーレ・ブリッツ)』まで使用するとは思っていませんでした。彼女は、そう言う言いつけは必ず守る方だと思っていましたので」



 咲夜の言葉に納得はしたものの、寧花の言葉はどこか朝陽を突き放すようなものであった。


 無論、咲夜自身も朝陽が『閃光の体躯(ゼーレ・ブリッツ)』を使用するとは思っていなかったため、直ぐに次の言葉が出てこない。



「…フィールドでの事を、全て把握していたわけではないので、確証はありません。ですが…」



 それでも咲夜は、自分の目で見た事実を含めて、寧花に言い返した。



「朝陽さんは、自分の中のプライドを守るためにあの技を使用したように見えました。彼女にとって、使う事を厭わないほどのことがあったんだと思います」

「ですが結果はこれです。最後まで戦うことが出来ず倒れ、彼女は意識を失い目を覚まさず、そして根拠地の面々に陰を落としています。それは、彼女自身が自分のプライドを傷つけていることに繋がりませんか?」



 ズバッと切り返された寧花の言葉に、咲夜は今度こそ何も言い返せなかった。


 言葉に詰まる咲夜に、寧花は静かな声で語りかけた。



「咲夜さん、私が朝陽さんを見てきたのはあのプログラミングの時だけではありません。覚醒前だった彼女を、私は訓練校時代から見てきたのです。ですから、彼女がどれだけ真っ直ぐで純粋で、それでいて他人を慮れる人なのかは良く知っています」



 寧花の言う通り、朝陽の内面をより良く知っているのは、咲夜ではなく訓練校時代から見てきた寧花だろう。


 咲夜もそこに異論は無い。


 それでも、まだ一ヶ月程の期間ではあったとはいえ、その期間は咲夜は朝陽の師として誰よりも深く接してきた。


 だからこそ、咲夜とて朝陽がどのような人物なのかは理解してきたつもりであった。



「…彼女にプログラミングの技術を享受した時、私は彼女にこう教えたことがあります。『身分不相応の過剰な力は、時にその力に溺れ、身を堕とします』…と」

「…妥当な教えだと思います。己が過信するほどの力を有したものは、その力に溺れる者がほとんどですから」



 寧花の教えの言葉に、咲夜も頷いて同意する。



「ハッキリ申し上げて、朝陽さんの今回の行動は、その教えに片足を突っ込んでいたように思われます」

「…ッ!それは…は…」



 厳しい寧花の意見ではあったが、咲夜は言い返すことが出来なかった。



「確かに彼女は、貴方との訓練で戦闘技術を身につけました。彼女は私との訓練で、『プログラミング』による『グリット』の操作技術を身につけました」

「…それが、今の彼女には過ぎた力であったと?」

「結果としてみれば、の話です」



 咲夜の問いに、寧花は間髪入れずに答えた。



「確かに彼女は全ての行動を意識して行ったわけではないでしょう。先程の咲夜さんのお話にもあったように、やむを得ない場面もあったでしょう。ですが、彼女と私達の間には約束事があったはずです」



 咲夜もそれは『大輝戦』の出発直前に、寧花から直接聞かされていた。


 一つは原則使用しないこと。これは大前提のことであり、現状は下手をすれば身を滅ぼしかねない技であるため。


 現に朝陽の状態を見れば、適切な判断であったと言えるだろう。


 そして二つ目が、万が一使用する場合は短時間、数秒のみ。


 そして二つ目と併せてになるのが、部分的のみ使用可能とする、の三つであった。


 原則使用しないという前提を破っていた朝陽ではあったが、その他の二つについては朝陽はしっかりと守っていた。


 それでも、最後の最後にその約束を破り、朝陽は全身を『輝化』させる『閃光の体躯(ゼーレ・ブリッツ)』を使用してしまった。


 寧花が指摘しているのは、その点であろう。



「確かに…彼女は約束を破りました…その点については言い訳は効かないでしょう…ですが」

「いえ、私が言いたいのは約束を破った云々ではないのです」



 しかし予想外にも、寧花はその点では無いと否定した。


 咲夜が眉を顰めていると、直ぐに寧花が答える。



「彼女の技はまだ未完成でした。発動は出来てもコントロール出来ないような状態でした。では、もし、これが発動することさえ困難な状態であったら?私達の厳しい言いつけを守り続けた彼女は、最後の場面で技を行使しなかったと思いますか?」

「……恐らくそれでも彼女は力を使おうとしたでしょう。それだけ、彼女の中で許せない事であった筈ですから」



 寧花には中途半端な言い訳は通用しない。そう考えた咲夜は、素直に答えた。



「そうでしょうね。そして、その感情に任せた力の使い方が過ぎた力であると指摘しているのです。扱いきれないまま無理に行使していたら、彼女はもっと悲惨な状態になっていたかもしれない。約束を破った云々ではなく、結果として彼女は、()()()()()()()過ぎた力を行使できると驕り、身を滅ぼしたのと同じです。それは、私が再三注意しながら教えてきた事でした」

「……」



 咲夜は何も言い返す事が出来なかった。


 実際、朝陽が力に溺れたのかと言われれば、少し話は違うだろう。


 しかし、朝陽には隠し技があるという認識を持って『大輝戦』に挑み、そして禁止されていた技まで使用した。


 例えいかなる理由があっても、正当化されないだろう。寧花の言うことは正しい。


 寧花は、言うべきことは伝えたと考えたのか、小さく息を吐き、咲夜に歩み寄ると、ポンッと肩に手を置いた。



「このような話以前に、私も彼女の回復を強く願っています。ですが仮に目が覚めても、私が教えるべきことは全て教えました。貴方も一先ずは『大輝戦』までの仮の師であった筈です。今後の彼女への対応を、よくお考えになった方が良いでしょう」



 それだけを告げ、寧花は訓練校をあとにした。


 残された咲夜は、己の中の葛藤と、朝陽への思いから、顔を歪めて考え込んでいた…

※後書きです






ども、琥珀です。


やはり更新ペースより、執筆ペースの方が現状劣るようで、早くもピンチです。


肘は痛みはそれ程では無いのですが、違和感が拭えなくて思うように進まないんですよね…


少し前の頃に戻りたい…


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は金曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] すっかり最近は、お見舞いできないとか、1人までの風潮なので、そんなに大勢が押しかけていいの? あ、いいのか。 作品の世界と現実は、違う、違う。 と、一人で自分にツッコミを入れてしまいました…
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