第42星:到着
国舘 大和(24)
新司令官として正式に根拠地に着任した温和な青年。右腕でもある咲夜とともに改革にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。そして全員の信頼を得ることに成功し、『小隊編成』という新たな戦術を組み込んだ。
咲夜(24?)
常に大和についている女性。一度は誰しも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。大人しそうな風貌からは想像できない身体能力を誇り、『グリッター』並びに司令官である大和を補佐する。現在は指揮官として彼女達に戦う術を伝える。
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。大和の言葉により、『天照す日輪』を覚醒させ、初の実戦で仲間の命を救った。大和に指名され、新戦術の小隊長に任命された。
曲山 奏(20)
朝陽小隊のメンバー。明るく元気で爽やかな性格。サッパリとした人物でありながら、物事の核心をつく慧眼の持ち主。趣味はツーリング。
望生(16)
大和達の前に現れたメイド服姿の美少女。無表情ながら礼儀正しく、三人を最高本部へと案内する。その素性は謎に包まれている。
「ここから目的地までおよそ30分ほどかかります。移動中は私が全面安全確保致しますので、短な時間ではありますがごゆっくりお寛ぎ下さい」
自己紹介を終えた一同は、望生の運転する車で本部への移動を始めていた。
車内は助手席含め三人が座るには十分なスペースがあり、窮屈さは感じなかった。
「望生さんすごいですね…車を運転出来るなんて…私運転どころか乗るのも初めてなのですが…」
「『グリッター』に車は必要ございませんからね。かく言う私も今16ですので、車の運転を始めたのは最近になります」
現代において車の普及率はかつてほど高くない。資源が十分でないこともあるが、長距離の移動はメナスに襲われるリスクが高いため、そもそも購入者が少ない。
つまり、需要が以前ほど高くないのである。但し車の価格が安くなったわけではない。
前述の通り資源が少ないためである。希少性が高い故に、かつてと同様程度の価格となっている。
ちなみに、本人の言う通り望生は16歳だが、新しく施行された法律で車の運転は16歳から可能となっている。
車があっても運転するものが居なければ意味がないため、年齢幅を広げることで供給量を広げようとしたのである。
とは言え16歳で自動車を買えるものはほとんどおらず、望生が運転している車も『軍』の資金から購入された『軍』専用車である。
結果的に言えば、あまり意味のない法律改正ではあったが、直すメリットもないため現在も適用されている。
「それにしても!!望生さんは司令官と随分親しいご様子ですが、いつからのお付き合いになるのでしょうか!?」
奏は、車内でも関係なく大きな声で話すため、隣に座る朝陽は申し訳なさそうにしながらも耳を塞いでいた。
「そうだね…つい最近のようだけど5年以上前になるのかな。いやぁ、時が経つのは早いんもんだね」
「…はい。あの日々は夢のような時間…本当にあっという間の日々でした…」
運転席と助手席でそれぞれ思いに耽る二人を、朝陽は(耳を塞ぎながら)見つめていた。
「(私が会うよりも早く、司令官に会っていた人…昔の司令官はどんな方だったんだろう…)」
昔の姿を想像しながらも、朝陽は大和が昔も変わらず良心的な人物であったことを確信していた。何故なら…
「(だって…あの子、司令官と話している時はずっと笑ってるから)」
望生の対応は一見無愛想だ。口調は丁寧だが、声のトーンは単調で、表情も一定のまま。
見る人、聞く人にとっては不快に感じるものもいるだろう。
しかし、不思議と朝陽は(恐らく奏も)望生に対してそんな感情を持つことは無かった。
表面上には出なくとも、その奥底には温かな感情があることを感じ取っていたからだ。
「(そっか…司令官に会ったから、きっとそれを感じ取れたんだ…)」
朝陽の視線は再び大和に向けられる。
「(やっぱり、司令官は凄い人だったんですね…)」
朝陽の思いを乗せて、車は最高本部へと進んでいく。
●●●
「お待たせ致しました。最高本部に到着致しました」
望生が車を止め、朝陽と奏の二人はゆっくりと顔を上に上げていく。
「ふわぁー…」
「大きいですね!!」
目の前に見えるのは壁。但し巨大な城の壁。
見上げても見上げきれない高さの建造物が目の前に広がっていた。
「ここはかつて空港っていう航空機の発着場が存在していた場所だったんだよ。当然そこも破壊し尽くされて影も形もなくなってしまったけどね。東京を中心に復興を始める際に、ここに最高本部を作ることを決めたんだ」
大和の説明に、望生が補足を付け加える。
「空港の面積は当時で言うかつて分けられていた一つの地区のの4分の1を占めていたと言われており、この最高本部も、その面積を全て利用して作られています。敷地面積は約1500㌶超。本部の最も高い部分は500mに及びます」
メナスは神出鬼没のため、拠点としての強みはあまり多くない。
しかし、この最高本部は間違いなく要塞と呼べる作りとなっており、この要塞を拠点とした戦いであるのならば、大多数のメナスを相手にしても敗北することはないだろう。
「当然軍備も最高レベルで整っており、緊急時の場合は各本部の支援にも即座に応援を出せる態勢が整っています」
「ふえぇ…やっぱり凄い人たちが揃ってるんだろうなぁ…」
と、そこへ大和達と同じ乗用車が直ぐ側に停められた。中から出てきたのは司令官の軍服に身を包んだ女性と、その部下と思わしき二人の『グリッター』だった。
彼女達も大和に気が付き、視線を向ける。その中で、司令官と思わしき人物が大和を見て僅かに驚いた様子を見せる。
「あなたは…」
対して大和は帽子を深く被り、何かを暗に伝えていた。女性は直ぐにその意図を察し、数度頷いてから部下と共に朝陽達の側へと寄ってきた。
「ご苦労様です、大和司令官。貴方も最高議会に呼ばれて?」
「ご苦労様です、雲越司令官。おっ察しの通りですよ」
雲越と呼ばれた女性はチラッと朝陽達を一瞥する。
キレイな女性だった。軍服から漏れた耳元までの薄く赤い髪に、やや黄色がかったエメラルドの瞳。整ったプロポーションに凛々しく立つ姿は、正に司令官と呼ぶに相応しい雰囲気を持っていた。
大和とは全く違う雰囲気ではあるものの、直ぐに信頼のできる人物であると感じ取れた。しかし…
「(なんだろう…でもどこか…自信を無くしているような…?)」
朝陽の考えを理解したのだろうか、雲越はフッ、やや自虐的に微笑んだ。
「そのようですね。しかし、我々とは呼ばれた理由が違うようだ」
大和に返答したのち、雲越は改めて朝陽と奏の二人を見る。
「群馬根拠地司令官の雲越 有紗だ。宜しく頼む」
「千葉根拠地所属の曲山 奏と申します!!」
「あ、えっと!!お、同じく千葉根拠地所属の斑鳩 朝陽です!!宜しくお願いします!!」
二人は自然と体が敬意を表す姿勢を取っていた。前指揮官の前ではあり得ないことだった。
「(こんな人が…司令官以外にもいたんだ…)」
雲越はジッと二人を見つめた後、今度は大和に視線を戻した。
「噂で耳にした時はどのような沈んだ者達かと思いましたがなかなかどうして…素晴らしい戦士達では有りませんか」
「えぇ、ボクの自慢の部下達です」
含みのない賛辞を、大和は素直に受け止めた。しかし、その直後に、雲越の表情に陰を落とした。
「指揮官も優秀だ。私とは違い、これからの活躍が期待出来るだろう」
「雲越司令官…それは…」
「無駄話に付き合わせてしまって申し訳なかった。私達はこれにて…行こう、セリ、スギナ」
「はっ」
「はい」
雲越は後ろで控えていた二人に指示を出し、セリ、スギナと呼ばれた二人も大和達に会釈をしてそのあとを追っていった。
その背中が完全に見えなくなってから、大和は静かに口を開き話し出した。
「群馬根拠地ではね、先日の戦闘で6名もの犠牲者を出してしまったんだ」
「え…」
「…ふむ」
二人の反応は二者一様だった。
「犠牲を出してしまった責任はその現場の幹部職にあるとのことでね。今日はその尋問を受けにきたんだろう」
「そんな…その人一人の責任だなんてこと…」
「残念ながらそれが司令官、指揮官という立場なんだよ。そしてボク達はそのことに誇りを持って挑んでいるんだ」
大和の言葉に、朝陽はしかし納得していないようで、大和はそっと朝陽の頭に手を置いた。
「関東総司令官も出来うる限り擁護したそうだ。酷い目には合わないよ」
大和は「それに」と続ける。
「その時のメナスは明確な《知性》を持ち合わせていたらしいんだ。君が初めて能力に覚醒した時のようにね」
「それって…」
「勿論そのことも報告済みだ。そのことは関東総司令官も理解しているし、『軍』最高司令官の人も最大限弁護すると仰っていた。だから彼女は大丈夫だよ」
そこまで説明されて。ようやく朝陽は納得したようだった。そして自分の我儘で気を使わせてしまったことを謝罪した。
大和は気にした様子も無く微笑み、望生に案内を促した。三人は望生に案内され、最高本部の奥へと歩を進ませた。
※ここから先は筆者の後書きになります!!本当にくだらないこと書くので興味のない方はどうぞ読み飛ばして下さい!!
ども!琥珀でございます!
実は最近小説の執筆に力が入りまして、少しストックを作ることができました笑
まだもしかしたら程度ですが、また週三更新に戻すことも…?
まぁそれはそれとして、今後も最低は週2をキープしますのでよろしくお願いします!
次回の更新は月曜日の8時ごろを予定しています!!




