第402星:ロスト
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。『グリット』は『他化自在天降臨』で、自身の背面に5〜15mのエナジー体を顕現させ、高い防御力と攻撃で相手を圧倒する能力。
天城の目付きが明らかに変わったことを、朝陽も直ぐに気が付いていた。
そして、同時に危険な気配を感じ取り、これまでのただ待ち構える態勢から、『フリューゲル』を身体の全面に展開する構えを取った。
「(万が一に備えて、『フリューゲル』にプログラムを設定しておいた方が良いかも)」
これまでの経験則から、万全を期すべきと判断した朝陽は、『フリューゲル』にあるプログラムを設定した。
天城が動き出したのは、それと同時のことだった。
再び黄緑色の『エナジー』の粒子を噴き出させると、そのまま加速態勢に入る。
「(ここまではさっきと同じ…特段変わったことはしてない。私の考えすぎ……?)」
そう考えた瞬間、天城は超高速移動により、朝陽の前から姿を消した。
「(あ……れ……?まっ…って、今の移動方向…は…)」
朝陽は天城の移動前の予備動作から、天城が加速して移動する方角に当たりをつけていた。
だからこそ困惑した。
天城が、自分とはまるで関係のない場所へ移動したことに。
「(お姉ちゃんを狙って…ううん、それにしたって移動する方角がおかしい…一体何を狙って…)」
朝陽は直ぐに移動した先へ視線を動かす。
しかし、その場に既に天城の姿は無かった。
「…!!しまっ……!!」
天城の狙いに気付いたのは、自身の真横から強烈な衝撃が走った直後のことだった。
攻撃を見舞ったのは当然天城。しかし、それまで目で終えていた動きを、朝陽は全く追う事が出来ずにいた。
朝陽は受けた衝撃で身体ごと吹き飛ばされるものの、どうにか空中で体勢を立て直し、着地する。
天城の攻撃の直撃を受けながらも、それ程大きな怪我を負わずに済んだのは、事前にプログラミングしておいた『フリューゲル』のお陰であった。
朝陽は『フリューゲル』に、自分が警戒している意識の外からの攻撃に対し、朝陽の『エナジー』を使用し、自動で防御するようにプログラミングしていた。
その予防策が上手くはまり、天城の攻撃の直撃を未然に防ぐことに成功していた。
しかし、朝陽はそれに安堵する暇も、喜ぶ暇も無かった。
何故ならば、天城の動きを完全に見失ってしまっていたからだ。
「ハハ!!予想通りだ!!お前は俺の加速前の仕草から、俺の加速する動線を見抜いてたわけだ!!」
「…ッ!」
天城は得意げに話すが、朝陽にとってはそこを見抜かれたことは、そこまで大した問題では無かった。
問題となるのは…
「どうして、今の動きが見切れなかったのか…そう言いたげな顔だなぁ」
朝陽が問題視していたのは、まさにそこにあった。
天城の『グリット』を唯一攻略できる方法として算段を建てていた朝陽からすれば、それは致命的な作戦の欠損になるからである。
「良いぜ。教えてやっても。どうせバラしたところで対応できやしないんだからな」
「…!?そんなこと……分からないでしょ?」
朝陽は強気な姿勢を見せたものの、種も分からないこの状況に置いては、攻略法が無いのは事実であった。
「強がんなよ。さっきと違って余裕が無ぇのが丸分かりだぜ」
これに対して天城は余裕のある笑みを浮かべ、朝陽を見ていた。
「考えてみれば簡単なことだ。お前は俺の初期の予備動作を見て俺の動線を読んでいた。そしてそれに合わせるようにして自分も動いた。なら、話は簡単だ。予備動作を分からなくしてやれば良い」
「……そんな簡単に、人の予備動作は変えられないですよ」
朝陽の答えは天城の予想通りだったのか、変わらずニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「あぁそうだろうな。目に見えてる予備動作だけならな」
天城の答えを理解できず、朝陽は眉を寄せた。
「分からねぇか?実力だけじゃなく脳みそも足りないみたいだな」
優位に立ったことで天城は完全に調子に乗っており、朝陽を挑発していた。
「お前のやってることはうちの円香と同じだ。動きを観察してその動線を予測する。反応出来るだけ大したもんだがそれだけだ。なら俺はどうやって予備動作を分からなくさせたか…」
天城は朝陽を見下すような目付きで答えた。
「簡単だ。一度目の加速でお前の視界から大きく外れ、二度目の加速で攻撃を仕掛ければ良いだけだ」
「ッ!!」
天城の答えを聞いて、朝陽の額に冷や汗が垂れた。
「お前が俺の予備動作から動きを読み取れるのは、精々一回が限界だろ。だから一回目の加速でわざとお前の視界から大きく外れる。例えそれを目で追えても、お前が出来るのはそこまでだ。二回目の加速にまで動体視力は追いついてねぇ。だから俺の攻撃はお前に当たったんだ」
天城の発言は的を射ていた。朝陽は先程の天城の攻撃を、目視出来ていなかったからだ。
一度目の加速時に、おおよその動きは予測出来たものの、自身とはまるで違う方向への加速に目が追いつかず一瞬その姿を見失った。
そして、目が追いついた時には、天城は既に二度目の加速を終えており、朝陽が保険としてプログラミングをかけておいた『フリューゲル』の防御に直撃したのである。
危険を察知して防御の手段を用意しておいた辺り、朝陽も流石と言えるが、朝陽はそれで安堵することは出来なかった。
理由は当然、天城の言った攻撃方法に対する対処法を見つけられていないからである。
「(彼の言う通り、私が彼の加速を追えるのは一度だけ…二度目の加速で攻撃を仕掛けられたら、私の目じゃもう追えない。だけど、こんなにも早く気付かれるなんて…)」
朝陽は決勝の舞台で天城の戦いを見続けてきた訳では無い。
しかし、第二部での戦いや、決勝においても要所で観察を続けてきた結果、天城は考えて動くタイプでは無いと考えていた。
直情や勢いに任せ突っ込んでいくタイプだと判断していたのだ。
だから敢えて「見えている」と言葉にして伝えることで、焦りや怒りを助長させ、動きを単調にさせようと考えていた。
しかし、予想に反して天城は冷静になった。
そして、朝陽の予測を裏切る形で、予想よりも遥かに早く攻撃を見極められている理由を見つけられてしまっていた。
これは、朝陽にとって完全に想定外の事態であった。
「色々考えたんだよなぁ。たくさん鍛えたんだろうなぁ。けど悪いな」
天城は黄緑色の『エナジー』を噴出させ、そして再び笑みを浮かべた。
「俺は東京選抜の、エリートなんでな!!」
そして、天城は再び目の前から姿を消した。
僅かな予備動作から一度目の加速を見切った朝陽は、直ぐにその方向に目を向ける。
しかし、そこには既に天城の姿は無かった。
「後ろだよ!!」
「っ!!」
『フリューゲル』にプログラミングした機能はまだ生きていた。
自分の意識外からの攻撃を自動で防ぐプログラムが発動し、朝陽の身を守る。
「それはもう一度見たぜ!!」
天城は今度は朝陽に直接攻撃を仕掛けて来なかった。
身体が当たる直前で加速を止めると、その勢いで出来た『ソニックブーム』で朝陽に攻撃を加えたのである。
「あうっ!!」
直接攻撃ではなく、衝撃波による攻撃を食らった朝陽は、流石に『フリューゲル』でその全てを相殺することは出来ず、再び吹き飛ばされていく。
「ッ!!立て立て!!直ぐに立て!!」
身体をゴロゴロと転がしながらも、朝陽はすぐに立ち上がった。
しかし……
「よう、遅い寝起きだな」
その背後には既に天城が迫っていた。
「ッ!!」
朝陽は急いで槍を振るうが、既にそこに天城の姿はなく、再び後方から強い衝撃が走る。
「ゲホッ!!」
朝陽の『フリューゲル』は、物理攻撃から身を守るために展開されている。
そのため、天城の直接攻撃は防ぐことは出来ても、衝撃まで相殺することは出来ないでいた。
ここからの展開は一方的であった。
吹き飛ばされるたびに天城は朝陽の先に周り、朝陽の精一杯の反撃を悠々とかわすと、再び背後から攻撃。
何度も『ソニックブーム』の衝撃を浴びた朝陽は、徐々にその身体にダメージを負っていき…
「いよいよ、終わりだな」
ついに、立ち上がることさえ出来ない状態にまで追い込まれてしまっていた。
「ハァ……ハァ……ゲホッ……ま、まだ…まだ!!」
「ハッ!!強がりもそこまでいけば大したもんだ!!それに俺の動きを読んだのは褒めてやるぜ」
朝陽が完全に劣勢なのは誰から見ても明らか。それでも朝陽の瞳は死んでいなかった。
「見られてるだけで分かるくらいの殺気だなぁ…だが、これで終わりだ!!」
そして天城は、朝陽にとどめを刺すべく、『グリット』を発動させた。
※後書きです
ども、琥珀です。
私は私の作品を、自分で面白いと思って書いています。
もちろん直すべき点や、至らない点は多くあるでしょうが、それでも、大きな破綻は無く物語として成り立っているのではないかと思ってます。
だから、少しくらいの誹謗中傷には負けず、頑張って物語を書き続けて行こうと思います。
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は水曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




