第399星:二段加速
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。『グリット』は『他化自在天降臨』で、自身の背面に5〜15mのエナジー体を顕現させ、高い防御力と攻撃で相手を圧倒する能力。
その声を聞いた瞬間、判断よりも反応が勝り、反射的に弓を向けようとしたのは、流石と言えるだろう。
しかし、マッハに至る速度で沙月に迫っていた天城には、その動作は止まって見えていた。
天城は加速した勢いをそのままに、沙月を壁の端まで追いやり、そして最後には吹き飛ばして激突させた。
「なん……で……」
落下する直前、沙月は何故天城が無傷で立っているのかが理解できず、溢すように尋ねていた。
「なんでか?知りてぇか?お前はそもそも思い違いをしてたってだけの話だよ」
「思い……違い……?」
天城は悪どい笑みを抑え切れず溢す。
「俺の加速限度回数が一回だって、誰が言ったんだ?」
その言葉だけで天城の言わんとしている事を理解した沙月は、大きく目を見開く。
「じゃあ……アンタが無傷…なのは……」
「簡単な話だろ?一回の加速で抜け出せないから、二回加速すれば良いだけだ!!」
壁に衝突した沙月の周囲の瓦礫が崩れ、もう間も無くその身体は落下しようとしていた。
強力な衝撃により、沙月の身体は自由が効かず、実質脱落は決まっているようなものだった。
「散々言ってくれたよなぁ…俺の敗北の原因がどうとかなんとか……」
「ッ…!!」
「その結果がこれだ!!ザマァねぇなぁ!!アッハハハハハ!!」
「くっ……そぉ……!」
沙月は心底悔しそうな表情を浮かべるも、身体は自由が効かず、やがてそのままフィールドの外へと落下していった。
「ごめん……カナエ、幸町、野々……」
やがて天井のモニターには沙月の脱落の文字が表示され、この決勝の舞台で遂に選抜メンバー全員が脱落する状況となった。
「さて……これで近畿選抜の奴らは全滅したわけだが……」
天城は下に俯いたままの状態でポツリと溢すと、次いで視線をこちらに向けてニヤリと笑みを浮かべた。
「お前、そのままで良いのか?」
真っ先にこの危険な状況に気づいたのは夜宵。
沙月のアイコンタクトにより、瑠河は攻撃をするため、今は夜宵の闇を纏っていない状況にある。
つまり、現状瑠河は無防備な状態にあった。
「『闇夜の』……!!」
「遅ぇよ」
夜宵が『グリット』を発動した時、天城は既に瑠河の目の前に迫っていた。
「テメェも散散ぱら鬱陶しい攻撃してきやがって。目障りなんだよ」
瑠河の側まで接近してそう告げた天城は、二度目の加速態勢に入っていた。
「瑠河…!!」
夜宵は必死に瑠河を守ろうとするが、ここで瑠河が予想外の行動に出た。
闇を纏わせて守ろうとする夜宵を、突き飛ばしたのだ。
「瑠河!!」
「夜宵、あとは任せたぞ」
側にいては衝撃に巻き込まれて夜宵の身も危険だと判断した瑠河は、敢えて夜宵を突き放す選択をした。
その直後、瑠河に向かって天城が超加速。その衝撃で瑠河はあっという間に壁の端まで吹き飛ばされ、ゆっくりと落下していった。
「すまない、夜宵…」
その最後の呟きは、誰の耳に届くこともなく、瑠河はフィールドの外へと消えていった。
そしてモニターには、沙月に続き、瑠河の脱落の文字も表示された。
「ッ!!この!!」
悲しみに浸る間も無く、夜宵は『闇夜の月輪』を解放。
自身の身を包みながら、天城に攻撃を仕掛けた。
「お前の攻撃が遅いのはもう知ってるんだよ。こんなの、加速するまでもなくかわせる」
天城の言葉に嘘はなく、闇を実体化させた攻撃に対し、天城は『グリット』を行使することなく回避する。
「そんでお前は一つ誤解してる」
「!?誤解!?」
話す余裕さえ見せる天城の言葉に、夜宵は耳を傾ける。
「あぁそうだ。確かにお前の『グリット』と俺の『グリット』は相性が悪い。下手に突っ込めばお前の闇に飲み込まれて、俺が脱落扱いされるからな」
天城の言う通り、両者の『グリット』の相性は最悪であり、天城にとって待ち構えられるだけで敗北になる可能性のある夜宵は天敵と言っても過言では無いだろう。
「だが、俺も…いや、俺らもバカじゃ無いんでな。こう言う状況になった場合のケースに備えて対応策は練ってある」
「…!へぇ、何が出来るって、言うの!!」
会話の合間も攻撃の手を止めることのなかった夜宵だが、やはりその攻撃は天城に届かない。
「『ソニックブーム』って知ってるか?超音速機の超音速飛行とかで、大気中を音速より速く移動する物体から発生する衝撃波のことだ」
「……?それが……」
夜宵が尋ねようとした瞬間、天城は『グリット』の発動態勢に入る。夜宵は一瞬で警戒モードになり、全身に闇を纏わせた。
移動した姿はほとんど見えなかった。気付いた時には目の前に天城が立っていたが、その場所は夜宵の闇が届かない直前で止まっていた。
次の瞬間────パァン!!
「……え?」
纏っていたはずの闇が、まるで何かにぶつかったかのようにして弾かれていった。
夜宵が困惑していると、天城はニヤッと笑みを浮かべ、答えた。
「俺は出せるんだよ、『ソニックブーム』を人為的にな」
ブワッと、次の瞬間夜宵の全身に大量の汗が噴き出した。天城の言葉に対してだけでは無い。その破壊力に、である。
そして夜宵は、この攻略法に既視感を覚えていた。
「(これは……指揮官と組手をして頂いた時と同じ…いや、それ以上の衝撃…!!)」
大和達が着任してまだ間もない頃、怪我から復帰した夜宵が咲夜と組手をしたことがあった。
その時、咲夜が夜宵の闇を攻略するのに使った手が、『衝撃槌』という『戦闘補具』を用いて、衝撃波で夜宵の闇を削るという手段である。
その時と違うのは、一発の衝撃の重さと威力である。
咲夜は手数と技量で徐々に夜宵の闇を剥がしていったが、天城はたった一回の衝撃波で、夜宵の闇を消しとばしていた。
つまり…
「これが何を意味するか、分かってるよなぁ?」
目の前まで顔を近づけていた天城に、夜宵は焦った表情で闇を操る。
しかし天城はこれを悠々とかわし、愉悦に浸った表情で笑みを浮かべていた。
「分からねぇわけねぇよな!!一回の加速で闇が消し飛ぶ…つまり二回加速すれば、お前は無防備な状態で俺の攻撃を受けるわけだ!!」
「ッ!!」
その危険性は夜宵も直ぐに理解していた。
しかし、理解したところで、夜宵の頭の中で直ぐに解決策を思いつくことは出来なかった。
「(どうする…?東京選抜の草壁 円香さんがやってたみたいに攻撃の動線に闇を展開する?いや、彼の場合超高速移動下であってもある程度の視界を確保できてる可能性がある。それじゃ効果は無い。闇の範囲を広げても、彼の速度に追いつけなくて、飲み込まなくなる可能性が高い…)」
必死に頭をフル回転させるものの、残された僅かな時間で解決策を見出すことは出来なかった。
「さぁ、遊びの時間は終わりだ。テメェもぶっ飛ばしてやるぜ!!」
天城は『グリット』の発動態勢に入り、全身から黄緑色の『エナジー』が噴き出す。
「(こうなったら一か八か!!私の今の最大濃度の闇を纏って、飲み込めることに賭けるしかない!!)」
夜宵は更に闇の濃度を高くして、それを自身の身体に纏わせる。
「ハハハハハッ!!そんな事をしても無駄だ!!その真っ暗な衣ひん剥いて吹き飛ばしてやるぜ!!」
そして天城は一度目の超高速移動を開始。
夜宵の闇に触れる直前でピタリと静止すると、次の瞬間、ドッ!!という音ともに、強力な衝撃波が生み出され、夜宵に襲い掛かった。
「ウッ!!グッ!!」
夜宵は必死に堪えようとするも、その思いも虚しく、夜宵が纏っていた闇は吹き飛ばされていった。
「クッ…!!まだ…!!」
それでも夜宵は諦めず、反撃に転じようとするが、天城はもうそれを許さなかった。
「まだもクソもねぇよ!!テメェももう終わりだ!!」
そして天城は、そのまま二度目の加速に入り出した。
流石の夜宵も打つ手無しと諦めたのか、ギュッとその目を閉じた。
「『六枚刃』・『光の矢』!!」
と、次の瞬間、天城の目の前を、光の速さで何かが迫っていた。
「ッ!!チッ!!」
天城はその攻撃の正体に気付き、二度目の超加速を、攻撃ではなく回避に使用した。
夜宵から離れる天城。その代わりに、夜宵の前に、金色に輝く光を纏った一人の少女が降り立った。
「あ〜あぁ……そうだった。そうだったよな……まだお前が残ってたよな!!」
「お姉ちゃん、まだ諦めちゃダメだよ!!」
両者の間に割って入るようにして降り立ったのは…
「斑鳩「朝陽」!!」
※後書きです
ども、琥珀です。
実は書きたいことはあるのですが、悪口になってしまうので、口を閉じます。いや、筆を捨てます。
ただ、年齢で人を差別するのはやめましょうね。
琥珀でした。
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は水曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




