表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
10章 ー開幕:『大輝戦』編ー
420/481

第386星:懸念

◆関東地方


斑鳩 朝陽(18)

 千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪イノセント・サンシャイン』。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪ダークネス・エクリプセ』。


矢武雨(やぶさめ) 瑠河(るか) (24)

 栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜(ハンドレット・ヒット)』。


道祖土(さいど) 真衣 (22)

 埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球(アクセルスロー)』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具(バトルマシナリー)』、『硬歪翼球ウルツァイト・ウィングレット』を所有している。



◆東京本部選抜


唯我 天城 (17)

東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作(タキオン・レイン)』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。


佐伯 遥 (24)

東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手(バレットアーチャー)』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。


草壁 円香 (21)

東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知オートマチック・サイト』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。


片桐 葉子 (21)

東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波(トランスミッション)』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。



◆近畿地方


黒田 カナエ (22)

 兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信(テレパシー)』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。


射武屋 沙月 (24)

 奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢アタッチメント・アロー』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。


真田 幸町 (24)

 京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進(ストレートアクセル)』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。


織田 野々 (24)

 大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。『グリット』は『他化自在天降臨たけじざいてんこうりん』で、自身の背面に5〜15mのエナジー体を顕現させ、高い防御力と攻撃で相手を圧倒する能力。

 野々の脱落は、観客席を大いに湧かせた。


 巨大な鎧武者は、その容姿だけでなく、決勝の舞台でも圧倒的な強さを見せつけると思われていた東京選抜を二人も脱落させ、一気に注目を集めた。


 そして、それだけ注目を集めた野々の『他化自在天降臨たけじざいてんこうりん』を、朝陽は正面から打ち破り、脱落させたのだ。


 歓声が湧くのは無理もない話である。



「………」



 そんな声が飛び交うなか、関東選抜関係者に用意されたスペースでは、静かな怒気が周囲に漂っていた。



「あの……咲夜?」



 その原因は咲夜である。


 咲夜は朝陽が野々の攻撃を弾いた瞬間にガバッと立ち上がり、そして脱落したのを見届けた後から、静かな怒気を放ち始めたのだ。



「…お〜い、咲夜〜」



 立ち込める怒気に困惑しながらも、大和は咲夜に声をかける。



「また…使いましたね…」

「……うん、まぁ…使ったね…」



 咲夜が怒っている理由。その理由は大和も理解していた。第三部でも同じ状況を見ていたからだ。



「あの技はなるべく使用しないようにと、あれほど……」



 咲夜の怒りは呆れに変わり、やがて不安そうな表情へと移っていった。


 そんな様子の咲夜に、大和はなんと声を掛けるか迷ったものの、直ぐに答えを出した。



「咲夜……君と朝陽君がどんな技を編み出したのか、ボクもその全貌は分かってない。けど、戦場の戦況と、自身の状態を鑑みれば、朝陽君の対応は完璧だったと思うよ」

「それは……」



 大和の言葉を咲夜も理解しているのだろう、強く否定することは出来なかった。



「相手は『魔王』とまで呼ばれた織田野々。そして攻防最強クラスの『グリット』、『他化自在天降臨たけじざいてんこうりん』を駆使してきた。それを真正面から破ったんだ。ボクは称えるべき場面だったと思う」

「私も、あの対応自体を非難するつもりはありません。寧ろ、大和の言う通り、ベストな対処だったと思います。ですが……」



 咲夜も大和の言わんとしていることは分かっており、その点は素直に朝陽の攻防を認めていた。


 しかし、それでも尚、咲夜の不安が解消される様子は無かった。



「(ほんの一瞬使用しただけでも咲夜がこれ程心配する程の技。威力はあるけどその分リスクもある技なのは間違いない)」



 そんな様子の咲夜を見て、大和は先程の朝陽の使用した技について考え始める。



「(第三部では脚が発光したように見えた。そして次の瞬間、朝陽君は盾子君の目の前にまで迫っていた。最初は加速するための技だと思ってたけど……)」



 手を顎にかけ、大和は先程の光景を思い出す。



「(さっきの場面では、脚じゃなく、腕が発光したように見えた。そして次の瞬間、ボクの目でも追えないほどの速度で攻撃が繰り出された。これは一見すると別の技のように見えるけど…)」



────また、使いましたね…



「(咲夜のあの発言を聞くに、使用した技は同じだということになる。だが全く別の部位が発光したというのは一体…それに咲夜がこれほど過敏になるほどのリスクとは…?)」



 こればかりは千葉根拠地を束ねる大和であっても分からない内容であった。


 何故ならこれは、咲夜に弟子入りした朝陽が考え出し、咲夜と寧花の協力のもと生み出された技である。


 そこに大和は関与していない。


 咲夜はもとより、寧花も根拠地の『グリッター(教え子)』に無茶をさせるような人物ではないことは大和も重々理解していた。


 だからこそ、朝陽があの技を使用するたびに心配する咲夜の姿を、大和は不可思議に思ってみていた。



「(直ぐに問い詰めても良い…だけど、咲夜が自分から言わないってことは何か理由があるのか?それとも、言えない程のリスクなのか…?)」



 大和の中で疑問は膨れ上がるばかりであった。


 しかし、これ以上の詮索は無意味だと考え直し、大和は改めて戦場に目を向けた。



「咲夜、戦いはまだ終わってない。朝陽君が心配なのは分かるが、関東選抜の面々は勝利を目指して戦い続けてる。今は怒りや不安よりも、彼女達を応援する事が、ボク達の役目じゃないか?」



 それは咲夜にではなく、自分に言い聞かせるような発言でもあったが、その言葉は咲夜にも届いていた。



「そう…ですね。彼女達はまだ戦っている。指揮官として、彼女達の勝利を信じる。今は、それしか出来ませんね」



 不安は払拭されていない。それでも咲夜は、今も続く『大輝戦』の決勝の舞台に目を向けた。






●●●






「(ッ!?野々が、負けた!?)」



 このモニターの表示に、最も驚きを隠せないでいたのは沙月であった。


 同じ近畿選抜であり、その能力の一端を見せられていた沙月からすれば、野々の敗北は考えられなかったからだ。


 そしてそれは……



「(これは…カナエのプランにも無かった!!完全に想定外よ…!!)」



 カナエの考えていた作戦にも無かった想定外の事態であった。



「(カナエのプランの中には、()()()()()()()()()()()()()()()。でもこれは、想定よりも遥かに早すぎる…!!)」



 視線を向ければ、そこには僅かに息を切らしながらも、こちらに目を向ける朝陽の姿があった。



「(野々をただ倒しただけじゃなくて、あの『グリット』を真正面から打ち破るなんて…正真正銘のバケモンじゃない…!!こっちはそれどころじゃないのに!!)」

「よぉ、余所見とは余裕じゃねぇか」



 沙月が明らかな動揺を見せていると、目の前から突如声が聞こえて来る。



「ッ!!」



 それが天城のものであることは直ぐに分かっていたが、あまりの高速移動に反応が追いつかず、弓を向けきれなかった。


 天城が目前に迫った瞬間、その天城の足元から、バチィッという電流が走るような音が鳴り響いた。



「あ?」



 足元を見ると、そこには並べられるようにして地面に突き刺さった矢が何本もあり、それら全てが電気を帯びていた。



「チッ!!」



 天城が『グリット』を発動させるのと、沙月が仕掛けていた罠が発動したのは、ほぼ同時であった。



「一弓入輝、疾風の矢!!」



 退いた瞬間を見逃さず、沙月は追撃に出るが、超高速移動を続ける天城に、簡単にかわされる。


 しかし、当たらないことは想定内だったのか、沙月の表情に悔しがる様子は見られなかった。



「(あぶ…なかったぁ…。保険をかけておいて正解だったわ)」



 沙月の足元に突き刺さった無数の矢。


 それは、沙月の『グリット』、『付乗の矢アタッチメント・アロー』の効果を付与した矢であった。


 矢には電撃が込められており、それを横並びのようにして刺すことで、各弓の間で放電。


 そして、相手が近付き触れた瞬間、それが放電する仕組みになっていた。



「(一回の放電で一本の矢が消失する。攻撃用の分も残したかったから、設置できたのは六本だけ。放電するのに二本必要なのを踏まえると、彼の攻撃を防げるのはあと四回。その間に()()()()()()())」



 野々の脱落はショックであったが、沙月はまだ勝負を捨てたわけでは無かった。


 野々の脱落により、近畿選抜は沙月一人。


 東京選抜も残り一人となっているが、関東選抜は三人も残っている。


 状況としては絶望的であったが、カナエや幸町の覚悟を見せつけられてきた沙月に、諦める様子は一切無かった。



「(カナエのプランは実質破綻した…ここからは私自身の経験と知識で局面を打破していかないといけない)」



 沙月は弓をギュッと握りしめ、そして()()()()()()()()()()



「上等よ。私だって近畿選抜に選ばれたメンバーの一人なんだからね。一人で何も出来ないと思われちゃ困るのよ」



 その瞳に敗北の文字は一切なく、寧ろ闘志に燃えていた。



「超加速上等。私は私なりのやり方で攻略してみせるわ!!」



 そう強く意気込みながら、沙月は横目で視線を移した。



「(あとは関東選抜の面々がどう動くか…正直、一番不利な私を同時になって落としに掛かる可能性も否めない…でも…)」



 沙月の頭の中で思い返されるのは、第三部での関東選抜の戦い。



「(彼女達は、真っ向からの勝負…正々堂々とした戦いを好む傾向にあるように思える。どちらも一人の状況ではあるにしろ、不利な状況下にある私を、東京選抜の生き残りと組んでまで倒しにかかるとは思えない)」



 視線を天城に戻し、様々な計略を張り巡らせながら、沙月は大きく息を吐き出した。



「どちらにせよ、正念場ね」



 そして、沙月は再び弓を力強く握りしめ、意思を新たにした。

※後書きです






ども、琥珀です。


早いものでもう八月ですか。

梅雨も明け始めて、今度こそ夏本番といったところですね。


国家試験を受ける私にとってはカウントダウンにしかならず、日に日に不安が増していくばかりです…


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は水曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ