第385星:矛盾
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。『グリット』は『他化自在天降臨』で、自身の背面に5〜15mのエナジー体を顕現させ、高い防御力と攻撃で相手を圧倒する能力。
トリガーを引いた瞬間、野々の『へし折り長谷部』から放たれた銃弾を、野々の『グリット』が覆うようにして、肥大化。
巨大な弾丸となって朝陽に襲い掛かった。
「ッ!!」
朝陽は飛翔能力を駆使して必死に回避。寸前のところでかわすことに成功していた。
しかし朝陽はそこで動きを止めることはしなかった。
何故ならば…
「やはりかわすか斑鳩 朝陽。じゃあ数を増やしたらどうだ?」
それを見た野々は、再び銃剣のトリガーを引いた。それも今度は一発に留まらず、何発も連射して放った。
これを予想して動いていた朝陽は、更に距離を取ることでこれに対応していたが、一つ一つの攻撃が大きい上に早く、次第に追い詰められていた。
「(これだけの規模…『閃光の盾』じゃ多分受け流せない。一番の選択肢は回避し続けること。だけど…)」
続け様に放たれる弾丸に加え、朝陽の動きを読み始めた野々の射撃精度が上がり、朝陽の回避は徐々に追いつかなくなっていった。
「(これじゃ『エナジー』切れを待つ前に、私がやられる!何か、反撃の手を考えないと…!!)」
必死に回避を続けながら、朝陽は起死回生の一手を模索し続けた。
「(考えなくちゃ!!野々さんのこの強力な攻撃を凌いで、鉄壁の守りを崩す方法を!!)」
そう考えた瞬間、朝陽は一つの疑問を抱いた。
「…あれ?」
それは一瞬の隙となり、次の瞬間目の前に巨大な銃弾が迫っていた。
「ッ!!『閃光の壁よ』!!」
朝陽は再び全体に光の壁を形成し、野々の銃弾の直撃を間一髪のところで防ぎ切る。
直ぐに盾を解除し、再び回避行動に移った朝陽の頭の中では、一つの結論が出始めていた。
「(もし、私の予想が当たってるとしたら…)」
考えている時間は最早無かった。
先程の躊躇した瞬間に、動きを止めたことで狙いを定めた野々の弾丸が、次々と朝陽に襲い掛かって来ていた。
「ッ!!やるしかない!!この作戦で野々さんを、倒す!!」
「……?」
朝陽の行動に異変を感じた野々が、眉を顰める。
そして、次の瞬間、ニタリと笑った。
「クハハハハ!!良いぞ!!この状況に追い込まれてもなおその表情!!さぁ、この局面をどう打破する!?」
朝陽の動向を寧ろ楽しみにしているような様子で、野々は再びトリガーを引いた。
巨大な鎧武者から放たれた弾丸は再び朝陽へと襲いかかる。
そんな野々の攻撃に対し、朝陽は真っ直ぐ急降下し、野々の元へと向かっていった。
「!?」
その行動は予想外だったのか、僅かに野々の目が開かれる。
弾は当たるスレスレのところで回避し、最小限の動きで回避していく。
そして、300m程引き離された距離は、一気に縮まっていった。
「小癪な!!」
正面突破されるのは流石に癪であったのか、野々はそれを妨げるようにして銃剣を放った。
弾丸は中央に集められ、隙間は殆どない状況であった。
流石の朝陽もこれを掻い潜るのは不可能と判断し、大きく旋回したあと、再び野々に向かって一直線に降下した。
「ちぃ!!ならばこれでどうだ!!」
野々は今度は中央一点砲火ではなく、横並びになるようにして弾丸を放った。
「横がダメなら…縦!!」
しかし朝陽の判断も早かった。迫り来る弾丸の並びを見て即座に判断し、下を掻い潜るようにして弾丸を回避した。
「(奴は一体何を狙っている?何故突然特攻を仕掛けるような攻撃を……)」
銃剣による攻撃を続けながらも、野々は朝陽の行動の意図を察しようと冷静に考えていた。
そして、一つの結論に至った。至った瞬間、それまで爛々と輝いていた野々の瞳が暗く沈んでいった。
「(そうか…貴様の狙いは…)」
どこかやる気を無くしたような様子を見せながらも、野々は銃剣から弾丸を放つことを止めることはしなかった。
両者の距離は200mを切っていた。
野々の『グリット』の巨大さを鑑みれば、勝負となるのは残り50mとなったところからだろう。
朝陽の特攻を見るに、この動きで決着がつく可能性は高かった。
故に、野々はどこか失望した様子で朝陽を見ていた。
「(斑鳩 朝陽…貴様ならばもっと楽しませてくれると思っていたのにな…)」
両者の距離は遂に100mを切った。
緊迫した決着の瞬間は、直ぐそこまで迫っていた。
野々の放った最後の弾幕を抜けた朝陽は、野々の『他化自在天降臨』の動きの緩慢さを利用して一気に懐まで入り込んだ。
「これで…!!」
野々の『他化自在天降臨』の弱点は、鎧武者を顕現させている本体が無防備であるという点。
その弱点を、朝陽は遥と同じようにして突こうとしていた。
その様子を、野々は読んでいたかのようにして朝陽を睨みつけた。
「残念だよ、斑鳩 朝陽。貴様なら、我の『他化自在天降臨』を何か別の方法で…正面から破ってくれるのではと期待したがな…」
と失望の言葉を述べると、野々はその場で『加装』と呟いた。
次の瞬間、遥との戦いで抑えられていた野々の『他化自在天降臨』が再び肥大化し、一気に倍近くの15mまで巨大化した。
その反動で近付いていた朝陽は吹き飛ばされ、再び野々との距離を離されてしまっていた。
「我の攻撃をかわせていたと思ったか?残念だな。鼻っから我の懐に誘い込むのが狙いだよ。貴様の狙いが我本体だと知った瞬間からな」
野々は朝陽の狙いに気付いていた。
否、これまで挑んできた全ての者がその弱点を突いてきただけに、理解していた、という方が正しいだろう。
だからこそ、野々は失望していた。
ここまで善戦してきた朝陽ならば、もしかしたら違う方法で攻略してくるのではないかと、期待していたからだ。
しかし、結果としてそうならない事が分かってしまった。だから、野々は敢えて懐まで誘い込むという、これまで取ってきた反撃方法と同じやり口を使っていた。
「貴様との時間もお終いだ斑鳩 朝陽。少しだけ、楽しめたよ」
そう言って野々は、自身から距離が離れた朝陽に向けて、巨大な太刀を振るった。
そして朝陽は……
「これを…待ってました!!」
作戦通りと言わんばかりの表情を浮かべていた。
「『閃光の輝腕』!!」
朝陽は次の瞬間、野々の太刀を身を捩りながらのかわすと、眩く発光した光の腕が一瞬見えなくなるほどの速度で振り回された。
その勢いで『光の聖槍』が野々の巨大な太刀に直撃。
元々勢いの付いていた太刀が更に加速し、そして角度を変え、野々の『他化自在天降臨』に突き刺さった。
「ッ!?な…にっ!?」
自身の鎧武者に自身の太刀が突き刺さったことで、その箇所から他化自在天降臨にヒビが入り、ボロボロと崩れ落ちていった。
「我の……他化自在天降臨が、真正面から……」
その光景に呆然とする野々の目前には、槍を構える朝陽の姿があった。
「フッ…ハハハ!フハハハハ!!そうか、そうか!!初めからこれが狙いだったか斑鳩 朝陽!!我に太刀を振るわせることが狙いだったのか!!」
やがて理解が追いつき、野々は何故か嬉しそうな笑い声を上げていた。
「ふと、疑問に思ったんです。剣美さんに匹敵する矛と、盾子さんに比類する盾、野々さんの『グリット』はどちらが優れているのか、って。だからこれは、一か八か、でした」
「フハハハハ!!つまり我の『グリット』は矛の方が優れていた、という事になるのか!!」
正面から突破されたことが嬉しいのか、野々は歓喜の笑いが止まらなかった。
「さぁ、どうでしょう。私の追い討ちで加速させましたから、それが要因だったかも知れません。とにかく…」
「あぁ、認めよう斑鳩 朝陽!!この勝負…」
「「貴様の勝ちです」だ!!」
朝陽の槍の先から、『光衝撃』が放たれ、防御の手段を持たない野々は、その衝撃により一気に場外まで吹き飛ばされていった。
「クハハ…ハハ……あぁ、最高の戦いだった……これが最強となるための……道か」
壁に衝突した野々は、最後にそう呟き、やがてゆっくりと落下していった。
そして、天井に吊るされたモニターには、織田 野々の脱落が表示された。
※後書きです
ども、琥珀です。
学校の試験と違い、社会人になってからの試験というのはいかんせん難しい。
勉強をしていても、果たしてこれが合っているのかどうか、と迷うばかりです。
でも、やらないよりはマシ…という気持ちで、毎日勉学に励んでおります…
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




