第383星:ダブルノックアウト
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。『グリット』は『他化自在天降臨』で、自身の背面に5〜15mのエナジー体を顕現させ、高い防御力と攻撃で相手を圧倒する能力。
その異変はすぐに感じ取った。
天城は幸町に攻撃を仕掛けながら、何かがおかしいことに気が付いた。
「(コイツ……!!俺の攻撃を初めから受けるつもりで…!!)」
幸町は、自分が攻撃を仕掛けるタイミングに合わせて、天城が攻撃を仕掛けてくることを読んでいた。
全力の攻撃を仕掛けている時こそ、一番無防備になることを知っていたからだ。
その事を理解した上で、幸町は円香のことしかしか見ていなかった。
防ぐ手立てなどない。しかし円香を追い詰め攻め込むにはこの好機を逃すわけにはいかない。
だから幸町は覚悟を決めていた。
自分のこの攻撃が、円香と相打ちになるという、覚悟を。
「あ゛…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
天城の攻撃を片足で精一杯踏ん張って受け止め、幸町は速度を緩める事なく最後の一歩を踏み出した。
その一歩が決め手となり、幸町の攻撃は円香に直撃。身体をくの字に曲げながら吹き飛ばされていった。
そして、その最後の攻撃により踏ん張りが解け、天城の攻撃を受けた幸町も、真横に吹き飛ばされていた。
この超高速による刹那の瞬間の攻防を見届けられた者は何人いただろうか。
気付けば両名は壁の端まで吹き飛ばされ、そのままフィールドの外へと脱落していった。
そして、フィールドの天井に吊り下げられたモニターに、真田 幸町の脱落と草壁 円香の脱落が表示された。
●●●
「ッ!!」
幸町の脱落を、沙月は弓を構えて見ていることしか出来なかった。
「(援護するつもりだった!幸町が攻撃するタイミングを作るために、いつでも射る用意はしていた…!けど、最後のところで唯我 天城に視界を遮られた…!)」
幸町から話を受けていた時、沙月はその意図を察していた。
止まれといえば止まる幸町が、沙月の制止を振り切ってまで覚悟を決めた攻撃。
沙月はその覚悟を汲み取って、最大限の援護をするつもりであった。
しかし、沙月の目論見は、突如視界に現れ、場を覆い隠してしまった天城によって破られてしまった。
そして、援護をすることも出来ず、幸町は脱落してしまった。
それでも、沙月は幸町の特攻を責めるつもりも、無駄だとも思っていなかった。
「(幸町は、カナエの作戦を上回る功績…つまりイレギュラーに対してそれを上回る覚悟で草壁 円香を脱落させた。それを無駄にはさせない!)」
覚悟を見せつけられた沙月は、自身も覚悟を決め、再び弓に入れる力を強めた。
●●●
幸町を脱落させ、円香を脱落させられた天城は、その場に呆然と立ち尽くしていた。
完全に仕留めたと思ったタイミングからの攻撃。
それを、幸町は覚悟で踏ん張り、そして円香を巻き込んだ。
否、端から幸町の目には、天城の攻撃など眼中に無かった。
攻撃が来る事を分かっていた上で受け止め、そして確実に仕留める事を優先させたのだ。
その結果は痛み分け。両者脱落の結果となった。
その光景を見て天城は…
「クッ……ハハハ!!」
笑った。
「ハハハハハ!!やるじゃねぇか!!まさか散々見せつけて来た俺の攻撃を無視するなんてな!!どんなメンタルしてんだよ!!」
それは天城なりの賛辞。自分の予想を上回る幸町の行動と覚悟を讃えていた。
「ハハハ…ハァ〜…それに比べてよぉ…」
天城は不意にその笑みを消し、暗い目で周囲を見渡した。
周囲では巨大な鎧武者に立ち向かう朝陽達の戦場、そして、自分を付け狙う二人の弓者と夜宵の姿。
「同じ東京選抜の皆様方は何やってんだかなぁ」
天城の言う通り、そこにはもう、天城以外の東京選抜の姿はどこにも無かった。
「偉そうな事を散々述べといて、結果がこれかよ。やっぱり俺以外の奴は信用ならねぇな…」
天城は片手で顔を隠し、天井を見上げた。
「結局この世は力だ。生き残った者が正しい…だからさぁ……」
そして、指の間から、口元に歓喜の笑みを浮かべ、夜宵達の方に視線を向けた。
「ここからは、俺の好きにして良いってことだよなぁ!!」
そのプレッシャーは、直ぐに夜宵達のもとへと届いて来た。
「ッ!!瑠河!!私の側に!!闇で守りを固めるわ!!」
「わ、分かった!!」
夜宵は直ぐに行動に移し、瑠河を呼び寄せると、二人を囲うように闇を纏わせた。
対する沙月は…
「今度は…私の番よ」
その場から動かなかった。
●●●
「そぉらぁ!!」
野々が太刀を振るうと、その背後に顕現していた野々の『グリット』、『他化自在天降臨』も巨大な太刀を振るった。
「ッ!!」
相対する朝陽は、これを槍を傾け柄の部分で受け止め、そして身体を捻ることで受け流した。
「クハハハハ!!我の太刀を受け止めるだけでなく、受け流す技量を持つか!!やるではないか!!」
野々は先程から一向に攻めきれない現状を、寧ろ楽しんでいるようであった。
「だが恐るべくはその槍よな!!我の『へし折り長谷部』、それを『グリット』で具現化させた太刀を受け止めながら傷一つ付かんとはな!!大した業物……いや、理から外れた武器といったところか?」
朝陽の『光の聖槍』と、野々の『へし折り長谷部』の具現化は、一見して同じように見えるが、その実全くの別物である。
野々の『へし折り長谷部』が、元の太刀を基にしているのに対し、朝陽の『光の聖槍』は、朝陽が一から創り出している武器である。
『光の聖槍』は朝陽の『エナジー』により顕現している武器であるため、朝陽の『エナジー』が尽きない限り、破壊されることのない無敵の武器である。
逆を言えば、朝陽の『エナジー』が尽きれば『光の聖槍』も消滅してしまう。
『レジスタンス』の霧島 カンナ達との戦いで、『エナジー』が枯渇したことで消失したのが良い例だろう。
その武器の性質もあって、朝陽は巨大かつ強大な力を持つ野々の『他化自在天降臨』の攻撃を凌いでいた。
無論、それだけで野々の攻撃を凌げるほど甘くはない。
朝陽は飛翔能力を駆使しながら、攻撃のポイントを絞らせない動きで、野々の動きを制限していた。
それでようやく対等に近い攻防を繰り広げていた。
近い、というのは、実際は対等ではないからである。
「(攻撃を防ぐことは、出来る!!でも…私の攻撃が通らない!!)」
朝陽の考えの通り、野々の攻撃を防ぐことは出来ていたが、反撃に転ずる事が出来ないでいた。
否、実際には反撃することは可能である。
朝陽の飛翔能力を使用すれば、動きが緩慢な野々の『他化自在天降臨』の背後を取ることは比較的簡単である。
が、しかし、遥の強力な攻撃さえ凌ぐ防御力を誇る野々の『グリット』の前に、半端な攻撃は通用しない。
盾子にも匹敵する硬度を誇る野々の『他化自在天降臨』を破るためには、朝陽も相応の『エナジー』を使用した攻撃が必要になる。
それが不可能かと言われれば、それも否、である。
盾子の盾をも破った朝陽の攻撃ならば、恐らく野々の『グリット』を破ることは不可能ではないだろう。
しかし、朝陽がそれを躊躇っているのは、やはり『エナジー』が原因であった。
第三部において、『エナジー』を大量に消費している朝陽の『エナジー』の残量は、決して万全ではない。
野々の『グリット』を破るほどの攻撃を繰り出すには、相応の『エナジー』を必要とする。
しかし、ここでそれをしてしまえば、朝陽に戦う力はほとんど残されなくなってしまう。
そして万が一、野々の『グリット』を破る事が出来なかった場合、朝陽の敗北が確定してしまうのである。
そんな状況を前にして…
「ハハハハハ!!さぁ斑鳩 朝陽!!我が恩人よ!!もっと我を楽しませてくれよ!!」
「……」
朝陽は冷静であった。
※後書きです
ども、琥珀です。
前回の後書きと、SNSで掲載させて頂いたのですが、今週から更新を月・水・金に戻させていただきます。
理由としましては、資格試験の勉強時間を増やすためです。
読者の皆様には関係のないところでご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
何とか週三回更新は維持して参りますので、何卒ご容赦ください。
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は水曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




