第382星:限界突破
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。『グリット』は『他化自在天降臨』で、自身の背面に5〜15mのエナジー体を顕現させ、高い防御力と攻撃で相手を圧倒する能力。
「『直進邁進猛進』!!」
沙月に自分の覚悟を伝えた幸町は、更に加速すべく、勢いよく踏み込み更に加速した。
狙いは天城ではなく円香。スピード勝負では敵わないと判断した幸町は、先に円香を倒すことを試みていた。
「しつこい。私には貴方の動きは通用しない」
円香の言う通り、幸町の攻撃の動線には、既に円香の攻撃が置かれており、完全に動きを読まれていた。
が、幸町はこれを完全に無視。
「…は?」
置かれていた拳が自分の肩に直撃したのも関係なく、幸町は握っていた槍で思い切りよく円香を吹き飛ばした。
「ガッハッ…!?」
作られた岩の造形物まで吹き飛ばされ、その場に崩れ落ちた円香は、口元から思わず吐血する。
時速300km/hを超える速度の物体の攻撃が直撃したのだから、それも当然である。
しかしそれよりも、円香が驚いたのは幸町の行動であった。
幸町の加速による攻撃は確かに強力である。しかし、真正面から反撃を受けると、その反動が全て自分に返ってくるというリスクもあった。
現に幸町の肩からは、円香の置かれた攻撃によるダメージで、目も当てられないような出血が起きていた。
幸町は、つい先程まではそれを警戒し、円香の動線上に置かれた攻撃を回避していた。
しかし、今の幸町の行動は、その警戒を解き、自らがダメージを負うリスクを負ってまで攻撃を仕掛けたのである。
「(だからって…普通そんなことする!?いくら私が攻撃の軌道を読んでるからって、それを強引に突破するなんて!!)」
全身の痛みを堪えながら、円香はステップを踏みながらこちらを見据える幸町を、信じられないと言った様子で見つめ返した。
「(分かってんの!?貴方の攻撃の軌道は読み切った!!一度目は不意をつかれたけど、二度目はそれを見越して動けば良いだけ!!そんな攻撃方法、不利になるのはアンタだけなのよ!?)」
円香の考えの通り、今の幸町の一撃が通ったのは、円香が幸町が自らのダメージを顧みずに攻撃を仕掛けてくることを予測していなかったためである。
しかしそれを理解した上で、円香の『計算予知』ならば、幸町がダメージ覚悟で特攻を仕掛けてくることを予測した動きを計算することも可能である。
即ち、円香にとってはノーリスクであり、幸町にのみリスクが伴う攻撃手段にしかなっていなかった。
「(そうくることが分かってるなら……ッ!!)」
円香はゆっくりと立ち上がるが、右半身から走る激痛に、一瞬表情を歪める。
「(…ッ!さっきのカウンター攻撃で、右の拳がイカれた…肋骨も何本か折れてる。稼働率は20%くらい落ちたわね)」
円香は大きく息を吸い、そしてゆっくりと吐き出した。
「(でも問題ない。このくらいなら、まだ対応でき……)」
その時、円香はつい先程までは立っていた筈の幸町の姿がないことに気が付いた。
「(また加速態勢に入ったってわけね。どっちが先に崩れるか勝負したいってわけ?)」
反撃の手段も、攻撃の手段も、そして幸町の動線さえも見極めている円香には、願ってもない展開だった。
「(残念ね。もう、貴方の攻撃は食らわない。反撃にも手を抜かない。勝たせて、貰う!!)」
そう言って円香は、幸町の攻撃に対応する心構えと準備を整えていった。
しかし、円香の予想に反して、幸町は直ぐに攻撃を仕掛けてくることはしなかった。
まるで様子を伺うかのように周囲を旋回し、その速度を速めていく。
「(どうしたの?今の一撃で反撃をより恐れた?)」
仕掛けてこない幸町に対し、円香は周囲を旋回し続ける幸町に対し不敵な笑みを浮かべた。
それに気付いるのかいないのか、幸町は旋回を止める事なく加速を続けた。
いつまで経っても攻撃を仕掛けてこない幸町に対し、円香はうっすらと違和感を感じ始めていた。
「(なぜ?何故仕掛けてこないの?自分の怪我さえ顧みない覚悟があるのなら、いつでも仕掛けてくるはず。それをしないのは…本当にさっきの一撃で恐れを抱いたとでも!?)」
円香が周囲を旋回し続ける幸町の異変に気付きながらも、幸町は足を止める事なく加速を続けた。
その速度はどんどんと上がり、350、そして400km/hまで昇り詰めていた。
「(は、速い!!いくら強化された『グリッター』の動体視力でも、これ以上は追いきれない!!)」
それでも円香は必死に動きを観測し、幸町の動きを予測。いつでも反撃できるように備えていた。
しかし……
「ま、まだ加速するのか!?」
幸町は未だ攻めてくる気配を見せなかった。
ただ直向きに円香の周囲を旋回し、速度を上げていくばかりであった。
「(不味い…これ以上の速度は…)」
その時、ふと円香は一つの疑問を抱く。
「(彼女はあれ程の速度の中で、自分の動きを視認出来ているのか?)」
最大限の警戒心を抱きながら、円香は疑問について考え込む。
「(可能性はある。加速は彼女の『グリット』そのもの。この速度にも目を慣らしている可能性は高い。だが…)」
周囲を旋回する幸町は、遂に目で追うことさえ困難な速度に達していた。
「(いくら慣らしているとはいえ、常時この速度に…ましてや日常的にこの速度に至ることは無いはず。ならば彼女にも、あの速度の世界では視界を確保することは困難なはず)」
そして円香は、目で追うことが出来なくなったことで、ようやく一つの結論に辿り着く。
「…ッ!!まず…い!!この速度からの攻撃は、例え軌道が読めても、私の反射神経が追いつかない!!」
これまで円香は、幸町の攻撃に対して、攻撃を軌道上に置く牽制のようなスタイルで防いできていた。
対して幸町は、そのスタイルに対抗して、自身のダメージを顧みずに攻め込む攻撃を仕掛けた。
結果は痛み分けとなったが、しかし攻撃が有効であると判断するには十分であった。
そこで辿り着いた幸町の結論はただ一つ。
円香の予測による反射神経の限界を越える速度を出すことである。
幸町の速度は遂に500km/hの大台に乗った。この速度は幸町にとっても未知の領域である。
「(息…が!!それに、視界…も…!!)」
周囲を旋回し続ける幸町には、既に周囲の景色は無いに等しかった。
自分に襲い掛かる空気圧で呼吸もままならい状態で、しかし幸町はひとつだけ確実に捉えているものがあった。
円香である。
この速度で周囲を旋回出来たのも、意識を失わず、加速し続けられたのも、全ては円香を視界に捉えていたからである。
「(身体が悲鳴をあげています…ッ!!限界なんて……当に超えている……!!それでも私は……!!己の使命を全うします!!)」
幸町の速度は、遂に円香の反応速度を超えた。
円香は焦ったように周囲を見渡し始め、どうにか幸町を視界に捉えようとしていたが、500km/hを越える幸町の速度には、流石の円香の動体視力もついていかなかった。
「(こうなったら一か八か…!!これまでの彼女の行動パターンから、仕掛けてくるタイミングと場所を予測して、そこに攻撃を置くしか無い…!!)」
目で追うことを諦め、円香は一か八かの賭けに出ることにした。
幸町も円香が何かの覚悟を決め、動きを止めたことを察するが、幸町の考えは決まっていた。
「(これが真田 幸町の、決死の覚悟!!どちらが上回っているか、勝負です!!)」
幸町はタイミングと姿勢を整え、そして背後に回った瞬間、一気に円香に攻撃を仕掛けた。
「この、タイミングだっ!!」
しかし、その好機による読み合いは、円香の『計算予知』が上回っていた。
円香は背後を振り返り、身体を仰け反り攻撃を避けながら、幸町の攻撃の動線上であろう場所にカウンターの攻撃を仕掛けていた。
勝敗は決したかのように見えた。
しかし、円香が読んでいたのは、タイミングだけであった。
自分の攻撃パターンが読まれていると考えていた幸町は、これまでの猪突猛進のような攻撃スタイルではなく、斜めに進むようにして仕掛けていた。
その動線上には、身体を仰け反らせていた円香の姿があった。
「読みを……外され……!!」
最後の最後で全く違う行動パターンを繰り出された円香は、己の敗北を悟った。
その刹那の瞬間、
「面白しれぇことすんじゃねぇか」
幸町の隣から、声が聞こえた。
「だが残念だったな。それでも俺の方が速ぇよ」
攻撃が円香に届く前に、天城の攻撃が幸町に直撃した。
※後書きです
ども、琥珀です。
何気なくやっていて気が付いたんですが、これで3週連続くらい、五日間連続更新が出来てますね…
自分でもビックリです
※お知らせ
国家試験の勉強に集中する時間を増やしたいため、更新を週3日、月・水・金に戻させていただきます。
後書きにてお知らせさせていただきます。
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は土日お休みをさせていただきまして、月曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




