第380星:スリリング
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。『グリット』は『他化自在天降臨』で、自身の背面に5〜15mのエナジー体を顕現させ、高い防御力と攻撃で相手を圧倒する能力。
「おい、黒いのが近づいて来たぞ」
矢と幸町を相手にしながら、天城は夜宵が接近して来ていることを円香に伝える。
「攻め時としては間違ってない。彼女の接近は予測はしてた」
背中を並べながら、円香はそれを事前に予測していたと返す。
「だったらどうするんだ。突貫女に矢を女が二人、それに硬球に加えて黒影女まで加わったぞ」
時間の経過とともに追い詰められているのを感じていた天城が、現状唯一の頼みである円香に意見を尋ねる。
「彼女の『グリット』は厄介だけど、上手く立ち回れば私達に有利に働く可能性がある。ある意味で私達にとってラッキーな展開よ」
天城からすれば、全てを飲み込む闇を操る夜宵の『グリット』は、天敵意識しか無かったが、円香には別の側面が見えているようであった。
「つまり、こういうことよ」
小声で天城にだけ聞こえるように作戦を伝えると、天城も納得したように頷いた。
「成る程な。相手の能力も使い方次第ってわけか」
「でもリスキーな行動ではあるのは事実。この作戦、乗る?」
「乗ったぜ。今のままジリ貧なよりはスリリングなのが気に入った」
円香の問いに、天城は直ぐに答えた。
そして二人は横並びになり、夜宵の方へと真っ直ぐと身体を向けた。
「(…?私の方を向いた…?私と対峙することを望んでるってこと?)」
二人の予想外の動きに夜宵は戸惑うが、己の『グリット』の優位性のことは忘れておらず、すぐに『闇夜の月輪』で闇を纏った。
「(接近戦を主体としている以上、一度私の『領域』の中に入ってしまえば勝利は確実。私に狙いを定めてくれるなら、願ってもない話だわ)」
慎重になりながらも冷静さを保ち、夜宵はジリジリと二人との距離を詰めていった。
「(夜宵と対面する気か?不利なのは明確な筈だぞ?)」
その光景を、造形物の高台から見下ろしていた瑠河が不審な様子で見ていた。
願ってもない行動ではあるものの、それが却って不信感を抱かせていた。
「(いや、狙いがなんであろうと、夜宵の『グリット』が相性が良いのは間違いないんだ。私の役目はそちらへ動きを誘導することだ)」
そう考え、瑠河はグッと闇を構えた。
「(夜宵さんが降りてくるのはカナエのプランにもあった。けど、あの二人の動き方は多分イメージになかった。何か狙いがある…?)」
同じくして、カナエからこの後のプランのイメージを受け取っていた沙月も、二人の行動に眉を顰めていた。
「(幸町さんはもうほぼフルで動けるし、この動きに関東選抜の面々も警戒はしてる筈。何かアクションを起こしても、対応はできる筈。私は私のすべきことをすれば良い)」
そう考えた沙月も、グッと弓の弦を引っ張った。
「発放必中、『横雨の矢』」
「一弓入輝・『累加速の矢』」
それからタイミングを図るようにして、二人の弓者が一斉に矢を放つ。
片や逃げ場を無くすような広範囲の矢、片や一直線に加速する高速の矢を放った。
「…!行きますよ!」
それを待っていたかのように、天城と円香の二人も一斉に動き出した。
方角は大方の予想通り夜宵の居る方へ。
その目的は不明であったが、夜宵も万全の状態で迎え撃つ準備は出来ていた。
矢の雨を何とか掻い潜りながら、二人は一気に夜宵の懐に入り込んだ。
「(くる!!)」
夜宵は闇を展開し待ち構えたが、二人は予想に反して、夜宵から僅かに距離を取ったところで動きを止めた。
「!?」
その予想外の動きに夜宵が困惑するが、その周囲にいた人物達は、直ぐにその意図を察した。
「むっ!!夜宵の闇を盾にするつもりか!!」
瑠河の考えの通り、まさに二人の狙いはそこにあった。
まずは敢えて夜宵に敵意を向け、警戒心を高めさせることで意図的に闇を広く展開させる。
そして接近することで、夜宵が展開した闇を盾に、矢の雨を凌ぐ作戦に出たのである。
無論、瑠河との打ち合わせをしていた夜宵も、瑠河の矢の雨を浴びないように、後方に闇は展開していた。
円香はそれを見て、逆にそれを自分達の防御策として利用する案を思いついたのである。
円香の考えた作戦はそれだけに終わらない。
夜宵が展開した闇により、幸町も巻き込まれる可能性があるため、迂闊に接近出来なくなっていた。
同じく真衣の硬球も、下手に攻撃をすれば夜宵の闇に飲み込まれるか、下手をすれば夜宵を傷付けることになるため、迂闊に方角を変えて攻撃することが出来なくなっていた。
「上手く私を利用してくれた、ってわけね」
夜宵も直ぐにその意図を理解し、広げていた闇を縮こませていった。
「でもこれだけ接近してくれたのなら!!」
夜宵は地面に手をつき、再び闇を操る。そして、地震の影を伸ばすようにして、二人に接近させた。
第三部で見せた、影をくっつけることで、二人の足元に闇の影の穴を作り出そうとしたのである。
「バカが!!攻撃を凌いで時間を稼げれば十分なんだよ!!」
その瞬間、ほんの僅かに出来た隙を突いて、天城は『グリット』を発動させると、全身が薄緑色に淡く発光していった。
「ッ!!」
自分の判断ミスに気付いた夜宵は、影から闇を回収し、防御の姿勢に入ろうとしていた。
「遅いんだよバカが!!」
次の瞬間、薄くなった夜宵の闇を突き破るようにして、超加速した天城が夜宵に突貫し、突き飛ばしていく。
「ガハッ!!」
背後に作られた岩の造形物に全身を打ち、夜宵はその場に崩れ込む。
「ムムッ!!」
『グリット』発動後の僅かな硬直の隙を突いた幸町の攻撃もあって、追撃を避けることは出来たものの、見舞われた一撃は重く夜宵にのしかかっていた。
「(な、なんて威力…それに、なんて速度。目で追うとか身体で感じるとかそんな次元じゃない…!発光したと思ったらもう衝撃が…!!)」
全身を駆け巡る痛みに耐えながら、夜宵はゆっくりと立ち上がりつつ、追撃に備え闇を展開する。
「予測通りだったな。思いっきりぶち込んでやったぜ」
してやったりの表情を浮かべる天城の横で、円香は癖である横髪を掻き上げる仕草を見せた。
「新しく参戦したばかりだから、直ぐに接近戦に持ち込まれたら動揺すると思ってた。予測通りね。攻撃も完璧だったわ」
普段無表情の円香が、薄く笑みを浮かべており、それ程までに完璧な作戦であったことが窺えた。
一方で、早速大きなダメージを受けてしまった夜宵は、ズクンズクンと痛む身体を、ゆっくりと起き上がらせていた。
「(この威力、それに速度を考えたら、生半可な闇じゃ飲み込みきれない。カウンターを狙うのなら出来る限り自分の周囲に闇を留めないと、突き破られる。けどそれじゃ、私が前に出た意味がない)」
たった一撃を食らっただけで膝が笑っているような状態ながらも、夜宵は落ち着いて頭を働かせた。
「(同じ手を使ってくるような迂闊な真似はしてこない筈。となるともう接近してくることは無い)」
夜宵は大きく息を吐き、頭の中で冷静に考え込む。
「(唯我 天城の『グリット』封じは、もう皆がやってくれてる。私の役目は、今のうちに二人をダウンさせること。相性を考えれば、接近戦に持ち込むのが一番ベスト)」
ガクガクと震える両膝をバシッと叩き、夜宵はしっかりと立ち上がる。
「(瑠河の矢だけ飲み込めるように背後に展開しつつ、残りは二人に向けられるようにして、今度は私から接近戦に持ち込む!!)」
夜宵はズズズ…と闇の形を変えながら、次の行動のためのアクションをとる。
「(逃げ場は皆が塞いでくれてる。なら私が接近して一気に仕留める!!)」
瑠河達とタイミングを合わせて接近しようと、夜宵が試みた瞬間であった。
「予測完了」
攻撃が止んだ間に、小さく円香が囁いた。
その瞬間、天城はニヤッと笑みを浮かべ、そして呟いた。
「三分だ!!」
※後書きです
ども、琥珀です。
左半身麻痺な琥珀ですが、先日遂に車を擦りました…
医療費でお金がかさむのに、これに車の修理代まで…絶句です…
二度とこんな身体にはならないと誓いました…
まだ治ってませんが…
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は木曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




