第378星:選抜最強の証明
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。『グリット』は『他化自在天降臨』で、自身の背面に5〜15mのエナジー体を顕現させ、高い防御力と攻撃で相手を圧倒する能力。
「遥さんが脱落…?そんな…」
モニターに映し出された表記を見て、円香は絶望的な表情を浮かべ、呆然と立ち尽くしていた。
「このっ……バカが!!」
そこに迫っていた攻撃を、天城がギリギリのところで弾き返す。
「何をボケッと突っ立ってんだ!!戦闘中だぞ!!」
天城の言葉を受けても、円香はモニターから目を離さずにいた。
そこには既に、遥の脱落の文字は消えていたが、まるでそのにまだ映っているかのように凝視していた。
「この…どいつもコイツも結局役立たずかよ!!」
今度は迫り来る幸町の攻撃を凌ぎ、天城は円香を抱えながら後方へ後退りする。
「現実見ろ!!遥さんは落とされた!!だがな!!代わりに一番厄介な黒田 カナエは倒した!!俺達が不利なのは変わらないが、状況を打破することはできるようになったはずだ!!それを投げ捨ててんじゃねぇぞ!!」
天城の言葉はようやく円香に届き、円香はどうにか奮起しようと心を奮い立たせようとしていた。
しかし、自身の予測ミス、そして遥一人に野々を任せてしまったという自責の念から抜け出せずにいた。
そんな円香を見て、天城は「チッ!」と舌打ちをする。
「そんだけ脱落したきゃそこでボ〜ッとしてろ!!俺は負けるつもりはねぇからな!!」
天城は抱えていた円香を放り捨て、迫り来る幸町を迎え撃つ体勢に入った。
「む、無理よ。あなた一人じゃ全ての攻撃は防げない」
「動く気のない無能は黙ってろ!!初めから全部投げ捨ててるような奴にとやかく言われる筋合いはねぇ!!」
天城はリスクを覚悟で『グリット』の発動態勢に入る。
当然、発動までにはブランクがあり、そこを攻撃されれば天城とてひとたまりも無いだろう。
それでも、天城はただ負けることを選ぶことはしなかった。
「…言っとくがな。俺も遥さんの強さとリーダーシップには魅せられてたよ。尊敬もしてた」
その刹那の間に、天城は円香に語りかける。
「でもな、戦いってのは結果が全てなんだよ。あの人は脱落した。だからこの舞台ではもうおしまいだ」
「ッ!」
円香は必死に言い返そうとするが、事実としてこの場に遥がいないことが、その発言を裏付けていた。
「だがな、俺達はまだフィールドに立ってる。俺らが…東京選抜が最強だってことはまだ証明できる。遥さんが言ってた、圧倒的な力の差を見せつけるってやつは、まだ可能なんだよ」
続けられた天城の言葉に、円香はゆっくりと顔を上げた。
「俺は諦めねぇぞ。俺は絶対勝ち抜いてやる。そんで、上の奴らに俺の強さを見せつけてやるんだ。その為なら、一つや二つのリスクくらい負ってやる」
「……東京選抜が最強……それを証明できる……」
円香は天城が溢した言葉を小声で繰り返していた。
「…来るか!!いいぜ、上等だぁ!!」
そして、超高速で迫り来る幸町に対し、天城が『グリット』を発動しようとした時だった。
「ッ!?」
不意に円香が立ち上がり、ここまでの観察で予測した幸町の攻撃の動線上に攻撃を置いた。
300km/hを超える速度に達していた幸町はこれをギリギリで回避する。
しかし、回避してしまったことで、自分の身の危険を察知していた。
「なんだよ、やりゃ出来んじゃねぇか」
天城はニヤッと笑みを浮かべ、そして『グリット』を発動させた。
「『未光粒操作』」
その瞬間、天城の周囲に緑色の粒子状の光が瞬き溢れ出す。
「(ま…ずい!!一度、距離を…!!)」
幸町が悪寒を感じ取り、勢いをそのままに後退を始めたのと同時に、天城の『グリット』は発動した。
「『光速操作』」
瞬間、フィールド内から天城の姿が消えた。いや、性格に言えば見えなくなった。
高速にも迫る、その急激な速度によるものである。
時速にして300km/hは出していた幸町に秒すらかからず追いつき、撤退した幸町に追い討ちをかける。
「グッ!!」
目で追えない攻撃を防ごうと、幸町は精一杯の抵抗を見せるが、『光速操作』を発動させた天城の目からすれば、止まっているような動きであった。
「シッ!」
防御の合間を掻い潜って攻撃し、更に追撃。
これを繰り返すことで、天城の勝利の法則はほぼ決まる。
が、この時は違った。
「放発必中!!『無限拡散』!!」
スローモーションの世界から見て取れたのは、自身の上空に無数に降り注ぐ矢。
矢は後方に撤退する幸町を絶妙に避け、そして接近していた天城のみを絶妙に狙っていた。
「チッ…」
回避することも可能であったが、連続使用は負担も強くなり、『エナジー』も相応量使用する為、天城は後退を選択する。
「ゲホッ…!!ゲホッ!!」
撤退を選択しながらも、天城に追いつかれ、数撃攻撃を受けていた幸町は、速度を緩めないためにも必死にステップを踏みながら、痛む箇所を抑えていた。
「幸町、大丈夫?!」
傷付いた幸町のもとへ訪れたのは、幸町を救った瑠河達ではなく、沙月であった。
「ごめんね、私が出遅れたばかりに」
「ゲホッ…いえいえ、問題ありませんよ。彼に『グリット』を発動させる隙を与えた私の失態です」
そう言うと、沙月は瑠河達の方へと目を向けた。
「彼女達にも感謝しないとね。共闘する関係は解消したのに、助けてくれたんだから」
「ですね!!イタタッ!!」
いつものように語気の強い口調で答えると、幸町は脇腹などを痛そうにさする。
そんな二人の光景を、救った側の瑠河達は遠巻きに見つめていた。
「助ける、で良かったの?こういう言い方したらアレだけど、あのまま脱落してもらった方が良かったんじゃ?」
矢を放った瑠河に対し、夜宵が尋ねる。
「その選択肢もあったが…いま彼女に脱落されるデメリットの方がこの後の展開として困ると想定した」
「デメリット?」
夜宵が聞き返すと、瑠河が頷いた。
「彼の『グリット』による超加速は、幸町殿の加速による初撃で妨げている。そして、それを補う形で我々後衛組が合間を縫って攻撃することで発動を防いでいた。いま彼女に脱落されてしまうと…」
「なるほど、彼に無双されちゃう…ってわけね」
理由を把握した夜宵は、瑠河の考えに納得する。
「一応我々にはもう一つの予備策はある。だが、まだ不確定な状況が多い中で、そのプランに頼るのも良く無いと判断した。暫くは彼女の『グリット』を活用させて貰いながら、彼を追い詰めていこうと思う」
「そうね。それに、予備策は私の問題もあるし、ここは現状維持でいきましょう。瑠河ちゃん、まだ硬球は操れてる?」
「は、はい!!無理な加速はさせてないので、十分に操れます!!タイミングさえ指示していただければ、いつでも仕掛けられます」
周囲を旋回させている『硬歪翼球』を細かに操る真衣が力強く答える。
「よし。共闘は終わったが、我々の利害は一致しているはずだ。東京選抜は全員が厄介だが、残った二人でいえば、唯我 天城の方が厄介なのは一致していると思う。ここからはその利害の一致を利用して、東京選抜を追い込むぞ」
「…それはつまり、最終的に近畿選抜との一騎打ちを挑む、ってことよね?」
確認を取るような夜宵の言葉に、瑠河は頷きながら遠くの方を見た。
「少なくとも、君の妹は既に一騎討ちを果たしているようだぞ」
その視線の先では、激しい攻防を繰り広げる、光輝く朝陽と、巨大な鎧武者を操る野々の姿があった。
その様子を心配そうに見つめる夜宵であったが、第三部のように暴走して前のめりになるようなことは無かった。
「大丈夫か、夜宵」
「大丈夫よ、瑠河。同じ過ちは繰り返さないわ。私は私に出来ることを、皆と一緒にやっていく」
ハッキリと自分の意思で発言しているのを確認し、瑠河は安堵したように頷いた。
「私達が素早く正確に倒せば倒すほど、朝陽の援護に回れるタイミングも早くなる。だから焦らず、集中して、確実に倒すぞ」
「うん!」
「はい!」
瑠河の言葉に、夜宵と真衣の二人が力強く返答した。
二つに分けられた戦場は、二つ目の局面を迎えようとしていた。
※後書きです
ども、琥珀です。
梅雨ですね。
ちょっと前まで夏だったのに、すっかりぶり返し…
これあれですね。一部の界隈でちょっぴり有名な、「梅雨明けたんですか!?」「やったー!!」「梅雨明けてないじゃないですか!!」「やだー!!」の典型的なパターンですね笑
分からなかったらすいません…
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は火曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




