第376星:盤面移動
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。『グリット』は『他化自在天降臨』で、自身の背面に5〜15mのエナジー体を顕現させ、高い防御力と攻撃で相手を圧倒する能力。
「『操作弾』!!」
「…チッ…」
巨大な鎧武者を顕現させ、その猛威を遺憾無く振るおうかという野々に対し、遥は『操作弾』を連続行使していた。
野々はこれを腕を振うことで防ぐが、遥は両手とも合成せずに『操作弾』を放っているため、反撃に回ることが出来ずにいた。
「(いい加減鬱陶しいな…強引に距離を詰めたいところだが、彼奴の弾の操作技術は並じゃない。動く先を見越して放たれれば流石に防ぎきれん…)」
最強の一つと評される『グリット』を解放しながらも、なかなか攻めあぐねている状況に、野々は苛立ちを隠せずにいた。
遥がの狙いは当然そこにある。
遥は、野々の反撃を封じるために、本体を直接狙える『操作弾』を執拗なまでに放っていた。
同時に、遥にとって現状、『操作弾』を使うことしか手がないのも事実であった。
最高火力である『爆裂発弾』でさえ傷一つ付かない野々の『他化自在天降臨』に対し、唯一の攻撃手段なのである。
「(まだだ……まだ撃ち続けろ…!!)」
連続射撃により、遥の『エナジー』は大量に消費されており、遥の額には少なくない汗が垂れていた。
それでもその瞳には、何かを狙うような光が灯っていた。
「ふむ……『減装』」
何分も続く膠着した戦況に、野々は一度その場に止まり、そう呟いた。
すると、それまで野々の背後に顕現していた15mはあろうかという巨躯が徐々に小さくなっていった。
最終的に、野々の『他化自在天降臨』は、5m程のサイズにまで縮んでいた。
「!?」
その光景に遥は一瞬驚いた様子を見せたが、直ぐに野々の意図を察し、歯噛みしながら笑みを浮かべた。
「ふむ…装甲、攻撃ともに威力は落ちるが、この戦況なら仕方あるまい。問題もなかろう」
野々の言う通り、それまで猛々しい姿であった鎧武者は、纏っていた鎧が幾分か薄くなり、その存在感も僅かに希薄になっていた。
これは言うなれば出力調整。
野々の『グリット』、『他化自在天降臨』は、その巨大故に『エナジー』の消費量も凄まじい。
常にフル出力状態ともなれば、その稼働時間は10分にも満たないだろう。
しかし、野々の『グリット』は『減装』と『加装』という、能力の出力の調整を可能としており、現在の野々の『グリット』は、それを最小限まで留めたものである。
均衡した戦況において、最大出力を持続するのは非効率的であると判断し、出力を抑えたのである。
「この……どこまでもやってくれるわ」
『エナジー』の枯渇も狙っていた遥からすれば、野々の判断は的確且つ痛恨と言えるだろう。
判断力に優れる遥ではあるが、この辺りの経験は選抜メンバーということもあり、野々も負けていなかった。
「(それでも、今の攻撃は続ける…!!)」
遥は迷わずに輝弾を生成し、野々目掛けて『操作弾』を放ち続けた。
「…この状態にしても放つ攻撃は同じか」
ここは予想と違ったのか、野々は眉を顰めながらも、劣化した『他化自在天降臨』の腕で塞いだ。
全体的に能力値が劣化している野々の『グリット』ではあるが、遥の『操作弾』を防ぐには十分な装甲を保っていた。
それに加え、重量も大幅に減量されており、動きはより軽快になり、『操作弾』の急な弾道変化にも素早く対応できるようになっていた。
「これなら攻め込めるか。少しずつ距離を縮めていくとするかの」
野々はそう言うと、遥の弾幕を退けながら、徐々にその距離を縮めていった。
遥も撤退しながら攻撃を続けるものの、範囲の決められているフィールドではただ後退するだけではいけず、その距離は徐々に縮まっていた。
「(追い詰められてるか……だがもう少しだけ…)」
更に野々に有利な状況を作られてもなお、遥の攻めのプランは変わらなかった。
繰り返し野々の本体を狙う『操作弾』の連発。
しかし、野々の『グリット』は、もはやその攻撃をもろともしないほどに素早く捌いていた。
「貴様も諦めの悪いやつだ。もうその攻撃は見切った。いかに弾道を変えようと我には当たらんぞ」
「それはどうかな?数打ちゃ当たるともいうからね、見切り切れない可能性だってあるでしょ」
堪らず野々が警告してしまうほどの状況にありながら、遥はそれを無下にするような答えを返した。
「………」
野々は自身が強者であることを疑っていないが、他者を意味もなく見下すような真似はしない。
従って、遥のことは事前に調べており、加えて第二部の戦いにおいても、しっかりとその強さを確認してからは、警戒心を高めていた。
だからこそ、ここまで同じ攻撃に意固地になる遥の行動に、ようやく野々は違和感を感じ始めていた。
しかし、現実として野々は遥を追い詰めている。倒すのは時間の問題だろう。
だから野々は深く考えなかった。
このまま淡々と着実に攻め込み、確実に落とす。それが最も現実的であると判断したからである。
間も無くして、その時は遂に訪れた。
遥は既に拳の射程距離。『へし折り長谷部』を使えば十分な距離だろう。
次の攻撃を防いだ時が遥の最後の時。野々はその時を淡々と待ち続けた。
「『操作弾』」
遥は野々の思惑通りの攻撃を放った。
「(東京選抜の人間だからと、買い被りすぎたか)」
どこかがっかりした様子を見せながら、野々はまず、遥の放った攻撃を防ぐべく、防御の構えをとった。
しかし…
「…!?」
予想に反して、遥の『操作弾』は、野々の『グリット』を避けるようにして軌道を変えていった。
「ど…こを狙って…」
野々が振り返った先。そこに立っていたのは…
「…!!黒田 カナエ!!佐伯 遥の狙いはお前だ!!」
野々が声を張り上げると、カナエはハッとした様子で遥の攻撃に気が付く。
カナエは自分に出来るだけの回避行動を取り、同じく野々の声に反応した沙月が、遥の輝弾を撃ち落とそうと試みた。
その時、野々はもう一つの事実に気がついた。
それは、遥の放った弾丸が、両手に満たないということ。
それはつまり、いま遥が放った『輝弾』は、『合成弾』であることを意味していた。
そして、遥がギリギリまで粘って、不意をついた攻撃に選んだ合成弾は…
「『炸裂弾』×『操作弾』=『分裂操作弾』」
遥の輝弾は、カナエと沙月の頭上で無数の弾丸となって分裂し、降り注いだ。
これには流石の沙月も回避するしか手段はなく、反撃することも出来ず真横に飛び込んだ。
そして、分裂した弾丸は、二人の居た場所へ次々と被弾していった。
「き……さま!!」
野々は振り返り、すぐに攻撃を仕掛けようとした時だった。
「『爆裂弾』×『爆裂弾』=『爆裂発弾』」
それは、隙と呼ぶにはあまりにも一瞬。
しかし、一流同士の戦いにおいては、十分すぎる間であった。
野々がカナエの方を振り返っている間に、遥は既に野々を仕留めるための攻撃の準備に取り掛かっていた。
本来ならば通らない攻撃。しかし、今の野々の『グリット』の出力ならば、撃ち抜くことが出来る状況。
そこまで見越して作戦をたてていた遥は、目前まで引き込んだ野々目掛けて『輝弾』を放った。
「(勝った!!)」
『輝弾』を放った瞬間、遥は確かな勝利を確信した。
野々も即座に防御の姿勢を取ろうと試みていたが、どう見ても遥の弾の方が早かった。
装甲の厚みも無くなった野々に、この攻撃を防ぐ手立ては無い。
そして、『爆裂発弾』が野々に直撃しようかという、その瞬間だった。
「『閃光の弾丸』」
直ぐそばから呟かれた言葉とともに、一筋の光の弾丸が、遥の『爆裂発弾』と衝突し、相殺した。
その光景を、遥、野々の両名は驚いた様子で見届け、そして遥は、初めて見せる怒りの表情でそちらを振り返った。
「斑鳩…朝陽!!」
攻撃を放った本人である朝陽を睨むようにして、遥は呟いた。
「ごめんなさい。私は今はどっちの味方でも無いんですけど、でも、どうしで感情移入、しちゃうんです」
当の本人である朝陽は、申し訳なさそうな表情を浮かべるのみ。
そして朝陽は、視線を僅かに横に逸らした。
その動きに、遥はハッと我に返るが、今度は遥が朝陽の攻撃により隙を作り出してしまっていた。
振り返った先にあったのは、目の前を覆うような巨大な拳。
それが野々の『他化自在天降臨』による攻撃だと判別した時には、その拳は遥に直撃していた。
「わた……しが!!こんな……ところでぇぇぇ!!」
その叫びも虚しく、遥はそのまま後方へと吹き飛ばされ、元々端まで追い詰められていたこともあり、直ぐに壁に直撃。
そしてそのままゆっくりとフィールドの外へ落下していった。
そして、フィールドの天井にくくりつけられたモニターに、佐伯 遥の脱落の文字が表示された。
※後書きです
ども、琥珀です。
現在も左半身麻痺状態なのですが、どうにか仕事を復帰しています。
ただこれまで通りの仕事が出来ないというのは、思いの外辛いですね。
逆に負担になってしまっているのではないかと、不安になります。
今の私は力になれているのでしょうか…
仕事の不安を後書きについつい書いてしまう、琥珀でした…
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は金曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




