第374星:阻害
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。『グリット』は『他化自在天降臨』で、自身の背面に5〜15mのエナジー体を顕現させ、高い防御力と攻撃で相手を圧倒する能力。
離れた位置からでも分かる巨大な鎧武者に、もう一つの戦場である場所で、瑠河達は戦慄していた。
「…あの矛が最初に我々に向いていたと考えたら、ゾッとしないな…」
「同感よ…アレを防ぐのにどれだけ『エナジー』を費やせば良いか分かりゃしないわ…」
瑠河の言葉に、隣に立つ夜宵が賛同する。
一方で、夜宵、瑠河、そして真衣に幸村と、四人を一気に相手にする状況となった天城も、流石にあの巨大な鎧武者を見て驚いていた。
「(なんだありゃ…さっきから見てりゃあんなバケモンみたいな能力ありかよ)」
いくら対応しきれない超加速能力持ちと言えど、逆を言えば物理特化である天城とは天敵に近い能力であった。
「(遥さんがいるのに、葉子のやつがあっさりとやられちまいやがった。デカい口叩いてた割に情けねーな)」
心の中で悪態をつきながらも、天城の心はどこか曇っていた。
「(チッ……簡単にやられてんじゃねぇよバカが)」
瞬間、天城は『グリット』を発動。
野々の鎧武者に気を取られて隙が出来た面々に、一気に攻撃を仕掛けようとする。
「そうはさせませんよ!!」
が、それを文字通り素早く幸町が阻止。
声が聞こえた時には既に通り過ぎているほどに加速した幸町は、天城の『グリット』の発動を封じ込め、再びその場を離れた。
「(クソが…いい加減ウザってぇなあの女の加速も…)」
そんな幸町の動きに、天城は苛立った様子を見せていた。
天城の当初の予定では、ここまで幸町の加速を許すつもりは無かった。
どこまでも加速を続ける幸町よりも、一瞬の加速で上回れる天城ならばいつでも対処できると踏んでおきながら、それでも一定の速度でとどめを刺すつもりでいた。
想定外だったのは、夜宵と真衣の参戦。即ち、関東選抜と近畿選抜の共同戦線である。
今も周囲には、真衣の放った『硬歪翼球』が旋回しており、いつでも天城を狙う準備が出来ていた。
こちらも夜宵の『闇の影』により時折加速をさせており、今やどこにいても風を切る音が聞こえてくる程であった。
しかし、天城にとって一番の問題は、やはり幸町であった。
既に300km/hを超える速度に達した幸町は、目で追うことさえ困難になりつつあった。
それでも、瞬間的な速度で言えば天城の方が遥かに勝るという状況で、何故天城が苦戦しているか。
それは、幸町が天城に『グリット』を発動させない距離と位置を常に保っているからである。
天城の『グリット』、『未光粒操作』の弱点は、瞬間的に光速に近い速度を出すための『エナジー』を、全身に巡らせるために、僅かではあるがチャージを必要とする点にある。
これは、時間にして一秒程度のため、本来なら弱点には値しない程度のものである。
しかしその一秒は、今の幸町にとっては攻撃をするのに十分すぎる時間であった。
結果として、天城は『グリット』を封じられた状態となり、更には一撃でノックアウトしかねない、強力な武器が周囲を旋回している状況に陥っていた。
「(チッ…めんどくせぇ状況だな)」
夜宵達も、鎧武者が今はこちらに敵意を向けていないことに気付き、天城に注意を向け直していた。
これで不意打ちは通じない。発動できれば真正面からでも幸町以外なら突破は可能ではあるが、夜宵の闇も天城にとっては相性は最悪である。
触れるだけで飲み込まれる夜宵の闇は、物理特化の天城にとって天敵。
最悪、夜宵の展開する闇に突っ込むだけで脱落判定されかねないほどの相性の悪さである。
その闇は、夜宵のみならず真衣の身も守っており、迂闊に手は出せない状態。
つまり、幸町以外なら突破できる状況にあるにも関わらず、攻撃可能なのは幸町しかいないという、板挟みとなっていた。
「(おまけに『グリット』を使う隙すら与えねぇってか?また勝手に追い込まれる状況を作っちまって…ダセェな俺は!!)」
第二部と同じ状況に追い込まれてしまっていた自分を叱咤しながら、天城はとにかく状況を整理する。
「(遥さん達はあの鎧武者と戦ってる。援護は望めねぇ。そんで俺の『グリット』はあの幸町とかいうやつにほぼ封じられてる。仮に発動出来ても、あの夜宵とかいう奴には通常のやり方じゃ通じねぇ。距離を取ればさっき来た瑠河って奴が俺を狙う。さぁ、どう崩す…)」
天城は冷静に作戦を練ろうとするが、集まった面々がそれを許さない。
幸町が超高速で天城に接近し、瑠河は矢を構え放ち、真衣は加速させた球体を操り攻撃を仕掛ける。
一か八かの可能性に賭け、天城が強引に『グリット』を発動しようとした時だった。
「矢と幸町さんは私が。貴方は硬球を跳ね返してください」
突如として聞こえてきた声に、しかし天城は咄嗟の判断力でこれに対応する。
言われた通り、天城は硬球を弾くことにのみ意識を割き、備えていた『機槍』でこれを強引に弾く。
弾の硬さと勢いに押され、『機槍』は砕け散ってしまったが、一先ず跳ね返すことには成功する。
そして、残った二つの攻撃に対して対応したのは…
「むむっ!?」
幸町の動線状に攻撃の構えを取る、円香の姿。
このまま突っ込めば勢いのまま置かれた攻撃に当たると判断した幸町は、咄嗟に進路を変更。
そして、元々逃げ場を塞ぐためだけに放たれた矢は、もう片方の手で簡単に掴まえられ、防がれる。
「お前…なんでこっちに!?」
「礼儀がなってない。助けたんだからまずはお礼でしょ」
円香は握っていた矢を放り捨て、円香は癖である横髪を掻く仕草を見せる。
「…ちっ。あぁ正直助かったよ」
天城も絶望的な状況から救われた事実は受け入れ、天城なりの礼を伝える。
「それで、お前がこっちにきた理由は。あのバケモンみたいな鎧武者を、遥さん一人に任せてきたのか?」
それは聞きようによっては見捨ててきたのか、と聞こえなくも無かったが、円香は否定も肯定もしなかった。
「これは遥さんからの指示。得ただけの情報を預けて、貴方の手助けに迎え、と」
「俺としてはありがたい話だけどな。だがあのバケモンを相手に、一人で戦わせるのをすんなり受け入れる神経はどうかと思うぜ」
天城の発言に、珍しく円香は感情的な目つきで天城を睨みつける。
「私だって望んでここにきたんじゃない。けれど、遥さんには考えがあって私にそう指示を出したはず」
「それが甘ちゃんだって話だよ。遥さんが指示を出せばお前は全部従うのかよ」
そんな円香の圧に押されることなく、天城は真っ直ぐとそれを見返す。
「もっと自分で考えて行動しろよ。お前の『グリット』はそれに一番適してるだろうが」
天城に言い返され、円香は一瞬言葉に詰まるが、それでも強い瞳でこれに答えた。
「そんなの言われなくても分かってる。遥さんからこっちの援護に回れと言われた時は流石に反論した。けれど、遥さんから、自分の過失を取り戻す責任を果たすと言われ、こっちに強引に引っ張り出された」
「そうかよ。そんならしがみついてでも残るべきだったな」
尚も天城は反論するが、円香もこれに続いた。
「それに、こっちの状況を見て、私の『グリット』がいま一番活きるのはこっちだとも思った。幸町さんの行動予測、瑠河さんの射線予測、真衣さんのコース予測、その全てが私の『グリット』で予測出来る。だから、最後の決断は私が下した」
円香の最後の言葉を聞いて、二人は僅かに沈黙し見つめあう。
やがて天城が視線を逸らす形で、夜宵達の方へと向き直る。
「お前自身がそう判断したんなら、別に文句はねぇよ。俺も好き勝手やらして貰ってるからな」
それはつまり、天城は円香の行動を認めたと言うこと。
元々天城の許可は必要なかったが、一先ず納得させられたことに円香は息を吐く。
「なぁ、お前の『グリット』で、相手の攻撃は大体予測出来るんだよな?」
「…?えぇ、殆どの情報は掴んでる。斑鳩 夜宵だけはまだ不完全だけど」
「ありゃ例外だろ。あれを予測出来るやつなんて普通はいねぇよ。まぁ兎に角だ」
天城は円香に背を向けながら、自分がいま思いついたプランを円香に伝える。
「俺とお前がいれば、この戦況を抜けることは可能だろ?なら、一旦引いて、遥さんの援護に行くのも手だ」
天城の提案に、円香は僅かに目を開いて答える。
「ここから逃げ出すということ?」
「逃げるんじゃない。引くんだ。狙いはこの状況の打破だけじゃない」
円香が眉を顰めていると、天城は今なおこちらに向けられているであろう複数の矛から目を逸らさず、顔だけ円香の方へと振り返った。
「このままじゃ押し切られるってんなら、それを仕切り直してやれば良いだけだ」
※後書きです
ども、琥珀です。
週五更新なんて普段連続して出来ないので困惑してます←
これを毎回続けられれば良いな、と常々思うのですが、そう簡単に筆は進まず…
何回も言ってることなのですが、いつかはこれを目標にしたいな、と思っております…
いつか、ね…
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は水曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




