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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
10章 ー開幕:『大輝戦』編ー
407/481

第373星:弱点

◆関東地方


斑鳩 朝陽(18)

 千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪イノセント・サンシャイン』。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪ダークネス・エクリプセ』。


矢武雨(やぶさめ) 瑠河(るか) (24)

 栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜(ハンドレット・ヒット)』。


道祖土(さいど) 真衣 (22)

 埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球(アクセルスロー)』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具(バトルマシナリー)』、『硬歪翼球ウルツァイト・ウィングレット』を所有している。



◆東京本部選抜


唯我 天城 (17)

東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作(タキオン・レイン)』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。


佐伯 遥 (24)

東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手(バレットアーチャー)』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。


草壁 円香 (21)

東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知オートマチック・サイト』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。


片桐 葉子 (21)

東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波(トランスミッション)』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。



◆近畿地方


黒田 カナエ (22)

 兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信(テレパシー)』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。


射武屋 沙月 (24)

 奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢アタッチメント・アロー』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。


真田 幸町 (24)

 京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進(ストレートアクセル)』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。


織田 野々 (24)

 大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。『グリット』は『他化自在天降臨たけじざいてんこうりん』で、自身の背面に5〜15mのエナジー体を顕現させ、高い防御力と攻撃で相手を圧倒する能力。

「(円香ちゃんの言う通り、織田 野々本体は鎧武者に守られてない。問題なのはその鎧武者が邪魔で、攻撃は殆ど通じないこと)」



 迫り来る野々の攻撃を、反撃で鈍らせながらどうにか回避し、遥は考えをまとめていく。



「(通常なら分かっていても突けない弱点…だけど、私ならそれをつける!!)」



 円香は野々の『他化自在天降臨たけじざいてんこうりん』の弱点をもう一つ見抜いていた。


 それは、巨大な体躯なために、動きが緩慢な点である。


 攻撃範囲が広いために、その弱点をカバーすることが出来ているが、今回のように遥達が反撃して攻撃の手を緩める事が出来れば、一時的にではあるがそこに隙ができる。



「『操作弾マニューバー・バレット』×『爆裂弾(バースト・バレット)』=『操作爆裂弾マニューバー・バースト』」



 遥は両手から作り出した輝弾を重ね、合成弾を作ると、それを複数に分けて放った。



「…きたか。さて……」



 野々は放たれた弾丸に対し、冷静な表情で対応する。


 迫ってくる弾丸に対し、これまで通り、片方の手で防ぐことを試みる。



「…ここだ!!」



 そこで遥は弾丸を90度直角に曲がる。


 弾を自在に操ることの出来る『操作弾マニューバー・バレット』を合成させており、鎧武者の腕に直撃する直前に弾を操ったのである。


 自動で追尾することの出来る『誘導弾オートリード・バレット』に比べ、扱いの難しい『操作弾マニューバー・バレット』であるが、磨き上げられた技術を伴っていればこれ程怖い攻撃はない。



「なぁんの!!」



 しかし、野々も遥が自ら攻撃を仕掛けてくるのに対して、何の対策もしてこないとは考えていなかった。


 仕掛けてくるのならば『操作弾マニューバー・バレット』であると確信していた野々は、『他化自在天降臨たけじざいてんこうりん』のもう片方の腕を自身の直ぐ近くに振り下ろした。


 結果、遥の弾道を変えた弾丸は、あと一歩のところで野々には届かず、全て塞がれてしまう。



「(かかった!!)」



 その瞬間、遥はニッと笑みを浮かべていた。


 何故なら、これこそ遥が狙っていた展開であったからだ。


 遥が合成したのは『操作弾マニューバー・バレット』ともう一つ、『爆裂弾(バースト・バレット)』。


 その効果は、直撃した瞬間に爆発する効果を持つもの。


 『他化自在天降臨たけじざいてんこうりん』の防御力は、遥の持つ最大火力の『爆裂発弾(バーストボム)』でさえ防ぐ防御力を誇る。


 その為、『爆裂弾(バースト・バレット)』だけの威力で鎧武者の盾を破れるとは思っていない。


 しかし、その爆発の余波により、野々の周囲には爆煙と土煙がたっており、その視界を完全に塞いでいた。


 これこそが、遥の攻撃の狙い。


 野々の視界を遮り、更に別の角度から、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「『輝伝衝波(トランスミッション)』」



 その攻撃をする本人、片桐 葉子は、角度を変えるために遥達から離れ、左手に残された五本全ての『輝伝衝波(トランスミッション)』を放った。


 葉子の『輝伝衝波(トランスミッション)』は地から伝播させ攻撃する能力。


 つまり、野々の鎧武者も地面の対象と見なしておけば、その腕さえも伝播させることが可能であることを意味していた。


 その狙いは当たり、伝播していった葉子の『輝伝衝波(トランスミッション)』は、鎧武者の腕を乗り越え、その裏にいるであろう野々へと向かい、そして炸裂した。



「やった…!!」



 確かに感じた手応えに、葉子は思わず拳を握り締める。


 しかし、葉子から離れていた二人は、異変にすぐに気がついた。



「円香ちゃん…仮に葉子ちゃんの攻撃が直撃していたとして、彼女の『他化自在天降臨たけじざいてんこうりん』はここまで変化がないものなの?」

「い、いえ…『他化自在天降臨たけじざいてんこうりん』は彼女が出す『エナジー』に比例して具現化している筈。葉子の攻撃が直撃しているのなら、具現化が解けてもおかしくない筈です…つまり…」



 二人は同時に一つの結論に至り、葉子の方へ振り向いた。



「葉子!!織田 野々に攻撃は通って……ッ!!」



 その拳は、遥と葉子の攻撃によって生じた土煙の中から突如現れた。



「な……ん…!?」



 これ程の急激な展開に、驚きながらも反撃の手を出せたのは、流石は東京選抜のエリートと言えるだろう。


 目の前に迫ってくる巨大な拳に対し、葉子は残った『輝伝衝波(トランスミッション)』を直撃させながら、必死の回避行動に移る。


 しかし。



「くっ……そっ……!!」



 拳は直径3mにも及ぶ大きさであり、いくら素早く反応しようとも、いくら動きを鈍らせようとも、その攻撃を回避することは不可能であった。


 葉子はその拳の直撃を受け、身体を後方に仰け反らせながら、フィールドの外へと弾き飛ばされていった。



「葉子!!」



 無意識に動き出そうとする円香を手で制し、遥は無念そうに首を横に振った。


 壁に叩きつけられた葉子は、そのまま力なく落下していき、やがてその姿を消した。


 そしてその直後、天井に吊るされたモニターに、片桐 葉子の脱落が表示された。



「そんな……そんな!!どうして!!作戦は完璧だったはずです!!葉子の攻撃だって当たってたはず!!なのに、どうして!!」



 動揺して叫ぶ円香とは対照的に、遥は晴れていった土煙の中から姿を現した野々に目を向けていた。


 野々は土煙を鬱陶しそうに払い、「ケホッ、ケホッ」と咳き込みながらも遥の視線に気が付き、ニッと笑みを浮かべた。


 そして、野々の足元の先、そこには、()()()()が地面に突き刺さっていた。



「成る程…そう言うことか…」



 遥は全てを察したようで、悔しそうに目を閉じた。


 円香もそれに釣られるようにして同じ状況を確認すると、円香の『計算予知オートマチック・サイト』が、そのことの顛末を全て計算した。



「あの矢が……葉子の『輝伝衝波(トランスミッション)』を遮った……?」



 状況を理解したくなくても、円香の『グリット』が全てを理解させていく。


 それでも、理解は出来ても納得は出来なかった。



「連携をその場で作り上げて、視界を遮る作戦も、止めは葉子がさす作戦も全部完璧でした!それなのに、どうして……」

「それが()() ()()()という存在なんだよ」



 遥は戸惑いながら呟く円香の言葉に、力強く答えた。



「彼女は、私達が連携で仕掛けてくることを予測していた。葉子ちゃんが最後に仕留める算段も、彼女には読まれていた。だから黒田 カナエはそれを見越して射武屋 沙月に指示を出していた。葉子ちゃんの『輝伝衝波(トランスミッション)』の射線上に、障害となる矢を突き立てておくようにね」



 葉子の『輝伝衝波(トランスミッション)』の発動条件は二つ。


 一つは自らの意思で、任意のタイミングで炸裂させるもの。


 そしてもう一つは、伝播させる先がなくなったところで、自動で炸裂するというもの。


 そして、葉子の『輝伝衝波(トランスミッション)』を遮った矢は突き立てておられており、そこに光が伝播すれば、行き着く先は矢の矢筈である。


 そうなればそれ以上先に光が伝播する先は無い。


 葉子の『輝伝衝波(トランスミッション)』は、野々に出はなく、沙月によって前もって防ぐために射られていた矢によって、遮られていたのである。



「そんな……ことが。そんな、ことまで」

「言ったでしょ。これが黒田 カナエなんだ。私の判断力よりも、円香ちゃんの『グリット』による予測さえも上回る戦略家としての頭脳。まさに智将だ」



 冷静に努めている遥ではあるが、その内心は悔恨と怒りで溢れていた。


 自身の力量不足により、圧倒的な力の差を見せつけるはずが、逆に圧倒的な実力を目にさせられていた。


 この決勝の舞台で、最初に脱落したのが東京選抜となれば、東京選抜のなかでもリーダー格として選ばれた遥からすると、これほどの屈辱は無いだろう。


 今直ぐにでも反撃に転じたいところではあったが、カナエにはそれすらも計算されているのでは無いかと思うと、それすらも出来ずにいた。



「また…私のミスです。織田 野々の弱点にばかり目が行って、黒田 カナエという人物にまで意識を回していなかった…二度も過ちを犯すなんて…」



 意気消沈する円香であったが、遥は今はそれを励ますほどの余裕も無かった。


 ただ目の前に立つ巨大な鎧武者を前に、どう倒すかを考えていた。



「フハハ!!ご自慢の東京選抜も一人脱落だ!!良い線は言っていたが、うちの軍師様のほうが一枚上手だったようだの!!さぁ、お前達ふたりはどう私を楽しませてくれる?」



 巨大な鎧武者を顕現させた織田 野々が、ゆっくりと二人の方へと向かってきていた。


 その野々の額には、一筋の汗が垂れていた。



「…!」



 その一瞬の様子を、遥は見逃さなかった。



「立つんだ円香ちゃん。まだやれることはあるよ」



 そう言うと遥は、隣で崩れ落ちていた円香の腕を引っ張り強引に立ち上がらせる。



「ですが……私の予測ではこれ以上の局面打破は…」

「予測なんていくらでも裏切れる。奇しくも敵である黒田 カナエが立証した事実だろう」



 遥の言葉に、円香の目にも僅かに闘志が蘇る。



「ほぅ……まだ立つか。流石は東京選抜のエリートなだけはあるよの」

「まぁね。私達にも意地ってもんがあるからさ。まぁ見てなよ」



 絶望的な状況に光を照らす、遥の輝弾が、周囲を漂い出した。

※後書きです






ども、琥珀です。


悩んだのですが、今週も週五更新で、十五日まで連続で更新することにしました。


今は半身が動かないことでお仕事をお休みさせていただいているので、それも兼ねて出来るうちにしておこうと思った次第です。


来週からお休みが終わるので、今週までは連日更新を頑張ろうと思います。


宜しければ、本作の更新にお付き合い下さい。


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は火曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。

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